2025年03月25日

非結核性抗酸菌症(特にMAC症)の治療適応(目安)つづき

非結核性抗酸菌症の場合、治療の開始時期は、菌種や病勢、患者さんの状態に応じて個別に決めるべき事項となってきているのが実際です。微妙な問題を含んでいますので、専門家にコンサルトしましょう。

2020年ATSガイドラインでは、診断確定後すぐに治療開始すべきものとして、

・喀痰抗酸菌塗抹陽性例
・空洞を有する症例

が挙げられています。

また、「成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解―2023年改訂―」でも基本的には上記方針を支持していますが、結節気管支拡張型で塗抹陰性、排菌量が少ない、無症状の軽症例では、治療開始時期については注意深い観察を前提として、年齢含めた忍容性、基礎疾患、病変の範囲、画像所見の推移、菌種などを加味して個別に検討するということになっています。

ということで、ここはできれば呼吸器専門医などにご相談されて総合的に決められることをお勧めします。

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2025年03月24日

非結核性抗酸菌症(特にMAC症)の治療適応(目安)

非結核性抗酸菌症に関しましても「レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室第4版」で当然書き直しておりますが、このあたりもどんどんガイドラインが書き換わってきており、結構大変であります。

特に以前から議論のあるところで、よくご質問を頂くのが、肺MAC症をはじめとする肺NTM症の治療をそもそも開始すべきかどうか?いつ開始するのか?というものですが、まあこれはケースバイケース、と言ってしまうと見も蓋もありませんが……。

どうしてこんなに議論が尽きないのか。それはもちろん、「決定的な治療がない」からに他なりません。この薬(の組み合わせ)を使えば、まあ大体よくなるし、副作用も許容範囲だよね……っていう薬があれば、それを積極的に使えばいいだけの話。そんな薬がないから苦労するわけです。

軽症なら軽症で、画像的に不変〜自然軽快もありうるため、無作為二重盲検試験などが立てにくく、薬剤の効果が立証できない。反面、空洞形成して、難治性になってきたりすると今度は治療効果がはっきりと得られない例が増えてくる。いったん排菌が陰性化しても、治療を止めれば再燃することもあります。

また、単剤での効果が期待できないだけに複数の薬剤を長期間併用することになり、ただでさえ少なくない副作用のリスクも増えることになるのです。実に悩ましい。
つまり、治療のリスクに対する保証がないわけです。ここが、結核との大きな違いです。結核は(耐性菌でなければ)治療すれば必ず効く。きちんと効果が保証されていて、かつ、他人にうつす危険がある。それゆえ、治療は絶対に行うべきものなのです。

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2025年03月23日

「『卓越したジェネラリスト診療』入門」感想つづき

昨日言い足りなかったことを少し。

この書籍を読んで感じたことは、当たり前ですが「卓越したジェネラリスト」への道は一朝一夕では到達できない、ということ。ここに示されていることが外来、訪問などの現場でスッと出来るようになることが必要なのです。

臨床の現場は複雑な問題にあふれていて、ある症例、事例の解決手順は目の前の事例に使えるとは限らず、手中に多くの「問題解決のための手札」を持っておく必要がある。現時点での「手札」を教えてくださっている書籍である、といえるでしょう。

ですからこの手札を持っておいて現場で問題解決にあたり、振り返って手札に磨きをかけていく、その際には出来れば多職種の話し合いや他の医師とのカンファレンスがあるべきでしょうし、藤沼先生のような素晴らしい指導医にご相談できるとなおよいでしょう。島根にも多くの素晴らしい総合診療医の先生方がおられて、現場で若手の先生方や研修医、学生さんの指導をしてくださっています。改めてこの環境がありがたいことだと実感した次第です。

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posted by 長尾大志 at 11:53 | Comment(0) | 日記

2025年03月22日

「『卓越したジェネラリスト診療』入門」感想

ジェネラリストを名乗る??以上、こちらの書籍はは必ず読んでおかねばなるまい、ということで、購入して拝読いたしました。

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最近ありがたいことに献本を頂くことが多く、読書感想文も献本COIのあるものが多かったですが、こちらの書籍はCOIありません。ということで素直な感想を。

こちらの書籍は既に多くの先達の皆様が感想を書かれていて、自分の感想としてもおおよそそれらのものと同じようなところになります。T章は臨床診断から外来診療、そして治療に至るスキルの紹介、U章はジェネラリスト診療というものをどのように行うのが「卓越した」ものとなるのか、という実践法、V章はそれを実践する上で必要になってくる、チームと教育に関する考え方を教えていただきました。

藤沼先生の現時点での「ベストアルバム」という触れ込みでしたから、パラダイムシフトを起こされるような、思いもつかない新理論があったりするのだろうか、なんて思ったりしていましたが、いい意味で予想を大きく裏切られることはなく、かつ各々の考え方に裏付けとなる研究・論文が紹介されていて、今の理解がさらに深まるような読書体験でした。各々の根拠論文をきちんと読めばきっともっと理解が深まるだろう……と思いつつ読めておりませんが。

感想の中には「第T章はふんふんという感じだったが、U章〜V章で大きく衝撃を受けた」という記載も見かけましたが、自分的にはT章で家族図、家族療法、禁煙指導、リアシュアランス、小外科処置など勉強になることが多く、U章〜V章はいつもやっていることにラベリングをしていただいたような感じだったのでした。それだけ平素触れている「島根の総合診療」が卓越していることの証左であろうと思われます。

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posted by 長尾大志 at 14:17 | Comment(0) | 日記

2025年03月21日

気胸について、最新ガイドライン3・続発性自然気胸

これまでに述べた「無症状なら経過観察でもOK」「症状があっても針穿刺吸引でOK」というプラクティスは原発性自然気胸、すなわち若年男性に多い、基礎疾患や原因となる出来事のない気胸の場合です。

でも、特に高齢化が進んでいる地域医療の現場では、もはやそのような原発性自然気胸を診療する機会は少なく、COPDはじめとする肺疾患が基礎にあるような、続発性自然気胸を見る機会の方が多いわけです。

では続発性自然気胸の場合にはどうするのがよいか、といいますと、これは残念ながら、無症状の場合であっても保存的治療「経過観察」を推奨するだけの十分なエビデンスがない、ということになっています。また、有症状の場合に針穿刺吸引とドレナージを比較した質の高い論文もまだないようです。

これらの理由はおそらく続発性自然気胸の場合、エアリークが持続するケースが多いのではないか、と推察されますが、少なくとも初期治療に小口径 (8 Fr) の携帯型デバイスはトラブル(閉塞など?)が多く、これを使用しないことが推奨されています。

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posted by 長尾大志 at 20:14 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ

2025年03月20日

気胸について、最新ガイドライン2・胸腔ドレナージ vs 針穿刺吸引法

自覚症状がなく、画像的臨床的に安定している原発性自然気胸に対しては、経過観察でも8週後の状況が非劣勢である(≒経過観察でよい)、ということでしたが、症状のある気胸に対してはいかがでしょうか。

件のガイドラインでは、症状のある原発性自然気胸に対する初期治療として、胸腔ドレナージよりも針穿刺吸引法の方が強く推奨される、とされます。ただしこれは専門知識とフォローアップのシステムを備えたセンターに対する条件付き推奨ということであり。そのまますべての本邦の医療機関に適用できるものではないことに注意が必要です。

根拠となったRCTも6件と多く、メタ解析では針穿刺がドレナージよりもLOSが2日余り短く合併症も少ない、まあ針の単回穿刺と管を入れておくドレナージでは、入院期間であったり、いろんな合併症の発生割合であったりが異なるであろうことは自明ではあります。

またどの研究もサンプルサイズの点や盲検ではないことなど、研究の妥当性について問題を抱えており、そのため確実性は低いものの(明らかに差があるため)推奨は強い、という物言いになっています。

続発性自然気胸のサブグループを検討しても、入院期間は針穿刺群が明らかに短く、成功率は高かったとのことです。


まあこちらも、そりゃそうか、という結果ですね。症状のある気胸に対して、ドレナージがよいか針穿刺吸引がよいか、についてはこれまでも確たる方針は示されておらずフニャフニャした感じでした。ただ臨床上、入院で患者さんを診るのであれば、針穿刺吸引ではエアリークがあるかどうかわからないため、細かく診るには不適かなあ、と思っていたところです。

たぶん彼方の方々は、エアリークがあろうがなかろうが、とりあえず穿刺吸引しておいて、しばらく経って再膨張しておればよし、再発(再収縮)しておれば再度穿刺吸引、という感じでやられているようですね。外来メインで、何かあればその都度受診、その時きちんと専門医が対応できる、という文化が根付いておれば、こういうやり方もありということでしょう。

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posted by 長尾大志 at 18:45 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ

2025年03月19日

気胸について、最新ガイドライン

気胸については以前、これまでの日本でやられている方法をまとめてみましたが、昨今海外の新しいガイドラインが出ておりまして。

British Thoracic Society Guideline for pleural disease(Thorax 2023;78:1143–1156. doi:10.1136/thorax-2023-220304)
Joint ERS/EACTS/ESTS clinical practice guidelines on adults with spontaneous pneumothorax(European Respiratory Journal 2024 63(5): 2300797; DOI: https://doi.org/10.1183/13993003.00797-2023

最近のガイドラインでは患者の安定性、症状、気胸の大きさに基づいた個別ケアが重視されています。以下は主要な推奨事項の要約ですが、所謂古典的な?方法に対して、結構侵襲の少ない方法を推奨される傾向にあるようです。

1. 原発性自然気胸(PSP)
・経過観察
気胸の大きさに関係なく、症状が最小限で、臨床的および放射線学的に安定している患者に推奨されます。患者を退院前に観察し、日常的な活動を行うことができるかどうかを判断する必要があります。ただまあ、エビデンスの確実性は非常に低く、条件付き推奨ということになっています。

その根拠となるRCT論文なんですが、主要評価項目は「8週間目で気胸がなくなっている」ことで、ドレナージ群に対して経過観察群で非劣勢であり、入院期間や合併症、12 か月時点での気胸の再発は経過観察群で少なかったということです。……いろいろ微妙ですね。そりゃドレナージしなけりゃ、入院期間は短くていいでしょうし、合併症も少ない。おそらく発症後しばらく肺を縮めておく方が、孔もキッチリふさがるでしょう。そもそも「8週間目で気胸がなくなっている」ことを主要評価項目にしているということは、「8週間目で気胸がなくなっていれば」治った、という感覚で、途中経過は問わない、ということですよね。ここを是とするかどうか。

RCT以外の非ランダム化研究も矛盾した結果があったりでしたが、合併症は経過観察群の方が少ない傾向にあったそうです。ということで、症状がない原発性自然気胸にはドレナージをしない、という選択肢が浮上して参ります。おそらくそのうち日本のガイドラインも新しくなるのかもしれませんが、しばらくは混乱しそうですね……。

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posted by 長尾大志 at 18:34 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ

2025年03月18日

島根大学医学部 地域医療教育学講座 総合診療・地域医療実習動画

島根大学医学部で4年生〜5年生にかけて、全員が4週間ずつ、地域の病院にお世話になって実習をさせて頂いている、「総合診療・地域医療実習」。そこでの学びを紹介していただいている動画をこれまでちょこちょこYoutubeにあげておりましたが、このたびきちんと独立したチャンネルに集約することになりました。

島根大学医学部 地域医療教育学講座 総合診療・地域医療実習動画
https://www.youtube.com/@%E5%B3%B6%E6%A0%B9%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E9%83%A8%E5%9C%B0-o3t

一般公開となるといろいろと難しいこともあり、とりあえず6本を挙げております。これから粛々とupして参りますので、どうぞご覧ください。

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posted by 長尾大志 at 19:28 | Comment(0) | 動画置き場

2025年03月17日

2025年度 島根大学医学部 高度総合診療力修得コース 開講です!

このたびは、来週から募集が始まる、2025年度 島根大学医学部 高度総合診療力修得コースについてご紹介させてください。

島根大学医学部の総合診療医センターが中心になって、島根大学医学部において、総合診療マインドを持った医学生を育成するためのコースとして起案・実行した教育コースになります。

「総合医を目指すなら島大」医学生が総合診療について学べる環境、また専攻医や地域の医療者が総合診療について医学生に伝える環境を作ろうということで始められたこちらの「課外」コースですが、毎年人気で定員越えとなります。それもそのはず……

1.総合診療マインドを持つ医学生に、現場ばりばりの総合医が、大事なとこを伝えまくって、できる医学生にしちゃう。
2.診療所とか訪問診療に入り込んで、普通は教えないような、患者中心の医療の大事なとこを、激アツに教え込んじゃう。
3.6年間縦軸でサポートして、6年生卒業時には、総合診療の大事な部分とか、初期研修医を超えちゃう感じ。
4.エコーとか論文投稿とか、研修医になって困るところは、医学生のうちからできるようにしちゃう。

みたいな目標を掲げて、5つのコースが選べるのです。

A.総合診療専攻医体感コース By.島根の家庭医療医
B.臨床スキル育成コース   By.島根の若手総合医
C.ハンズオンエコーコース  By.島根の総合医・検査技師
D.臨床研究コース      By.島大の指導医
E.胸部画像読影コース    By.島大の指導医

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(申し込みは来週スタートです!お間違えなく!!)

昨年度から不肖長尾もEコースを担当させていただいております。昨年度は部屋の収容人数の関係で定員オーバーになってしまったのですが、今年度はオンラインで定員枠を取っ払うことにしました!ということで、これまで「肺の孔」に参加したいけどハードルが高い……と思っていた方も気軽に参加いただけるようになります。Eコース以外のコースも魅力満載です!どうぞご参加検討ください!!

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posted by 長尾大志 at 11:57 | Comment(0) | 活動報告

2025年03月16日

第119回医師国家試験合格発表

さて先日、第119回医師国家試験合格発表がございました。

島根大学は新卒者において合格97名 不合格7名 合格率 93.3%、既卒者において合格4名 不合格4名 合格率 50.0%という結果でした。

単なる数字でよかった、悪かったではなく、各々の学生さんの努力・頑張りの結果の合格・不合格です。ともかくも合格された方はおめでとうございます。そして残念な結果に終わった方はまた次の機会に向けて立て直してまいりましょう。弊講座では総合医センターと協力して何某かのサポートを考えておりますので、よろしければご相談、ご一報いただければと思います。

なかなかご予算に制約のある地方国立大学ですので、お金をかけて予備校様のサポートを受ける……というようなことはできませんでしたが、いろいろと知恵を絞って、また予備校様のご厚意もあって、出来る範囲内でサポートをさせて頂きました。来年度の受験生の皆さんにも、少し解像度の高いサポートができるような気がいたします。頑張りましょう!!

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2025年03月14日

令和6年度 島根大学医学部医学科謝恩会

昨日は午前中学位授与式、そして夕方以降は島根大学医学部医学科謝恩会が開催され、謝恩されてまいりました〜。

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久しぶりの学生さん、実習中は皆さんマスク姿で、卒試のときはマスクを外しておられて、スッピンで目が〇んでいたりしたので、まったく誰が誰だかわからない現象は今年も健在でした笑。まあ私の記憶力減退も相当のものですが……。

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たくさんの学生さんとお話しできて、例のマッチング相談をさせてもらった方の結果を確認できましたが、やはりかなりうまくいっている方が多く、第1志望マッチしなかった方も納得できる結果になった方が多かったので、自分としてはかなり相談に自信が持てました。今年はさらにブラッシュアップしていこうと思います!

それとさすがに来ておられた学生さんは「国試大丈夫です!」という人が多く(若干心配していた人も!笑)安心しましたが、もし来ておられなくて国試残念な結果になった方は、ウチと総診センターで何某かのご相談に乗ることができますので、躊躇されず是非ご相談にお越しください!

で、学生さんとたくさんツーショット撮ることができましたが、学生さんの携帯で写真を撮ってその後エア泥でもらい損ねた人が数名居られまして、是非メールなりDMなりでお送りいただけましたら喜びます!!

もらえた方のお写真をいくつか。ちなみに顔を隠すのに、以前は黒丸で塗ったりしていたのですが娘たちから「ありえん!ハートで隠して!!」とご指導を受けましたので、ハートで隠してみました!いかがでしょうか?

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posted by 長尾大志 at 12:10 | Comment(0) | 日記

2025年03月13日

令和6年度島根大学学位授与式

本日午前中は令和6年度島根大学学位授与式が執り行われました。

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それに先立ちまして、国試後海外組の方からお土産等を頂きました!ありがとうございます!!

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私は昨年から参加資格を得まして?参加させていただいておりますが、なんというか、華美ではないというか落ち着いているというかあっさりしているというかなんというか……でも保護者席は結構にぎわっていまして、よかったと思います。皆様ご卒業おめでとうございます!!明日は医師国家試験合格発表ですね!

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posted by 長尾大志 at 17:57 | Comment(0) | 日記

2025年03月12日

真菌症のちょっとしたこと8・抗真菌薬について

抗真菌薬はかつて(大昔は)フルコナゾールとアムホテリシンBだけ、みたいな状況でしたが近年では新しいものが使えるようになりまして、数も増えて参りました。使い分けは比較的ハッキリしているので、整理しておきましょう。

ミカファンギン(MCFG;ファンガード Ⓡ  )
カスポファンギン(CPFG;カンサイダス Ⓡ )
昨今よく使われているように思いますが、その主な理由は、副作用が少なく、併用注意もない、つまり何も考えなくても安全に使えるからではないかと思います。特に専門外の先生にとっては、何も考えずに使えるというのはポイントが高いため、頻用される傾向にあります。ただ、効果という点においては、カンジダにはいいが、カンジダ以外にはお勧めできません。

ところでカスポファンギンのメーカー(MSD)は「関西ダス」だの「効いとるんだ(キイトルーダレジスタードマーク)」だの……。

フルコナゾール(F-FLCZ;プロジフ Ⓡ 、FLCZ;ジフルカン Ⓡ )
カンジダ、クリプトコッカスによく、髄液移行も良好です。予防投与を含め、よく使われていますが、アスペルギルスには無効です。

ボリコナゾール(VRCZ;ブイフェンド Ⓡ )
カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカスに効きますが、接合菌には効きません。アムホテリシンBより副作用が少なく、効果もアムホテリシンBと同等以上とされ、アスペルギルス症に対する第一選択になっています。

ボサコナゾール(PSCZ;ノクサフィル Ⓡ )
アスペルギルスに加えて接合菌にも効く、新しい広域抗真菌薬ですが、いずれの菌に対しても第一選択薬を上回るものではなく、副作用で使えないときや無効時の代替薬としての役割、それに深在性真菌症の予防目的での役割が中心となっています。

イサブコナゾール(ISCZ;クレセンバ Ⓡ )
2024年12月現在の最新抗真菌薬で、最強というか最広域スペクトラムを持ちます。接合菌もそうですしCandida aurisという耐性菌にも効果があります。すなわち抗真菌薬のカルバペネム系的立ち位置になるでしょうか。副作用も比較的少なく、使いやすい、ということは裏を返せば、「大切に使うべき薬剤」ということになります。狙いを絞ってピンポイント攻撃的に使っていただきたいところです。

イトラコナゾール(ITCZ;イトリゾール Ⓡ )
カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカスに効きます。当初カプセル剤しかなく、血中濃度が上がらず全然効かなかったことから、印象があまりよくなかったのですが、注射剤、内用液の登場で使いやすくはなっています。しかし、どの菌に対しても第一選択薬があり、こちらは併用注意が多かったりして、相変わらず考えて使う必要がある状況です。そのためあまり使われることはなくなっています。

アムホテリシンB(L-AMB;アムビゾーム Ⓡ 、AMPH;ファンギゾン Ⓡ )
接合菌までカバーするスペクトラムの広さと、殺菌力の強さ、それと引き替えの毒性の強さから、使用するには習熟が必要な薬剤でしたが、リポソーム製剤のL-AMBが出現してからはかなり使いやすくなったと思います。
副作用ではInfusion reaction(投与関連反応)と電解質異常(低カリウム血症、低マグネシウム血症、低カルシウム血症)、腎障害が有名です。腎障害は不可逆性ですから注意が必要です。

フルシトシン(5-FC;アンコチル Ⓡ )
古来からある薬ですが、単独使用では耐性となりやすく使用する場面は限られていて、クリプトコッカス髄膜炎のときにアムホテリシンBと併用する、というくらいです。

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posted by 長尾大志 at 18:23 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2025年03月11日

真菌症のちょっとしたこと7・アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)

アレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis:ABPM)は、以前アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosis:ABPA)と呼ばれていましたが、アスペルギルス以外の真菌によっても同様の病変が見られることがわかり、現在ではABPMという呼び名が一般的です。

そんなABPMは、感染症とアレルギー疾患の両方の性格を持っています。そのため、教科書でも載せるところに困っていたり、変なところに載っていたりします。そのせいか、なじみが薄く、よくご存じない人が多いように思います。

ABPMの病態としては、気管支の中に粘液栓の形で住み着いているアスペルギルスのかたまりに対してアレルギー反応が起こっている、こう考えるとわかりやすいですね。

診断基準についてはこれまで紆余曲折、といいますか、なかなか決定版といえるものがなかった感がありますが、2019年に日本から提唱された診断基準(論文掲載は2021年)が、特に日本におけるABPMの診断には妥当なものではないかと考えます(J Allergy Clin Immunol. 2021 Apr;147(4):1261-1268.)。

ABPMの臨床診断基準(6項目以上で診断確定、5項目で疑い)
1)喘息の既往または喘息様症状あり
2)末梢血好酸球数(ピーク時)≧500/μL
3)血清総IgE値(ピーク時)≧417IU/mL
4)糸状菌に対する即時型皮膚反応あるいは特異的IgE陽性
5)糸状菌に対する沈降抗体あるいは特異的IgG陽性
6)喀痰・気管支洗浄液で糸状菌培養陽性
7)粘液栓内の糸状菌染色陽性
8)CTで中枢性気管支拡張
9)粘液栓喀出の既往あるいはCT・気管支鏡で中枢気管支内粘液栓あり
10)CTで粘液栓の濃度上昇(high attenuation mucus:HAM)

症状は、喘息様の発作があり、末梢血好酸球も増えます。ですので、治療はアレルギー反応を抑えるためのステロイド投与、となるわけです。それで症状が治まり、粘液栓が分解されてアスペルギルスが出ていってくれれば一件落着ですが、体内にアレルゲンがあったわけですから、一時的に軽快してもまた増悪、というパターンも見られます。アスペルギルスがしつこく居座る場合は、抗真菌薬の投与を行うこともあります。

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posted by 長尾大志 at 16:40 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2025年03月10日

病気がみえるvol.4 呼吸器第4版の監修/島根県臨床工学技士会呼吸療法セミナー

医学生の聖書?ともいわれている「病気がみえるvol.4 呼吸器第4版」発刊となりました!

不肖長尾も関わらせていただいております。思えば初めての監修では「症候」の項10ページのみの担当でしたが、今回は「呼吸生理」「酸塩基平衡」「症候」「動脈血液ガス分析」「肺拡散能検査」の32ページ、それに特典コンテンツの「胸部X線写真読影クイズ」をお任せいただきました!あまりクレジットは目立ちませんが笑!!

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そして昨日は島根県臨床工学技士会さんの第6回呼吸療法セミナーにて、呼吸生理からの〜酸素療法のお話、それにメディカルスタッフの方向けに胸部単純X線写真読影法のお話をさせて頂きました!

他には松江赤十字病院の認定看護師さんによるフィジカルのお話、フクダライフテックさん、日本光電さんによる実地のお話があり、個人的に結構勉強になりました!

このたびお声がけいただきました島根県臨床工学技士会の日野様、岡田様、ならびにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました!!

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posted by 長尾大志 at 11:34 | Comment(0) | 活動報告

2025年03月09日

真菌症のちょっとしたこと6・アスペルギローシス

アスペルギローシスは深在性のアスペルギルス症で、正式には侵襲性アスペルギルス症と呼ばれます。全身的に好中球がいなくなるような、免疫力が低下した状態で、肺や他の臓器の中に直接菌糸が入り込んできます。

「免疫力が低下した状態」というのは、とにかく好中球減少なのですが、それ以外には次のような場合が挙げられます。

•ステロイド大量長期投与
•免疫抑制薬投与
•既存の肺病変
•低栄養
•糖尿病
•ADL低下

好中球減少以外の状況では、T細胞の働きが弱っている場面で起こりがちです。冒される臓器は、まず進入する肺から、血行性に全身に及びます。

好中球減少患者さんの病変部では血栓や梗塞を作り、それによる出血や浮腫を反映したhalo signがみられ、特異的所見といわれています。また、好中球数の回復とともに、好中球が壊死組織を処理して病変部に空洞ができ、air-crescent sign(前項のアスペルギローマとは機序がちょっと異なります)がみられます。

侵襲性アスペルギルス症は免疫能が落ちた方に起こるため、気管支鏡など、検査が困難であることも多く、生前診断がつきにくい疾患であります(剖検で診断されることが多いわけです)。

幸いボリコナゾールやL-AMBなど、強力な治療薬が使えるようになっていますから、疑わしい症例には逡巡することなく治療を始めるべきです。

アスペルギローマと侵襲性アスペルギルス症の間のような、「慢性壊死性肺アスペルギルス症」という病態もあります。これは侵襲性アスペルギルス症ほどではない、軽度の免疫低下がある患者さんに起こるものです。アスペルギローマとは異なり、肺実質に浸潤していきますが、進行は比較的ゆっくりです。

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posted by 長尾大志 at 16:11 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2025年03月08日

真菌症のちょっとしたこと5・アスペルギローマ

アスペルギルスは真菌ですから、空中に胞子が浮いています。それを吸い込んで体内に入る。アスペルギルスは好中球に弱いので、通常の免疫力がある人、つまり好中球がちゃんと働いている人で感染が成立し発病することはありませんが、何らかの理由で好中球が働いていないと菌が増殖してきます。

結核や嚢胞性肺疾患などでできた空洞は空っぽなので、好中球もいません。そのため、その場にはアスペルギルスが生育することができるのです。生育した菌体はキノコのようなかたまり(菌球fungus ball)を作り、空洞いっぱいになるまで発育します。そうやってできたアスペルギルスのかたまりをアスペルギローマといいます。〜omaとは、「かたまり」を意味します。

空洞の外は血流があり、好中球がウロウロしていますから、アスペルギローマが空洞の外にはみ出して発育することは通常はありません(全身の免疫力が低下しているような状態ではあり得ますが)。

キノコ成分が空洞を埋めてくると、残存している空気部分が三日月状になり、 air-crescent sign と呼ばれる状態になります。クレッセント(crescent)は三日月の意味で、クロワッサンの語源でもあります。

まず結節・腫瘤ありきで、内容物が壊死して流れ出してできる、普通の空洞とはでき方が違いますので、機序と合わせて覚えておくと忘れにくいと思います。

アスペルギローマは無症状のことも多いのですが、血痰や喀血を来すこともあり、その場合は治療を要します。治療は切除が原則ですが、患者さんの状態によって、抗真菌薬を使うこともあります。出血のコントロールが難しくて手術も困難な場合、塞栓術で止血を図ることもあります。

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posted by 長尾大志 at 13:44 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2025年03月07日

真菌症のちょっとしたこと4・ニューモシスチス肺炎

β−D−グルカンが高値を示す真菌症のうち、緊急性が高いものとして、ニューモシスチス肺炎が挙げられます。
今どきの先生方はこの病原体について、最初から「ニューモシスチス・イロヴェツィー」として習っておられるでしょうが、私たちの世代では「ニューモシスチス・カリニ」と呼ばれていましたもので、カリニ肺炎と呼んでいました。

ニューモシスチス・イロヴェツィー(Pneumocystis jirovecii)は、かつては原虫ともいわれていたのが、ちょいと前に遺伝子解析で真菌と決着した、何とも曖昧な立ち位置の微生物です。

多くの哺乳類に感染するのですが、種によって固有のものが感染します。かつての名称であるニューモシスチス・カリニ (Pneumocystis carinii)が動物由来のものを示す名称となり、ヒト由来のものはニューモシスチス・イロヴェツィーと呼ばれるようになりました。

Jirovecはチェコ人の学者で、その名前が日本語で表記しにくいため、本によっては「イロベッチ」や「イロベチー」「ジロベチ」などいろいろです。そんなわけで、混乱を避けるべく、「ニューモシスチス肺炎」と呼ばれるようになったわけです。

ニューモシスチス肺炎の診断
ニューモシスチス肺炎は、HIV感染からAIDSを発症し、CD4 陽性Tリンパ球が減少した患者さん、あるいは膠原病やリウマチ性疾患でステロイド使用中の免疫抑制状態にある患者さん、血液腫瘍や骨髄・臓器移植後の患者さんに発症します。要はT細胞免疫が低下している患者さんですね。逆にそうでない患者さんではあまり考える必要がないともいえます。

他の真菌症と比べてもβ−D−グルカン値は高めで、両側すりガラス影(地図状の分布)、A-aDO2開大(著明な低酸素)、LDH高値などの特徴的所見がみられます。

確定診断には、気管支鏡によるBALで菌体を直接検出したり、PCRでDNAを検出したりします。が、低酸素のため施行できないことや、施行しても検出できない(偽陰性)ことも少なくありません。そのため、上記のリスクがあってβ−D−グルカン高値、特徴的なCT像を見たら治療を開始することも多いです。

ニューモシスチス肺炎の治療
治療は、大量のST合剤+ステロイドを3週間投与します。ステロイドを使うのは、呼吸不全の治療(予防)の意味合いがあります。

バクタ 12錠 分3 経口
呼吸不全を伴う重症の場合 プレドニゾロン 80mg分2(最初の5日)40mg分1(次の5日)20mg分1(残りの11日間)

β−D−グルカンは、ニューモシスチス肺炎の診断には大変役立つのですが、治療をして菌量が減ったからといって、すぐには低下しません。ですから、β−D−グルカンは治療経過を追うには不向きであると思っておきましょう。発症していないリスクのある患者さんで定期的に測定し、上昇がみられたらすぐ検査・治療、というのは推奨される使い方だと思います。

治療の効果判定には、酸素飽和度や呼吸数、LDH値や炎症反応といったものが参考になります。胸部X線写真は、そもそも病初期やすりガラスの濃度によっては見えにくいこともありますし、見える症例でも治療によって必ずしもすぐには反応しないこともあります。X線写真がきれいになっていないという理由で治療を何週間もダラダラ続けることのないようにしましょう。

また、サイトメガロウイルス肺炎がしばしば合併し、かつ悪化の原因になっているといわれています。特に免疫抑制剤を使用している患者さんでは、C7-HRPなどを定期的にチェックすべきです。

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posted by 長尾大志 at 09:28 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2025年03月06日

真菌症のちょっとしたこと3・β-D-グルカンのこと

若いドクターは皆さん、検査が大好きですね。患者さんのところへ行くよりも、PCの前でカタカタやっています。だもんで、あまり感度とか特異度とか考えず、じゅうたん爆撃的に検査をオーダーして、なんか結果が出たら考える、みたいな光景をよく見かけます。

悪性腫瘍疑いや膠原病などの場合が多いでしょうか。本来、身体所見や生検などで診断の目星がついてから血清学的診断に行くもんだ、と旧世代の私なんぞは思うのですが、もちろん微小な癌など検査でないと捉えられない病変もあるわけで、検査至上主義を頑なに批判は出来ないところではあります。

真菌症の分野でいうと、β−D−グルカンという血清診断法があります。これは真菌の細胞壁に含まれる物質で、真菌による侵襲性病変のある患者さんで血中濃度が上がるというものです。で、「測ってみたらβ−D−グルカンが高値。さあ何だろう?」となるわけです。

検査をオーダーするときは、「この数字が異常値をとれば、こうである可能性がある」という見込みがあってオーダーして欲しいものです。何となくとか、上の先生に言われたからとか、いろいろ突っ込みを入れたくなるような根拠でオーダーされていることも多いのですが……。

とりあえず、β−D−グルカン高値になったとしましょう。じゃあカンジダでしょうか? アスペルギルスでしょうか? ここでもやはり、患者さんの背景によって、何が疑わしいか、何の可能性があるかを考えておく必要があります。

深在性のカンジダ症を疑うべき状況
•カテーテルが留置されている
•繰り返し広域抗菌薬を使用されていた
•絶食/中心静脈栄養
•腹部手術、穿孔の病歴
•糖尿病や透析
•悪性腫瘍があり、化学療法を受けている
•白血球(好中球)減少

起こっている事象としては、菌血症や膿瘍などが挙げられます。

深在性のアスペルギルス症を疑うべき状況
•好中球減少
•ステロイド大量長期投与
•免疫抑制薬投与
•既存の肺病変
•低栄養
•糖尿病
•ADL低下

一般的に好中球やT細胞の働きが弱っている場面で起こりやすいです。冒される臓器は、まず侵入する肺から、血行性に全身に及びます。

ニューモシスチス肺炎を疑うべき状況
呼吸器領域ではこれが一番重要かもしれません。リスク要因としては、以下のようなものがあります。
•HIV感染症(AIDS発症後)
•膠原病・リウマチ性疾患に対するステロイド長期投与
•膠原病・リウマチ性疾患に対する免疫抑制薬投与
•骨髄・臓器移植後
•血液疾患
•悪性腫瘍(長期間の抗腫瘍薬投与)

他の真菌と比べてもβ−D−グルカン値は高めで、両側すりガラス影(地図状の分布)、A-aDO2開大(低酸素)、LDH高値などの特徴的所見がみられます。

以上を逆に考えると、そもそも上に挙げたような(カンジダ、アスペルギルス、ニューモシスチスの)リスクがある場合に限り、β−D−グルカンを測るべきなのです。

あと、真菌といえばクリプトコッカス、ムーコル(ムコール)なども思いつくかもしれませんが、これらの真菌ではβ−D−グルカンの上昇はみられにくいので、注意が必要です。厳密にはクリプトコッカスの細胞壁にも少量ながらβ−D−グルカンは含まれているので、上昇しないこともないそうです。

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posted by 長尾大志 at 22:02 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2025年03月05日

間質性肺疾患について、改めてまとめ28・その他のびまん性肺疾患 ❸慢性好酸球性肺炎(CEP)

慢性好酸球性肺炎(chronic eosinophilic pneumonia:CEP)は、教科書を見ると急性好酸球性肺炎(AEP)とは別物、ということが強調されています。

イメージとして、AEPは「急な呼吸不全で、うっ血に似た画像所見」という臨床像であるのに対して、CEPは「器質化肺炎に似ていて、炎症の主体が(リンパ球の代わりに)好酸球」と考えるとわかりやすいと思います。

CEPは「慢性」という名前がついていますが、発症が比較的急性なものもあり、病初期にはAEPと画像でしか鑑別できないこともあります。臨床的には喫煙のエピソードが関係ないとか、呼吸不全が少ない、というあたりがAEPとの違いです。

画像所見では、古典的に言われている「逆肺水腫像」「逆バタフライ像」、つまり中枢でなくて末梢優位の浸潤影が特徴的です。

肺胞洗浄液の好酸球分画は、AEP同様増加しています。明確な診断基準はありませんが、30%をカットオフ値としてあることが多いようです。

診断は、要するに好酸球が増多していて(末梢血か肺局所で)、典型的な画像で、他疾患を除外できれば診断可能です。

治療はステロイドを用います。好酸球メインの炎症で、ステロイドがよく効きます。予後は良好ですが、「慢性」というだけに減量中に再燃したりします。

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posted by 長尾大志 at 20:58 | Comment(0) | 間質性肺疾患シリーズ

2025年03月04日

間質性肺疾患について、改めてまとめ27・その他のびまん性肺疾患 ❷急性好酸球性肺炎(AEP)

急性好酸球性肺炎(acute eosinophilic pneumonia:AEP)とは、肺内に好酸球が一気に出てきて、肺胞領域と間質(小葉辺縁)に浮腫、うっ血様所見が生じる病態です。

胸部X線やCT上、うっ血に似た広義間質の肥厚像、胸水などが特徴です。うっ血との鑑別は画像ではしばしば困難ですが、病歴、身体所見や心拡大がみられることは少ない点が鑑別のポイントになります。

肺胞内に好酸球が増えますので、気管支肺胞洗浄液の好酸球分画が増多します(好酸球分画≧25%)。初期には肺局所に好酸球が集中するので、末梢血の好酸球分画は増えないことも結構あり、そのうちに末梢血の好酸球も増えてくる、という感じです。

逆に、末梢血の好酸球が高値であれば、体内の好酸球がよっぽど増加しているということになりますので、それらしい陰影があれば好酸球性肺炎を疑う根拠になります。

特徴的な病歴として、煙草を初めて吸いはじめ、しばらく(1〜2週間)してから発症、というケースが多く報告されています。また、しばらく止めていた人が久しぶりに吸い出しても発症したりします。このあたりがなんともアレルギーっぽいですね。

診断としては、下記の項目を満たすことで診断されます。
•急速な発症で、発熱を伴う呼吸不全を来たし、
•両側びまん性のすりガラス影 + 広義間質の肥厚像、胸水があり、
•肺の好酸球増多が証明され(肺胞洗浄液で好酸球分画≧25%、または生検で肺への好酸球浸潤を証明)、
•その他の好酸球増多を来しうる肺疾患が除外できること

治療はステロイドを用います。ステロイドを用いると一気に好酸球はどこかに隠れてしまい、割とすぐに治療効果が得られます。線維化はほとんどなく、予後は良好です。

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posted by 長尾大志 at 22:00 | Comment(0) | 間質性肺疾患シリーズ

2025年03月03日

3月行脚報告会

トリプルヘッダー、2発目は「3月行脚報告会」。

行脚って何?これは島根地域医療支援センター協賛による企画なのですが、島根県下の総合診療医が在籍している病院、お互いのことをもっと知らねば、知るべき、ということで若手の先生がお互いの施設を訪問してレポートし、お互いの理解を深めよう、という企画です。

また、本学卒業生で今は東京におられて感染症専門医をされているF先生にお越しいただき、東京での医師生活、将来島根に戻ろうというお考えのお話を聴かせていただきました。

対象は医学生、初期研修医、若手医師、地域枠に関連する医師・自治体職員の皆様でした。

結構盛りだくさん、お話も盛り上がり、2時間の予定は軽くオーバーしてしまいましたが、皆さんいろいろと得るところがあったようです。主催のH先生、U先生、そしてK先生、ありがとうございました!

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posted by 長尾大志 at 20:09 | Comment(0) | 日記

2025年03月02日

出雲クロワッサン番付(選手権)

昨日はトリプルヘッダーでバタバタしておりましたが、その分充実の1日でした。

まずはお昼前から、出雲クロワッサン番付(選手権)、早5、6回目になりました番付(選手権)なんですが、今回ご覧の通り純粋なクロワッサンだけで競われたわけではなく、クロワッサンオザマンドというアーモンドクリームを絡めたやつ、それが大好きで、各店の比較をしたかったんですが、出雲で2店しか見つけられずこんな感じになりました。

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まず今回の目当てである OLDNINECROISSANT に行ってみると、ヤバいですね。美味しそうなクロワッサンが山ほど。でついついテーマ?と関係ないこちら、バイカラーなる商品を買ってしまって、これが大失敗。イヤ美味しくなかったんじゃなくて、美味しすぎてというか風味が強すぎて、次に食べたものが味気なく感じられたわけです。

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ということで 森のくまさん 、プレーンクロワッサンです。甘さ控えめ、側パリパリ、味薄め。バターやジャムなどと合わせることを想定されているのでは?という感想でしたが、中のバターはよく効いていて、食べる順番を間違えた感が強かったです。

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金糸糸雀(カナリア)口に入れた瞬間、ふわっとバターの風味が広がり香ばしい。側はパリパリ、中はかなり柔らかいですね。食事として食べたい、お菓子ではない。ただあっさりした森くまとは異なり、これはしっかり濃厚にバターの味がついていて、ジャムと合わせないほうがいいという意見でした。

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そして本命、オールドナインクロワッサン、もちろんしっかりアーモンドの味が付いています。中のペーストもおいしいですね。さすがです。

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さあ、それで今回の目当てである、シュブスタンス 。オールドナインクロワッサンとの違いを確認したいです。一口目はまずシナモン感がどっと入ってくる感じ。甘みが強いです。なんとなくりんご感もありますがこれはシナモン風味と洋酒風味が相まっているのでしょうか。ザクザクごろっと感が強くて、クロワッサンの食感というよりはではなく別物になっている。ケーキ屋さんのスイーツと言う認識がよろしいでしょう、という結論でした。

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今回は番付(選手権)というにはエントリーが少なく、限られた知見しか得られなかったため、正式なものとは違う感じになりましたが、楽しいのは楽しかったですね。またやりましょう!

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posted by 長尾大志 at 23:35 | Comment(0) | 日記

2025年03月01日

『レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室<第4版>』発売日(だいたい)決定&予約開始!!

お待たせしていたのか、お待たせされていなかったのか、ともかく『レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室<第4版>』の発売が4月に間に合いました!!

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第3版から4年が経過しようというところで改訂のお話を頂いたのですが、当初は「ガイドラインが変わったところだけ」改訂するつもりが、以前の文章を読んでいくと書き換えたいところがどんどん出てきて、項目も取捨選択したくなって、結果的にどえらい量の改訂となってしまい、編集さんをどえらくお待たせしてしまいました……。

今回改訂の最大のポイントは「スリム化」です。やはり第3版で分厚くなり過ぎた……そしてずっと気になっていた「レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室 第2版」との重複についにメスを入れることができました。

既にお気づきの方も多いかと存じますが、ここ最近の記事群の多くは改訂に際して書き下ろし、あるいは書き換えたものになります。なんとなくではありますが記載の変化を感じて頂けますと幸いです。

チョット目次をご覧いただきましょう。

第1章 呼吸器の基礎知識
(1) 肺の解剖と低酸素の原理
(2) 呼吸器の診察法
(3) 呼吸器領域で使われる略語
(4) ウィズコロナ時代の咳の鑑別
(5) 咳の鑑別に必要な胸部画像の知識
(6) 肺の防御機構と痰
(7) 血痰・喀血・肺胞出血

いきなり第1章はガラッと構成を変えました。最初にめちゃくちゃ大事な解剖と呼吸生理をおき、そこからの流れで診察、そして最初に(実習・研修前に)眺めておきたい略語集を配置しました。それからやはり咳、痰、血痰・喀血の鑑別と並べています。

第2章 呼吸器の検査
(8) フローボリューム曲線を理解する
(9) 動脈血ガス分析
(10) A-aDO2のややこしい話
(11) 気管支鏡について

第2章は改訂の必要が少ないところでしたが、初心者向けに表現を整えました。

第3章 ガイドラインに基づく肺炎診療
(12) 肺炎診療の基本的な考え方
(13) 市中肺炎
(14) 医療・介護関連肺炎、院内肺炎
(15) 抗菌薬の種類と特徴

第3章はガイドライン改訂と自分の解像度が高まったことでガラッと変わっています。結構ここは記事にもなっておりますので、ご興味ある方はこのブログの「肺炎ガイドライン解説」をご覧ください。

第4章 その他の感染症
(16) インフルエンザ・COVID-19
(17) 長い長い結核の話
(18) 非結核性抗酸菌症
(19) 真菌感染症とニューモシスチス肺炎

第4章、こちらもなんやかんやで結構書き換えましたね。COVID-19が入り、結核、非結核性抗酸菌症の治療も更新されています。抗真菌薬も新薬が加わりました。

第5章 間質性肺疾患
(20) 特発性間質性肺疾患
(21) 特発性でない間質性肺疾患

こちらもガイドラインに合わせて、言っている苦言?を書き換えています……。最近の記事をご覧いただけるとある程度のことは書いております。書籍はもっと踏み込んだ表現にしていますが。

第6章 閉塞性肺疾患
(22) COPD
(23) 喘息
(24) 吸入療法

ここもけっこう書き換えました。新薬もたくさん出ましたし。

第7章 呼吸器疾患の治療
(25) 酸素療法
(26) 気胸・胸水・ドレナージ・局麻下胸腔鏡
(27) 癌化学療法

癌化学療法はどんどん上書きされますので書籍にはしにくいところです。今回も原則のところに力を入れました。

日本医事新報社さんのHPでは序文もお読みいただけます!ご予約も可能です!!⇒
https://www.jmedj.co.jp/book/search/detail.php?id=2515

amazonでも予約開始されています!!⇒
www.amazon.co.jp/dp/4784943757

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posted by 長尾大志 at 18:32 | Comment(0) | 活動報告

2025年02月28日

間質性肺疾患について、改めてまとめ26・好酸球性肺疾患

好酸球性肺疾患は、間質性肺炎に含まれるような、含まれないような、教科書によっていろいろな範疇に属する、あいまいな立ち位置の疾患であります。

細かいことを論じ出すとどんどんややこしくなるので、シンプルに定義しておきましょう。要は、好酸球主体の炎症が生じている肺炎、好酸球による肺への浸潤がみられている病態を総称して好酸球性肺炎、といいます。

分類は、教科書を見ますとまあいろいろ書いてあります。原因別に疾患群を分類してみましょう。

原因が明らかな好酸球性肺疾患
•寄生虫、寄生虫以外の感染症
•アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)
•薬剤、中毒物質、放射線によるもの

原因不明の(特発性)好酸球性肺疾患
•特発性好酸球性肺炎:急性好酸球性肺炎、慢性好酸球性肺炎
•全身疾患に伴うもの:好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、好酸球増多症候群

その他の好酸球増多を来しうる肺疾患
•過敏性肺炎
•気管支喘息、好酸球性気管支炎
•特発性肺線維症
•剥離性間質性肺炎
•器質化肺炎
•ランゲルハンス細胞組織球症
•肺移植後
•その他(サルコイドーシス、悪性腫瘍、血液疾患など)

このように、原因の明らかなもの、原因の明らかでないものから他の肺疾患まで、さまざまな病態を含んだ、何とも広範な疾患概念であります。ただ、いずれも好酸球が増える炎症であるという点に焦点が置かれています。

このうち、全身疾患としての好酸球増多でなく、肺の好酸球増多として是非知っておきたいのは急性好酸球性肺炎、慢性好酸球性肺炎。それにABPMあたりかと思います。急性好酸球性肺炎と慢性好酸球性肺炎は、急性と慢性というだけではなく、随分異なる臨床像を呈していて、別物であると考えられています。

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posted by 長尾大志 at 10:44 | Comment(0) | 間質性肺疾患シリーズ

2025年02月27日

間質性肺疾患について、改めてまとめ25・特発性でない間質性肺疾患・過敏性肺炎の診断

ガイドラインでは各方面に配慮した?結果、とにかくMDDで決めましょうということになっています。典型的でないものはグラデーションが大きすぎてMDDに丸投げ?せざるを得ない、という感じでしょうか。

HPの診断手順として、まずは曝露の評価とHRCT所見を確認し、それからBAL、TBLBへと進みます。
HRCT所見を、非線維性HPはTypical HP、Compatible with HPの2つに、線維性HPはTypical HP、Compatible with HP、Indeterminate for HPの3つに分類します。

非線維性HP
・Typical HP:肺野病変はすりガラス陰影、モザイクパターンがあり、細気管支病変として境界不明瞭な小葉中心性粒状影、呼気CTでのair trappingがある。分布はびまん性で肺底部がスペアされる場合もある。

・Compatible with HP:肺野病変は均質で軽微なすりガラス陰影、コンソリデーション、薄壁嚢胞が散在する。分布は基本的にびまん性で、下肺野優位の場合もある。また気管支血管束周囲優位の場合もある。

線維性HP
Typical HP:構造改変を伴う不整な線状・網状影で構成された肺の線維化病変。分布はランダムが多いが比較的肺底部がスペアされる傾向にある。細気管支病変を示唆する所見として境界不明瞭な小葉中心性粒状影/すりガラス陰影、モザイクパターンなど。

Compatible with HP:typicalとは異なる肺の線維化病変で、IPFガイドラインのUIP相当、もしくは広範なすりガラス陰影に軽度の線維化病変。分布のバリエーションとして胸膜下、気管支血管束優位、上肺野優位というものがある。細気管支病変を示唆する所見もある。

Indeterminate for HP:肺の線維化病変単独で、UIPパターン、Probable UIPパターン、Indeterminate for UIPパターン、Fibrotic NSIPパターン、Truly indeterminate for HRCTパターンがある。

曝露が特定されて典型的HRCT像(Typical HPパターン)があり、BALFリンパ球増多(20%以上)があれば、(MDDを経て)過敏性肺炎「高確診」例となっています。ひとまず非専門医の先生方はここまでやっていただけるといいのではないでしょうか。

そこで曝露、HRCT、BAL、TBLBその他すべての所見を統合しても診断不明である場合、さらにMDDを経て、またTBLCやSLBでさらに大きな病理検体を得ることを試みて、改めて診断を再検討します……専門医に丸投げください……。

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posted by 長尾大志 at 17:07 | Comment(0) | 間質性肺疾患シリーズ

2025年02月26日

第119回医師国家試験問題解説・E48 喘息患者さんの対応

E48
β2刺激薬の吸入を行ったが呼吸困難と喘鳴が改善しない.
次に静脈内投与すべき薬剤はどれか.
a アトロピン
b ジアゼパム
c フロセミド
d アドレナリン
e グルココルチコイド

こちら、喘息単独だと易問になるため、認知症と絡めることで、また薬剤名を選ばせることで少しでも難易度を上げようということですが、あまり奏功したようには見えませんね。

それはさておき、こういう選択肢から今後また別の問題が作成されますから、アトロピン、ジアゼパム、フロセミド、アドレナリンについてもどのようなときに使われる薬剤であるか、確認しておきましょう。
正解:e グルココルチコイド

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2025年02月25日

第119回医師国家試験問題解説・E47・48 認知症患者さんの対応

最近、臨床実習で患者さんや現場をちゃんと見なさいよ!というメッセージ性のある問題が増えていて、この手の問題もここ数年でよく見かけますね。認知症とナニかを抱き合わせて連問にするやつ。

これを「呼吸器の問題ですよ」といわれてもなあ、という気もしますが、逆に誰もが解けるべき問題でもあります。やはり認知症患者さんは現場でめっちゃ増えてますし、国家試験が終わって初期研修が始まれば、そういう方に対応する必要も出てくるわけで、そういう意味でもこちらは必修!といってもいいでしょう。

そのつもりでE47を見ると、実は別にそれまでの臨床情報はいらんというか、認知症、という情報だけでいいくらいですね。

E47
認知症患者の前腕から静脈投与を行う.静脈留置針の自己抜去を防ぐために行う対応で適切なのはどれか.
a 薬剤は持続点滴で投与する.
b 両上肢を抑制帯で固定する.
c できるだけ太い留置針を用いる.
d 夜間も患者周囲の照明をできるだけ明るくする.
e 患者から見えないように寝衣の袖の中に点滴ルートを通す.

それで考えると、認知症患者さんにせん妄の原因になるような余計な刺激は与えたくない。出来るだけ点滴は短い時間で、つながっている時間を短くしたいし、抑制なんか却って刺激になるし、留置針は細い方がいいだろうし、昼夜のメリハリはつける方がいいだろうし、ルートが目立たない、見えにくい方がいいだろうし。とまあごく普通に考えると正解はeとわかりますね。

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2025年02月24日

第119回医師国家試験問題解説・E47・48 認知症と気管支喘息

次の文を読み,47,48の問いに答えよ.

75歳の女性.呼吸困難を主訴に救急車で搬入された.
現病歴:8年前に認知症と診断され,現在は直前の出来事も記憶していない.1週間前から咳嗽が増加し,市販の咳止めを内服したが改善しなかった.昨夜から呼吸困難が強くなり,喘鳴が家族にも聴取できるようになった.かかりつけ医に処方されていた吸入薬を使用したが今朝になっても改善しないため,家族が救急車を要請した.
既往歴:認知症のほかに,40歳時から気管支喘息で発作時の吸入薬を処方されている.
生活歴:喫煙歴と飲酒歴はない.
家族歴:父が80歳時に脳梗塞で死亡.母が65歳時に胃癌で死亡.

現症:ベッド上で仰臥位となっている.会話は可能だが見当識に関連する質問には回答できない.身長143cm,体重46kg.体温36.6℃.心拍数92/分,整.血圧146/68mmHg.呼吸数20/分.SpO2 99%(マスク5L/分 酸素投与下).頸静脈の怒張を認めない.口腔内と咽頭とに異常を認めない.両側全肺野で呼気時にwheezesを聴取する.腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない.四肢に浮腫を認めない.

検査所見:尿所見:蛋白(−),糖(−),ケトン体(−),潜血(−).血液所見:赤血球452万,Hb 13.8g/dL,Ht 41%,白血球5,440(好中球43%,好酸球12%,好塩基球1%,単球6%,リンパ球38%),血小板21万.血液生化学所見:総蛋白7.3g/dL,アルブミン3.7g/dL,総ビリルビン0.5mg/dL,直接ビリルビン0.1mg/dL,AST 19U/L,ALT 10U/L,LD 230U/L(基準124〜222),CK 40U/L(基準41〜153),尿素窒素10mg/dL,クレアチニン0.6mg/dL,尿酸5.3mg/dL,血糖98mg/dL,Na 139mEq/L,K 4.2mEq/L,Cl 106mEq/L,Ca 8.9mg/dL,P 4.0mg/dL.CRP 0.4mg/dL.動脈血ガス分析(マスク5L/分 酸素投与下):pH 7.46,PaCO2 31Torr,PaO2 92Torr,HCO3− 21mEq/L.心電図で異常を認めない.胸部X線写真で異常を認めない.

E47
この患者の前腕から静脈投与を行う.
静脈留置針の自己抜去を防ぐために行う対応で適切なのはどれか.
a 薬剤は持続点滴で投与する.
b 両上肢を抑制帯で固定する.
c できるだけ太い留置針を用いる.
d 夜間も患者周囲の照明をできるだけ明るくする.
e 患者から見えないように寝衣の袖の中に点滴ルートを通す.

E48
β2刺激薬の吸入を行ったが呼吸困難と喘鳴が改善しない.
次に静脈内投与すべき薬剤はどれか.
a アトロピン
b ジアゼパム
c フロセミド
d アドレナリン
e グルココルチコイド

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2025年02月23日

第119回医師国家試験問題解説・C66、67 CTの所見と対応回答

C66はCTを読む問題で、気胸、大動脈解離、縦隔気腫、心囊液貯留、胸腔内液体貯留(胸水?血胸?)、といった、こちらの選択肢に挙がっているような所見に関しては、基本を押さえておきましょう。

出来れば胸部単純X線写真も併せておさえておきたいところですね。
ということで動画のご紹介、笑

気胸⇒
https://youtu.be/x7qy7V8x19M

縦隔気腫⇒
https://youtu.be/0xr2CCts_tA

胸水⇒
https://youtu.be/ON71ueKPDKM

ちなみにわざわざ「胸腔内液体貯留」という言い回しにしているのは、ただの胸水ではなく、外傷によって生じた胸腔内の出血=血胸、と考えられるからですね。

C67
行うべき対応はどれか.
a 経過観察
b β遮断薬投与
c 気管挿管陽圧換気
d 胸腔ドレーン挿入
e 非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉

出血が増えているので、対応として選択肢から選ぶとすればdでしょう。臨床の現場では手術も念頭においておく必要があるでしょうが……。

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