2018年07月17日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説11・市中肺炎10・集中治療室入室治療

集中治療室で全身管理が必要となるような、重症肺炎の代表的な原因菌は肺炎球菌とレジオネラです。ですが、エンピリックにいきます、というときにはその2つにターゲットを絞るのは危険でしょう。

重症、すなわち治療失敗が死を意味する、そういう場面においては、頻度はいささか低くても、緑膿菌を含むグラム陰性桿菌をもターゲットに含めた、広域抗菌薬を使うというのもやむを得ないところです。

ただし抗菌薬を使用する前に、必ずあらゆる培養をとる(喀痰、血液、尿など)。そうして得られた菌を確認してde-escalationをできるように準備する、ということが大事です。

エンピリック治療として挙げられるのが以下の5つの薬剤(の組み合わせ)です。いずれも注射薬になります。

  • A法|カルバペネム系薬(メロペネム、ドリペネム、ビアペネム、イミペネム・シラスタチン)またはβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(タゾバクタム・ピペラシリン)このいずれかの単剤療法

  • B法|第三世代セフェム系薬(セフトリアキソン、セフォタキシム)またはβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(スルバクタム・アンピシリン)の単剤療法(緑膿菌を考慮しない場合)

  • C法|A法またはB法とマクロライド系薬(アジスロマイシン)の併用療法

  • D法|A法またはB法とレスピラトリーキノロン系薬(レボフロキサシン)併用療法

  • E法|A法またはB法またはC法またはD法と抗MRSA薬(リネゾリド、バンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシン)の併用療法(MRSA 肺炎のリスクが高いと考えられる場合)


肺炎ガイドライン解説

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posted by 長尾大志 at 17:33 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月16日

ここ最近の活動リポート

先週からバタバタしておりまして、ブログ更新もなかなかままならなかったりしましたが、別にサボっていたわけではなくて、結構濃い活動が複数重なった、という次第でございます。

広島からの帰りで新幹線内で、少し時間がありますので、濃かったここ最近の活動を振り返りましょう。


6月23日(土)、岡山協立病院にて、胸部X線写真レクチャー。

6月26日(火)、近江八幡市蒲生郡医師会講演会にて、ACOの架け橋、じゃなくてACOのお話。

6月30日(土)、大阪赤十字病院にて、開業医の先生方向け、胸部X線のお話。

7月11日(水)、沖縄県立中部病院にて、胸部X線写真のお話+興味深い症例のご紹介でした。今思い出しても、中部病院を見学できたことは夢のような体験でしたし、やはり現地を訪れて、お話をする、ということの大事さを実感しました。ご縁があるところにはどんどん出かけていきたいな、と強く念願しております。

それにしても、中部病院では、(適々斎塾に代表されるような、あちこちの学生さんや研修医の先生方の勉強会で)見知った顔によく会いました。やはり、意識高い人は沖縄を目指すのか…。


7月12日(木)に戻って参りまして、7月13日(金)は5年生まとめと6年生の1週間まとめ、というか割と渾身の講義になってしまいまして、へとへとになりました。


7月14日(土)、VRチーム医療@洛和会音羽病院。前回同様、チーム対抗戦の臨床クイズ大会でしたが、今回から新機軸を導入しました。ネタバレになるので詳しくは申しませんが、音羽病院の土谷先生によるアイデアが冴えまくり、という感じでした。

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運営、進行もこなれてスムーズに進みますし、どう考えてもこれは1施設内にとどめておくにはモッタイナイ。「チーム医療」でありますから、初期研修医と看護師さん、それにできればPTさんや薬剤師さんでチームを組んで、病院対抗、みたいな感じでできないかなあ、と夢想しています。やるとしたら日本呼吸ケア・リハビリテーション学会(いや、日本呼吸器学会でもいいのですが)の地方会あたりで、意識の高い認定呼吸療法士の方中心でどうかなあ、とか、夢は広がるばかりです。

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夜のうちに広島へ移動、という私の都合に合わせて頂いて、山科駅前でお食事を頂きました。そのときに洛和会丸太町病院の上田先生のスーパーな伝説?も伺い、また、適々斎塾塾長の中西先生と、音羽病院の長坂先生のご関係なども伺うことができました。思いがけず、翌日からの適々斎塾予習になってしまいました。

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洛和会音羽病院の土谷先生、長坂先生、森川先生はじめスタッフの皆さん、参加者の皆さん、本当にありがとうございました。


7月15日(日)、いよいよ適々斎塾広島セミナーです。今回私の担当は、なかなか出だしすぐの枠にて「喘息」「COPD」の、「ガイドラインの向こう側」というテーマでのお話です。

タイミングよく?喘息のガイドライン、COPDのガイドライン、それにACO(Asthma - COPD Overlap)診療の手引き、が立て続けに出ましたので、新しいガイドラインの変更ポイントに触れながら、診療に役立つようなお話に絞って、できる限り考え方をシンプル化してお話をさせて頂きました。

自分の話はともかく、その後引き続きお話を頂いた、心不全、心房細動、HP感染、糖尿病、骨粗鬆症、関節リウマチのお話、これらは呼吸器専門○○になりつつある私にとって、大変ありがたいお話ばかりでした。

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夕方以降は懇親会。

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適々斎塾の皆さん、本当にあたたかく、雰囲気よく、こんな場でも症例クイズあり、塾生の先生のお嬢様方による出し物あり、あっという間に時間が経ってしまいました。

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16日も引き続きお勉強です。睡眠時無呼吸症候群、頭痛、認知症、慢性腎臓病、甲状腺疾患といったコモンな疾患たちのサマリーを頂きました。

今回は中西先生のお膝元、広島セミナーということで広島の先生方も多く参加されていましたし、講師陣も広島の先生方が多く、中西先生のエピソードも豊富に頂いて、すっかりこちらも参加者として楽しませて頂きました。ここまでの会を広島でなされるまでに、中西先生には数々のご苦労があったかと思いますが、これからもますますのご発展をお祈りするものであります。

私の出番の前、初っぱなの講演は中西先生の息子さんが担当されましたし、板金先生の息子さんは沖縄県立中部病院におられますし(偶々今回はお目にかかれませんでしたが)、沖縄に今おられる先生が以前大阪赤十字病院におられたり、雨森先生と中西先生が、来年の某学会でコラボ企画に私を巻き込んで頂いたり、岡山協立病院や福知山市民病院や、それ以外にもこれまで伺ったことのあるご施設の先生方とまたお目にかかったり、人のつながりをたくさん実感できたここ数週間でした。

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中西先生、板金先生、松村先生は、安田先生はじめ適々斎塾の先生方、本当にありがとうございました。

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posted by 長尾大志 at 21:54 | Comment(0) | 活動報告

2018年07月15日

VRチーム医療@音羽病院

今日(昨日)はVRチーム医療@洛和会音羽病院でした。それが終了して、その後広島入りし、すっかり更新できませんでした。明日(今日)は、適々斎塾@広島ですので、また更新できるかどうか…双方改めてレポートいたします。

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posted by 長尾大志 at 00:53 | Comment(0) | 活動報告

2018年07月13日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説10・市中肺炎9・入院治療2・補助療法

■ 補助療法

重症肺炎時にはサイトカインストーム(過剰な炎症によってサイトカインの嵐が吹き荒れる)が生じて肺胞上皮や肺毛細血管内皮の障害を来す、ということから、「炎症を抑える」ことを意識した補助療法が試みられてきました。

1つはマクロライド系薬で、集中治療室入室(つまり最重症)症例における選択肢の一つとして、「マクロライド併用療法」という形で反映されています。

もう1つはステロイド薬で、免疫力を低下させる懸念からこれまでにも議論の的になってきました。システマティックレビューのまとめによれば、

  • 生命予後に影響しない

  • 肺炎の治癒率を変えない

  • 重篤な副作用は増加しない

  • 入院期間が約1日短縮

  • 医療費や耐性菌の発生などは評価不能


であり、重症市中肺炎においては、弱く推奨する、ということになるようです。

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posted by 長尾大志 at 18:34 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月12日

沖縄県立中部病院の見学、およびコアレクチャー「線の使い方」

というわけで、昨日から沖縄弾丸往復、沖縄県立中部病院さんにお邪魔して参りました。

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思い起こせば医学部5年生だった(まだ若かった…)あのころ、沖縄県立中部病院に病院見学に伺いました。きっかけは…やはり「沖縄」だったから、かもしれませんが、遊び呆けていた私の心に、確かな楔が打ち込まれたのです。

当初は「産婦人科」枠での見学でしたが、割と自由時間が多く、明日どうしよう…となったときに、病院見学学生たちの宿にノートが置いてあり、先人たちが見学の感想や、後輩?たちへのアドバイスなどを書き記してあったのです。それを読むと、何人もの先人が、「宮城征四郎先生の回診を見るべし」「刮目せよ」「必須」と書かれていて、全くお名前も存じ上げなかった私は「どんな回診なんだろう?」と好奇心が湧き、翌日参加させて頂きました。

ご存じの方はおわかりだと思いますが、とにかくスゴかったのひとことです。病歴と診察でこんなに確かな診断ができるのか、と衝撃でした。

とはいえ、当時は卒業生のほとんどが出身大学の医局に入る時代。自ら飛び出して中部病院に行く、という度胸もなく、年月が過ぎ去り、いつしかCTと病理に明け暮れ、留学から還ってきた私を待っていたのは滋賀県における「教育」への取り組みでした。

学生さんや研修医の先生方に、確かな診断スキルを、興味を持ってもらえるように教えるには…自分でも試行錯誤をしていましたが、とある先生が持っていた宮城征四郎先生と徳田安春先生の書籍を見せてもらって、ビビビ!!と来たわけです。これだ、と。

それから中部病院関連の先生方の書籍、勉強会、講演会、それから「うふいち会」にも縁あって参加させて頂き、目指すべき目標はここにある!とばかりに学ばせて頂いたという次第です。昨年は喜舎場朝雄先生に、はるばる草津までお越し頂きました。


そんな沖縄県立中部病院で、レクチャーをするという……なんという僥倖!!…

ウチの卒業生であるヤマハル(ヤンバルではない)先生が中部病院で初期研修をすることになり、「いつか呼んでね!」と言っていたのが、まさか実現するとは…。

ということで昨日は、昼前に病院到着し…。

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呼吸器病棟の回診を拝見。感染症が多い!若い先生の勉強になる!

院内もご案内頂きました。とにかく先生方に温かく迎えて頂きました。abscessusが多いのにはビックリしました。また、もっと症例報告をしなくちゃ、と刺激を頂きました。

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沖縄県立中部病院出身の先生方、全国で活躍されてますよね。そして皆さんつながり、絆が深い、そんな印象がありましたが、現場を拝見してお話を伺って、その理由がよくわかりました。ウチでも真似できるところはないかなあ、と考えを巡らせております…。

そして夕方には、胸部単純写真の読影のポイントの解説、いくつか症例をご紹介させていただきました。

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なんとかご満足頂けたら幸いですが…。

その後、有志の先生方と沖縄風料理を満喫!とても楽しい夜を過ごせました。

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呼吸器内科の喜舎場先生、山城先生、根井先生、長野先生、そしてお声がけ下さったヤマハル先生、以前亀井道場の幹事でお世話になった加藤先生(彼以外にも、勉強会で顔なじみの先生方が何人も。さすがです)、それに参加されたすべての先生方、本当にありがとうございました。今回は弾丸でしたが、また是非伺いたいです。

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posted by 長尾大志 at 19:53 | Comment(0) | 活動報告

2018年07月10日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説9・市中肺炎8・入院治療1

一般病棟入院患者群に使われるのは、基本的には注射薬になります。細菌性肺炎が疑われる場合、

  • スルバクタム・アンピシリン

  • セフトリアキソンまたはセフォタキシム

  • レボフロキサシン



非定型肺炎が疑われる場合は

  • ミノサイクリン

  • レボフロキサシン

  • アジスロマイシン


の注射薬を使います。なお6項目の鑑別表を持ってしても鑑別が困難な場合、胸部CTを用いて気管支壁の肥厚や粒状影、すりガラス影を見たときにマイコプラズマを疑う、という方法も紹介されています。


さて明日は、聖地 沖縄県立中部病院への訪問です。緊張しています。更新はないかもしれません…。

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posted by 長尾大志 at 18:57 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月09日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説8・市中肺炎7・外来治療2・注射薬

■ 外来治療・注射薬

外来で、注射薬で治療しよう、ということになりますと、さすがに1日に何回も注射しに来院して頂く、というのは現実的ではありませんから、1日1回投与である抗菌薬を選択するのが原則となるでしょう。

かつては1日複数回投与が原則の(=1回投与した後、抗菌効果が素早く失われてしまう)、ペニシリンや普通のセフェム系薬を1回だけ注射して帰宅させる、ということが一般的に行われていましたが、もはやそういうことはいたしません。1日1回使用に根拠のある抗菌薬を使いましょう。

ガイドラインで挙がっているのは、1日1回投与薬である、

  • セフトリアキソン

  • レボフロキサシン

  • アジスロマイシン


です。

セフトリアキソンはセフェム系ながら血中半減期が長く、しかもBLNARにも効果があるため、市中細菌性肺炎にはなかなか強いです。ですが、逆に言うと、これに耐性がついてしまうとなかなか苦しいですし、一部嫌気性菌には弱い面もあります。ですから、決して何でもかんでも使うのではなく、BLNARの多い地域でH.influenzaeが疑われるような状況(喫煙者、COPD、比較的地味な発症など)に限って使いたいところです。

レボフロキサシン(キノロン系)やアジスロマイシン(マクロライド系)は、その特性上1回投与あたりの濃度を高くする(=1回投与量を増やす)ことが効果につながります。そのため1日1回投与になっておりますので、外来治療に適してはいるわけですが、こちらの系統は非定型肺炎を疑うときにお使い頂きたい、ということは既に申し上げているとおりです。

特にキノロン系は、非定型肺炎にも細菌性肺炎にも、ある程度効きますので、「何も考えたくない!」という方には大変向いているのですが、何も考えずに肺炎治療をするのはできれば避けて頂きたい、と念願するものであります。

マクロライド系は、マイコプラズマを疑うときに使うことになりますが、点滴が必要な状態であれば普通は入院でしょうし、あまり、「外来で、点滴で、アジスロマイシン」というシチュエーションはないように思います。

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posted by 長尾大志 at 20:13 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月08日

来週は立て込みます

この週末は少し一息つきましたが、来週は立て込んでおります。

7月11日(水) 沖縄県立中部病院訪問 緊張してます!!

7月14日(土) VR(Virtual Respirology)「チーム医療」@洛和会音羽病院 
参加申し込みはこちら↓↓↓
http://otomarukun.seesaa.net/article/459597364.html

7月15日(日)〜16日(月) 21世紀適々斎塾広島セミナー@広島市文化交流会館
Common Disease わたしの治療 ーガイドラインの向こう側ー
もう定員いっぱいのようですので、HPリンクは貼りません!

沖縄県立中部病院、洛和会音羽病院、21世紀適々斎塾広島セミナー、いずれも錚々たる先生方の前でお話、となりますので、半端ない緊張です、が、忙しすぎて緊張している暇もないということでございます。

7月が終わりますと夏休みらしくなりますが、例年ですと4週間ある、「学生実習のない=いろいろと仕込みのできる期間」が今年から2週間しかありません。ですので、いろいろと仕込み不足で11月の講義へと乗り込むことになるかもしれません。まあ昨年終了時にかなりカイゼンしているはずなので、このままいけるといえばいけるのですが。クリッカーなしでの試み、うまくいくでしょうか…。

8月は特に講演は予定されておりません。9月以降は以下の通りです。

9月22日(土) 糸魚川総合病院 研修病院として有名な糸魚川さんにお邪魔します!胸部X線のお話予定。

10月6日(土) 第46回日本放射線技術学会秋季学術大会@仙台 技師さんに、「医師が求める画像とは」みたいなお話をさせて頂く予定です。

10月20日(土) ただいま診断中セミナー@滋賀 肺炎三銃士?診断中三銃士?による激アツ肺炎セミナーです。

11月2日(金) 産業医科大学 昨年に引き続き、小倉に伺います!

11月3日(土) 9時30分〜16時30分 メディカ出版セミナー@大阪・クリスタルタワー
https://www.medica.co.jp/seminar/detail/171

11月18日(日) 21世紀適々斎塾 エキスパートとともに考える症候学セミナー 2 

11月29日(木) 京都府医師会肺癌検診向上の会 

12月9日(日) 滋賀県臨床工学技士会主催呼吸療法セミナー

12月15日(土) 9時30分〜16時30分 メディカ出版セミナー@東京・家の光会館

以上、以前からちょこっと増えましたが、まだまだ隙間はございますので、ご遠慮なくお声がけください(笑

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posted by 長尾大志 at 21:29 | Comment(0) | 活動報告

2018年07月07日

大雨の1日

ここ数日、西日本では史上まれに見る大雨で、このあたりも金曜日からJRが動かず、高速道路も通行止め、一般道が激混みで動かず。

昨日は学生実習(5年生、6年生の2学年が来ております…)がJR運休のために休講となり、空いた時間で試験問題と講義の準備をしておりました。

今日は本来、呼吸器学会近畿地方会があるはずでしたが、中止。
まだまだ降雨の1日、おとなしく過ごしております。

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posted by 長尾大志 at 19:58 | Comment(0) | 日記

2018年07月06日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説7・市中肺炎6・細菌性肺炎と非定型肺炎・外来治療

ですから細菌性肺炎を疑う場合には、肺炎球菌やH.influenzaeに効果のあるβラクタム系(ペニシリン系、セフェム系)抗菌薬を投与します。


細菌性肺炎と非定型肺炎が鑑別できたら、治療の場(外来、一般病棟、集中治療室)別に治療を考えましょう。


■ 外来治療

非定型肺炎(≒マイコプラズマ肺炎)は軽症例が多いため、基本的には外来治療症例が多くなります。非定型肺炎の治療には上にも書きましたがβラクタム系は使いません。

細菌性肺炎を疑う場合にはβラクタム系を使います。非定型か細菌性か、鑑別が難しい場合(鑑別ポイントを3項目しか満たさないような場合)は非定型病原体をカバーするような抗菌薬を選択します。

となると、1剤で非定型も細菌もカバーする、レスピラトリーキノロンが最適である、とガイドラインではなっておりますけれども、何度もブログで書いているようにキノロンは結核にちょっと効いてしまい、そのため結核の診断が遅れてしまうというデメリットがあります。

それにいろんな細菌がキノロン系に耐性がついてしまうと大変具合が悪いですから、ここではなるべくキノロンを使わずに肺炎を治療することを考えましょう。

まずガイドラインで挙げられている、外来患者群の内服治療を行う群です。

  • ベータラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬
    (スルタミシリン、アモキシシリン・クラブラン酸)

  • マクロライド系薬
    これは非定型肺炎が疑われる場合の選択です(クラリスロマイシン、アジスロマイシン)

  • レスピラトリーキノロン
    (ガレノキサシン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、シタフロキサシン、トスフロキサシン(これはキノロンですが抗結核菌作用がないのが特徴です))


市中の細菌性肺炎、想定される原因菌として肺炎球菌、H.influenzae(インフルエンザ桿菌)が挙げられます。そのためペニシリン系の経口薬を第一選択としたいところですが、H.influenzaeはβラクタマーゼを産生するものもあり、βラクタマーゼ阻害薬を加えるのが無難だという考え方です。

それはいいのですが、アモキシシリン・クラブラン酸はアモキシシリンが250mg、クラブラン酸が125mgという割合で配合されていて、アモキシシリンをたくさん使おうとするとクラブラン酸もたくさん摂取されてしまって下痢を起こしやすい、といわれています。

そこでこの配合剤(オーグメンチン250レジスタードマーク3錠分3)にアモキシシリン単独製剤(サワシリン250レジスタードマーク3錠(カプセル)分3)を併用すれば、アモキシシリン250+250=500mgにクラブラン酸が125mgという配合で使うことができます。この、ちょっと気の利いた?取り合わせを、商品名の頭文字を足してオグサワという風に呼んでいます。

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posted by 長尾大志 at 19:19 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月05日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説6・市中肺炎5・細菌性肺炎と非定型肺炎/マイコプラズマ

とか何とかいいましたが、エンピリック治療すら無視して、肺炎には何でも広域抗菌薬、という現場が今でもあるようですので、まずはガイドラインの意図を尊重して、「最低限このくらいは」というエンピリック治療についてご紹介します。


まずは「細菌性肺炎と非定型肺炎」の鑑別を行います。

非定型肺炎。定型的な細菌性肺炎とは症状や所見が異なり、使うべき抗菌薬の種類が全く異なるために鑑別が必要となる疾患群であります。マイコプラズマ、クラミジア、オウム病、レジオネラ、Q熱などが非定型肺炎に含まれますが、このうち頻度が多いマイコプラズマとクラミジアの特徴を取り上げて、

  • 若年者(<60歳)

  • 基礎疾患なし、あっても軽微

  • 痰が少ない

  • ラ音が聴かれない

  • 空咳が多い

  • 採血で白血球が増えない(<1万)


のうち何項目を満たすか、4項目以上であれば非定型肺炎を疑います。まあクラミジアも当初言われていたほど多くはないと最近言われていますので、実質的にこの特徴はほぼマイコプラズマのことを指すと考えて良いと思います。

マイコプラズマは気管支粘膜上皮細胞の線毛にくっつき、感染します。線毛が元気な方がくっつきやすい=感染しやすい。また、感染が成立するには、それなりに長い時間同じ空間にいる必要がある、ということから、保育園、幼稚園、学校に行っている、若くて元気なヒトが罹りやすい,ということになります。

気管支上皮の炎症から気道過敏性が亢進し、めっちゃ咳が出ますが、痰は目立たず、気道に痰がないのでラ音も聴かれません。臨床的にしばしば咳喘息との鑑別が問題になります。

マイコプラズマは大変小さな微生物で、一般細菌のように自分で細胞壁(自己の構造)を作成して増えていくものではありません。自立してないわけです。(ヒトの)細胞内に感染(寄生)して、細胞の仕組みを利用して菌体を作成し増殖するという、すねかじり生活。ちなみにそのために培地での培養も難しいものです。

そのようなしくみで増える菌であり、細胞壁を持たないので通常よく使われるβラクタム(細胞壁の合成阻害薬)は原理的にも全く効果がありません。マイコプラズマに「効く」のは、マクロライド系やキノロン系といった DNA 合成阻害薬になります。

では市中肺炎全てに対してマクロライドやキノロンを使えば良いのではないかと思われるかもしれませんがことはそれほど単純ではありませんというのもマクロライド系薬はあまりにも小児(だけでもありませんが)に対して濫用され、一般的な市中肺炎を起こす細菌(肺炎球菌やH.influenzae)には効かなくなってしまっているからです。

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posted by 長尾大志 at 18:57 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月04日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説5・市中肺炎4・エンピリック治療とAMR

AMR(antimicrobial resistance:薬剤耐性)が問題となっている昨今、ともかく抗菌薬は、「できる限り狭域を使うべき」です。狙いを定めてピンポイント爆撃。

そのためには原因菌が判明していなくてはなりません。心ある施設では、喀痰グラム染色、培養を活用して、できる限り狭域に抗菌薬の選択をされています。出た菌による選抗菌薬択については後で紹介します。

グラム染色、喀痰培養をやっている施設は少数派ですから…痰が出ない、検査ができない、ということで、尿中抗原をアテにしておられる施設も多いかと思います。ただこちらは、以前(数ヶ月〜過去1年くらいまで)の肺炎球菌感染症があると陽性に出てしまいますから、注意が必要です。


そんなわけで現実には原因菌の目星がつかないことも多く、状況証拠から「こんなもんかな」と抗菌薬を決めて投与する、いわゆる「エンピリック(empiric)治療」を行うことになります。

empiric、というのは、「経験的な」という意味です。こういうシチュエーションだったらこういう菌が経験的に多いから、この抗菌薬を使いましょう、ということを決めておいて、シチュエーション別に治療するものです。

本来は初期治療において、原因菌が定まるまでにとりあえずの治療、という意味合いであったはずが、結局菌種が確定せずにそのまま治療継続されることが多いようです。まあそれで「その症例については」大概うまくいくのも現実ですが。

empiricにはヤブとか山師、という意味もあり、しばしば「原因菌の絞り込みを行わずにテキトーな治療をする」という揶揄の対象になりますが、まあ現実問題、痰の検査ができないものは仕方がない、うまくいくんだからそれでいいだろう、という声も少なくありません。でもね。それでも原因菌探しはできるだけ努力しましょう。

なぜか。

エンピリックにいくということは、(治療失敗を避けるために)どうしても多少広域なものを使うことになります。それでその症例はうまくいっても、体内で菌交代が起こり、その人の体内の菌がAMR化してくるわけです。塵も積もれば山となる。そのうちに施設がAMR化、その地域がAMR化、やがて日本が、世界がAMR化…これまでに何度も繰り返されてきた抗菌薬悲劇の歴史です。

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2018年07月03日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説4・市中肺炎3・原因菌探し

治療の場(外来治療か入院治療か)を決めた後に治療薬の選択へと進みますが、治療薬を決めるためには原因菌が何であるかを考えなくてはなりません。

そこでできる限り原因菌に迫ることができるよう、検査を行います。まず採るものとしては

  • 喀痰のグラム染色、および培養・同定

  • 血液培養

  • 尿中抗原(肺炎球菌/レジオネラ)

  • 喀痰や上咽頭ぬぐい液の抗原

  • LAMP法による遺伝子検査

  • 血清抗体検査


が挙げられますが、実際に普及しているのは上3つでしょう。グラム染色については、まだ普及途上、といった感じですが、迅速性と妥当性からはもっと普及すべき検査である、といえます。

グラム染色から直ちに治療薬を決めることができます。尿中抗原や喀痰などの抗原も迅速に結果が得られますが、血液培養は結果が出るのに数日かかります。LAMP法でもう少し。抗体検査は2週間以上かかりますから、初診時にすぐに結果が得られるグラム染色と、抗原検査でわかる肺炎球菌、マイコプラズマあたりは、原因菌の目星をつけることができるのです。

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2018年07月02日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説3・市中肺炎2・市中肺炎治療の場

で、市中肺炎と診断しましたら、まず治療の場と治療薬を決定するために重症度を評価する必要があります。治療の場というのは入院で治療する(予後が悪そう)のか、外来でいけるのか(予後が悪くなさそう)の判断ですが、その目安として予後予測因子の何項目に当てはまるのかスコア付けをしよう、というのが以前の(2005)市中肺炎ガイドラインから日本で用いられているA-DROPです。

A-DROP表

この5項目のうち1項目も満たさないものを軽症、1つまたは2つを満たすものを中等症、3つを満たすものを重症、4つ以上満たすと超重症と分類します。ただしショックがあれば1項目だけであっても超重症に含めます。

軽症であれば外来治療可能、中等症は外来もしくは入院で、つまり入院となるかどうかは主人の裁量次第ということになります。A-DROPで大事なポイントとしては、軽症肺炎をきちんと外来で診療しましょう、ということです。

重症以上では入院の適応で、超重症となるとICU、またはこれに準ずる病室に入室、とされていますが、初診時A-DROPでさほどでなくても後に重症化する、つまり当初から集中治療を要する敗血症症例のスクリーニングが問題とされていました。

そこで今回のガイドラインでは、A-DROPに加えて新たに敗血症の有無を判断するために用いられるqSOFA(クイックソファー:quick Sequential Organ Failure Assessment)スコアを用いて重症度を評価することになりました。

qSOFA表

qSOFA2点以上であれば、敗血症の疑い、となり、臓器障害の評価を行ってSOFA(Sequential Organ Failure Assessment)スコアをつけます。

SOFA表

これがベースラインから2点以上増加していれば敗血症と診断されます。

A-DROPは5項目、qSOFAは3項目で評価しますが、A-DROPだと血圧が90mmHg以下で1点なのにqSOFAだと収縮期血圧100mmHg以下で1点、と微妙に違うところが覚えにくいですね。まあこれは異なるロジックで作られたシステムなので仕方がありません。丸暗記しなくても、いつでも参照できるようになっていればOKです。

肺炎ガイドライン解説

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posted by 長尾大志 at 17:45 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

『Dr.長尾プロデュース 呼吸器腹落ちカンファレンス 呼吸の果てまでカンファQ!』訂正があります。

今日の記事を書いていて、以前の記事を眺めていたところ、抜けている項目がありました。

10ページ、16ページの表「SOFAスコア」、
  • 呼吸(P/F比)

  • 凝固(血小板数)

  • 肝機能(ビリルビン)

  • 循環(平均動脈圧)

  • 中枢神経(GCS)

となっておりますが、最後の行が抜けておりました。

  • 呼吸(P/F比)

  • 凝固(血小板数)

  • 肝機能(ビリルビン)

  • 循環(平均動脈圧)

  • 中枢神経(GCS)

  • 腎(クレアチニン・尿量)

の6項目が正しい表です。お詫びの上、訂正させて頂きます。

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posted by 長尾大志 at 17:01 | Comment(0) | 書籍の訂正

2018年07月01日

第32回上本町呼吸器セミナーにて胸部X線読影についてのお話

昨日は、大阪赤十字病院の西坂先生にお招き頂きまして、第32回上本町呼吸器セミナーで「ドクターX線〜」と題した講演をさせて頂きました。

西坂先生は以前地方会で私が口走った「呼吸器内科は、大人の小児科!」の台詞に賛同頂きまして、大いに勇気を頂いたものです。大阪赤十字病院の黄先生が以前ウチにいた西尾先生のお友達ということもあって、このたびお声がけ頂きました次第です。が、特にお知り合いとかでなくても、ご講演のお話は喜んでやらせて頂いております!

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タイトルは完全に出落ちでしたが、そのおかげか?盛況でした〜。

今回は開業医の先生方が大半の中、大阪赤十字病院の専攻医、専門医の先生方も来られていて、どんな感じでやろうか、少し迷いもありましたが、結局専門の先生方には「どのようにお話しするか」をお持ち帰り頂く、という感じで、開業医の先生方に向けたお話とさせて頂きました。

私が研修医の時にお世話になったL先生と20数年ぶりの再会も果たせ、西坂先生とも「あの頃」の話に花が咲きました。

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西坂先生、黄先生、大阪赤十字病院の先生方はじめご参加の皆様、本当にありがとうございました。
今後ともなにとぞよろしくお願い申し上げます。

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posted by 長尾大志 at 16:06 | Comment(0) | 活動報告

2018年06月30日

第32回上本町呼吸器セミナーでX線のお話

今日は、大阪まで伺い、表記の会でお話をさせて頂きました。懐かしい再会や懐かしい話もあり、印象深く終えることができました。こんな時間ですので、レポートは明日にさせて頂きます。

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posted by 長尾大志 at 23:40 | Comment(0) | 日記

2018年06月29日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説2・市中肺炎1・成人肺炎診療ガイドライン2017における市中肺炎の定義

ちなみに院内肺炎(HAP)は入院後48時間以上経過してから新しく発症した肺炎であり、入院時既に感染していたものは除かれます。

そして医療・介護関連肺炎(NHCAP)は以下の定義のような肺炎です。

医療・介護関連肺炎の定義

  • 長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している

  • 90日以内に病院を退院した

  • 介護(PS3以上)を必要とする高齢者、身体障害者

  • 通院にて継続的に血管内治療(透析・抗菌薬・化学療法・免疫抑制薬などによる治療)を受けている



ガイドライン自体に市中肺炎(CAP)とはこういうものだという定義、そのものズバリは書いてないんですけれども、一応記載としては、基礎疾患のないまたは基礎疾患が軽微な人に起こる肺炎、と書いてあります。また一般的な概念は、通常の日常生活を営む健常人に起こる肺炎である、とも書いています。

市中、という言葉は普通の街中に住んでいる、ということですが、HAP、NHCAPを除いたものがCAPですから、NAPやNHCAPの定義とすり合わせると、医療機関にそれほどかかっていない、医療や介護の対象となっていない、ほぼ健常な人に起こる肺炎だと考えられます。

肺炎ガイドライン解説

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posted by 長尾大志 at 18:32 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年06月28日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説1・ガイドラインの変遷

昨年(2017年)成人肺炎の診療ガイドラインが新しくなり、『成人肺炎診療ガイドライン2017』として発行されました。少しそれについて改めて振り返っておきましょう。

『成人肺炎診療ガイドライン2017』は、これまでにあった「市中肺炎(2005)」「院内肺炎(2008)」「医療・介護関連肺炎(2011)」という、発症の場ごとのガイドラインを1冊にまとめ、そして各々の場における新しいエビデンスを取り入れたものですが、それだけでは、あまり目新しいものではありません。

今回新しいこととして、終末期の肺炎に踏み込んで、治療方針などに言及された点が挙げられます。医療・介護関連肺炎診療ガイドラインで初めて取り上げられた「患者がいかなる治療区分に該当するかの判断は、患者個々の病態、背景、家族関係などをよく知る主治医の判断に委ねる」「長期的には改善が得られない症例に対する医療の継続に関しては、現在も議論の決着がついていない」という記載から、「終末期医療における肺炎では、個人の意思によっては必ずしも科学的なエビデンスに基づいた強力な治療を行わないという選択肢もある」という記載になってきました。

これまで臨床の現場では、何となく?行われてきたことにガイドラインがはっきりと道筋を付けた、ということで、現場の先生方は歓迎されているかと思います。

それに関連して、なのですが、そういう疾患の末期や老衰といった、終末期の症例が含まれる「院内肺炎」と「医療・介護関連肺炎」は1つの診療群とし、「市中肺炎」と分けて診療のプロセスを示すようになりました。折角分けたものがまた1つになったわけで、なんだかな〜という感じです。

まあ、医療・介護関連肺炎を分けてみたものの海外の医療施設との定義というか分類の地域差、文化差を合わせられずに、論文を出すにしても統計を出すにしても海外から見て「なんやねんそれ」状態であったのかもしれません。むしろこのシンプル化は、現場の人間としては歓迎すべきですね。

で、「院内肺炎」と「医療・介護関連肺炎」の症例では、最初に終末期であるかどうかを判断し、濃厚な治療をするべきかどうかを決めましょう、ということになっているのです。

肺炎ガイドライン解説

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posted by 長尾大志 at 18:30 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年06月27日

COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]解説6・ACO問題

日本のガイドラインにおけるICSの位置づけは、第5版で「喘息病態の合併が考えられる場合(つまりACO)」と明記されてしまいました。それで、ACOをしっかり診断する目的で『ACO診断と治療の手引き』が出来たようなものです。

COPD症例のうち、

変動性・発作性がある
40歳以前に喘息を発症している
FeNO>35ppb
上記3項目のうち2項目あればACOと考え、1項目しか満たさない場合、以下のうち2項目以上を満たせば喘息と考えるのです。
アレルギー性鼻炎
気道可逆性
末梢血好酸球高値
IgE高値


第4版までは、喘息合併例に加えて増悪頻度が頻回であるケースにおいて、ICSが増悪頻度を減らす、という研究があり、ICSを併用されることがしばしばありました。しかしその後いくつかの研究で、ICSを併用すると増悪頻度は抑制されるものの、特に重症度の高い患者群において肺炎のリスクが高まる、という結果が新たに得られました。

これらから、ICSを闇雲にCOPDの重症例に対して使うというのは少し難しいところがある、ということになりまして、非専門医の先生が参照されるガイドラインのアルゴリズムには記載しないということになったようです。

ただこれまでも ICS/LABA などは重症の COPDに対して多く用いられており、今使用しているすべてのCOPD症例のICSを直ちに止めなければならない、ということはないと考えます。GOLDを見ても、増悪頻度が高ければICSを使うよう書かれていますし。

これまでの研究では、どのような症例では肺炎が起きやすい、とかはイマイチはっきりと示されていませんので何とも言えないところですが、肺炎を繰り返すようなケースでは、中止することも必要になってくるかもしれません。

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posted by 長尾大志 at 19:36 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

2018年06月26日

COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]解説5・日本のガイドラインによる薬剤の選択

GOLDではこんなふうになっていますけれども、結局はLAMAか、LAMA/LABAか、LAMA/LABA/ICSか、っていうことですよね。分類、もう少しシンプルになりませんか?ということで日本のガイドライン第5版を見ると、シンプルなアルゴリズムにしてくださっています。

まず必要に応じてSABAかSAMA

⇒日常労作時の息切れがあればLAMAまたはLABA

⇒そしてしばしば増悪を認めるようであればLAMA/LABA
⇒そこにテオフィリンや喀痰調整薬を追加していく

…という、割とシンプルなアルゴリズムになっています。日常臨床であればそれで十分だと思います。


今日の午後は近江八幡市蒲生郡医師会講演会でのお話です。ちょうど今やっているようなお話を、症例ベースでやらせて頂きます。これから近江八幡市立総合医療センターに伺います。で、夕方大学に戻ったら会議2連続です。というわけで短めに。

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posted by 長尾大志 at 12:29 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

2018年06月25日

COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]解説4・GOLD の分類による薬剤の選択

ですからその「増悪頻度」がガイドラインに載ることで、「増悪を減らす」薬のプロモーションになるにでは…とは、穿った見方でしょうか。

閑話休題、この GOLD の分類は、その分類に沿って薬を足していく、というロジックで進んでいきますが、治療薬の選択はこんな感じになります。

  • Group A|気管支拡張薬1剤(LAMA or LABA or SABA)

  • Group B|気管支拡張薬1剤(LAMA or LABA)、これで症状が改善しないならLAMA/LABAの合剤

  • Group C|まずLAMA、それでも増悪が持続するならLAMA/LABA合剤、それでダメならICS/LABA合剤 に変更

  • Group D|第一選択にLAMA/LABA、喘息のオーバーラップがあればICS/LABA、第一選択薬で増悪が継続すればLAMA/LABA /ICS3剤を併用、さらに増悪が持続すればロフルミラスト(現在日本未承認)とかマクロライドを追加せよとなっています


Group CやDでは、ICS を加えて増悪が持続するのであれば ICS を中止することも考慮せよ、となっています。

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posted by 長尾大志 at 21:29 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

2018年06月24日

岡山協立病院さんで「胸部X線レクチャー」とオタ話

昨日はそういうわけで、岡山協立病院さんで「胸部X線レクチャー」をさせて頂きました。

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「スーパー研修医」の呼び声も高い、岡山協立病院のY先生に、とある会で出会った縁でお招き頂いて実現したものですが、Y先生の企画力、実行力は本当に見習わねばなりません。我が身を顧みるに恥ずべきことだらけです。

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参加された方は学生さん4割、初期研修医4割、コメディカルスタッフ2割、という割合でしたので、基礎の話を多めで進めましたが、終わってみると結構拙著の読者の方が多かったみたいでした。それでも、「本を読むのと話を聞くのはまた全然違いました!」というご感想を頂きました。

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終了後の食事では、まさかのあの話題で一部の方々と大盛り上がりしてしまい、他の方がポカーン(゜Д゜)となりまして失礼いたしました。やはり自己紹介スライドは大切ですね!笑

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Y先生はじめ岡山協立病院の先生方、事務の皆様、参加して頂いた研修医の先生方や学生さん(特にオタ話につきあってくれたM先生とFさん)、本当にありがとうございました。岡山はこれまでもいい思い出ばかりで、再訪できるのを楽しみにしています!

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posted by 長尾大志 at 20:20 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

2018年06月23日

岡山協立病院で胸部X線のお話

今日は夕方から岡山協立病院さんで、胸部X線のお話をさせて頂きました。聴衆の皆さん熱心で、ブログや書籍の読者の方も多く、質問を振ってもなにがしかの答えを返してくださって、スゴくやりやすかったです。

もう今日は暮れてしまいますので、写真など詳しくは明日にまたご報告します。

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posted by 長尾大志 at 23:33 | Comment(0) | 日記

2018年06月22日

COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]解説3・mMRCスコア

具体的には、

  • Group A|増悪が少なく(年間1回以下)、症状が軽い(mMRCが0〜1/CAT<10)

  • Group B|増悪が少なく(年間1回以下)、症状が強い(mMRCが2以上/CAT10以上)

  • Group C|増悪があり(年間2回以上または増悪による入院あり)、症状が軽い(mMRCが0〜1/CAT<10)

  • Group D|増悪があり(年間2回以上または増悪による入院あり)、症状が強い(mMRCが2以上/CAT10以上)


あ、mMRC(modified Medical Research Council:修正MRC)息切れスケールについて、これまで書いていませんでしたね。これは息切れの度合いを数字で表すもので、5段階評価になります。

  • グレード0|激しい運動をしたときだけ息切れがある

  • グレード1|平坦な道を早足で歩く、あるいは緩やかな上り坂を歩くときに息切れがある

  • グレード2|息切れがあるので、同年代の人よりも平坦な道を歩くのが遅い、あるいは平坦な道を自分のペースで歩いている時、息切れのために立ち止まることがある

  • グレード3|平坦な道を約100メートル、あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる

  • グレード4|息切れがひどく家から出られない、あるいは衣服の着替えをする時にも息切れがある

(COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]より引用)

CAT(COPD assessment test)質問票、これも似たような項目ですし、ここでは引用しないでおきます。すぐに検索できると思います。


ともかく、治療薬の選択に、単純な?肺機能よりも増悪の頻度と息切れが重要視されるようになった、というところなのですが、これもまあ、欧米の大人の事情が見えたり見えなかったり。

LAMAやLABAなどの気管支拡張薬によって、差が出てくるのが、「増悪の頻度を下げる」というところなのですが、「薬の御利益」としては、ちょっとわかりにくいですよね。

例えば年に1.5回増悪するという人が1.2回になっても、実感として「よかった」とはなりにくい。「増悪の頻度を下げる」って、そういう、処方行動に結びつきにくいところがあるような気がしますねぇ。


明日は岡山協立病院さんで、胸部X線読影レクチャーです。参加される皆様方、よろしくお願い申し上げます。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSe6ugTvEcFFESbf46DgtToywMcl3cyrseqPKxWZ3H2OkzH-Ug/viewform

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posted by 長尾大志 at 18:22 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

2018年06月21日

COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]解説2・GOLD分類

ガイドライン第5版に「安定期 COPD の管理(治療)指針」の表が載っていますが、基本的にそんなに第4版と変わったわけではありません。管理・治療のための方策として特に目新しい項目が加わったわけではありませんし、使用する薬物も同じです。

大きな出来事としてはLAMA/LABAの合剤が発売されて、それを使ったエビデンスが出てきたということ。やはり売れて欲しい薬ですから、各社競ってエビデンス構築に勤しんでおられます。

第4版と第5版で変わったところとしては、重症度による薬剤の選択が挙げられるでしょう。第4版まではT期U期V期W期っていう「病期分類」、要は予測値に対する1秒量の度合いが薬剤選択の主な根拠でした。

  • T期|軽度の気流閉塞:%1秒量≧80%

  • U期|中等度の気流閉塞:50%≦%1秒量<80%

  • V期|高度の気流閉塞:30%≦%1秒量<50%

  • W期|きわめて高度の気流閉塞:%1秒量<30%


病期の進行を目安に治療を乗せていきましょう、ということでしたが、最近は「症状」と「増悪の頻度」を目安に治療を考えるという考え方が、海外のCOPDガイドラインであるGOLDでのメインになっています。

GOLDの分類は、もはや閉塞性障害の度合いは評価に組入れずに、増悪歴があるかないかあるいはその回数と、息切れ症状(mMRC/CATスコア)によって四分割された ABCD のどこに入るかによって治療を考えていきましょうというものです。

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posted by 長尾大志 at 18:54 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

2018年06月20日

COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]解説1

先頃 COPD 診断と治療のためのガイドライン2018が改訂され、第5版になりました。それだけではなく昨年から今年にかけて、呼吸器領域の重要なガイドラインが立て続けに改訂され、今後も予定があるようです(成人肺炎、IPF、ACO、肺癌(これは毎年…汗)、そして近々喘息)。

ガイドラインというのは新しいエビデンスが出るとちょいちょい変わっていきます。その都度新しい知識を学ぶということも必要ですけれども、病態の本質についてはそんなにコロコロ変わるわけではないので、まず病態の本質をしっかり理解されておけば、ガイドラインが変わってもそうジタバタしなくてもいいのではないかと思います。

特に今回のCOPDガイドライン、第5版の改訂は、本質というよりは病態の解釈の部分が変わったりしていますね(例えば第4版では炎症といっていたのをやめてみたり…)。

あるいはトピック的なところではLAMAとLABA、あるいは合剤の問題、どちらが良く効くとか、ある患者さんに対してどの薬剤を使うべきかとか、そういうところは新しいエビデンスが改訂に反映されやすいわけですが、そういうところって、病態の本質が変わっているわけではないんですよね。

そこで、ここではガイドライン第5版 を参考に、多少新しいエビデンスが出たりガイドラインが変わったりしてもあまり変わらないであろう、COPD治療に関しての私見、私見といいますか、今のガイドラインの考え方をもう少し平たくしたものをご紹介したいと思います。

COPDポイントレクチャー

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posted by 長尾大志 at 19:35 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

2018年06月19日

書籍企画・「酸素にまつわるエトセトラ」・ローフローとハイフロー10・ハイフロー6・高流量鼻カニュラ(ネーザルハイフローレジスタードマーク

ベンチュリーマスクもインスピロン(ネブライザー式酸素吸入器)も、成人の場合には、FIO2を50%以下で使うのが原則です。それ以上にFIO2を上げたいのであれば、高流量鼻カニュラ(ネーザルハイフローレジスタードマーク)を使います。

高流量鼻カニュラ(ネーザルハイフローレジスタードマーク)は、太い蛇腹を使って高流量酸素を鼻から吸入させる器具ですが、加温加湿していることで、高流量を流しても鼻粘膜が傷まず、30l/分以上の混合気を流せるので、高いFIO2をしっかり定めることが出来るわけです。

高流量鼻カニュラ(ネーザルハイフローレジスタードマーク)のしくみはシンプルで、流量、FIO2をそれぞれ決めるだけ。器械によって微妙に設定方法が異なりますが、一般的には流量30L〜60L/分、FIO2は21〜100%の間で設定可能です。

主な特徴・利点としては以下のようなものが挙げられています。

  • FIO2を高濃度にできる

  • 解剖学的死腔を洗い出し

  • 気道抵抗を減少させる

  • PEEP効果がある

  • 気道粘膜乾燥の防止


なにより装着が簡単で、口が使えるために飲食や会話が可能、というメリットが大きいですね。

ナースのための呼吸器道場

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posted by 長尾大志 at 18:41 | Comment(0) | ナースのための呼吸器道場

2018年06月18日

書籍企画・「酸素にまつわるエトセトラ」・ローフローとハイフロー9・ハイフロー5・いわゆる「インスピロン(ネブライザー式酸素吸入器)」4・なぜ70%とか100%とか書いてあるのか

なぜダイヤルのところに70%とか100%とか書いてあるのか。この理由は、フローが30L/分(500mL/秒)以上でない、つまり1回換気量が500mLよりも少ない場合には、FIO2が70%とか100%に出来る可能性があるからです。

例えば小児で1回換気量が成人の半分(250mL)くらいであれば、250mL/秒、つまり15L/分でまかなえるわけですよね。

そうすると、FIO2が70%とか100%とか、出来るわけです。早見表に当てはめてみると…。

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70%だと10L/分、100%だと15L/分で流せばいいことになりますね。

なので、70%とか100%とか書いてあるわけですが、成人の場合には、50%以下で使うのが原則です。それ以上にFIO2を上げたいのであれば…。

ナースのための呼吸器道場

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posted by 長尾大志 at 17:53 | Comment(0) | ナースのための呼吸器道場

2018年06月17日

「急性期・術後の呼吸器ケア」から「呼吸苦のみかた」へ

昨日は東京で「急性期・術後の呼吸器ケア」セミナーを行いました。双方向性に進めると、皆さんの理解度も把握できて、かつ、参加されている皆さんの集中度も上がり、いいことばかりのように思います。あ、双方向性、といっても当てるわけではありませんから、皆さん安心してご参加ください。

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最近ようやく、こちらがしゃべるのと、聞いている人に考えてもらう(またはoutputしてもらう)割合のいい配合ができつつあるような気がしております。もちろんまだまだ、理想にはほど遠い現状ですが、少しずつカイゼンを進めております。医学生、若手医師、ベテラン医師、看護学生、看護師、ベテラン看護師、理学療法士、薬剤師、などなど、属性によっても少しずつ違っていそうです。

今回東京でのセミナーでしたが、意外に、というか、大阪よりも、ネタで笑って頂けたり、考えるコーナーで周りの方と相談されていたり、双方向な感じがありました。グループ参加の方が多かったこともあるかもしれません。これからも是非グループでのご参加をお勧めします(笑)。

そういえば、次の企画「呼吸苦のみかた」詳細が決定しました!(笑)是非正しい「みかた」とその理由を身につけましょう。
https://www.medica.co.jp/seminar/detail/171
大阪 2018年11月03日(土) クリスタルタワー 20階A会議室
東京 2018年12月15日(土) 家の光会館 7階コンベンションホール


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今回の会場は、昨今話題のとある大学(群)の近所でありまして、とある大学を横目で見ましたが、その立地の良さと規模に圧倒されました。やはり東京はすごいなあ、と田舎者の感想を持ちました。東京出身の学生さんが、滋賀に居着くことはなくて東京に戻っていくのも、無理もないことですね。

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posted by 長尾大志 at 15:45 | Comment(0) | 活動報告