2017年02月25日

京都医療センターの会(呼吸器合同カンファレンス)に参加して参りました。

昨日は、表記の会(正式名称はよくわかりません…汗)に、初めて参加させていただきました。


iryousenta.JPG


こちらは、京都南部にある呼吸器内科のある病院の先生方が、症例を提示、ディスカッションを行う、という趣旨の会で、音羽病院の土谷先生にご紹介いただいたものです。


京都医療センターの三尾先生には大学でお世話になって以来の再会、その他、滋賀医大出身の外科の先生にもお目にかかったり、懐かしい顔ぶれに、タイムスリップをしたようでした。


やっぱり、他施設の先生方と顔を合わせていろいろお話をする、という機会はいいものだ、と再確認。


できればこれからも参加したいところですし、滋賀でもこういう会ができれば、という思いを新たにしました。

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posted by 長尾大志 at 20:40 | Comment(0) | 日記

2017年02月24日

第111回医師国家試験問題解説・睡眠時無呼吸症候群+α

D58
52歳の女性.就寝中に呼吸が止まるのを夫に指摘されて来院した.3ヵ月前から動悸と昼間の眠気とを感じている.4ヵ月前からうつ病で内服治療中である.喫煙は10本/日を30年間.飲酒はビール1,000mL/日を20年間.身長161cm,体重78kg.脈拍76/分,整.血圧156/104mmHg.心音と呼吸音とに異常を認めない.簡易モニター検査後のポリソムノグラフィで無呼吸低呼吸指数は26(基準5未満),無呼吸の最長持続時間は112秒(基準9未満),睡眠中のSpO2は最低値77%,平均値96%,いびきの回数は428/時間である.
この患者に対する働きかけとして適切なのはどれか.3つ選べ.
a 「禁煙しましょう」
b 「減量手術をしましょう」
c 「飲酒を制限しましょう」
d 「仰向けに寝るようにしましょう」
e 「内服薬の見直しについて相談しましょう」



これも学生さんは困ったかもしれません。新傾向というか現実に即したというか意地悪というか


就寝中に呼吸が止まる、昼間の眠気、ポリソムノグラフィーから、睡眠時無呼吸症候群の診断は問題ないでしょう。問題はココから。


おそらく出題者の意図としては、「睡眠時無呼吸症候群=○○、みたいな問題は出さないゾ」ということなのでしょうが…狙い過ぎか。


その他の状況として、喫煙、大量の飲酒、うつ病の内服治療、肥満傾向(BMI30)があります。ってことで、「全人的にみる視点を学生も持っておくように」みたいな意図があるのでしょうかね。


さて選択肢をみますと、c「飲酒を制限しましょう」飲酒は睡眠時無呼吸症候群のリスクとなりますし、e「内服薬の見直しについて相談しましょう」うつ病の内服薬もリスク。d「仰向けに寝るようにしましょう」仰向けは気道の閉塞につながりますから×ですね。


問題は残る2つですが、国試的にはb減量手術なんつー大げさな治療を積極的に勧めるのは、よほどの根拠がないと…BMIたかだか30ですから、アウト、って感じでいいのかもしれませんが、a禁煙、これだって、別に睡眠時無呼吸症候群のリスクとは言えない。と言えれば言えるわけで、「ん?」という感じです。


まあおそらく、「この患者さんに対する働きかけとして」という文言から、「睡眠時無呼吸症候群だけでなく、この患者さんの有する病態に対しての働きかけ」という意味合いと取れば、禁煙でよかろうとなるように思いますが。


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2017年02月23日

第111回医師国家試験問題解説・ポリソムノグラフィ

そして、医師国家試験に戻りましょう。


B9
ポリソムノグラフィに含まれないのはどれか.
a 脳波
b 血圧
c 筋電図
d 心電図
e SpO2



これ、どう思われますか?ポリソムノグラフィに必須の項目、といえば、脳波、筋電図、SpO2でしょう。これは間違いない。


あとは血圧か心電図…まあ、血圧測定は刺激になりますから、心電図のところが多いか…でも血圧測定しているところもあるけど…苦しい選択。


「含まれない」という表現も紛らわしい。必須の、ということであればbもdもSASの診断に必須とは言えません。でも循環動態をモニターするために通常は測定します。だったら血圧も含んでもよい、と言えるでしょう。無理やり感はありますが、どちらか、問われたらbかなあと思います。


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2017年02月22日

第106回看護師国家試験問題解説・喀血とは・高齢者の肺

例年通り、ここで看護師国家試験問題の解説作成がカットインして参りました。割とシンプルな問題ですので、すすっといきましょう。


A12
喀血が起こる出血部位で正しいのはどれか.
1.頭蓋内
2.気道
3.食道
4.胆道


喀血は気道内の出血です。正解は2。


P49
高齢者に術後の呼吸器合併症が発症しやすい理由で正しいのはどれか.
1.残気量の減少
2.肺活量の低下
3.嚥下反射の閾値の低下
4.気道の線毛運動の亢進


これ、一瞬、どれもそうじゃないか、なんて思ってしまったのですが、よくみると間違っている項目ばかりです。正解は2。


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2017年02月21日

第111回医師国家試験問題解説・ナニコレ?

E57
68歳の女性.腹膜炎の手術後でICUに入院中である.3日前に消化管穿孔による急性汎発性腹膜炎で緊急手術が行われた.術後は気管挿管されたままICUに入室し,人工呼吸管理を受けている.本日から呼吸状態が悪化し,気管からピンク色泡沫状の分泌物が吸引された.心拍数86/分,整.血圧120/80mmHg.動脈血ガス分析(FIO2 0.7):pH 7.32,PaCO2 42Torr,PaO2 69Torr,HCO3- 23mEq/L.胸部X線写真(両側肺野にすりガラス影)を別に示す.心エコーで左室駆出率60%,左室壁運動に異常を認めない.有意な弁膜症を認めない.

診断はどれか.
a 肺炎
b 肺胞出血
c 心原性肺水腫
d 急性間質性肺炎
e 急性呼吸促迫症候群〈ARDS〉



こちら、微妙です。国試レベルだったらたぶん正解は1つになるんでしょうけど、臨床の現場を知っていればいるほど、正解は1つに絞れないですよね。現場重視を謳う国家試験にしては、ちょっとアレじゃないか、と思った次第です。


それはさておき、医師国家試験レベルでの解答は…


  • 急性汎発性腹膜炎で緊急手術後

  • 両側すりガラス影・呼吸不全

  • 循環障害、心疾患の否定

  • 気管からピンク色泡沫状の分泌物が吸引



ということで、挙げられている条件からはアレしかなかろう、という感じなのでしょうけれども。


基礎に感染、術後という状態があり、両側すりガラス影を来した呼吸不全、心不全は否定…そうです、診断は…



ARDSでしょうね。


正解:e



でもこれ、確かにARDSの診断基準に基づいて、心不全の除外は出来てますけど、肺胞出血の除外、急性間質性肺炎の除外は出来てるんか、と問われたらどうでしょう。


出来てませんよね…。


ひょっとすると出題された先生は救急畑の方で、ARDSの診断基準のことに集中されていたのかもしれません。心不全の除外をすべし、と明記されていますからね。少なくとも呼吸器専門医試験でこの問題が出たら、正解はe 1つにはならないでしょう。


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2017年02月20日

第111回医師国家試験問題解説・画像一発

今年もメディックメディアさんから、医師国家試験問題の解説を作成するお仕事を頂きました。いち早く国家試験の問題をチェック出来る、ありがたい機会であります。今年は結構新傾向、既視感のない問題がみられ、受験生の方々の中から「心折れた」という声も聞かれたような気がいたしますが、私なりの解釈、独り言も少し交えて、解説の下書きをしたいと思います。あ、こちらはあくまで、下書きですよ〜お仕事はもっとキッチリ解説いたします。



E41
68歳の女性.易疲労感と咳嗽とを主訴に来院した.6ヵ月前から左上葉肺癌で抗癌化学療法と放射線療法とを受けていた.2ヵ月前に治療は終了し経過観察されている.2週間前から易疲労感と乾性咳嗽があり,次第に悪化したため受診した.身長160cm,体重58kg.体温36.6℃.脈拍88/分,整.血圧126/80mmHg.呼吸数18/分.SpO2 96%(room air).眼瞼結膜は軽度貧血様である.心音に異常を認めないが,左胸部で気管支呼吸音と軽度のwheezesを聴取する.血液所見:赤血球389万,Hb 10.2g/dL,Ht 32%,白血球5,800,血小板25万.血液生化学所見:総蛋白6.7g/dL,アルブミン3.7g/dL,総ビリルビン0.3mg/dL,AST 16U/L,ALT 13U/L,LD 273U/L(基準176〜353),クレアチニン0.9mg/dL,Na 143mEq/L,K 4.4mEq/L,Cl 105mEq/L,CEA 4.8ng/mL(基準5以下).CRP 1.3mg/dL.胸部X線写真(左上肺野に限局性の浸潤影)と肺野条件の胸部CT(左上葉にビシッと境界線のある限局性の浸潤影)とを別に示す.

最も考えられるのはどれか.
a 癌性リンパ管症
b 放射線肺炎
c 細菌性肺炎
d 肺水腫
e 膿胸



イヤ、これで画像なしはキツいですよね。たぶん。転載可能かどうかわからないので、イラストで再現しますと…


スライド1.JPG


まあこれを見てしまうと診断は簡単、ではないでしょうか。


ビシッと、いかにも人工的な境界線のある浸潤影…。


あんまり急性・炎症感の強くない症状、所見…。


診断は…


放射線肺炎でしょう。


正解:b


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2017年02月19日

教育のエンタメ化

昨日音羽病院の先生方と、本当にいろいろとお話しして、ブレストのようにいろいろなアイデアが出てきました。


その中で何度も話題になったのが、「楽しく学ぶ場にできれば」ということ。


同じやるなら楽しくワイワイやりたい。なるべく初参加の方とかのハードルを下げたい。そのためには、「楽しくできる」よう、学びをエンタメ化できないか、ということでいろいろな意見を伺いました。


昨日試みたコレ↓も、試みの一つです。これはけっこういい感じであったと思います。


聞く耳.JPG


特に学生さん、初期研修医の先生対象の会で試みていきたいですね。イヤそれ以外にも機会があればやってみたいですが…。

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posted by 長尾大志 at 19:58 | Comment(0) | 教育理念・メッセージ

2017年02月18日

洛和会音羽病院 医療関係者向け講演会『やさしイイ呼吸器教室 特別レクチャー 〜Dr.長尾の胸部X線ルネッサンス〜』

今日は午後から、洛和会音羽病院さんにて、医療関係者向け講演会『やさしイイ呼吸器教室 特別レクチャー 〜Dr.長尾の胸部X線ルネッサンス〜』をやらせていただきました。


実は音羽病院さんにおじゃまするのは初めてだったのですが、まず行ってみて驚いたのが「めっちゃ近い」ということ。こんなに近かったのに、なぜか交流がなかったのですね…。


会場がパンパンになるくらいの参加者の皆さんと、いろいろ答えて頂きながらの2時間でしたが、あっという間に時間が経ってしまいました…。


会場.JPG


いつもそうなんですが、工夫しているところ、頑張っているところをご評価いただけると大変うれしいもので、ついつい頑張ってしまいます。頑張りました。


集合.JPG


終了後いろいろとお話をさせていただきましたが、モチベーションの高い先生方とお話ししていると頭の中が活性化されて、今後の活動のヒントがたくさん出てきたように思います。今後も音羽病院さんとはいろいろと活動させていただくことになりそうです。


今回回の企画・運営をいただいた土谷先生、歓待していただきいろいろと教えていただいた長坂先生、そもそものお声がけをいただいた森川先生、そして坂口先生、味水先生はじめ呼吸器内科の先生方、本当にありがとうございました!今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

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posted by 長尾大志 at 23:41 | Comment(0) | 活動報告

2017年02月17日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・COPD4・COPDの診断その他

COPDの診断にちょっと戻りますが、喘息以外の


閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans:BO)
肺リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)


の鑑別には、胸部CTで、胸部X線写真では見つけられない、特徴的な所見を見つける(BO:呼気時のモザイクパターン、LAM:多発嚢胞)ことが必要です。


そんなわけで、COPDの診断をある程度キッチリつけようとすると、胸部CTはほしいかな、ということになります。もちろん胸部X線写真で所見がわかる、と書いた他の疾患の鑑別にもCTは有効ですし異常の検出に役立つでしょう。


それにそもそもCOPD、いや喫煙者であれば、肺癌発症のリスクがあるわけで、1度はCTをみておきたい、という事情もあります。肺機能は出来なくても胸部CTにはアクセス出来る、という施設は多いんじゃないでしょうか。


まあCTのことは置いとくとしても、いずれの疾患もまずはまれであるということ、そして、病歴からある程度想定は可能であるということも知っておいて頂きたいです。



BO―病歴から


特発性のBOはあまり報告されておらず、骨髄移植や肺移植後の合併症としての発症がよくみられますが、リウマチなどの膠原病に合併することも知られています。それ以外に、マイコプラズマやウイルスなどの感染症や有毒ガスの吸入によって生じることもありますから、そういった病歴の確認が重要です。



LAM―若年女性


好発年齢は20〜40歳代で女性に多い疾患です。若い女性の呼吸困難って、コモンなものは喘息くらいしかありません。喘息とは異なって、呼吸困難に変動性がなく進行していくような場合、自然気胸が繰り返す場合などに想起する必要があります。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2017年02月16日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・COPD4・薬物以外の治療

COPDの場合、薬剤で病態(破壊された肺胞)がよくなる、というわけではなく、高齢ゆえ併存症が様々にある、ということもあり、喘息とは違って薬物療法だけで事足りるというわけには参りません。


薬物以外の治療・管理、具体的には

  • 禁煙

  • インフルエンザ・肺炎球菌ワクチン接種

  • 感染時の適切なコントロール

  • ADL低下対策・呼吸リハビリテーション

  • 栄養療法

  • 酸素療法・換気補助療法

  • 併存症(虚血性心疾患・高血圧症・心不全・心房細動・肺高血圧症・骨粗鬆症・消化器疾患・抑うつ・気胸・肺癌など)の管理と早期発見・早期介入

  • 上記を含むトータルの患者教育


あたりとなります。無意識のうちに「高齢者一般の治療・管理」の一環としてなされている項目も多いでしょうが、今一度抜けているところなど確認頂ければと思います。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2017年02月15日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・COPD3・ICSはCOPD増悪を抑制するのか?

COPDの薬物療法を考える上で避けては通れないのが、ICS問題です。ICSは投与すべきなのか否なのか。結論を言うと、結論は出ていません(2017年2月現在)。┐('〜`;)┌ヤレヤレ…


検討によって、「ICSで増悪抑制する」「ICSで感染、肺炎は増加する」…まあ、ICS/LABAを売りたい企業とLAMA/LABAを売りたい企業によるエビデンス合戦の様相もあったりなかったり、相反する結果が出ているようですし、ここで結論は出せません。


言えることは、「喘息の要素があったら、絶対ICSを含める」と、「COPDの要素があったら、LAMAを含める」。それ以上は、増悪が多いとか痰が多いとかであればICSを加えて経過を見て、でも肺炎に罹るようならICSを外す、みたいな、個別の対応になるのではないかと思います。歯切れよく「こう」とは言えない印象。



投与例(2017年3月現在):薬剤がいっぱいありますのでややこしいです。出来るだけシンプルにしてみます。


  • 軽症例:労作時の息切れ程度
    LAMA単剤
    LAMAが副作用(前立腺肥大・緑内障の悪化)などで使えない場合:LABA単剤
    喘息合併あればICS/LABA

  • 中等症例:上記では症状がよくなりきらない、しばしば増悪する
    LAMA/LABA、よくならなければLAMA/LABA +ICSまたはICS/LABA+LAMA
    喘息合併あればLAMA/LABA +ICSまたはICS/LABA+LAMA
    ただしICSのみの製剤はCOPDに保険適応なし

  • それ以上、さらに加えるとしたら…
    +喀痰調整薬
    +テオフィリン系

  • 痰が多い、増悪頻度が多い…
    +マクロライド系
    基本はエリスロマイシン、MACがいないことが確認出来ればクラリスロマイシンやアジスロマイシンも可だが、効果が見られなければ中止を考慮。




商品の名前は、商品名と吸入デバイス(吸入器)の名前が混在していてややこしいです。一般名も併記するとさらに混乱が増す気がするので、商品名とデバイス名のみ併記しています。まだ先発品しかありませんので…。デバイス名が同じものは同じメーカーのもので、複数種を処方する場合は、デバイスを揃える方がいいでしょう。商品名のレジスタードマークは省略しています。順番に意図はありません。何となく登場順な感じですが。


LAMA(商品名:デバイス名)

  • スピリーバ:レスピマット

  • シーブリ:ブリーズへラー

  • エクリラ:ジェヌエア

  • エンクラッセ:エリプタ



LABA

  • セレベント:ディスカス

  • オンブレス:ブリーズへラー

  • オーキシス:タービュヘイラー



LAMA/LABA

  • スピオルト:レスピマット

  • ウルティブロ:ブリーズへラー

  • アノーロ:エリプタ



ICS/LABA

  • アドエア:ディスカス・エアゾール

  • シムビコート:タービュヘイラー

  • レルベア:エリプタ



繰り返しになりますが、ICSの単剤には、COPDでの適応を持つものはありません。


なにせたくさんありますので、なんか忘れているような気も、間違えているような気もしますが…訂正すべきところがありましたら、是非ご指摘をお願い致します。m(__)m


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2017年02月14日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・COPD2

このうち、鑑別が最も問題となるのは喘息でしょう。困ったことに、しばしばCOPDと喘息は合併も見られ、COPDか、喘息か、はたまたCOPDと喘息の合併(Asthma-COPD Overlap Syndrome:ACOS)か、しばしば迷います。


診断によっては使用する薬剤も(微妙に?)異なるので、キッチリ診断をつけなくてはならないような気もしますが、ここは合理的に参りましょう。「治療」のために「診断」するのです。


使用する薬剤が微妙に異なる、診断のポイント、まず大事なのは…


「喘息(の要素がある)症例には、吸入ステロイド(ICS)を使うべし!」


これはマストです。絶対です(2017年2月現在)。喘息、あるいは喘息の要素がある場合、ICSを必ず使います。ここで、流行りのLAMA/LABAなんかを使ってはいけません。ICSなしでLABAを使うのは、禁忌と考えて頂きたいですね。


喘息の要素は、やはりその「変動性」に表れます。

  • 分単位、時間単位、あるいは日単位で悪化したりよくなったりする「変化」

  • 昼間はいいのに夜から朝方にかけて悪化する「変動」

  • 刺激のあるものやほこりの吸引、運動、感染などで起こる「発作」

  • 全く症状のない期間が存在する「寛解」

病歴にそういった要素があれば、喘息がある⇒ICSを使う、ということになります。


そしてCOPDの診断に関して言えば、


「COPD(の要素がある)症例には、LAMAを使う」


「使うべし!」とまでは申しませんが、使った方が患者さんは楽かな〜とは思います。で、COPDの要素とは…

  • 高齢、重喫煙歴

  • 症状は日常的に存在、寛解せず徐々に悪化

  • それから身体診察や胸部X線写真における過膨張所

というところです。そういった要素があれば、LAMAを使うと。


身体診察上の過膨張、ないし過膨張に伴って生じる所見とは

  • 樽状胸郭

  • 濁音界の低下

  • 気管短縮

  • 胸鎖乳突筋の発達


あたりです。


喘息の要素、ならびにCOPDの要素が同じくらいあれば、それがいわゆるACOSという病態と考えて頂いて差し支えないと思います。その場合、使用する薬剤としてはICS、LAMAにLABAも加える、いわゆる三剤併用となるでしょう。


喘息でしたらICS+LABAで大半の症例はよくなります。


COPDの場合、高齢であるということもあって併存症が様々にありますので、薬物療法だけで事足りるというわけには参りません。


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2017年02月13日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・COPD1

高齢喫煙者の呼吸器症状(咳・痰・呼吸困難)といえば、原因として最も多いのが慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)です。罹患率は人口の5%以上、慢性に呼吸器症状を呈する高齢喫煙者の半分以上がCOPDともいわれています。以前よりは認知率は上がっているようですが、まだまだ診断されることが少ないといわれているCOPD、早めの介入のためにも、早めに診断しておきたいですね。


ですが、COPDの診断にはスパイロメトリー・肺機能検査が必須、とされていて、なかなか小規模なクリニックや非専門医の先生方には診断して頂けない場面が多いように見受けます。私たちも結局二言目には「スパイロはどうですか?」ですから。1秒率や%1秒量がわからないと話が進みません。


COPDの診断基準:(COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第4版による)

  • 気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーで1秒率(FEV1/FVC)が70%未満であること

  • 他の気流閉塞をきたし得る疾患を除外すること



鑑別を要する疾患として挙げられているのが、

  • 喘息

  • びまん性汎細気管支炎、

  • 先天性副鼻腔気管支症候群

  • 閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans:BO)

  • 気管支拡張症

  • 肺結核

  • じん肺

  • 肺リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)

  • うっ血性心不全

  • 間質性肺疾患

  • 肺癌



です。このガイドラインには逃げ道がなくて、「スパイロせざるもの、診断するべからず」みたいな、原理主義的なところがあるのですね。


でも、原理主義を押し通すがゆえに、診断されるべきCOPD患者さんが未診断なままでいる、というのはいかがなものか、とも思うのです。原理原則は大事ですが、患者さんのために何をするのか、という合理主義で物事を考えたいところです。


原理主義的に申し上げると、スパイロメトリーがない、というセッティングであれば、一度は呼吸器専門医にご紹介頂き、治療指針などを定めて頂きたいところです。昨今、喘息や肺線維症の合併、鑑別、それにたくさん出てきた吸入薬の使い分け、HOT導入・設定など、専門医がお役に立てるところは少なからずあると考えます。


それでもどうしても、諸事情で気軽にはコンサルト出来ない、あるいは、離島や遠隔地のようなケースもあるでしょう。そのときに合理的にはどうすればいいか。


そこで、COPDを臨床的に診断する「妥当」な方法を考えてみましょう。それには症候からのアプローチが優れています。GOLDのウェブサイト(http://goldcopd.org/)に掲載されている『2015 Asthma, COPD and Asthma-COPD Overlap Syndrome (ACOS)』の表に基づいて考えてみます。


上にも書いたとおり、慢性に呼吸器症状を呈する高齢喫煙者の半分以上がCOPDともいわれています。すなわち、慢性に咳、痰、息切れなどがある、高齢の(少なくとも40歳以上)、喫煙者(少なくとも20本✕20年以上)であれば、COPDの可能性が高い。次に、上の「鑑別を要する疾患」を除外する必要がありますが、その多くが、胸部X線写真で何らかの特徴的な所見を有しています。


COPDはある程度の典型例・重症になると胸部X線写真で嚢胞形成や過膨張所見などが見られますが、多くの疾患とは鑑別が可能です。COPD同様に閉塞性障害が主体の、

  • 喘息

  • 閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans:BO)

  • 肺リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)



も、胸部X線写真で所見に乏しく、それだけではしばしばCOPDと鑑別が難しいです。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2017年02月12日

教育方法改善に関するFD・SD研修会「学習活動の評価のあり方とその基準作成:ルーブリック評価を中心に」

カリキュラム説明会に引き続き、大阪市立大学大学教育研究センターの平 知宏先生によります、教育方法改善に関するFD・SD研修会「学習活動の評価のあり方とその基準作成:ルーブリック評価を中心に」が行われ、引き続き参加いたしました。


以前から「大学教育」業界系のお話では、どうやら「教員が誰であっても、クオリティが変わらないような教育システムを作る」というところに重きが置かれている印象を受けていたのですが、ルーブリックもまさにそれで、細かく採点基準を設けて、それに沿っているかどうかで点数をつける、というもの。私自身は昨年受講した「アクティブ・ラーニング」のコースでルーブリックの作成はやっていたので、まあどういうものかはわかっていましたが…改めてお話を伺って、いくつか疑問・意見がでて参りました。

  • そもそも、大学における「教育」で、「人柄」「性格」が変容することが期待できるのでしょうか。おそらく患者さんを前にした「行動」を変えることはできるでしょうが、その場合、臨床実習の現場における様々な場面におけるルーブリックを設定しておく必要があります。作成、採点、いずれもかなりの労力が必要です。
    〜個人的には、学生が「気づいていない」患者さん側の視点からの意見を学生に伝えるのは、学生の行動変容を促すのに有効ではないかと考えていて、実際に臨床実習で実践しています。

  • 仮に、大学における「教育」で、「人柄」「性格」が変容することが期待できないのであれば、「このような医師を育てる」アウトカムに沿った人材を入学時点で選抜する、アドミッションポリシーの明確化が必要でしょう。
    〜私自身は選抜に関与していませんが、選抜された結果である学生さんと相対していて、いろいろと思うところはあります。また、選抜に当たっておられる先生からもいろいろな思いを伺っています。

  • 大学の課程でやる、しかも「評価」がある以上、そこには必ず「対策」が生まれるでしょう。CBTやOSCEの例を見てもわかるように、「対策」は商業化され、システム化されていきます。こちらの意図した「行動」をとるようにルーブリックを組んでも、ルーブリック対策向けの行動しか取れなくなる。そうやって醸成された行動が、大学の期待する「アウトカム」なのかどうかは、検証する必要がありますが、そんなことが検証できるのでしょうか。
    〜そこまでやらずにルーブリックという「仏」だけ作っても、「仏つくって魂入れず」になるのではないか。お得意の「アリバイ作り」のための仕事だけやりました、ということになりはしないか、ということを危惧するのです。

  • 上の内容とかぶりますが、いい年をした大学生が「〜という行動がとれるか」ということを評価して、それができるようになることが、果たして実社会に出て社会人となる、医療人となる際に、「こうなって欲しい」人物像に近づくことと同義なのかどうか、そこはきちんと評価されるべきです。
    〜これが小学生であれば、小学生のうちに「〜という行動ができる」ことは、将来の人格形成に影響がありそうな気がしますが、いい年をした大学生、評価者に「気に入られる」行動をするぐらいは可能じゃないかと思うのですけれども。逆に考えると、それだけ今の大学生は「未熟である」という前提があるのでしょうか…。

  • 学生さんの振り返り、行動指針にルーブリックが使える、という点については同意します。

  • 個人的にはいい年をした大学生に行動変容を促すには、中身に訴えかける必要があると思っていて、「こうあってほしい」人物像に近づけるために、何をさせるか、与えるか、話すか、を突き詰めて考えることが必要ではないかと思っています。ただ、そのためには、各教員が信念を持って学生さんに相対しなければなりません。
    〜「どんな教員がやっても同じような結果が出る」今の教育システムの方向性は、なんだか以前の「みんな平等」「ゆとり教育」の教員版、にも見えてきます。どこかの施設で批判されていたように、ただ作業量を増やして「仕事をしています」というポーズをとるためのものでなく、教員の側こそが、アウトカム基盤型で教育を考えなくてはならないと思います。


「大学教育にルーブリックを取り入れる」ことに関して、現役大学生の皆さん、教員の皆さんからの異論、反論、お待ちしています。できればルーブリックというものがどんなものかをご理解いただいた上で、ご意見をお寄せください。

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posted by 長尾大志 at 14:23 | Comment(0) | 教育理念・メッセージ

2017年02月11日

医学科新カリキュラムの概要について説明会・教育方法改善に関するFD・SD研修会

昨日は医学科新カリキュラムの概要について説明会、ならびに、教育方法改善に関するFD・SD研修会があり、参加して参りました。


医学科新カリキュラムについては、これまでワーキンググループ、教授会など、ごくごく閉ざされた空間で論議されてきたとのことで、私のような末端のものには全くうかがい知ることができておりませんでした。


それで昨日初めてその全貌が一般教員に向けて明らかになったのですが、これまで旧態依然の状態であった滋賀医大のカリキュラムの根幹から手を入れて、一気に世界水準まで到達するかという期待を抱いておりました。


また、カリキュラムが新しくなるということは、全教員の教育に対する姿勢、方針の統一、そういったことをやっていくチャンスでもあるので、そちらも楽しみにしておりました。



そういう大事なことをするのに、どうして説明会が30分しかないのか。概要を説明したら終わりではないのか。ちょっと疑問であったわけですが…蓋を開けてみますと、概要の説明で終わりでした。ううむ。


そして肝心のカリキュラムの中身ですが…なんというか…私が感想を言うのも憚られる感じです。ココに書いたことが一人歩きしてもアレですし。


まあともかく、仏つくって魂入れず、にならないよう、教員が魂を入れていかなくてはならないのだろうな、ということは思いました。その話が実は引き続いて行われた「教育方法改善に関するFD・SD研修会」に続いて行くのですが、その話は明日。

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posted by 長尾大志 at 19:53 | Comment(0) | 日記

2017年02月10日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・止まらない咳35・急性〜慢性の咳で、肺炎以外、画像で見えないもの・気管支結核、気管支内の腫瘍

■ 気管支結核、気管支内の腫瘍

これはもう、忘れたときにやってくる、ぐらいのレアなケースになりますが、いずれも見落としをしたくないのは間違いありません。なんてったって、結核と腫瘍ですから。


とはいっても気管支内にあるだけで無気肺も起こしていないような病変は、なかなか単純X線写真では発見出来ず、「X線写真では異常なし」となってしまうかもしれません。でも咳の出る症例で全例胸部CT、気管支鏡、というのも現実的ではありません。


そこで、なるべく見落としを少なくするためにはどうするか。



まず、当たり前のことではありますが、これまでに挙げた「咳の鑑別」をしっかり詰めていくこと。ここが疎か、あるいは雑になってしまうと、非典型的な部分が多々あるのに「まあ喘息だろう」「まあGERDかな」と思考がストップしてしまいます。


ですから、最初に診断をつけてそれで終わり、ではなく、経過、治療反応性も含めて診断の見直し、振り返りをすることも重要です。


喘息と思って治療していたけれども、ビシッとよくならない、しばしば遭遇するケースですが、後鼻漏やGERD、COPDの合併なんかはよくあることです。それらの治療を併用することでよくなることもある。でもでも…考えられる治療を全部やってもやっぱりよくならない、そんなときには、今一度精査が必要なのかもしれません。


そこで比較的ハードルが低いのは、「痰を採る」こと。痰が出るケースでは、やはり積極的に検査をして頂きたい。細菌、抗酸菌の存在、好酸球や好中球のの増多、悪性細胞の検出などなど、得られる情報は意外に多くあるものです。


肺機能(スパイロメトリー)も、出来ない施設では仕方がありませんが、出来るのであれば得られる情報は多く、有用です。閉塞性障害だけでなく、上気道の狭窄もフローボリューム曲線が特徴的なパターンになるのでわかります。


健常者であれば、フローボリューム曲線は図のようになりますが…


スライド41.JPG


上気道が狭窄していると、その部分で呼出流速が頭打ちになるため、曲線もある速度以上が出ずに頭打ちになる、そういう曲線になります。このパターンを見れば、「上気道狭窄がある」ことがわかり、CTや気管支鏡などを行う根拠になります。


スライド42.JPG


もちろん検査だけでなくて、診察上も、中枢付近で吸気に連続性の雑音を聴取したら肺の外、上気道の狭窄があることがわかりますから、その場合にはさらなる精査を行います。


まあでも、検査や診察ではわからない、悩ましいケースも多いのです。やはり、症状が治ってしまわない、治療がうまくいかない場面では、一度はCTあたりまで、ということになるのかもしれません。


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2017年02月09日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・止まらない咳34・急性〜慢性の咳で、肺炎以外、画像で見えないもの・胃食道逆流症

慢性の咳の原因として胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)が話題に上がるようになったのは、私が医師になってしばらくした頃だったかと記憶しています。


その後、喘息に合併して難治化するとか、そもそも喘息発症の原因になるとか、喘息に関わった報告が多数見られるようになり、2005年の『含嗽に関するガイドライン』で取り上げられたことで、咳の原因としても広く知られるに至った印象です。



診断するにはまずは疑うことが大事です。典型的には『含嗽に関するガイドライン 第2版』に診断基準として挙げられているのは、以下のような症状です。

  • 食道の逆流症状:胸焼け、食後胃重感、おくび(ゲップ)、呑酸(酸っぱいものが上がってくる感覚)、喉頭違和感

  • 喉咽頭の逆流症状:咳払い、喉頭痛(喉がイガイガ)、嗄声

  • 前屈位、会話、食事で増強する咳。



上記のような症候を呈する、他の原因に使われる薬(気管支拡張薬、吸入ステロイド薬、抗アレルギー薬)が無効な咳に、PPIを試験投与して効果があれば診断可能…とされてはいますが、上記のような特徴的症状を呈しない症例も、決して少なくはないともいわれています。


咳払いや、喉がイガイガといった症状は、後鼻漏にも似た症状がありますし、必ずしも特異性の高い症状ではないのも困ったところです。そこで、咳の出る場面(前屈位、会話、刺激物や脂っこい食事)、咳が軽減する場面(立位、飴、飲水)が手がかりになることもあります。「胸焼けはないですか〜」で終わるのではなく、丹念に症状を確認することで診断に至ることも経験されますから。



また、頑固な咳や難治性の喘息症例では、GERDがしばしば合併している、ともいわれていますので、そういう場合、あまり典型的症状がなくても、(GERDの合併を想定して)一度はPPIを試験投与してみる、というケースがあるかもしれません。


GERDにPPI、というのはいいのですが、必ずしもビシッと?効くわけではありません。2週間ぐらいで効くこともあれば、2〜3ヶ月かかることもあり、判断には時間がかかるのです。


PPIだけでなく、リスクとなるような生活習慣(肥満、喫煙、飲酒、激しい運動、カフェイン、チョコレート、脂っこい食事、炭酸、柑橘類、トマト製品など)を避ける、ということも有効なことがあります。(Chronic cough due to gastroesophageal reflux disease: ACCP evidence-based clinical practice guidelines. Irwin RS. Chest. 2006 Jan;129(1 Suppl):80S-94S. Review.)


逆にいうと、PPIの投与だけでなく、生活習慣にも介入することで、診断、治療の質が向上する可能性があるわけです。他に、薬剤でも降圧薬として頻用されているCa拮抗薬をはじめ、硝酸薬、抗ヒスタミン薬、三環系抗うつ薬などは下部食道括約筋を弛緩させ、GERDを悪化させるといわれていますから、注意が必要です。


胸焼け=GERD=PPI=すぐに効く、というだけではないことを知っておきましょう。


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2017年02月08日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・止まらない咳33・急性〜慢性の咳で、肺炎以外、画像で見えないもの・後鼻漏の治療

昨日は静岡県志太医師会にて、「こんなときどーする?咳と抗菌薬」と題して、咳のみかたと抗菌薬の使い方、昨今こちらでも記事にしておりましたマクロライドと慢性気道感染問題とか、キノロンと肺炎問題とか、DUセフェム問題とかをお話しさせて頂きました。


IMG_4121.JPG


座長の労をお執り頂きました小清水先生、丹羽先生はじめ関係の先生方、本当にありがとうございました。




さてその講演でもお話しいたしましたが、後鼻漏は鼻汁が後ろへ流れ込む全ての疾患で起こる「現象」であります。その原因となる疾患は、鼻疾患。


  • アレルギー性鼻炎・花粉症

  • アレルギー性副鼻腔炎

  • 細菌性副鼻腔炎



が代表的です。これらの鑑別には鼻汁、喀痰などのグラム染色や培養、それに細胞診を行います。細菌が存在しているか、好中球がたくさんであれば細菌感染、好酸球が優位に見られればアレルギーの存在を考えます。


そこまでは出来ない、という場合、膿性鼻汁や感染徴候の有無で判断されていることが多いようです。


薬物治療としては
  • アレルギー性鼻炎・花粉症、アレルギー性副鼻腔炎
    ⇒抗ヒスタミン薬・去痰薬・点鼻ステロイド、(鼻閉主体なら)ロイコトリエン拮抗薬

  • 細菌性副鼻腔炎
    ⇒抗菌薬、去痰薬、抗ヒスタミン薬など



慢性細菌性副鼻腔炎に対して、ダラダラ少量マクロライド、という場面をしばしば見かけますが、これはあくまで「エリスロマイシンのみ、使ってみて効果があれば続けてよし」とご理解頂きたいと思います。


細菌性副鼻腔炎に対してはまず去痰薬、症状が強ければ狭域の経口抗菌薬(AMPCなど)を短期間(10〜14日程度)投与して、去痰薬、EM試用、鼻汁の色が透明になったら点鼻ステロイドなどを使う、そんな感じでしょうか。


厄介なのは、アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎って、ものすごくコモンでありながら、決定的なコントロールはイマイチなこと。なかなか、ビシッと治まらないこともしばしばですねー。そういうこともあってか、耳鼻科であまり取り合って頂けないケースもあると伝え聞きます。



喘息に合併した好酸球性副鼻腔炎、これまたしばしば難治ですが、吸入ステロイド(ICS)の経鼻呼出が効果的、とする報告があります。感染がなければ、吸入のついで?に出来ますし、試みる価値は大いにあると思います。やり方としては、普通にICSを吸入して、息を吐くときに鼻から、ゆっくり目に吐き出す、というところです。


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2017年02月07日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・止まらない咳32・急性〜慢性の咳で、肺炎以外、画像で見えないもの・後鼻漏

■ 後鼻漏

私自身アレルギー性鼻炎・後鼻漏持ちのため、個人的に後鼻漏には思い入れがあります。


イヤ実際、「呼吸器内科」外来をやっていて、「咳がずっと続く」という訴えで来られる方には、後鼻漏の方がかなり含まれている印象です。しかも、それが長期間気付かれてこなかった、というケースが多い。


ちょっとしたことで診断がついて、患者さんが本当に喜ばれる。非専門の先生方にも是非そのような経験をして頂きたいところです。咳診療が喜びになります。


ちょっとしたこと、と書きましたが、実際はどういうことで診断するか。これはもう病歴聴取に尽きます。こんなことはありませんか…?


  • 痰が喉に絡んで咳が出る。

  • 痰が粘ついて、引っかかってなかなか取れない。

  • 喉がイガイガする、いがらっぽい。

  • 咳払いしたくなる、咳払いして痰が切れるとスッキリする。

  • 喉にエヘン虫がついている。

  • 上を向くと咳き込む、仰向けに寝ると咳き込む。

  • 上を向くと(喉に粘液が流れ込んで)からえずきがある。

  • 下を向く、腹ばいに寝ると咳は軽減する。



診察上では、口腔内〜咽頭を視るときに、上(鼻腔)から鼻漏が降りてきていないかどうかを確認します。一瞬だけでなく、しばらく視ていると降りてくることもありますし、呼吸によって泡ができることもありますので、少し時間をかけて観察します。


こういう病歴、診察所見が何個あったら診断、という基準はありませんが、典型的には多く合致するもの。何例か診断されると慣れてくると思います。




それではこれから静岡に向かいます。志太医師会の先生方、ご無沙汰しておりました、よろしくお願い申し上げます。


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2017年02月06日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・止まらない咳31・急性〜慢性の咳で、肺炎以外、画像で見えないもの・感染性咳嗽

一体何の話や?と思われるかもしれませんが、NTM、間質性肺炎の前には、咳の鑑別についてお話をしていたのでした。


慢性の咳、でも胸部X線画像上原因疾患を示唆する異常は見当たらない、
  • on-off

  • 繰り返し

  • 過敏性

も病歴上明らかでなく、喘息らしくはない、そういうときにどう考えるか。という話でした。


で、続きです。その場合、

  • 感染症

  • 後鼻漏

  • GERD

  • COPD

  • 気管支結核

  • 気管支内の腫瘍


あたりを鑑別に考える必要があります。



■ 感染症

喘息との鑑別が必要なくらい「慢性の、激しい咳」をひき起こす感染症として、マイコプラズマ(M. pneumoniae)やクラミジア(C. pneumoniae)、それに百日咳菌などによる細気管支炎が挙げられます。


これらの感染症、日本呼吸器学会「咳嗽に関するガイドライン第2版」によると、病歴に以下のような特徴があれば疑う、とされています。

  • 感冒様症状が先行している

  • 自然軽快傾向である

  • 周囲に同じような症状の人がいる

  • 経過中に膿性度の変化する痰が見られる




診断のために行う検査として、以前はペア血清の抗体検査が行われていましたが、結果が2週間以上かかります。マイコプラズマ、クラミジア、百日咳菌いずれの場合でも、感染の治療をするのであれば病初期に抗菌薬を投与する必要があり、これでは間に合いません。


そういうこともあって、マイコプラズマについては最近使えるようになった迅速診断キットを使われることが多いようです。感度も特異度も少し心許ないようですが、特徴的な病歴がある症例で診断を固めるのには使えるでしょう。


ただ、成人のマイコプラズマ感染症は基本的に自然軽快しますから、早期診断・早期治療が患者さんの予後を改善する、だから積極的に検査をせねばならない、ということにはなりません。小児の場合には治療が必要になるので、このキットも小児科で備えられていることが多いようです。



百日咳の場合、ワクチン未接種の乳児が発症すると重症化する恐れがあるため、もう少し積極的に診断したいところです。患者さんご本人は病初期を過ぎていても、抗菌薬を投与することで周囲への感染予防に役立つといわれていますし、ご本人の咳が軽減することも経験されています。



日本呼吸器学会「咳嗽に関するガイドライン第2版」にはある程度診断のためのフローチャートがありますのでそれをご紹介します。


・14日間以上続く咳があり、

  • 発作性の咳き込み

  • 吸気性笛声(whoop):コンコンと連続で咳が出た後に息を吸うときに笛のような音がすること

  • 咳き込み後の嘔吐


のいずれか1つを伴う場合、臨床的に百日咳と診断します。しかし成人の場合、なかなかこのような典型的な症状は呈さないことも多いので、次の検査による診断を考えます。



・発症から4週間以内のとき、咽頭ぬぐい液の培養、PCR・LAMP法(遺伝子増幅法)を行う、となっていますが、保険適用がない、そもそも出来る施設が少ない、感度も低いと、なかなかハードルが高いものです。なので、そのタイミングでも血清診断を行うことが多いです。


・発症から4週間以降になると、直接菌を検出することは出来ませんので、血清診断を行います。こちらは保険適用もあり、役立ちます。PT(pertussis toxin:百日咳毒素)-IgG抗体が100EU/mL以上であれば、百日咳と確定します。


PT-IgG抗体が10〜100EU/mLのときは、DTPワクチンの接種歴を確認します。接種していなければこんなに上がるのは感染だ〜百日咳確定。1回以上接種していれば、ペア血清で細菌の感染による上昇かどうかを確認します。ペア血清で2倍以上上昇していれば百日咳確定です。接種歴が不明なときは判定が難しいですが、少なくともペア血清で2倍以上の上昇がなければ、百日咳ではないでしょう、と判断します。


PT-IgG抗体が10EU/mL未満のときは、発症から4週間以上経過しているかどうかで判断します。4週間以上経過しているのに抗体価が上昇していない場合、これは百日咳ではないとします。4週間以内であれば、まだ抗体価が上昇していないタイミングである可能性もありますから、ペア血清で10EU/mL以上になるかどうかを確認します。10EU/mL以上になれば百日咳と確定し、ならなければ違ったと判断します。


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2017年02月05日

今後の予定告知

先週は、これからの講演とかの準備をかなり頑張りました。ずいぶん内容が固まりましたので再度告知します。


■ 志太医師会 学術講演会
『こんなときどーする?抗菌薬』

平成29年2月7日(火) 19:00〜20:00
志太医師会館(静岡県藤枝市)にて


咳を主訴とする患者さんの診療にあたって、どのように鑑別を進めていくか、抗菌薬はどうするか、というテーマで、以前にお話しした内容を統合した実践的な内容でお送りします。



■ 洛和会音羽病院 医療関係者向け講演会
『やさしイイ呼吸器教室 特別レクチャー 〜Dr.長尾の胸部X線ルネッサンス〜』

2017(平成29)年2月18日(土) 午後4時〜
http://otomarukun.seesaa.net/article/444675695.html


似たような所見を山ほど見ていただき、その所見を見落とさなくなっていただく、というコーナーと、興味深い症例を集めたコーナーの2部構成といたしました。参加者の方々とやりとりしながら、参加者の方のレベルにあわせて配分を決めていきたいと思います。音羽のツワモノレジデントの皆さんにお目にかかるのが楽しみです。



■ 兵庫県保険医協会 第526回診療内容向上研究会
『胸部X線ルネッサンス』

平成29年3月11日(土) 17:00〜19:00
兵庫県保険医協会会議室(予定)にて


医師会の、久しぶりに胸部X線の勉強をする、という一般医家の先生方向けに、ケアネットさんのDVD風味の内容でお送りします。



■ 市民公開講座
〜肺の病気を知ろう〜

平成29年3月12日(日) 14:00〜16:00
滋賀医科大学 1階 多目的室にて


せんそく・COPDについて、一般の方に知っていただくことを目的とします。肺機能の測定会も行います。講演は当科の中野病院教授と山口学内講師が行います。



■ 奈良県西和医療センター

平成29年4月7日(金)


呼吸器科医のおられないご施設で、ジュニア・シニアレジデントの先生方を中心に、呼吸器症状からの鑑別診断についてお話をさせて頂きます。



■ 福井県内科医会学術講演会
『呼吸器科領域疾患の聴診・打診による診断、そして治療』

平成29年4月8日(土) 17:30〜
福井県医師会館にて


以前、「スキルアップ医療技術セミナー」で上記のタイトルでやらせていただいた、3時間×2の内容のエッセンスを、1時間でできる限りお伝えしたいと思います。



■ メディカ出版 看護セミナー
『急性期・術後の呼吸器ケア』

http://www.medica.co.jp/seminar/detail/131
神戸 2017年06月10日(土) 神戸クリスタルタワー 3階クリスタルホール
東京 2017年06月24日(土) 損保会館 2階大会議室


呼吸の基礎、肺がやっていること、血ガスの見かたを最初に学んで頂き、その知識を元に酸素の投与法、人工呼吸の設定やアラームへの対処、胸腔ドレーンの管理など、現場で使える知識を学び、現場で動けるようにアウトプットをしていただく場とする予定です。



■ 産業医科大学 

平成29年6月1日(木)


産業医科大学呼吸器内科教授の矢寺先生はカナダにいたときに同じラボでお世話になりました。先だって教授になられ、このたびお招きを頂いた次第です。ありがたやでございます。



■ 手稲渓仁会病院 

平成29年9月2日(土)


かの有名な手稲渓仁会病院からお声がけ頂きました。理学療法士の皆さんに向けて、呼吸の基礎、診察の基礎からNHCAPについて学んで頂こうと思います。



■ 日本集中治療医学会関西支部看護セミナー

平成29年11月18日(土)
iMEPニプロホール


集中治療医学会にふさわしい、「デキるICU看護師さん」には、ちゃんと呼吸の基礎から、なぜそういうことが起こるのか、理屈を理解していただきたい。方向性は定まっています。

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posted by 長尾大志 at 20:36 | Comment(0) | 活動報告

2017年02月04日

『まるごと図解 呼吸の見かた』訂正があります。

読者の方からご指摘を頂きました。


表紙.jpg

『まるごと図解 呼吸の見かた』の93ページ、左側の文章の赤字で、
「左の下肺野」とあるのは「右の下肺野」の間違いです。お詫びの上、訂正させて頂きます。


nishimura さん、ご指摘をありがとうございました。

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posted by 長尾大志 at 16:39 | Comment(0) | 書籍の訂正

2017年02月03日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・まとめ2

  • 画像上空洞が見られたら、外科手術の適応を一度は検討する。専門医への相談が望ましい。

  • M.kansasii症の場合、INH、RFP、EBにて1年間治療する。

  • 菌がMAC、M.kansasiiでなければ、呼吸器専門医に相談をして頂きたい。

  • 菌がMACでも、CAM耐性が判明した場合、RFP+EB+STFX、出来れば初期にはSMを数ヶ月〜6ヶ月併用、また出来れば呼吸器専門医に相談をして頂きたい。

  • 治療を型どおりに開始して、副作用が生じた場合、「肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解―2012年改訂 - 日本結核病学会非結核性抗酸菌症対策委員会 日本呼吸器学会感染症・結核学術部会.(Kekkaku Vol. 87, No. 2 : 83_86, 2012)」や結核診療ガイドラインなどを参照するが、出来れば早めに呼吸器専門医に相談をして頂きたい。

  • 治療中、副作用などで中断する場合を含め、単剤で治療している期間がないよう注意する。あったとしても数日にとどめたい。

  • 治療期間は菌陰性化後1年が目安だが、ある程度効果がみられ、副作用の問題がなければ2〜3年を目処に継続が望ましい。

  • 治療終了した後に再燃、再排菌があれば、それまでに終了していた化学療法を再開する。

  • 出来れば早めに呼吸器専門医に相談をして頂きたい、とはいっても相談・紹介出来ない状況であれば、これまでの記載や上記のガイドラインなどを参照して頂ければ、一通りの対応は可能かと思います。



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2017年02月02日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・まとめ1

肺非結核性抗酸菌症に関して、非専門医の先生方に是非お願いしたいことをまとめてみます。


  • 慢性の咳や痰、あるいは健診発見異常影で、『結節性陰影、小結節性陰影や分枝上陰影の散布、均等性陰影、空洞性陰影、気管支または細気管支拡張所見』を見かけたら、可能な限り喀痰検査で菌の確認をする。

  • 菌が検出されたら、治療について検討する。可能な状況なら呼吸器専門医に相談。

  • 菌がMACで、画像上空洞が見られたら、CAM+EB+RFP(+SM)で治療開始。

  • 高齢(70歳以上が目安)、胃が弱い、などの状況ではCAM400mgから少しずつ増やす。1剤ずつ加えていくなどの工夫をする。

  • 治療前に得られた菌でCAMの感受性を確認しておく。

  • 治療開始後も定期的に喀痰検査を行い、菌陰性化を確認する。

  • 各種副作用についてあらかじめ患者さんに説明し、毎回確認する。

  • 菌がMACで、画像上結節・気管支拡張のみであったら、患者さんに治療のメリットと副作用について説明し、方針を決定する。受けいれの時間を取るために、「一旦様子を見る」ことも妥当と考えられるが、悪化がみられないかどうか密にフォローアップする。

  • 明らかな悪化がある、または症状がある場合、治療開始する。

  • 呼吸器専門医に紹介する場合、紹介先に行ったら、気管支鏡をする可能性、気管支鏡のリスク、菌が確定したら治療をする、投薬による副作用の可能性などをある程度説明しておいて頂けると助かります。



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2017年02月01日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MAC以外の肺非結核性抗酸菌症

■ M.kansasii

肺非結核性抗酸菌症のうち、日本で肺MAC症についで多いのが肺M.kansasii症です。画像所見としては、薄壁の空洞が特徴的…といわれていますが、必ずしもそうとは限りません。ちょっときれいな薄壁空洞の例が乏しくて、お示し出来ませんが。


いずれにしても診断は他のNTM症と同じく、喀痰などから菌を検出することで行われます。


M.kansasii症は、肺NTM症の中では治療反応性がよく、INHも効果が見られまして、治療法は、投与量は結核に準じます。ただPZAは効果が期待出来ず、使われません。


INH 5 mg / kg(300 mgまで)/日 分1
RFP 10 mg / kg(600 mg まで)/日 分1
EB 15 mg / kg(750 mg まで)/日 分1


の3剤併用療法、排菌陰性化から1年間の投与が標準的です。



■ M.abscessus

厄介です。何かと。


日本ではM.kansasii症に次いで多いとされています。画像的にMAC症と類似した所見で、しかもMAC症例で同時に排菌し、重複感染と考えられる場合もあります。


こんな風に診断面でも厄介ですが、治療の面でも厄介です。CAMは効果があるとされますが、その次が難しい。特に内服薬は厳しく、注射薬のアミカシン(AMK)、イミペネム・シラスタチン(IPM/CS)が使われますが、これらは点滴が必要なわけで、入院での投与が現実的です。リネゾリド(LZD)も効果があるとか。そうすると、せいぜい1ヶ月ほど入院、投与してそれから外来へ、となりますが、その時に何を使うか。RFP、EB、ファロペネム(FRPM)、キノロンなどが試みられていますが、まだまだ標準治療というには道のりが遠いようです。


M.abscessusはNTMの中では迅速発育菌と呼ばれ、増殖速度が早いほうになります。固形培地で1週間以内にコロニー形成があるものが迅速発育菌、1週間以上かかるものを遅発育菌と分けています。


もちろん一般細菌に比べれば発育は遅いですが、育つのが早い=分裂速度が速い=治療で減るのも早い、ということで治療すると割とよく効くように見えることもあるのですが、結局再燃、再排菌する例が多いです。で、NTMの中で一番予後が悪い、と評されています。


そんなわけで、M.abscessus症が出ましたら、専門医へ、と申し上げたいところではあるのですが、私どもにご紹介頂けましたら確実によくなります!とも言えないのが現状です。上記以外の菌も、専門医へのコンサルトが望ましいです。


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2017年01月31日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの外科治療

線維空洞型のように菌量が多い病態では、抗菌化学療法の効果が非力であることから、手術療法を考慮されることもあるかと思います。


NTM症の外科治療に関しては、日本結核病学会の「指針(Kekkaku Vol. 83, No. 7 : 527_528, 2008)」を参照して頂くのがいいと思います。


(ここから引用)
外科治療(肺切除術)の適応 として、

(1)排菌源または排菌源となりうる主病巣が明らかで、かつ以下のような病状の場合

  • 化学療法にても排菌が停止しない、または再排菌があり、画像上病巣の拡大または悪化傾向が見られるか予想される。

  • 排菌が停止しても空洞性病巣や気管支拡張病変が残存し、再発再燃が危惧される。

  • 大量排菌源病巣からのシューブ(急速な悪化)を繰り返し、病勢の急速な進行がある。



(2)喀血、繰り返す気道感染、アスペルギルスの混合感染例などでは排菌状況にかかわらず責任病巣は切除の対象となる。


(3)非結核性抗酸菌症の進行を考えると年齢は70歳程度までが外科治療の対象と考えられるが、近年の元気な高齢者の増加や、症状改善の期待などを考慮すると70歳代での手術適応もありうる。


(4)心肺機能その他の評価で耐術である。


(5)対側肺や同側他葉の散布性小結節や粒状影は必ずしも切除の対象としなくてよい。
(引用ここまで)



外科手術を行ってもそれで解決、とはならず、あくまで外科手術は菌の多い部分を「減らす」ものであり、化学療法の併用は必須です。


明快にまとめられているので、参考になりますね。問題は手術を引き受けて下さる、相談に乗って頂ける呼吸器外科医の先生が近くにおられるかどうか、ということになるかもしれません。


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2017年01月30日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの治療・薬に対するあれこれ・投与期間など

治療期間についても、定まったものはありません。日米のガイドラインでは「菌陰性化後約1年間投与」なんて書いてありますが、エビデンスのある話ではありません。


ただ、「菌陰性化後」という言葉もあるように、菌が陰性化するかどうか、陰性化したタイミングを認識することは重要であります。その治療の効果があったかどうかがある程度わかりますから。ということは、治療中にも喀痰を定期的に採らなくてはならない。診断時にやっとの思いで採った、なんていうケースでは至難の業でしょうが、試みては頂きたいところです。


初回治療時には60〜80%で菌が陰性化するようですが、その後治療を止めるとまた悪化する例も少なからずあり、投与期間が菌陰性化後1年でいいのか、もっと長ければ再悪化が防げるのかわかっていません。再悪化したら再治療となりますが、止めると悪化⇒止められない、となってしまう症例もしばしば経験されます。まあそこは、副作用がなければ続けざるを得ない、という感じでしょうか。


現実的には菌が陰性化するかどうか(効果がどの程度か)を見ながら、また副作用が出てこないかどうかを確認しながら、まずは「菌陰性化後約1年間」を意識して投与します。


ただまあ、すぐに菌が陰性化、あるいは画像がきれいになって、効果がスゴくあったと考えられる場合は投与期間が短くてもいいのか、あるいは、出来るだけ菌を減らすべく長い方がいいのか、ということについてもハッキリした答えはありません。何となく、安全に使えるのであれば長い方がよさそう、という感触はありますが…。



SMは注射ですし、第[脳神経障害のこともありますから、2年や3年とはなかなかなりにくいでしょうが、少なくとも6ヶ月、有効例ではより長く使用したいといわれているようです。


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2017年01月29日

音羽病院にての胸部X線レクチャー

来月、2月18日(土)に音羽病院さんで胸部X線写真のレクチャーをやらせて頂きます。


だいぶ内容ができて参りましたので、少しチラ見せします。タイトルはいつもの「ルネッサンス」ですが、音羽病院さんの研修医の皆さん方も多く参加される、とのことで、今回は最近の『BRONCHO』で試みている、「所見に繰り返し曝露し、見る『眼』を養う」、をテーマに、少しまとまった数の写真を見て頂こうと思います。


○○とか、○○周りの陰影を診るコツとか、○○○○の見え方とかですかね。


あとは、症例検討。これまでにBRONCHOでお示ししたいくつかの症例と新作をお示しする予定です。いわゆる臨床推論でよくある疾患もありますが、それではありがちになってしまうので、いくつかココならではの面白そうな問題も用意して臨みたいと思います。

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posted by 長尾大志 at 20:26 | Comment(2) | 活動報告

2017年01月28日

メディカ出版看護セミナー 詳細決定

メディカ出版の看護セミナー、パンフレットができましたので告知します。


http://www.medica.co.jp/seminar/detail/131
あ、ココにはパンフレットはない…?


『急性期・術後の呼吸器ケア』【呼吸器】のタイトルではこれまでに何度かやらせて頂いておりますが、今回は、ベースの講義はある程度残して(もちろん細々とカイゼンして)、その習ったことを、実際の現場で遭遇する状況に応用して頂く、皆さんに考えて頂く時間を設けて、より現場で役立つ力を養って頂けるよう工夫しております。


血ガスの解釈、なかなか勉強・練習する機会がない…

酸素投与、やっちゃいけないことってあるんですか…

人工呼吸管理中にこんなことが起こった、どう考えればいい…?


神戸 2017年06月10日(土) 神戸クリスタルタワー 3階クリスタルホール
東京 2017年06月24日(土) 損保会館 2階大会議室


今回は、昨年、一昨年とは異なり、たぶん花火とは重ならないと思います…。

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posted by 長尾大志 at 14:52 | Comment(0) | 活動報告

2017年01月27日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの治療6・薬に対するあれこれ・診断と治療開始のタイミング・治療すんのかい!?せーへんのかい!?

そもそも、MAC症と診断したら全例直ちに治療するか、イヤその前の診断という話に戻ります。


線維空洞型は菌量も多く、進行が早くて予後が悪いので、診断即治療。これはいいでしょう。問題は近年増加している結節気管支拡張型の方です。まず診断自体、菌量が少なくてなかなか喀痰から菌が検出されないことも多いのです。また、そもそも罹りやすい「高齢でやせ型の女性」は普段から「カーッ、ペッ」と痰を吐くこともしない、Lady Windermereタイプの振る舞いなワケです。


そうすると、そもそも「痰が出ません」「痰なんて、出したことがない」みたいな話になります。だいたいそういう方は、健診発見無症状か、症状で受診したとしても「咳」「痰が絡む」程度の症状であったりして、痰が出るわけではない。それでパラパラッと中葉舌区なんかに、粒状影+気管支拡張像が見える。そういうパターンが多いでしょう。


痰が出て診断出来れば、次の話になりますが、この時点で足踏みすることも多いのではないかと思います。結節気管支拡張型で無症状の場合、「痰なんかでません」といわれたらどうするか…。


ここで考えなくてはならないのが、「MAC症と診断⇒即治療」となるかどうか、ということです。MAC症、特に結節気管支拡張型の臨床経過、予後にはかなりばらつきがあり、特に初期にはあまり進行しない、あるいは改善したように見える症例も少なくありません。そういう患者群ではランダム化比較試験が難しく、介入すべきなのかしなくてもいいのか、はたまた副作用のことを考えるとしない方がいいのか、議論のあるところになるわけです。


まあ結局結論は出ておらず、「専門医に相談してね」みたいなことになっていますが、専門医だって困っているのです。そんなこと言われても困りますわね。じゃあ実際どうするか。


現状ではどこにも明記されておらず、高齢者で、症状がなくて、あるいはあってもたまに痰が出る程度、画像上陰影もそんなに強くない、そんな場合、まずは経過観察をしてもよいのでは、悪化があればその時点でまた考えましょう、そんなフワッとした感じの考え方がコンセンサスではないかと思っています。


とすると、上のような場合、どっちにしろ経過観察なら、無理して診断しなくても、という考え方も出来るでしょう。CT画像的にMAC症の疑いで、痰が採れないときには、ちょっと経過観察、と。


それで悪化するようなら、もうちょっと痰も採りやすくなるだろうから、その時点で診断を考える。明らかに悪化傾向があれば、普通にやって痰が採れなくても、生理食塩水や高張食塩水の吸入後喀痰を誘発するとか、胃液培養や気管支洗浄(出来れば)に踏み切りたいところです。要するに、「治療したくなるタイミングになったら、きちんと診断出来るよう材料を採る」ということですね。


一方で、現在の化学療法に絶対的な効果が保証されておらず、しかも着々と進行する症例も多い、と考えると、とにもかくにも出来るだけ早く、診断時に治療を行ってみるべきだ、とする考え方もあります。


「ガイドライン」や「統一見解」のない世界ですから、どちらが絶対・正解というわけではありません。効果の点、副作用について患者さんやご家族によく説明し、よく相談されて方針を決めていただきたいと思います。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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