2013年01月31日

胸部レントゲン道場51・CT総論8・で、これらの構造物が侵されるとどうなるか・間質と実質

で、これらの構造物が侵されるとどうなるか…を書きかけたのですが、間質の説明をしていないことに気づきました。ここでしておきましょう。


本来の「間質」とは、「実質」に対する言葉です。


実質とは実際にガス交換をしている「場」のことですから、肺胞上皮に囲まれた、肺胞腔、空間のことです。
そして、肺胞上皮と隣の上皮の間に存在する結合組織、肺胞中隔にあたる場所を間質と呼んでいます。


20実質と間質.jpg


図の青色の部分(実際にはほとんど空気)が実質、オレンジ色の部分が間質です。


…なのですが、ややこしいことに、肺にはもう一つ「間質」と呼ばれる場所があります。それは、肺動脈・肺動脈や気管支の周囲、胸膜にある結合組織で、この場所は本来の(上で書いた)間質とは違う、広義の間質、すなわち「広義間質」と呼び習わされています。


21肺動静脈・気管支周囲も「(広義)間質」.jpg


ですから、「間質」という言葉を使われる際には、狭義の間質なのか、広義の間質なのかを必ず意識しておかないと、全然違うことを言ってしまうことになりかねないのです。


22「狭義の間質」と「(広義)間質」.jpg


普通は、狭義の間質を単に「間質」と呼び、広義の方を「広義間質」と呼んで区別しています。


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posted by 長尾大志 at 19:11 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月30日

胸部レントゲン道場50・CT総論7・正常CTで見えるもの・肺の末梢における構造たち・小葉構造5・リンパ系

肺動脈+(細)気管支は小葉中心部に分布し、肺静脈は小葉辺縁部に分布します。


17小葉中心の肺動脈と小葉辺縁の肺静脈.jpg


一方、リンパ管はどこに分布しているかというと、血管系と比べて非常に微細な網目状の構造物として、太い脈管系(要するに血管や気管支)の周りを取り巻くように分布している、といいます。


イメージとしては、

XXXXXXXXXXXX
XXXXXXXXXXXX


こんな感じで網目状に巻き付いているイメージですね。


18気管支・血管・肺静脈の周囲にリンパ管.jpg


こんな感じになります。


リンパのおおまかな流れとしては、肺の一番外側から肺門に向かって、放射状(の逆向き)に流れて肺門に集まると理解しましょう。


19リンパの流れ.jpg


上の図では太い矢印で書いてありますが、実際は細い細い網の目状のリンパ管があって、その中をリンパ液がゆっくりゆっくり流れている、こういう感じです。


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posted by 長尾大志 at 16:06 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月29日

胸部レントゲン道場49・CT総論6・正常CTで見えるもの・肺の末梢における構造たち・小葉構造4・肺静脈

空気は気管支を行ったり来たりできるので、気管支を通って入った空気は、肺胞で行き止まりとなり、また気管支を通って出て行きます。一方、血液は血管内を行ったり来たりはできません。基本的に一方通行であります。


12小葉と肺動脈.jpg


肺動脈は小葉の中心部で終わっている。というか、そこから周りの肺胞(周囲の毛細血管)に静脈血が散らばっていきます。肺胞周囲の毛細血管を通過する過程で、静脈血は空気と触れてガス交換を行い、酸素化されて動脈血になるのです。


15静脈血が肺胞へ.jpg


ここで考えてください。じゃあ、静脈はどこにあるのが一番理にかなっているか。





学生さんにいつも尋ねるのですが、結構正解が出ます。静脈は小葉を囲う隔壁(小葉の辺縁部)内にあるのが理にかなっていますね。


16小葉中心の肺動脈から小葉辺縁の肺静脈へ.jpg


小葉中心の肺動脈から散らばった静脈血は、肺胞周囲の毛細血管を通過する過程で、空気と触れてガス交換を行い、酸素化されて動脈血になった後に小葉辺縁の肺静脈に入り、左房に還っていくのです。


ちなみに小葉辺縁の肺静脈、端の部分(肺の端にあたります)での太さは、0.5mmより細くなっています。この0.5mm内外が、実はレントゲンやCTを見る上で、後ほど大いにものを言うので、意識しておいてください。


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posted by 長尾大志 at 19:24 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月28日

胸部レントゲン道場48・CT総論5・正常CTで見えるもの・肺の末梢における構造たち・小葉構造3

ということで、ようやくA-aDO2の校正も終わり、CT総論に戻らせて頂きます。


自分で横道にそれておいていうのもナンですが、小葉構造を忘れた方はもう一度思い出しましょう。


9小葉構造.jpg


小葉(上図の黄色で囲まれた、1辺1cm程度の多角形の領域)を拡大してみましょう。
細気管支の端っこ(径が0.5mm)と、伴走する肺動脈(径が0.5mm)、その細気管支が支配するひとかたまりの肺胞(大きさ0.2mm)が含まれています。


12小葉と肺動脈.jpg


吸気の時は、気管支を通じて空気が入ってきて、肺胞に散らばり…


13小葉息を吸うと.jpg


ガス交換の後に、同じルートを帰って行きます。


14小葉息を吐くと.jpg


一方、血液は違うルートをたどることになるのですね。


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posted by 長尾大志 at 13:02 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月27日

SKE48松井玲奈・NMB48山本彩の言葉

以前書いたように、SKE48のメンバーが9人一斉に卒業となりましたが、(実質的に)リーダーの松井玲奈は
「強く、ならなくちゃ。SKE48もこれから夢へ向けての頑張り時」みたいな発言をしていました。


全然私とは異なる状況で発せられたセリフではありましたが、何となく、自分に重なるところがあり、大変印象的な言葉で、大いに共感しました。


春は別れの季節。他病院へ行かれる先生方を送り出すのは、寂しいものです。
まあ、若い先生方は戻ってきてくださることが多く、「武者修行に送り出す」といった感覚なのですが、そうでない先生方もおられて、そういうときの気持ちに、松井玲奈の言葉がなんかすごくフィットしたって感じです。


また、この春は以前一度卒業?された先生が戻ってきていただけるかもしれず、大変心強く感じています。



NMB48の山本彩は、元々音楽をやりたくて、アイドルには興味がなかったそうですが、たまたま?入ったNMB48で頑張っているうちに、「NMB48にいることでかなえられる夢がある。」と思うようになり、がむしゃらに頑張っているそうです。

私は滋賀出身でありません。たまたまの状況によって滋賀にやってきたものです。しかし、ここで頑張っているうちに、滋賀を愛し滋賀の医療に貢献したい、という気持ちになってきました。
(何故このような心持ちになったかは、アドバンスの自己紹介の時に言いましたね…)


私も、滋賀医大にいることでかなえられる夢がある、と、思うようになって、山本彩の思いがフィットした感があるのです。




若い先生や学生さんに、「先生は滋賀医大にずっとおられるんですか?」とよく聞かれます。

まあ、この業界、自分の意思が必ずしも通るものではありませんが、今のところはずっといる予定。許されるものであれば、できるだけこの場で夢を追いかけたい、と思っています。

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posted by 長尾大志 at 23:04 | Comment(0) | 日記

2013年01月26日

EFGR?

今日は時間もないので小ネタで。


今週の学生さんのプレゼンで、非扁平上皮Kの治療選択に、「EFGR変異を調べます。」と。



おしい!


確かにEFGRの方が、語呂がいいのですが…。

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posted by 長尾大志 at 22:53 | Comment(0) | 用語は正確に!

2013年01月25日

ガスの割合を表す方法・PaO2、FiO2、SpO2…3・SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)とSaO2(動脈血酸素飽和度)

パルスオキシメーターの普及と共によく用いられるようになったSaO2、SpO2は、PaO2とは全く異なるものなのですが、O2が足りているかどうかを見る指標として、PaO2と並び広く使われています。


体内に入った酸素を運搬するのは、ほとんどがヘモグロビンの仕事です。肺胞から血液中に入った酸素はヘモグロビンと結合して運搬されるのですが、血液中のヘモグロビンが持つ最大の結合能力に対して、実際に酸素が結合しているヘモグロビンの割合を酸素飽和度といい、%で表示します。


ここでいう「飽和度(saturation)」とは、存在するヘモグロビンのうち何%と酸素が結合しているかを表す指標で、動脈血に酸素が目一杯溶け込んで飽和している状態を100%として計算しています。


酸素飽和度は、

1文字目にsaturation(飽和度)のS、
2文字目にartery(動脈)という言葉の頭文字であるaを下付き文字にして、
O2(酸素)の割合を表すために

SaO2

と表記します。


通常、SaO2はパルスオキシメーターを用いて経皮的にを測定するので、そうやって測定された値であることを表すために、

1文字目はsaturation(飽和度)のSなのですが、
2文字目にpercutaneous(経皮的)という言葉の頭文字であるpを下付き文字にして、
O2(酸素)の割合を表す

SpO2

という表記にします。


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posted by 長尾大志 at 16:10 | Comment(0) | A-aDO2のややこしい話

2013年01月24日

ガスの割合を表す方法・PaO2、FiO2、SpO2…2・PaO2

ガスの割合を表す方法として、%(割合)で何でも表示できればそれが簡単なのですが、体内での動態、つまり吸入気に含まれている酸素が血液中に移行し、組織で拡散して…等々のことを考えるときに、分圧という概念を使うと便利です。


分圧とはある空間の中に複数のガスが存在する場合の、各々のガスの圧力で、各々のガスの割合に比例します。つまり%(割合)の代用になるのです。


気体に接している液体に、あるガスがどの程度溶けているか、それはその気体の分圧に比例しますので、ガスの溶解具合は分圧で表示できます。


気体や液体、あるいは組織において、ガスは分圧の高い方から低い方へ移動します。酸素を大気から吸入して、肺胞でガス交換されて、血中に入って運搬されて、組織に移行する、その過程のすべてを分圧で表現することで、ガスの移動様式が理解しやすくなるのです。


例えば吸入した空気が肺胞に入りますが、肺胞内における肺胞の中のO2の濃度にあたる、肺胞気酸素分圧を表現するには、

pressure(圧力)という言葉の頭文字であるPと、
alveolus(肺胞)という言葉の頭文字であるAを下付き文字にして、
O2(酸素)の割合を表すために


PAO2


と表記します。


また、動脈の中のO2の濃度にあたる、動脈血酸素分圧は、

pressure(圧力)という言葉の頭文字であるPと、
artery(動脈)という言葉の頭文字であるa(alveolus=肺胞と同じ頭文字なので、区別するためにこちらは小文字で表記します)を下付き文字にして、
O2(酸素)の割合を表すために


PaO2


と表記することになります。


肺胞の中から動脈血にO2がちゃんと移動できているかどうかは、PAO2とPaO2の差を見ればわかります。その差は肺胞(alveolus)と動脈(artery)の差=difference(D)ですから、

alveolus(肺胞)とartery(動脈)のdifference(差)を各々の言葉の頭文字であるA、a、Dを用いて、
alveolus(肺胞)という言葉の頭文字であるAを下付き文字にして、
O2(酸素)の割合を表すために


A-aDO2


と表記するのです。


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posted by 長尾大志 at 17:40 | Comment(0) | A-aDO2のややこしい話

2013年01月23日

ガスの割合を表す方法・PaO2、FiO2、SpO2…の使い分け

昨日あんなことを言っておいてナンですが、ちょっと今日はガスの割合を表す方法について、吟味したいと思います。


…ただ今書籍化校正の真っ最中なのですが、かな〜り大幅な書き直しを行っています。読み返してみると、もっとわかりやすくできるな〜とか、単に間違っているとか(汗)、編集担当の方の手を大いに煩わせながらも、かなりカイゼンが見られています。

純粋に間違っているところを発見したらその都度ブログ記事をこっそり修正していますので、ご安心?ください。


で、今A-aDO2のところを直していて、PaO2とかの説明を付け加えましょう…というお話から、大幅な加筆をしているところなのですが、時間の関係で、ブログ記事としても読めるようにしようと思い、急遽取り上げる次第です(要は校正記事以外にブログ記事を書く暇がないとも言う…)。




体内の「ある場所」における「あるガスの割合」を表す表記方法は、こんなふうになっています。


PaO2


まず1文字目には、そもそも割合を表すのか、圧力(分圧)を表すのか、飽和度を表すのか、を示す文字を置きます。使う文字は…

F:fraction(分画、割合)、単位は%
P:pressure(圧力)、単位はTorr=mmHg
S:saturation(飽和度)、単位は%



次の2文字目は、どこにあるガスのことか(ガスのある場所)を表す文字を置きます。使う文字は…

I:inspiratory(吸入気)
A:alveolus(肺胞)
a:artery(動脈)



最後に、何のガスのことを見ているかを置きます。

O2:酸素
CO2:二酸化炭素
N2:窒素



大気中の酸素の割合、ご存じですね。21%です。
そして窒素が79%、まあこの2つでほとんどを占めている、ということもご存じでしょう。


このように気体として存在するガスの割合は、%で表すのが理解しやすいと思います。体外に存在する空気(通常は大気)の中に酸素が何%含まれているか、ということです。


例えば吸入気、息を吸うときに外から入ってくる空気の中には酸素は21%含まれていますから、その割合を表すには、

fraction(割合、分画)という言葉の頭文字であるFと、
inspiratory(吸入気)という言葉の頭文字であるIを下付き文字にして、
O2(酸素)の割合を表すために


FIO2


と表記します。


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posted by 長尾大志 at 16:49 | Comment(0) | A-aDO2のややこしい話

2013年01月22日

胸部レントゲン道場47・CT総論4・正常CTで見えるもの・肺の末梢における構造たち・小葉構造2

小葉構造に着目します。


9小葉構造.jpg


まずは、小葉(上図の黄色で囲まれた多角形の領域)を拡大してみましょう。
細気管支の端っこと、その細気管支が支配するひとかたまりの肺胞が含まれています。


10小葉拡大図.jpg


小葉の1辺は1cm程度で、細気管支の端っこは、径が0.5mm、そして肺胞は大きさ0.2mm。略図なので縮尺が少しおかしいですが(少し肺胞がデカ過ぎるのですが…汗)、理解しやすいようにこういう表示にしておきます。


11小葉拡大図.jpg


気管支にはずっと肺動脈が伴走してきています。肺動脈には静脈血が流れていますから、青く塗ってあります。そして、径は気管支と同じ、故に肺動脈の端っこは0.5mm。


12小葉と肺動脈.jpg


…てところで図を作るのに力尽きました。明日に続きます。


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posted by 長尾大志 at 18:15 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月21日

胸部レントゲン道場46・CT総論3・正常CTで見えるもの・肺の末梢における構造たち・小葉構造

今日からのお話は厳密に書くとかなりややこしくなるため、まずは「わかりやすさ、理解しやすさ」を最優先に、大胆に細かいところを端折ってお送りします。また、病理画像やシェーマ図も持ち合わせがありませんので、簡単な図になってしまいます。


ですので、もっと深く小葉構造について勉強されたり、HRCTの教科書を読まれたりする方は、もうそちらで理解してください(開き直り)。




正常の胸部レントゲン写真やCT上で見える肺の構造物は、大きさ(太さ・厚さ)が0.5mm以上である、割と末梢までの血管と中枢付近の気管支であります。


気管支は肺門で肺内に入る、そのときから肺動脈と伴走します。そして分岐するときも同じタイミングで分岐し、基本、最後まで伴走しています。


最後…ってどの辺かというと、大体肺の一番外から5mmほど入ったところです。


7気管支+肺動脈の最後はこの辺.jpg


その「最後」の気管支と肺動脈が支配しているひとかたまりの肺胞を小葉といいます。

正式には「二次小葉」と言いますが、ここでは単に「小葉」としておきます。
ちなみに小葉に対する「大葉」は、例の上葉・中葉・下葉です。


小葉とはある程度の数の肺胞が集まった、肺の構成単位です。大体1辺が1cm程度の多面体(CTで見ると多角形)で、中心部に細気管支と伴走する肺動脈があります。周囲は小葉間隔壁と呼ばれる薄い壁で境されています。


8小葉構造.jpg


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posted by 長尾大志 at 18:41 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月20日

キャリアを中断する、ということ。

SKE48のメンバーが、9人一度に卒業、ということで、一気に大量にやめた点でニュースになっていました。


彼女たちも夢を持って加入したものの、思っていたような活動ができない、とか、夢に近づけない、とか、いろいろと理由はある模様。


選抜メンバーも含まれており、ファンからは相当惜しむ声や、残念がる声があるようです。




キャリアの途中で中断する決断をとる、私たちの業界でも多くの事例が見られます。


事情は当人にしかわかりませんが、外部から見ていて「もったいないなー」と思えることが多いものです。


「やめよう」と思ったときに、すこしでも相談できる人がいれば、やめずに続けられたかもしれない。
やめてしまうよりも、もっと良い選択肢があったかもしれない。


以前にも書きましたが、キャリアの中断は、臨床能力の低下など、当人にとって好ましいものではない結果につながる場合があります。もちろん、「別の目標が見つかった」「他にやりたいことがある」場合はその限りではありません。


ただその場合も、他にやりたい分野に、どのように進んでいくかも、先達として相談に乗ることはできるはず。思い込みもありますし、自分ではわからない適性も、アドバイスが得られるでしょう。


やめるのは、いつでもできる。その前に、じっくり相談してみましょう。


SKE48のメンバーでも、相談できる人がいて、適切に導かれていたら、やめずに済んだ人もいたかもしれません…。

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posted by 長尾大志 at 19:32 | Comment(0) | 教育理念・メッセージ

2013年01月19日

センター試験監督

今日はセンター試験1日目。試験監督をしてきました。


いつも思うことですが、とにかくすべてがマニュアル化されていて、試験時間はもちろん、しゃべる言葉も一語一句違わず正確に、時間通りにしゃべる。


二言目には「何かありますと大変ですので…」と皆さんピリピリ。確かに、何かあると100%全国ニュースになりますねー。


ということで、創意工夫の対極にある何時間かを「つつがなく」終え、くたびれ果てました…。



Facebookで原先生にインスパイアされた勉強会の試案を考えました。


県下の家庭医の方々や、勉強したいけれども機会のない非専門医の先生方、結婚や出産、育児を契機に臨床を離れたけれどもまた現場に戻りたいという方、それに研修医や学生さん、コメディカルの方々…対象はいろいろ想定できるけど、ニーズはどれくらいあるのか、どういう形式でやったらいいか…アイデアはいろいろ出てくるものの、まとまらずに時間切れ。スポーツクラブとサッカーと子供の相手で、まとまるどころか思いつきをほとんど忘れてしまいました。(゜д゜)


そんなわけで、備忘のため「勉強会の試案を考えた」ということだけでも、書き残しておきます。

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posted by 長尾大志 at 23:01 | Comment(0) | 日記

2013年01月18日

胸部レントゲン道場45・CT総論2・正常CTで見えるもの・肺の末梢における構造たち

これからのお話は、本来組織標本と対応させてこそ理解できるものですが、残念ながら手持ちの組織標本がないため、イラストで代用させて頂くことになりそうな予感がいたします。



血管や気管支は、肺門部で最も太く、1cm以上ありますが、そこから20回近く分岐を繰り返して、細気管支と呼ばれる領域になって参りますと、径が0.5mm程度になります。


4肺内血管(気管支も)の太さ.jpg


先に述べましたとおり、正常の胸部レントゲン写真やCT上で見える肺の構造物は、大きさ(太さ・厚さ)が0.5mm以上である、血管(割と末梢まで)と気管支(中枢付近)であります。


5正常CT.jpg


上の写真で見えている白い棒状の、枝分かれしている構造物はほとんどが血管、ということです。気管支は中枢のホンの一部しか見えておりません。


6見える気管支はこれだけ.jpg


これが正常CT像です。


さまざまな病気になり、さまざまな肺内の構造物

  • 肺胞

  • 気管支

  • 血管(動静脈)

  • リンパ管

  • (広義の)間質


などがやられて参りますと、その構造物が

  • 空気濃度に近くなって黒っぽく写ったり

  • 水濃度に近くなって白っぽく写ったり


します。


肺胞や末梢の気管支、リンパ管は正常では(小さすぎて、細すぎて)見えませんが、病気になると水成分が増えたり結節ができたり、さまざまな機序で見える大きさになってきます。つまり、病気になることで可視化する、そのパターンを捕まえる作業が必要になるのです。


何が可視化したか、これを理解すれば陰影の成り立ちは理解できます。


そのためには可視化の機序を知っておいて頂く必要があります。なかなか、つらいところかもしれませんが、しばらくお付き合いください。


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posted by 長尾大志 at 18:52 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月17日

胸部レントゲン道場44・CT総論1・正常CTで見えるもの

胸部レントゲンやCTの分解能は、およそ人間の肉眼の分解能である0.5mmですから、0.5mm以上の大きさのものが「見える」はずです。


肺の構造物の中で、0.5mm以上の大きさのものは血管と気管支ですが、血管の中には血液が通っていて、気管支の中には空気が通っています。


1血管と気管支の見え方.JPG


そのため、血管は1本の棒に見えますが、気管支は平行に走る2本の(細い)棒として見えるはずです。


ここで考えてください。径が0.5mmの意味を。


血管径が0.5mmの場合、その血管は0.5mmの棒状構造物として、胸部レントゲン写真やCT上で見えるはずですね。


2血管の見え方.JPG


一方、径が0.5mmの気管支はどうでしょうか。その場合、気管支壁は0.5mmよりも随分薄いはず。そのような構造物は胸部レントゲン写真やCT上では見えません。気管支(の壁)が見えるようになるのは、壁の厚さが0.5mm以上なければならないのです。


3気管支の見え方.JPG


壁の厚さが0.5mm以上、ということは、相当中枢に近い、太い気管支であります。そういうレベルの気管支しか胸部レントゲン写真やCT上で見えない、ということになります。


まとめると、正常の胸部レントゲン写真やCT上で見える肺の構造物は、血管(割と末梢まで)と気管支(中枢付近)である、ということになります。


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posted by 長尾大志 at 10:59 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月16日

胸部レントゲン道場43・各論16・レントゲンで白くなる病態10・べったりと白くなる連続性の陰影・浸潤影2・air bronchogramの話をする前に

浸潤影と来れば、air bronchogramを採り上げないわけには参りません。が、その話をしようとすると、前提条件となる基本事項をお話ししなくてはなりません。


これ、もっと最初のうちにお話ししておくべきだったような気がいたしますが…。



胸部レントゲンやCTの分解能は、およそ人間の肉眼の分解能である0.5mmです。従って、胸部レントゲン写真やCTを撮影した場合、0.5mm以上の大きさのものが「目に見える」はずです。


肺を構成する成分には、次のようなものがあります。


  • 肺胞

  • 気管支

  • 血管(動静脈)

  • リンパ管

  • (広義の)間質



このうち0.5mm以上、という条件を満たすものは実は少ないのですね。


  • 肺胞:径0.2mm

  • 気管支:径0.5mm〜2cm

  • 血管(動静脈):径0.5mm〜2cm

  • リンパ管:0.5mmより細い

  • (広義の)間質:血管や気管支などよりもずっと薄い



要は、血管と気管支だけなのです。ところで、血管の中には血液が通っていますが、気管支の中には空気が通っていますね。


1血管と気管支の見え方.JPG


すると、血管は血管壁(水濃度に近い)と血液(水濃度)が一体化して見えますが…。


2血管の見え方.JPG


気管支は中を通っている空気を挟んで、気管支壁が上下(?)2本、平行に走っているのが見えるのです。


3気管支の見え方.JPG


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posted by 長尾大志 at 20:06 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月15日

胸部レントゲン道場42・各論15・レントゲンで白くなる病態9・べったりと白くなる連続性の陰影・浸潤影1

胸部レントゲン写真でべったりと白くなる病変、胸水(腫瘤)と無気肺に引き続いて浸潤影(consolidation)を採り上げます。総論のところでも述べたように、病変部が大きくなっているのか、小さくなっているのか、大きさが変わらないのか。これが病変部の性質を推測する手がかりになります。


  • 腫瘤は辺縁が外向きに凸

  • 無気肺は辺縁が内向きに凸

  • それに対して、浸潤影は辺縁がまっすぐで大きさに変動がない



XP (95).jpg


XP (96).jpg


XP (97).jpg


浸潤影を作ってくる疾患は、多くの場合、肺炎です。原因となる微生物が肺胞領域で増殖、それに対して防衛軍である好中球、リンパ球、マクロファージなどが局所に遊走してきまして、戦いが始まる。その戦いの場を「炎症」と呼びます。


1肺の模式図.JPG


戦いの場では肺胞腔内に「浸出液」があふれ出ます。そして戦いが進むにつれ、浸出液内に山ほど微生物、防衛軍の屍骸が累積する。これが「膿」です。膿の見た目が白く濁っていたことから、「白血球」の名がついたことはご存じでしょう。


病変は肺胞から肺胞へ、気道、Kohn孔を通して波及し、連続する病変が生じます。肺胞1個1個を拡大して見てみると…


2Kohn孔.JPG


こうやって連続性に肺胞が水浸しになることで、浸潤影が生じます。浸潤影は元々空気のあった肺胞腔が水浸しになってできた陰影、と考えて頂くと理解しやすいと思います。スポンジに水が染みこんだだけ、という感じでしょうか。


3浸潤影の模式図.JPG


浸潤影は肺胞の構造そのものを改変するわけではなく、肺胞は伸びも縮みもしないため、辺縁は「まっすぐ」に見えるのです。



厳密に言うと、肺炎でも病変が膨張というか拡張する場合もあるのですが、ここでは理解のために、まっすぐとしておきます


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posted by 長尾大志 at 18:56 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月14日

胸部レントゲン道場41・各論14・レントゲンで白くなる病態8・べったりと白くなる連続性の陰影・無気肺3(今日こそ)

そういうわけで、無気肺の特徴は「しぼむ」「縦隔、横隔膜などを引っ張り込む」ということです。


例えば今日日、大学にやってくる症例で一側肺が真っ白になるような状況は胸水か無気肺が多いのですが、胸水か無気肺かでは、次のactionが全く異なるわけです。


  • 胸水だったら、胸膜疾患であるため、次は胸膜側から(つまり、経皮的な)アプローチになる。

  • 具体的には、胸腔穿刺による胸水採取、胸膜生検、胸腔鏡

  • 無気肺の場合、気管支の病変が想定されるため、次は気管支側からのアプローチ。

  • すなわち、気管支鏡を施行する必要があるわけです。



ということで、一発でこの二つを見分けるために、縦隔(気管)の偏位を確認しましょう。


33縦隔(気管)の偏位を確認.jpg


もうおわかりですね。上の2枚、いずれも左に病変がありますが、このうち、左は気管が左にshiftしていますが、右は右にshiftしています。


34縦隔(気管)の偏位.jpg


左は無気肺、すなわち気管支病変、右は胸水(あるいは腫瘤)ということは、ここまで読んできていただければ明らかですね。


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posted by 長尾大志 at 22:58 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月13日

今日の症例・無気肺で肺が縮むということ3

一昨日の今日の症例、まだ引っ張ります。


できたてホヤホヤの無気肺を、できたてホヤホヤとして見る機会、そうないように思います。是非ご覧ください。


29できたてホヤホヤの無気肺.JPG


30できたてホヤホヤの無気肺.JPG


造影されたリンパ節(黄矢印)で気管支が閉塞したことで、赤線で囲まれた領域に無気肺が生じています。


31できたてホヤホヤの無気肺.JPG


32できたてホヤホヤの無気肺.JPG


冠状断では、横隔膜の挙上(黄矢印)も認識できますね。


造影CTでは、


  • 血管(白に近い)

  • 肺実質(軟部濃度)
    そして、

  • 気管支(黒に近いグレー)



が認識できます。時間が経つと、血流が減り、肺実質が器質化して、だんだん均一になってきますが、できたてホヤホヤですとまだ血管もハッキリ、そして気管支もしっかり見えます。よーく見ておいてください。


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posted by 長尾大志 at 23:30 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月12日

今日の症例・無気肺で肺が縮むということ2

4日後のCTでは腫瘤が消失して見えますが、その代わりに新しい影が見えるようになっていますね(赤線)。


25_4日後のCT.JPG


この陰影は真っ白で内向きに凸、すなわち無気肺です。
初診時のCTで、右肺門におそらくリンパ節転移による腫瘤が見られます(黄矢印)。
そのため、左で見える底区枝(緑矢印)が右では見られず、閉塞し(かかっ)ていることがわかります。


26リンパ節転移による腫瘤.JPG


そして4日後には、右下葉の無気肺が完成。そのために、下葉は大幅に縮むことになります(下図)。


27下葉はこんなに縮んだ.JPG


縮んだ下葉に引っ張り込まれる形で、原発の腫瘤は後ろに移動します。そして無気肺部分と一体化したわけです。下図の赤丸部分が無気肺と一体化した原発腫瘤で、少し空洞が見られるのが原発の名残、というわけですね。


28原発巣は引っ張られて後ろへ.JPG


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posted by 長尾大志 at 22:11 | Comment(0) | 胸部X線道場