まずはわかりやすい例として、いつも学生さんにお話ししている「静脈の陰影」。

小葉辺縁の肺静脈、端の部分(肺の一番端にあたります)での太さは、0.5mmより細くなっています。従って、肉眼(分解能0.5mm)やCT(分解能0.5mm)では見えないということになります。

もう少し中枢側の肺静脈や、肺動脈は見えますが、肺の端に近い部分は、正常では何も見えないのです。
ここで、肺静脈、およびその周囲の間質に水が溜まってふくれあがる疾患=うっ血性心不全を考えてみましょう。特に肺の下の方、肺底区を中心に、「間質」に水が溜まります…。
この場合の間質とは、狭義も広義もどちらも指すのですが、特に広義間質(動静脈・気管支周囲の結合組織)に焦点をあてます。
下肺中心の静脈内、あるいは周囲の広義間質に水が溜まって肥厚(拡大)すると…。

通常目立った構造物が見られない肺の最外層で、広義間質が目立ってきます。最外層の広義間質は肺の外縁と垂直、つまり水平に走っています。また、小葉の大きさは1cm程度なので肺静脈の間隔も1cm程度になります。
以上から、肺の下部、最外層に、1cm程度の間隔で並ぶ、水平な線=Kerley’s B lineが生じてくるわけです。
通常水は左右どちらにも溜まりますから、左右両側に見られます。

実例をご覧ください。うっ血性心不全症例です。

心拡大、肺紋理の増強(ぷちバタフライ?)、Kerley’s B line、と、いずれも心不全を示唆する所見ですね。

CTでは、肺の最外層に限らず、やたらと線が増えているのが目立ちます(黄矢印)。この線が広義間質にあたります。
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