2013年02月01日

胸部レントゲン道場52・CT総論9・で、これらの構造物が侵されるとどうなるか・カーリーのBライン(Kerley's B line)

長々と肺の「構造、構成物」について述べてきましたが、これは全て、「異常影の成り立ちを理解する」ために必要な知識なのです。今日からはいよいよ「ナゼ異常影が生じるのか」を考えます。


まずはわかりやすい例として、いつも学生さんにお話ししている「静脈の陰影」。


17小葉中心の肺動脈と小葉辺縁の肺静脈.jpg


小葉辺縁の肺静脈、端の部分(肺の一番端にあたります)での太さは、0.5mmより細くなっています。従って、肉眼(分解能0.5mm)やCT(分解能0.5mm)では見えないということになります。


23肺静脈の端はXPでもCTでも見えない.jpg


もう少し中枢側の肺静脈や、肺動脈は見えますが、肺の端に近い部分は、正常では何も見えないのです。


ここで、肺静脈、およびその周囲の間質に水が溜まってふくれあがる疾患=うっ血性心不全を考えてみましょう。特に肺の下の方、肺底区を中心に、「間質」に水が溜まります…。


この場合の間質とは、狭義も広義もどちらも指すのですが、特に広義間質(動静脈・気管支周囲の結合組織)に焦点をあてます。


下肺中心の静脈内、あるいは周囲の広義間質に水が溜まって肥厚(拡大)すると…。


24肺静脈、および(広義)間質が拡大する.jpg


通常目立った構造物が見られない肺の最外層で、広義間質が目立ってきます。最外層の広義間質は肺の外縁と垂直、つまり水平に走っています。また、小葉の大きさは1cm程度なので肺静脈の間隔も1cm程度になります。


以上から、肺の下部、最外層に、1cm程度の間隔で並ぶ、水平な線=Kerley’s B lineが生じてくるわけです。

通常水は左右どちらにも溜まりますから、左右両側に見られます。


25肺下部の間質が肥厚= Kerley’s B line.jpg


実例をご覧ください。うっ血性心不全症例です。


26 Kerley’s B line実例.jpg


心拡大、肺紋理の増強(ぷちバタフライ?)、Kerley’s B line、と、いずれも心不全を示唆する所見ですね。


27 Kerley’s B line実例.jpg


CTでは、肺の最外層に限らず、やたらと線が増えているのが目立ちます(黄矢印)。この線が広義間質にあたります。


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posted by 長尾大志 at 15:45 | Comment(2) | 胸部X線道場