2013年02月16日

第107回医師国家試験呼吸器系問題解説・微妙な免疫低下状態に合併した結節影の鑑別・解答と解説

墨汁染色で見られる物体を知っているか知らないか。


墨汁染色を行う意味は、夾膜を有する菌体の存在を見たいからなのです。夾膜は墨汁で染まらず、周りの黒に対して色が抜けるためよく見えるのです。胸膜を持つ、球形の酵母様菌体を持つ菌として、クリプトコッカスを想起しましょう。


国試レベルであれば、菌体が何らかの染色で示される感染症はそれほど多くありません。Ziehl-Neelsen染色における抗酸菌、Grocott染色におけるアスペルギルス、ニューモシスチスと並んで、墨汁染色のクリプトコッカスは是非覚えておきたいものですね。


選択肢について考えます。

×a:クリプトコッカスは主に鳩などの糞の中で増殖して、排泄された糞からモワモワ空気中に浮遊し、それを吸い込むことで感染が成立する、典型的な外因性感染です。

○b:肺クリプトコッカス症における血清抗原検査の感度は、ある程度以上の大きさ(2cm以上)の病変に関しては高いといわれています。これが正解。

×c:クリプトコッカス症において血清β-D-グルカン値は通常、上昇しないのが特徴です。真菌感染と思ってこれを選んではいけません。

×d:発症予防にST合剤の内服が有効であるのはニューモシスチス肺炎です。クリプトコッカスの予防には抗真菌薬を使います。

×e:原因微生物はCryptococcus neoformansであります。


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