墨汁染色で見られる物体を知っているか知らないか。
墨汁染色を行う意味は、夾膜を有する菌体の存在を見たいからなのです。夾膜は墨汁で染まらず、周りの黒に対して色が抜けるためよく見えるのです。胸膜を持つ、球形の酵母様菌体を持つ菌として、クリプトコッカスを想起しましょう。
国試レベルであれば、菌体が何らかの染色で示される感染症はそれほど多くありません。Ziehl-Neelsen染色における抗酸菌、Grocott染色におけるアスペルギルス、ニューモシスチスと並んで、墨汁染色のクリプトコッカスは是非覚えておきたいものですね。
選択肢について考えます。
×a:クリプトコッカスは主に鳩などの糞の中で増殖して、排泄された糞からモワモワ空気中に浮遊し、それを吸い込むことで感染が成立する、典型的な外因性感染です。
○b:肺クリプトコッカス症における血清抗原検査の感度は、ある程度以上の大きさ(2cm以上)の病変に関しては高いといわれています。これが正解。
×c:クリプトコッカス症において血清β-D-グルカン値は通常、上昇しないのが特徴です。真菌感染と思ってこれを選んではいけません。
×d:発症予防にST合剤の内服が有効であるのはニューモシスチス肺炎です。クリプトコッカスの予防には抗真菌薬を使います。
×e:原因微生物はCryptococcus neoformansであります。
医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説を全部読む
2013年02月16日
第107回医師国家試験呼吸器系問題解説・微妙な免疫低下状態に合併した結節影の鑑別・解答と解説
posted by 長尾大志 at 13:17
| Comment(0)
| 医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説