明日から仕事始め、という方も多いでしょう。
毎年恒例となりつつありますが、やはり今年も、フレッシュマンの方々にメッセージを、と思います。とはいえ、結構これまでにも、いろいろといいことをこのブログに書いているので、今日は、イイことを書いてる過去記事を、またまたピックアップしましょう(手抜きともいいますが…汗)。昨年とは異なり、ちゃんと各記事を解説しておきます。
上級医に言われた台詞(セリフ)
この頃は、毎日更新ではなく、ですます調でもありませんでした。ブログ黎明期に書いた記事ですが、それだけ言いたいことがつまってるって感じです。時代を超えた名言ですね。
30の法則
これも真なり。突き詰めて言うと、結局は単純作業(言い過ぎか!?)なので練習量がものを言います。
処置中に、絶対にやってはいけないこと
4月から、病棟でたびたび言うことになるんでしょうね。「声を出さないこと!」
患者さんは耳に神経集中しておられますから不安を引き起こすような言動は厳に慎みましょう。
先輩の言葉、患者さんに説明するときの心得1
相手の理解をいちいち確認しながら話す。コミュニケーションの基本でありますが、なかなかできていません。私も学生さんに話してること、確認しなくては。
自分で動かないと、成長しない
結局は自分が動くのみ。制度や上級医が成長させてくれるものではなく、自分で成長していくものです。
物事を学ぶ過程における「スランプ」
ほとんどの研修医諸君は、これから何度となく「スランプ」を感じることでしょう。それは当たり前、というか、むしろスランプを感じないことには成長しない、と思っておきましょう。
自分のあるべき姿(出来る自分)と現実とのギャップ(出来ない自分)を埋めるべく努力を重ねる。そのギャップを感じるほど成長するわけです。
研修医諸君には、是非肝に銘じておいてほしい。
「No flower without rain」。
2013年03月31日
2013年03月30日
O総合クリニックを卒業
この3月で、7年間務めさせていただいた、とあるクリニックを辞め、他の病院へ異動することになりました。クリニックでは多くの方々に支えられ、筆舌に尽くしがたい、色々と貴重な体験ができました。関係の皆様方、特にクラークの皆さん、本当にありがとうございました。

思いがけなく頂いたお花。本当にありがとうございます。
やはり7年間同じところで地域医療のまねごとを続けると、なんとなく見えてくるものがあります。
地域医療とはなにか。
「持続する」こと。
地域の患者さんは、そこに居続けておられる。
ならば、それを支える人々も、居続ける。
東北の震災の時に、かかりつけ医にかかれなくなって、
お困りの方々が多かった(今でも多い)ことを伝え聞きます。
医療を継続することの大切さ。
患者さんにとっての安心感。
地域医療が継続できない現場が、東北だけじゃなくて、
日本中のあちこちにあるようです。
以前、「万年研修医」のことを書きましたが、
この風潮と決して無縁なことではないでしょう。
「スキルアップ」「キャリアアップ」を求めて、転勤を繰り返す万年研修医。
その「アップした」スキルで、誰を救うのか…。

思いがけなく頂いたお花。本当にありがとうございます。
やはり7年間同じところで地域医療のまねごとを続けると、なんとなく見えてくるものがあります。
地域医療とはなにか。
「持続する」こと。
地域の患者さんは、そこに居続けておられる。
ならば、それを支える人々も、居続ける。
東北の震災の時に、かかりつけ医にかかれなくなって、
お困りの方々が多かった(今でも多い)ことを伝え聞きます。
医療を継続することの大切さ。
患者さんにとっての安心感。
地域医療が継続できない現場が、東北だけじゃなくて、
日本中のあちこちにあるようです。
以前、「万年研修医」のことを書きましたが、
この風潮と決して無縁なことではないでしょう。
「スキルアップ」「キャリアアップ」を求めて、転勤を繰り返す万年研修医。
その「アップした」スキルで、誰を救うのか…。
posted by 長尾大志 at 13:27
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| 日記
2013年03月29日
難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療5・肺炎の具体的治療の流れ3・推定原因菌にあった抗菌薬を投与・抗菌薬の簡単なまとめ
治療のお話をする前に、抗菌薬についておおまかな話をしておきましょう。抗菌薬には大きい区分である「系統」が何種類かあり、それぞれに「くせ」があります。また、同じ系統の中でもいくつかの区分がありますが、ここではよく肺炎治療に使われる代表的な薬剤を取り上げます。
話をわかりやすくするために、上で述べた耐性菌代表として緑膿菌に登場いただき、緑膿菌に効かない薬(耐性菌に使わない)と効く薬(耐性菌に使用する)に分けて考えましょう。
なお、ここに挙げたのは、コメディカルの方や患者さんも読まれることを考えて、本当に代表的な数種類のみです。ドクターの皆さんはもちろん、もっと多くの抗菌薬について習熟しておく必要がありますよ!
A. ペニシリン系
歴史上最初に作られた抗菌薬で、歴史があります。多くの改良を受けて、現在でも第一線で活躍しています。誤嚥性肺炎の原因になる嫌気性菌にも強いです。
代表例
緑膿菌に効果がない:スルバクタム/アンピシリン
緑膿菌に効果がある:タゾバクタム/ピペラシリン
B. セフェム系
経口薬でも注射薬でも広く使われている薬です。嫌気性菌には少し効果が劣ります。
代表例
緑膿菌に効果がない:セフトリアキソン
緑膿菌に効果がある:セフェピム
C. マクロライド系
ペニシリン系やセフェム系が細胞壁合成阻害薬であるのに対し、DNA合成を阻害します。そのため、細胞壁を持たない菌、細胞内寄生菌に対して効果があります。主に使われるのはマイコプラズマなどが想定されるときです。
一方で、あまりにも広く使われすぎたために、肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)に対しては耐性化が進んでいて、効かなくなってきています。緑膿菌に対しては元々効果がありません。
代表例
クラリスロマイシン、アジスロマイシン
D. キノロン系
肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)、さらには緑膿菌にまで広く効果があります。加えて、マクロライド同様に細胞壁を持たない菌、細胞内寄生菌に対して効果があり、いわば「万能」とも言える抗菌薬ですが、こちらも広く使われすぎの嫌いがあり、今後の耐性化が懸念されています。そのため、心ある臨床医はできるだけ大切に使おう、出し惜しみしようと心がけています。
代表例
経口薬:レボフロキサシン、ガレノキサシン、モキシフロキサシン
注射薬:レボフロキサシン、パズフロキサシン、シプロフロキサシン
キノロン系経口薬にはたくさんの種類がありますが、肺炎球菌への効果がよいのは上記の3種類で、特にこれらはレスピラトリーキノロンと呼ばれています。
注射薬は強力ですが、本当に必要とされる場面は重症なケースに限られます。それと、嫌気性菌には少し効果が劣りますので、誤嚥があると思われる場合には注意が必要です。
E. カルバペネム系
こちらも肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)、さらには緑膿菌にまで広く効果がありますが、細胞壁を持たない菌には効果がありません。それ以外の菌には嫌気性菌、緑膿菌を含めほぼ万能で、キノロン系同様、心ある臨床医はできるだけ大切に使おう、出し惜しみしようと心がけています。
代表例
メロペネム、ドリペネム、イミペネム・シラスタチン、ビアペネム
F 抗MRSA薬
これまでに書いた抗菌薬はいずれも、MRSAには効果がありません。それだけMRSAの耐性はキツイのだということです。MRSAが原因であると考えられる感染症に対しては、専用の薬剤がありますから、それを使います。
代表例
バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリド
* 難病と在宅ケア(7月号)に改変の上掲載予定
肺炎ガイドラインを最初から読む
話をわかりやすくするために、上で述べた耐性菌代表として緑膿菌に登場いただき、緑膿菌に効かない薬(耐性菌に使わない)と効く薬(耐性菌に使用する)に分けて考えましょう。
なお、ここに挙げたのは、コメディカルの方や患者さんも読まれることを考えて、本当に代表的な数種類のみです。ドクターの皆さんはもちろん、もっと多くの抗菌薬について習熟しておく必要がありますよ!
A. ペニシリン系
歴史上最初に作られた抗菌薬で、歴史があります。多くの改良を受けて、現在でも第一線で活躍しています。誤嚥性肺炎の原因になる嫌気性菌にも強いです。
代表例
緑膿菌に効果がない:スルバクタム/アンピシリン
緑膿菌に効果がある:タゾバクタム/ピペラシリン
B. セフェム系
経口薬でも注射薬でも広く使われている薬です。嫌気性菌には少し効果が劣ります。
代表例
緑膿菌に効果がない:セフトリアキソン
緑膿菌に効果がある:セフェピム
C. マクロライド系
ペニシリン系やセフェム系が細胞壁合成阻害薬であるのに対し、DNA合成を阻害します。そのため、細胞壁を持たない菌、細胞内寄生菌に対して効果があります。主に使われるのはマイコプラズマなどが想定されるときです。
一方で、あまりにも広く使われすぎたために、肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)に対しては耐性化が進んでいて、効かなくなってきています。緑膿菌に対しては元々効果がありません。
代表例
クラリスロマイシン、アジスロマイシン
D. キノロン系
肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)、さらには緑膿菌にまで広く効果があります。加えて、マクロライド同様に細胞壁を持たない菌、細胞内寄生菌に対して効果があり、いわば「万能」とも言える抗菌薬ですが、こちらも広く使われすぎの嫌いがあり、今後の耐性化が懸念されています。そのため、心ある臨床医はできるだけ大切に使おう、出し惜しみしようと心がけています。
代表例
経口薬:レボフロキサシン、ガレノキサシン、モキシフロキサシン
注射薬:レボフロキサシン、パズフロキサシン、シプロフロキサシン
キノロン系経口薬にはたくさんの種類がありますが、肺炎球菌への効果がよいのは上記の3種類で、特にこれらはレスピラトリーキノロンと呼ばれています。
注射薬は強力ですが、本当に必要とされる場面は重症なケースに限られます。それと、嫌気性菌には少し効果が劣りますので、誤嚥があると思われる場合には注意が必要です。
E. カルバペネム系
こちらも肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)、さらには緑膿菌にまで広く効果がありますが、細胞壁を持たない菌には効果がありません。それ以外の菌には嫌気性菌、緑膿菌を含めほぼ万能で、キノロン系同様、心ある臨床医はできるだけ大切に使おう、出し惜しみしようと心がけています。
代表例
メロペネム、ドリペネム、イミペネム・シラスタチン、ビアペネム
F 抗MRSA薬
これまでに書いた抗菌薬はいずれも、MRSAには効果がありません。それだけMRSAの耐性はキツイのだということです。MRSAが原因であると考えられる感染症に対しては、専用の薬剤がありますから、それを使います。
代表例
バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリド
* 難病と在宅ケア(7月号)に改変の上掲載予定
肺炎ガイドラインを最初から読む
posted by 長尾大志 at 10:41
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| 肺炎ガイドライン解説
2013年03月28日
難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療4・肺炎の具体的治療の流れ2・原因菌を想定
以前書いたように、何らリスクのない生活をされている方(市中肺炎)の肺に入って肺炎を引き起こすような菌は、肺炎球菌・H.influenzae(インフルエンザ菌)・マイコプラズマ・クラミドフィラ・ウイルス(インフルエンザ、水痘他)などが考えられます。
「医療・介護関連肺炎」の場合にも、在宅で過ごしておられる方は基本的に同様の菌が肺に入ると考えられますが、下の表のような状況の患者さんは、原因菌が薬剤耐性菌である可能性が高いと考えられます。
耐性菌に対しては使用すべき抗菌薬もランクアップするため、以下のような状況の患者さんは特別扱いとなります。
薬剤耐性菌:
それ以上細かく菌を推定することは現実的には困難で、また、抗菌薬の使い分けという点からもそれほど意味がないので、この原因菌を想定するにあたっては、この「耐性菌がいそうかどうか」が最も重要な区分けになります。
* 難病と在宅ケア(7月号)に改変の上掲載予定
肺炎ガイドラインを最初から読む
「医療・介護関連肺炎」の場合にも、在宅で過ごしておられる方は基本的に同様の菌が肺に入ると考えられますが、下の表のような状況の患者さんは、原因菌が薬剤耐性菌である可能性が高いと考えられます。
耐性菌に対しては使用すべき抗菌薬もランクアップするため、以下のような状況の患者さんは特別扱いとなります。
- 過去90日以内に広域抗生剤が投与された
- 経管栄養を施行している
- 過去に鼻腔や口腔などからMRSAが分離された(MRSAのリスク)
薬剤耐性菌:
- 緑膿菌
- アシネトバクター
- ESBL〈基質特異性拡張型βラクタマーゼ〉産生腸内細菌
- MRSA
- ステノトロフォモナスなど
それ以上細かく菌を推定することは現実的には困難で、また、抗菌薬の使い分けという点からもそれほど意味がないので、この原因菌を想定するにあたっては、この「耐性菌がいそうかどうか」が最も重要な区分けになります。
* 難病と在宅ケア(7月号)に改変の上掲載予定
肺炎ガイドラインを最初から読む
posted by 長尾大志 at 11:26
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| 肺炎ガイドライン解説
2013年03月27日
難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療3・肺炎の具体的治療の流れ1・治療の場
肺炎治療の流れは、まず@治療の場を決め、A原因菌を想定し、Bその菌にあった抗菌薬を投与する、こういう流れになります。
治療の場とは、病院に入院するのか、これまで通り在宅や施設で治療をするか、ということです。重症度に応じて入院適応を決めることになります。これは、市中肺炎ガイドラインで定められている分類、A-DROPを参考に決めていきます。
ちなみにA-DROPとは、既出ではありますが重要なので再掲しておきますと…
この覚え方、ポリクリ学生さん考案です。ブログ掲載の許可を頂いています(笑)。
上記5項目を1つ満たすごとに1点カウントし、点数によって重症度、および入院・外来いずれで治療するかを決めます。
…という具合に入院/外来を判断します。ちなみに1-2点であれば、主治医の総合判断で入院するかどうかを決めることになります。
* 難病と在宅ケア(7月号)に改変の上掲載予定
肺炎ガイドラインを最初から読む
治療の場とは、病院に入院するのか、これまで通り在宅や施設で治療をするか、ということです。重症度に応じて入院適応を決めることになります。これは、市中肺炎ガイドラインで定められている分類、A-DROPを参考に決めていきます。
ちなみにA-DROPとは、既出ではありますが重要なので再掲しておきますと…
- A:Age(年齢) 男性≧70歳、女性≧75歳
- D:Dehydration(脱水) BUN≧21または脱水
英語が難しければ「脱水のD」でよいでしょう。 - R:Respiration(呼吸)SpO2≦90%
レスピのRで覚えましょう。 - O:Orientation(意識障害)
「起きてる?のO」で覚えましょう。 - P:Pressure(血圧) 収縮期≦90mmHg
この覚え方、ポリクリ学生さん考案です。ブログ掲載の許可を頂いています(笑)。
上記5項目を1つ満たすごとに1点カウントし、点数によって重症度、および入院・外来いずれで治療するかを決めます。
- 0点:軽症→外来治療
- 1-2点:中等症→外来、または入院治療
- 3点以上:重症→入院治療
- 4点以上→ICU 管理
…という具合に入院/外来を判断します。ちなみに1-2点であれば、主治医の総合判断で入院するかどうかを決めることになります。
* 難病と在宅ケア(7月号)に改変の上掲載予定
肺炎ガイドラインを最初から読む
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| 肺炎ガイドライン解説
2013年03月26日
難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療2・肺炎ガイドラインによる「ターゲット」の違い
誤解を恐れずに極論しますと、これらのガイドラインは、患者さんの状態、発症の場によって「原因(分離)菌」が異なる、従って抗生剤を使い分ける必要がある、ということが柱としてあるのです。肺内には、常在菌というべきものはほとんどいないわけですが、病原性を持つ菌で、肺が好きな菌というものはいるわけです。肺の環境を好み、かつ、エアロゾル・微少な飛沫として空中に浮かぶことができる(つまり肺に入る経路を持つ)菌、それが肺炎の原因菌になりうるわけです。
たとえば、他人の「咳」「痰」「しぶき」を吸い込むことで感染が成立するような菌は、人混みに出かけたり、咳をしている子供に接触したりするような、「市中での生活」で肺炎の原因になります。
市中肺炎の原因菌
市中での生活で罹患する「市中肺炎」の原因菌はこれらであることが多いため、市中肺炎の治療は、まずはこれらの菌をターゲットとして行います。
ここで、肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)には通常ペニシリンなどのβラクタムを使いますが、マイコプラズマやクラミドフィラは非定型病原体といってβラクタムが効かない。ということで、これらの鑑別が必要になるわけです。
一方、病院に入院していると、市中で生活しているときに肺に進入するような菌は感染機会がなく、元々院内に住んでいるような菌が原因菌になります。それはやはりグラム陰性桿菌が主体。
特に、水周りなどには、それまでに入院していた肺炎患者さんが喀出したしぶきに含まれていた緑膿菌などが住み着いたりしているものです。 また、医療従事者の手にはMRSA がついていたりします。とすると、病院内で罹った「院内肺炎」の場合は、そういった菌を原因菌として考えるのが妥当、ということになります。
また、抗菌薬を使ったかどうか、というのも原因菌の推定に深く関与します。たとえば3世代セフェムを使うと菌交代で緑膿菌が残ります。広域抗生剤の長期投与はMRSAのリスクになりますし、そもそも抗菌薬を使うと、大なり小なり耐性がついてくるものなのです。
院内肺炎の原因菌はこのようにグラム陰性桿菌・緑膿菌・MRSAをはじめとする耐性菌であることが多いため、このような菌がターゲットとして想定されます。
また、最近定められた「医療・介護関連肺炎」、難病患者さんの肺炎はこの範疇に入ることが多いのではないかと思いますが、その定義は、以下の表の通りです。
医療・介護関連肺炎の定義
*介護…身の回りのことしかできず日中の50%以上をベッドで過ごす
*血管内治療…透析・抗菌薬・化学療法・免疫抑制薬など
つまり、病院に入院してはおられない、在宅でありながら、病院内の環境に似た細菌に曝露する機会が多く、肺炎の原因菌がグラム陰性桿菌や耐性菌によることが多い、というグループになります。
今回のお話は難病患者さんの肺炎についてですので、具体的な治療に関しては、医療・介護関連肺炎ガイドラインに沿ってお話しします。
* 難病と在宅ケア(7月号)に改変の上掲載予定
肺炎ガイドラインを最初から読む
たとえば、他人の「咳」「痰」「しぶき」を吸い込むことで感染が成立するような菌は、人混みに出かけたり、咳をしている子供に接触したりするような、「市中での生活」で肺炎の原因になります。
市中肺炎の原因菌
- 肺炎球菌
- H.influenzae(インフルエンザ菌)
- マイコプラズマ
- クラミドフィラ(クラミジア)
- ウイルス(インフルエンザ、水痘他)
市中での生活で罹患する「市中肺炎」の原因菌はこれらであることが多いため、市中肺炎の治療は、まずはこれらの菌をターゲットとして行います。
ここで、肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)には通常ペニシリンなどのβラクタムを使いますが、マイコプラズマやクラミドフィラは非定型病原体といってβラクタムが効かない。ということで、これらの鑑別が必要になるわけです。
一方、病院に入院していると、市中で生活しているときに肺に進入するような菌は感染機会がなく、元々院内に住んでいるような菌が原因菌になります。それはやはりグラム陰性桿菌が主体。
特に、水周りなどには、それまでに入院していた肺炎患者さんが喀出したしぶきに含まれていた緑膿菌などが住み着いたりしているものです。 また、医療従事者の手にはMRSA がついていたりします。とすると、病院内で罹った「院内肺炎」の場合は、そういった菌を原因菌として考えるのが妥当、ということになります。
また、抗菌薬を使ったかどうか、というのも原因菌の推定に深く関与します。たとえば3世代セフェムを使うと菌交代で緑膿菌が残ります。広域抗生剤の長期投与はMRSAのリスクになりますし、そもそも抗菌薬を使うと、大なり小なり耐性がついてくるものなのです。
院内肺炎の原因菌はこのようにグラム陰性桿菌・緑膿菌・MRSAをはじめとする耐性菌であることが多いため、このような菌がターゲットとして想定されます。
また、最近定められた「医療・介護関連肺炎」、難病患者さんの肺炎はこの範疇に入ることが多いのではないかと思いますが、その定義は、以下の表の通りです。
医療・介護関連肺炎の定義
- 長期療養病床または介護施設に入所
- 90日以内に病院を退院した
- 介護*を必要とする高齢者、身体障害者
- 通院にて継続的に血管内治療*を受けている
*介護…身の回りのことしかできず日中の50%以上をベッドで過ごす
*血管内治療…透析・抗菌薬・化学療法・免疫抑制薬など
つまり、病院に入院してはおられない、在宅でありながら、病院内の環境に似た細菌に曝露する機会が多く、肺炎の原因菌がグラム陰性桿菌や耐性菌によることが多い、というグループになります。
今回のお話は難病患者さんの肺炎についてですので、具体的な治療に関しては、医療・介護関連肺炎ガイドラインに沿ってお話しします。
* 難病と在宅ケア(7月号)に改変の上掲載予定
肺炎ガイドラインを最初から読む
posted by 長尾大志 at 18:45
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2013年03月25日
難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療1・耐性菌を作り出さないために
ポリクリのない、春休み期間もあと1週間。ということは、依頼原稿を書ける時間がとれるのもあと1週間ということになります。時の経つのは早いもの。facebookには書きましたが、家中がインフルエンザのために春休みもあって無きがごとしでした(私は幸いかからずでしたが)。
ということで少し前に頂いた執筆依頼、そろそろ締め切りも近く、書き始めなくてはなりませんので、ちょっと準備に取りかかりたいと思います。よければお付き合いください(最近同じことばかり書いている気もしますが…)。
今回は、「難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療」というタイトル。
難病の患者さんにおかれましてはADLの低下や誤嚥、それに免疫力の低下などの状況により、肺炎にかかられることが少なからずあるように見受けます。これまでにも肺炎の抗菌薬治療に関しては何度か述べて参りましたが、このたびは、もう少しコメディカルの方々、難病患者さんの介護に当たられる方々に向けて、難病患者さんの肺炎の抗菌薬治療について、まとめさせていただく機会を頂きましたので、ご紹介していきたいと思います。
色々な状況の違いはあれど、基本的に「肺炎」という疾患は、通常は無菌状態である肺の中に細菌が入ることで起こります。その細菌を退治するために抗菌薬を用いるのですが、抗菌薬には実に多くの種類があり、どの細菌に効果があるか(スペクトラム)が異なります。
「色々な菌に効く=広域スペクトラムの」抗菌薬を濫用すると、必ずその抗菌薬が効かない菌(=耐性菌)が誘導されてきます。もちろん患者さんの治療に必要な場合(その抗菌薬でないと効かない菌がターゲットの場合)には、広域スペクトラムの抗菌薬を使うべきですが、不必要な場面で広域スペクトラムの抗菌薬を使用する(=不適切に抗菌薬を用いる)と、「耐性菌」を誘導してしまうのです。耐性菌というのはMRSAが有名ですが、MRSA以外にも今や色々な種類の耐性菌が生み出されてきていて、問題となりつつあるところです。
したがって、肺炎治療の際には「どの菌をターゲットとして治療すべきか」ということを考えて抗菌薬を選択する必要があり、そのあたりを専門外の先生方にも無理なく行っていただけるように、肺炎のガイドラインが定められているのです。
とはいえ、ガイドラインにも市中肺炎(community acquired pneumonia:CAP)、院内肺炎(hospital acquired pneumonia:HAP)、医療・介護関連肺炎(NHCAP:nursing and healthcare-associated pneumonia)の3冊があり、全てを読むのも大変ですので、今回はガイドラインに共通している、基本的な考え方をかみ砕いてご紹介します。
* 難病と在宅ケア(7月号)に改変の上掲載予定
肺炎ガイドラインを最初から読む
ということで少し前に頂いた執筆依頼、そろそろ締め切りも近く、書き始めなくてはなりませんので、ちょっと準備に取りかかりたいと思います。よければお付き合いください(最近同じことばかり書いている気もしますが…)。
今回は、「難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療」というタイトル。
難病の患者さんにおかれましてはADLの低下や誤嚥、それに免疫力の低下などの状況により、肺炎にかかられることが少なからずあるように見受けます。これまでにも肺炎の抗菌薬治療に関しては何度か述べて参りましたが、このたびは、もう少しコメディカルの方々、難病患者さんの介護に当たられる方々に向けて、難病患者さんの肺炎の抗菌薬治療について、まとめさせていただく機会を頂きましたので、ご紹介していきたいと思います。
色々な状況の違いはあれど、基本的に「肺炎」という疾患は、通常は無菌状態である肺の中に細菌が入ることで起こります。その細菌を退治するために抗菌薬を用いるのですが、抗菌薬には実に多くの種類があり、どの細菌に効果があるか(スペクトラム)が異なります。
「色々な菌に効く=広域スペクトラムの」抗菌薬を濫用すると、必ずその抗菌薬が効かない菌(=耐性菌)が誘導されてきます。もちろん患者さんの治療に必要な場合(その抗菌薬でないと効かない菌がターゲットの場合)には、広域スペクトラムの抗菌薬を使うべきですが、不必要な場面で広域スペクトラムの抗菌薬を使用する(=不適切に抗菌薬を用いる)と、「耐性菌」を誘導してしまうのです。耐性菌というのはMRSAが有名ですが、MRSA以外にも今や色々な種類の耐性菌が生み出されてきていて、問題となりつつあるところです。
したがって、肺炎治療の際には「どの菌をターゲットとして治療すべきか」ということを考えて抗菌薬を選択する必要があり、そのあたりを専門外の先生方にも無理なく行っていただけるように、肺炎のガイドラインが定められているのです。
とはいえ、ガイドラインにも市中肺炎(community acquired pneumonia:CAP)、院内肺炎(hospital acquired pneumonia:HAP)、医療・介護関連肺炎(NHCAP:nursing and healthcare-associated pneumonia)の3冊があり、全てを読むのも大変ですので、今回はガイドラインに共通している、基本的な考え方をかみ砕いてご紹介します。
* 難病と在宅ケア(7月号)に改変の上掲載予定
肺炎ガイドラインを最初から読む
posted by 長尾大志 at 13:21
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| 肺炎ガイドライン解説
2013年03月24日
新たな場所への旅立ち
異動のシーズン、お引っ越しもピーク時のようですね。
今年卒業で働き始めるよ、という方々も、異動で新しい施設に行くよ、という方々も、期待と不安と緊張とがごっちゃになっておられることでしょう。
ウチからも2名新天地にお送り出しているので、今回は特にドクターが(だけじゃないけど)異動するにあたって贈る言葉を。
やはりなんだかんだいっても、これまでにやっていた「やり方」というものが身についているはずなんです。で、そのやり方には、汎用性のある「どこでも共通に行われるもの=generalルール」と、その施設でしか通用しない「localルール」がごっちゃになっているはずなのです。
これまでに一度でも「異動」したことがある方ならおわかりでしょうが、この「localルール」がlocalであることが認識できていないと、周囲のコメディカルの方々との軋轢が生じます。
「あの先生、やり方が変」「なんかおかしなこと言ってる」と、医学的に間違ったことをしているわけでは決してないのに、こそこそ陰口を言われたりして。
まあ、ある程度研修医とかがくるくる回ってくる施設であれば、受け入れる方にも耐性があると期待したいところですが…。
対策としては、とにかく聞くこと。「こちらではどのようにやってますか」「こちらの先生はどうやって指示を出されてますか」みたいに、周りの方にまずは聞く。聞くことでコミュニケーションが取れ、こちらのキャラ、やり方に慣れていただける効果もあります。
また、特に対策せず、なんといわれようが気にせず、我が道を行く、という方向性もあるでしょう。多少やり方が違っても、何ヶ月か経過してしまえば、いつの間にかお互い慣れるもの。「患者さんのため」というスタンスさえ間違っていなければ、多少の軋轢何のその。
というわけで、慣れてしまえばどうってことないのですが、慣れるまではいろいろ不安もあると思います。不安はとにかく周りとコミュニケーションをとることで解消しましょう。
今年卒業で働き始めるよ、という方々も、異動で新しい施設に行くよ、という方々も、期待と不安と緊張とがごっちゃになっておられることでしょう。
ウチからも2名新天地にお送り出しているので、今回は特にドクターが(だけじゃないけど)異動するにあたって贈る言葉を。
やはりなんだかんだいっても、これまでにやっていた「やり方」というものが身についているはずなんです。で、そのやり方には、汎用性のある「どこでも共通に行われるもの=generalルール」と、その施設でしか通用しない「localルール」がごっちゃになっているはずなのです。
これまでに一度でも「異動」したことがある方ならおわかりでしょうが、この「localルール」がlocalであることが認識できていないと、周囲のコメディカルの方々との軋轢が生じます。
「あの先生、やり方が変」「なんかおかしなこと言ってる」と、医学的に間違ったことをしているわけでは決してないのに、こそこそ陰口を言われたりして。
まあ、ある程度研修医とかがくるくる回ってくる施設であれば、受け入れる方にも耐性があると期待したいところですが…。
対策としては、とにかく聞くこと。「こちらではどのようにやってますか」「こちらの先生はどうやって指示を出されてますか」みたいに、周りの方にまずは聞く。聞くことでコミュニケーションが取れ、こちらのキャラ、やり方に慣れていただける効果もあります。
また、特に対策せず、なんといわれようが気にせず、我が道を行く、という方向性もあるでしょう。多少やり方が違っても、何ヶ月か経過してしまえば、いつの間にかお互い慣れるもの。「患者さんのため」というスタンスさえ間違っていなければ、多少の軋轢何のその。
というわけで、慣れてしまえばどうってことないのですが、慣れるまではいろいろ不安もあると思います。不安はとにかく周りとコミュニケーションをとることで解消しましょう。
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| 医学生、研修医の勉強、研修に役立つ情報
2013年03月23日
活動報告・ブログ書籍化・詳細決定!
さてさて、いよいよ「やさしイイ呼吸器教室」出版の詳細が決定いたしましたよ。
『レジデントのための やさしイイ呼吸器教室』
B5変型判 2色刷り 464ページ
本体4,500円(税込4,725円)
4月18日発売予定です。
表紙はこんな感じ。

このブログも記事が昨日で850。正直かなり収拾がつかなくなってきています(苦笑)。先日も研修医の先生に、「膨大すぎて読む気が失せた」とクレームを頂く始末…。う〜ん、確かに、どこから読んだらいいのか、どこが基礎なのか、もはや書いた自分でもわからなくなってきております。
そこで、ブログの書籍化にあたっては日本医事新報社 編集の宮川さんに多大なる尽力を頂き、かなり整理と修正をすることができました。わからない項目を最初から読めば(しかもスイスイ読めるはず)、しっかりと基礎から学べるはずです。
また、諸事情あってブログではあまり書けなかった項目、具体的な処方などを大幅に加筆することができました。かなりタイトなスケジュールではありましたが、ここはお金を出して買って下さる方々への感謝の意を込めて、大サービス加筆をしております。結果、呼吸器内科の書物として満足のいく一冊になったと思っています。
昨日無事校了となり、来週から印刷の手はずときいております。皆様、お小遣いのご用意をお願いします。(⌒0⌒)/~~
『レジデントのための やさしイイ呼吸器教室』
B5変型判 2色刷り 464ページ
本体4,500円(税込4,725円)
4月18日発売予定です。
表紙はこんな感じ。

このブログも記事が昨日で850。正直かなり収拾がつかなくなってきています(苦笑)。先日も研修医の先生に、「膨大すぎて読む気が失せた」とクレームを頂く始末…。う〜ん、確かに、どこから読んだらいいのか、どこが基礎なのか、もはや書いた自分でもわからなくなってきております。
そこで、ブログの書籍化にあたっては日本医事新報社 編集の宮川さんに多大なる尽力を頂き、かなり整理と修正をすることができました。わからない項目を最初から読めば(しかもスイスイ読めるはず)、しっかりと基礎から学べるはずです。
また、諸事情あってブログではあまり書けなかった項目、具体的な処方などを大幅に加筆することができました。かなりタイトなスケジュールではありましたが、ここはお金を出して買って下さる方々への感謝の意を込めて、大サービス加筆をしております。結果、呼吸器内科の書物として満足のいく一冊になったと思っています。
昨日無事校了となり、来週から印刷の手はずときいております。皆様、お小遣いのご用意をお願いします。(⌒0⌒)/~~
posted by 長尾大志 at 19:31
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| 活動報告
2013年03月22日
肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分についての話は置いといて、過敏性肺炎の特徴など
この機会に、過敏性肺炎についておさらいをして置きましょう。
吸入した抗原(主にカビ、Trichosporon asahi, Trichosporon mucoidesなど)によって、V型、W型アレルギーが起こり、細気管支末端周囲に強く間質性肺炎が生じます。
その結果、急性期に典型的には、小葉中心性に、飛び飛びに、すりガラス影が見られます。
急性型の診断には、病歴聴取が重要です。
季節性に発症、繰り返し起こる、抗原からの隔離で軽快、というアレルギー的な発症様式。
家屋(夏型過敏性肺炎)、職業(農夫肺)、ペット飼育や羽毛布団の使用(鳥飼病)、加湿器の使用(加湿器肺)、といった生活歴の聴取もカギになります。
…呼吸器疾患は、本当に病歴聴取がカギになる疾患が多いですね。
入院したら症状が軽快する、この時点でピンと来て、確定診断のための検査としては、カビに対する特異抗体があるのですが、なかなか商業ベースで気軽に測定できるものではありません。
それと、さんざん書いてきましたが、気管支肺胞洗浄液(BALF)中のリンパ球が増えるのが特徴です。また、過敏性肺炎のタイプ(原因抗原)によって、そのリンパ球のうちCD4+とCD8+、どちらが優位であるかが少し異なります。
夏型過敏性肺炎ではCD4+<CD8+、農夫肺や鳥飼病ではCD4+>CD8+となることが多いため、原因を推定することができるのです。
病理組織学的に、生検標本で肉芽腫を伴う胞隔炎を認めますが、これだけで確定診断はできません。病理が診断のゴールドスタンダードになり得ないことが間質性肺炎業界でしばしばあり、そこが初学者には少し難しい点かもしれません。
そういうことで、診断の確定は結局、環境誘発試験(入院して一旦良くなっていたものが、外泊してみて再増悪するかどうか)、抗原誘発試験、といった誘発試験もんになります。まあ、原因に対して反応が起こる、ということを確認して初めて診断に至るわけですね。
治療としては、これはもう抗原からの隔離が唯一かつ確実な治療と言えるでしょう(慢性型の場合は、隔離しても難しいことがありますが…)。
ただ家の中や職場に生えているカビ、であるとか、周りの環境に存在する抗原から隔離するのは時に困難を伴います。リフォームや転居・転職などには保険がききません(当たり前ですが…)ので、経済的に難しいこともあるのです。
抗原隔離だけで良くならない場合、あるいは、隔離が困難な場合、治療にステロイドを使用します。
間質性肺疾患シリーズを最初から読む
吸入した抗原(主にカビ、Trichosporon asahi, Trichosporon mucoidesなど)によって、V型、W型アレルギーが起こり、細気管支末端周囲に強く間質性肺炎が生じます。
その結果、急性期に典型的には、小葉中心性に、飛び飛びに、すりガラス影が見られます。
急性型の診断には、病歴聴取が重要です。
季節性に発症、繰り返し起こる、抗原からの隔離で軽快、というアレルギー的な発症様式。
家屋(夏型過敏性肺炎)、職業(農夫肺)、ペット飼育や羽毛布団の使用(鳥飼病)、加湿器の使用(加湿器肺)、といった生活歴の聴取もカギになります。
…呼吸器疾患は、本当に病歴聴取がカギになる疾患が多いですね。
入院したら症状が軽快する、この時点でピンと来て、確定診断のための検査としては、カビに対する特異抗体があるのですが、なかなか商業ベースで気軽に測定できるものではありません。
それと、さんざん書いてきましたが、気管支肺胞洗浄液(BALF)中のリンパ球が増えるのが特徴です。また、過敏性肺炎のタイプ(原因抗原)によって、そのリンパ球のうちCD4+とCD8+、どちらが優位であるかが少し異なります。
夏型過敏性肺炎ではCD4+<CD8+、農夫肺や鳥飼病ではCD4+>CD8+となることが多いため、原因を推定することができるのです。
病理組織学的に、生検標本で肉芽腫を伴う胞隔炎を認めますが、これだけで確定診断はできません。病理が診断のゴールドスタンダードになり得ないことが間質性肺炎業界でしばしばあり、そこが初学者には少し難しい点かもしれません。
そういうことで、診断の確定は結局、環境誘発試験(入院して一旦良くなっていたものが、外泊してみて再増悪するかどうか)、抗原誘発試験、といった誘発試験もんになります。まあ、原因に対して反応が起こる、ということを確認して初めて診断に至るわけですね。
治療としては、これはもう抗原からの隔離が唯一かつ確実な治療と言えるでしょう(慢性型の場合は、隔離しても難しいことがありますが…)。
ただ家の中や職場に生えているカビ、であるとか、周りの環境に存在する抗原から隔離するのは時に困難を伴います。リフォームや転居・転職などには保険がききません(当たり前ですが…)ので、経済的に難しいこともあるのです。
抗原隔離だけで良くならない場合、あるいは、隔離が困難な場合、治療にステロイドを使用します。
間質性肺疾患シリーズを最初から読む
posted by 長尾大志 at 16:09
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| 間質性肺疾患シリーズ
2013年03月21日
肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分についての話は置いといて、過敏性肺炎の典型的画像は「粒状影」なのか、「すりガラス影」なのか?
過敏性肺炎の機序は、吸入した(カビなどの)抗原によって、肺胞領域の間質にV型、W型のアレルギーが起こり、「そのエリアに」間質性肺炎が生じるものです。
そのエリア、というのが、気管支を通ってやってきた抗原が細気管支(の出口?)から肺胞内に散らばった場所、すなわち気管支末端付近の肺胞にあたります。そのあたりに間質性肺炎が生じるのです。
普通の?間質性肺炎では、肺胞領域の変化は連続性に生じるため、陰影も連続性なのですが…

過敏性肺炎(特に急性、亜急性の、アレルギーが起こりたてホヤホヤの時期)では、気管支末端付近の肺胞に間質性肺炎が生じます。

「その辺」は小葉の中心部にあたるため、陰影としては小葉中心部に「飛び飛びに」「すりガラス影」が見られるわけです。小葉…覚えておられるでしょうか。

こんな感じで病変ができる、ということです。

まとめると、細気管支周囲の肺胞に飛び飛びに間質性肺炎が生じるために、「小葉中心性に」「粒状に(飛び飛びに、の意)」分布するすりガラス影が見られる、というわけです。

ここんとこ、ちゃんとわかっている人、それほど多くない印象です。
胸部レントゲン道場に入門する
間質性肺疾患シリーズを最初から読む
そのエリア、というのが、気管支を通ってやってきた抗原が細気管支(の出口?)から肺胞内に散らばった場所、すなわち気管支末端付近の肺胞にあたります。そのあたりに間質性肺炎が生じるのです。
普通の?間質性肺炎では、肺胞領域の変化は連続性に生じるため、陰影も連続性なのですが…
過敏性肺炎(特に急性、亜急性の、アレルギーが起こりたてホヤホヤの時期)では、気管支末端付近の肺胞に間質性肺炎が生じます。
「その辺」は小葉の中心部にあたるため、陰影としては小葉中心部に「飛び飛びに」「すりガラス影」が見られるわけです。小葉…覚えておられるでしょうか。
こんな感じで病変ができる、ということです。
まとめると、細気管支周囲の肺胞に飛び飛びに間質性肺炎が生じるために、「小葉中心性に」「粒状に(飛び飛びに、の意)」分布するすりガラス影が見られる、というわけです。
ここんとこ、ちゃんとわかっている人、それほど多くない印象です。
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間質性肺疾患シリーズを最初から読む
posted by 長尾大志 at 13:26
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| 胸部X線道場
2013年03月20日
天国と地獄の解釈モデル
子供が大きくなってくると、兄妹の間で揉め事がしばしば起こります。シンプルなところでは物の取り合いから、悪口の言い合い、告げ口、発展してくるとつかみ合い、殴り合いのケンカになることもしばしばです。
対等の争い、というよりは、どうしても上が下から略奪する、下に意地悪をする、という感じになっていますね。まあ、最近では下も負けていませんが…。
どうしたものかな、と頭をひねることも多い日々であります。「悪いことをしちゃいかんよ。」ぐらいしか言えず。
そんなとき、子供に「じゃあ、悪いことをすると地獄に行くの?」と聞かれました。
ちょうど幼稚園で天国と地獄がある、的なことを聞いたのでしょうか。
非常にシンプルな質問なのですが、大いに考えさせられました。どう答えたらいいんだろう。本当のところ、地獄があるのかどうかはわからないのですが、今のところは実際に存在するとは考えていない、そんなことを、たとえしつけのためとはいえ「悪いことをすると地獄に行くよ」と言っていいものか。
ウソを言うな、といっている大人がウソを言うのはいかがなものか。と思うわけです。
神様、というものの存在も、何というかふんわりした解釈で。「ウソを言うと神様が見ているよ」というのが(少なくとも言っている本人の認識としては)ウソなので、何だかぐだぐだじゃないですか。
でも、確かに悪いことをする、ということは「よくない」ことであるし、悪いことを積み重ねると、悪人になるような気がする。悪人になると、本人は幸せではないだろう、と思うわけです。これをわかりやすく伝えるにはどうすればいいか。
逆に、以前に書いた人の幸せとはでも触れましたが、究極の幸せって、よいことができる、よい人間になることではないか、と思っています。善行を重ねると幸せになる、というより、善行をすると気持ちがいいものです。そういうことが自然にできる人間であるということは、そりゃ幸せなんじゃないかな、と思うわけです。
つまり、自分がいい人間になるということが幸せになる=天国に行くことで、悪い人間になることが不幸になる=地獄に行く、という解釈ができるのではないか、と思った次第です。
ということで、子供には「いいことをすると、気持ちがいいやろ。それで、いいことを続けたら、心がきれいになっていくんや。そうすると幸せになる、それが天国に行く、っていうことや。反対に悪いことをすると、心が汚れていく。それでいやな気持ちになっていくねん。それが地獄、ってことかな。」と話をしました。
果たして、どの程度通じたのやら。その後も意地悪は治まる気配がありませんが…。
対等の争い、というよりは、どうしても上が下から略奪する、下に意地悪をする、という感じになっていますね。まあ、最近では下も負けていませんが…。
どうしたものかな、と頭をひねることも多い日々であります。「悪いことをしちゃいかんよ。」ぐらいしか言えず。
そんなとき、子供に「じゃあ、悪いことをすると地獄に行くの?」と聞かれました。
ちょうど幼稚園で天国と地獄がある、的なことを聞いたのでしょうか。
非常にシンプルな質問なのですが、大いに考えさせられました。どう答えたらいいんだろう。本当のところ、地獄があるのかどうかはわからないのですが、今のところは実際に存在するとは考えていない、そんなことを、たとえしつけのためとはいえ「悪いことをすると地獄に行くよ」と言っていいものか。
ウソを言うな、といっている大人がウソを言うのはいかがなものか。と思うわけです。
神様、というものの存在も、何というかふんわりした解釈で。「ウソを言うと神様が見ているよ」というのが(少なくとも言っている本人の認識としては)ウソなので、何だかぐだぐだじゃないですか。
でも、確かに悪いことをする、ということは「よくない」ことであるし、悪いことを積み重ねると、悪人になるような気がする。悪人になると、本人は幸せではないだろう、と思うわけです。これをわかりやすく伝えるにはどうすればいいか。
逆に、以前に書いた人の幸せとはでも触れましたが、究極の幸せって、よいことができる、よい人間になることではないか、と思っています。善行を重ねると幸せになる、というより、善行をすると気持ちがいいものです。そういうことが自然にできる人間であるということは、そりゃ幸せなんじゃないかな、と思うわけです。
つまり、自分がいい人間になるということが幸せになる=天国に行くことで、悪い人間になることが不幸になる=地獄に行く、という解釈ができるのではないか、と思った次第です。
ということで、子供には「いいことをすると、気持ちがいいやろ。それで、いいことを続けたら、心がきれいになっていくんや。そうすると幸せになる、それが天国に行く、っていうことや。反対に悪いことをすると、心が汚れていく。それでいやな気持ちになっていくねん。それが地獄、ってことかな。」と話をしました。
果たして、どの程度通じたのやら。その後も意地悪は治まる気配がありませんが…。
posted by 長尾大志 at 18:51
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| 子育て日記
2013年03月19日
肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分についての話は置いといて、過敏性肺(臓)炎
過敏性肺(臓)炎。
そうなんです。最近は臓に( )カッコがついた表記をよく見かけますし、日本呼吸器学会のHPにも過敏性肺炎って書いてあります。
元々は肺臓炎=pneumonitis、肺間質主体の炎症を表す言葉として、過敏性肺臓炎(hypersensitivity pneumonitis)や放射線肺臓炎(radiation pneumonitis)などの病名に用いられていたのですが、最近では特に日本語表記に於いて「肺臓炎」という言葉は使われなくなってきています。そもそも間質性肺炎は元々「肺炎」ですし。
こうなってくると、話がBALFから横道へ向かう予感がありあり、ですね。話のついでに、これまでそういえば解説していなかった、過敏性肺炎の発症機序について述べておきましょう。
そもそも過敏性肺炎、患者さんに説明すると、ほぼ100%の割合で「カビ性肺炎」と間違われます。まあ、確かにカビによって起こるのですが…。^ ^;)
家の中などに生えているカビが原因で過敏症(アレルギー)になる、これが過敏性肺炎の本態です。昨日も書きましたが、V型、W型のアレルギー性炎症のために肺胞領域にリンパ球が浸潤してきて、「間質性肺炎」を引き起こします。
ですから、過敏性肺炎はすりガラス影を呈します…
本当でしょうか。
過敏性肺炎にも、急性に起こるタイプと慢性に起こるタイプがあるのですが、ものの本をご覧頂くと、急性に起こるタイプではすりガラス影に加えて「粒状影」なんて書いてあったりします。これが初学者にとっては「なんでやねん」なのです。
だって、過敏性肺炎は間質性肺炎って言ったじゃないですか。なのに、何で粒状影になるんですか。粒状影と言えば、あ!まだ解説していませんでしたね…(⌒-⌒; )
レントゲン道場では連続性の陰影が終わりましたので、次は必ずや飛び飛びの陰影、粒状影を近いうちに解説いたしますが、要するに粒状影は、元々飛び飛びにある構造物がやられることでできる陰影であります。元々連続性に存在する肺胞ではなくて、元々飛び飛び。というのは気管支とか、血管とか、リンパ管とか、そういう構造物ですね。
ですから、間質性肺炎なのに粒状影、というのはなんかおかしいのです。
これは一体、どういうことでしょうか?
胸部レントゲン道場に入門する
間質性肺疾患シリーズを最初から読む
そうなんです。最近は臓に( )カッコがついた表記をよく見かけますし、日本呼吸器学会のHPにも過敏性肺炎って書いてあります。
元々は肺臓炎=pneumonitis、肺間質主体の炎症を表す言葉として、過敏性肺臓炎(hypersensitivity pneumonitis)や放射線肺臓炎(radiation pneumonitis)などの病名に用いられていたのですが、最近では特に日本語表記に於いて「肺臓炎」という言葉は使われなくなってきています。そもそも間質性肺炎は元々「肺炎」ですし。
こうなってくると、話がBALFから横道へ向かう予感がありあり、ですね。話のついでに、これまでそういえば解説していなかった、過敏性肺炎の発症機序について述べておきましょう。
そもそも過敏性肺炎、患者さんに説明すると、ほぼ100%の割合で「カビ性肺炎」と間違われます。まあ、確かにカビによって起こるのですが…。^ ^;)
家の中などに生えているカビが原因で過敏症(アレルギー)になる、これが過敏性肺炎の本態です。昨日も書きましたが、V型、W型のアレルギー性炎症のために肺胞領域にリンパ球が浸潤してきて、「間質性肺炎」を引き起こします。
ですから、過敏性肺炎はすりガラス影を呈します…
本当でしょうか。
過敏性肺炎にも、急性に起こるタイプと慢性に起こるタイプがあるのですが、ものの本をご覧頂くと、急性に起こるタイプではすりガラス影に加えて「粒状影」なんて書いてあったりします。これが初学者にとっては「なんでやねん」なのです。
だって、過敏性肺炎は間質性肺炎って言ったじゃないですか。なのに、何で粒状影になるんですか。粒状影と言えば、あ!まだ解説していませんでしたね…(⌒-⌒; )
レントゲン道場では連続性の陰影が終わりましたので、次は必ずや飛び飛びの陰影、粒状影を近いうちに解説いたしますが、要するに粒状影は、元々飛び飛びにある構造物がやられることでできる陰影であります。元々連続性に存在する肺胞ではなくて、元々飛び飛び。というのは気管支とか、血管とか、リンパ管とか、そういう構造物ですね。
ですから、間質性肺炎なのに粒状影、というのはなんかおかしいのです。
これは一体、どういうことでしょうか?
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間質性肺疾患シリーズを最初から読む
posted by 長尾大志 at 18:50
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| 間質性肺疾患シリーズ
2013年03月18日
肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・細胞成分3・細胞数、細胞分画、リンパ球サブセットの異常値・リンパ球が増える場合1・過敏性肺臓炎
肺胞洗浄液の細胞分画、正常値の目安は以下の通りです。
これを逸脱したものを、一応異常とします。
以前にも書きましたが、疾患、病態によって、細胞分画でどの細胞が優位になっているか(増加しているか)が異なるため、疾患を鑑別するおおよその目安となります(あくまで「目安」ですが)。既出ですがおさらいをして置きましょう。
また、リンパ球が増加する疾患でも、リンパ球のうちCD4+とCD8+、どちらが優位であるかによって、疾患を推定することができます。
肺胞洗浄液でリンパ球の分画が増加している場合、想定される病態は次の通り。
ここで、各々の病態を取り上げてみましょう。
■過敏性肺炎
過敏性肺炎は、広い意味での間質性肺炎に含まれますが、原因物質によって生じたV型、W型のアレルギー反応が主な機序で、因果関係がハッキリしています。
V型、W型のアレルギーはリンパ球が主役となる反応ですので、肺胞壁〜肺胞腔内にたくさんリンパ球が出現します。そのため肺胞洗浄液中のリンパ球が増加します。ただし原因物質によって、リンパ球サブセットが若干異なります。
例えば教科書的な夏型過敏性肺炎(原因はTrichosporon asahi, Trichosporon mucoides)の場合、CD8が著増することでCD4+<CD8+となります。
一方で農夫肺(原因は好熱性放線菌など)においては、CD4+>CD8+となり、生活環境や発症の様式などの病歴と併せて、おおよその鑑別が可能となります。
* 臨床検査増刊号(第57巻11号)「はじめよう検査説明(仮題)」に改変の上掲載予定
気管支鏡・BAL/TBLBを最初から読む
- マクロファージ:80%以上
- リンパ球:15%以下
- 好中球:3%以下
- 好酸球:0.5%以下
- CD4+/CD8+:1〜2
これを逸脱したものを、一応異常とします。
以前にも書きましたが、疾患、病態によって、細胞分画でどの細胞が優位になっているか(増加しているか)が異なるため、疾患を鑑別するおおよその目安となります(あくまで「目安」ですが)。既出ですがおさらいをして置きましょう。
- リンパ球が増加: NSIP、COP、膠原病性間質性肺炎、薬剤関連性肺疾患、過敏性肺炎、サルコイドーシスなど
- 好中球が増加:細菌性肺炎、びまん性汎細気管支炎、AIP、IPの急性悪化、ARDSなど
- 好酸球が増加:好酸球性肺炎、好酸球増多症候群、一部の薬剤関連性肺疾患など
また、リンパ球が増加する疾患でも、リンパ球のうちCD4+とCD8+、どちらが優位であるかによって、疾患を推定することができます。
- CD4+>CD8+:サルコイドーシス、農夫肺、慢性ベリリウム肺、結核
- CD4+<CD8+:COP、NSIP、AIP、薬剤関連性肺疾患、夏型過敏性肺炎など
肺胞洗浄液でリンパ球の分画が増加している場合、想定される病態は次の通り。
- 過敏性肺炎
- サルコイドーシス
- NSIP
- COP
- 膠原病性間質性肺炎
- 薬剤関連性肺疾患など
ここで、各々の病態を取り上げてみましょう。
■過敏性肺炎
過敏性肺炎は、広い意味での間質性肺炎に含まれますが、原因物質によって生じたV型、W型のアレルギー反応が主な機序で、因果関係がハッキリしています。
V型、W型のアレルギーはリンパ球が主役となる反応ですので、肺胞壁〜肺胞腔内にたくさんリンパ球が出現します。そのため肺胞洗浄液中のリンパ球が増加します。ただし原因物質によって、リンパ球サブセットが若干異なります。
例えば教科書的な夏型過敏性肺炎(原因はTrichosporon asahi, Trichosporon mucoides)の場合、CD8が著増することでCD4+<CD8+となります。
一方で農夫肺(原因は好熱性放線菌など)においては、CD4+>CD8+となり、生活環境や発症の様式などの病歴と併せて、おおよその鑑別が可能となります。
* 臨床検査増刊号(第57巻11号)「はじめよう検査説明(仮題)」に改変の上掲載予定
気管支鏡・BAL/TBLBを最初から読む
posted by 長尾大志 at 18:06
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| 気管支鏡・BAL/TBLB
2013年03月17日
送別の春2
もう一人の卒業生、K先生。特別な思い入れがある卒業生です。
滋賀医大に来て、はじめて6回生アドバンスコースを企画した学年。当時からまじめで探求心旺盛、レントゲン読影も熱心で、しかもスイーツ大好き。Kitagawaでバイト経験もあると、いや〜実に呼吸器内科向けだな〜と思っていたのです…。
卒業されて学内に残られたのですが、2年目を外病院研修(たすき掛け)され、しばらくご無沙汰していたら…わざわざ選択のところで大学の呼吸器内科を選んで研修、そこでやはり適性を確認されて、(少し一時の迷いもあったものの…苦笑)入局となりました。
その間ずっと経過観察をしていましたが、やはり学生の時の印象のままに、まじめに探求し続けてかなりイケてるレジデントになってきました。今後もこのままで大丈夫でしょう。学生から大きくなるまでをずっと経時的に観察し得た一例、ということで、何だかとっても感無量なのです。
K先生がそこにいるだけで、場が明るく、暖かくなります。これはしようと思って出来るものではない、やはり親御さんの育て方が良かったのでしょう(同じようなことをこの前にも言った気が…そうか、呼吸器内科に来る人はいい家庭で育ってるんだ!ってことですね)。
K先生の家訓も、これまた大変素晴らしいもので、是非公開させていただきたいところ。また許可をいただきたいと思います。
まずは倉敷に行った最初の1ヶ月、「寂しいときにはお金を使え」で乗り切りましょう!
滋賀医大に来て、はじめて6回生アドバンスコースを企画した学年。当時からまじめで探求心旺盛、レントゲン読影も熱心で、しかもスイーツ大好き。Kitagawaでバイト経験もあると、いや〜実に呼吸器内科向けだな〜と思っていたのです…。
卒業されて学内に残られたのですが、2年目を外病院研修(たすき掛け)され、しばらくご無沙汰していたら…わざわざ選択のところで大学の呼吸器内科を選んで研修、そこでやはり適性を確認されて、(少し一時の迷いもあったものの…苦笑)入局となりました。
その間ずっと経過観察をしていましたが、やはり学生の時の印象のままに、まじめに探求し続けてかなりイケてるレジデントになってきました。今後もこのままで大丈夫でしょう。学生から大きくなるまでをずっと経時的に観察し得た一例、ということで、何だかとっても感無量なのです。
K先生がそこにいるだけで、場が明るく、暖かくなります。これはしようと思って出来るものではない、やはり親御さんの育て方が良かったのでしょう(同じようなことをこの前にも言った気が…そうか、呼吸器内科に来る人はいい家庭で育ってるんだ!ってことですね)。
K先生の家訓も、これまた大変素晴らしいもので、是非公開させていただきたいところ。また許可をいただきたいと思います。
まずは倉敷に行った最初の1ヶ月、「寂しいときにはお金を使え」で乗り切りましょう!
posted by 長尾大志 at 22:45
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| 日記
2013年03月16日
送別の春
昨日は3C病棟の送別会でした。
ウチは4年目のN先生と3年目のK先生が、それぞれ、大学で学んだ考え方をベースにより多くの症例を経験し、独り立ちをするために市中病院へ旅立ち。
また来週呼吸器内科の送別会があるので、そのときにいろいろ書こうかとも思ったのですが、「何か書いてください」と言われたので書いてみます。
N先生は1,2年目を市中病院で研修され、3年目からウチに入局してこられました。やはり当初は、良くも悪くも市中病院で初期研修をしてきた人!って感じでした。
さっさっと出来るところもあるものの、やはりムラがある。知識に偏りがあり、いろいろと思い込み、我流の部分も見受けられたので、少し時間をかけて、気づいてもらおうかと思いました。
以前にも書いた「失敗、うまくいかなかった部分から学ぶ」というやつです。おそらく元々?反省をしっかりされるタイプであったということか、2年間でかなり癖が抜けて、しっかりしてこられたと思います。
そうであったという意識が強いのか、まだまだ「まだまだです」みたいなことを言われるのですが、もうそろそろ(少なくとも外に向けては)自信を持った態度を出していってもいいんじゃないかと思います。
もちろん、態度だけでかくなれ、ということではないですし、基本的には「まだまだ」だし、常に「これでいいか?」と顧みる姿勢はこのまま続けて行くべし、なのですが、まあ立場的には、独り立ちすべき立場になるわけで、あまり頼りない感じを出してもどうか、とも思うわけです。
そういうわけで、考え方の軸は整いました。あとは症例を重ねて(ここはまだまだ足りないので)、鑑別をたてたり、状況判断をしたり、といったいろいろなスピードを速くしていきましょう。
N先生におかれては、人生経験が豊富であり、種々の雑学というか教養をウチの科にもたらしてくださった点も見逃せません。また、とにかく蔵書が多い。いったいいつ読んでいるのか、そもそも読んでいるのかという疑問もありますが、呼内部屋が教養と数々の教科書、参考書で満たされたのは彼のおかげです。
ウチは4年目のN先生と3年目のK先生が、それぞれ、大学で学んだ考え方をベースにより多くの症例を経験し、独り立ちをするために市中病院へ旅立ち。
また来週呼吸器内科の送別会があるので、そのときにいろいろ書こうかとも思ったのですが、「何か書いてください」と言われたので書いてみます。
N先生は1,2年目を市中病院で研修され、3年目からウチに入局してこられました。やはり当初は、良くも悪くも市中病院で初期研修をしてきた人!って感じでした。
さっさっと出来るところもあるものの、やはりムラがある。知識に偏りがあり、いろいろと思い込み、我流の部分も見受けられたので、少し時間をかけて、気づいてもらおうかと思いました。
以前にも書いた「失敗、うまくいかなかった部分から学ぶ」というやつです。おそらく元々?反省をしっかりされるタイプであったということか、2年間でかなり癖が抜けて、しっかりしてこられたと思います。
そうであったという意識が強いのか、まだまだ「まだまだです」みたいなことを言われるのですが、もうそろそろ(少なくとも外に向けては)自信を持った態度を出していってもいいんじゃないかと思います。
もちろん、態度だけでかくなれ、ということではないですし、基本的には「まだまだ」だし、常に「これでいいか?」と顧みる姿勢はこのまま続けて行くべし、なのですが、まあ立場的には、独り立ちすべき立場になるわけで、あまり頼りない感じを出してもどうか、とも思うわけです。
そういうわけで、考え方の軸は整いました。あとは症例を重ねて(ここはまだまだ足りないので)、鑑別をたてたり、状況判断をしたり、といったいろいろなスピードを速くしていきましょう。
N先生におかれては、人生経験が豊富であり、種々の雑学というか教養をウチの科にもたらしてくださった点も見逃せません。また、とにかく蔵書が多い。いったいいつ読んでいるのか、そもそも読んでいるのかという疑問もありますが、呼内部屋が教養と数々の教科書、参考書で満たされたのは彼のおかげです。
posted by 長尾大志 at 22:59
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| 日記
2013年03月15日
べったりと白くなる連続性の(肺胞性)陰影・浸潤影とすりガラス影関連・肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・異常な物質の出現
肺胞洗浄液の中には、肺胞内に存在するモノが含まれてくるわけですが、普通では見られない(存在しない)モノが出現していると、それは診断に大きく寄与します。
例えば、以下のようなモノが検出されれば、確定診断につながります。いずれも健常者の肺胞には存在していないモノです。
■病原体関連
■悪性細胞
・癌細胞(細胞診による)
癌・癌性リンパ管症・リンパ腫・リンパ増殖性疾患
■特異物質など
白濁した回収液

だんだん濃くなる血清回収液

気管支鏡・BAL/TBLBを最初から読む
例えば、以下のようなモノが検出されれば、確定診断につながります。いずれも健常者の肺胞には存在していないモノです。
■病原体関連
- ニューモシスチス・イロヴェツィーPneumocystis jirovecii
Diff-Quik染色による栄養型の検出、グロコット染色によるcyst嚢壁の認識、PCR法によるDNAの検出 - 抗酸菌・非結核性抗酸菌
塗抹鏡検(蛍光法、Ziehl-Neelsen染色)、培養(MIGT法、小川培地)、PCR法 - 真菌
塗抹鏡検(グロコット染色、墨汁染色)、培養 - ウィルス
封入体巨細胞(サイトメガロウイルス感染を示唆)
■悪性細胞
・癌細胞(細胞診による)
癌・癌性リンパ管症・リンパ腫・リンパ増殖性疾患
■特異物質など
- 白濁した回収液(だんだん薄くなる)
肺胞蛋白症 - だんだん濃くなる血性回収液/ヘモジデリン貪食細胞
肺胞出血
白濁した回収液
だんだん濃くなる血清回収液
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posted by 長尾大志 at 12:30
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2013年03月14日
べったりと白くなる連続性の(肺胞性)陰影・浸潤影とすりガラス影関連・肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・細胞成分2・細胞数、細胞分画、リンパ球サブセットの正常範囲
今回記事を書くにあたって、細胞分画の正常範囲は、正確を期すために「気管支肺胞洗浄(BAL)法の手引き(日本呼吸器学会びまん性肺疾患学術部会・厚生労働省難治性疾患克服研究事業びまん性肺疾患調査研究班編集)」を参考にしました。
■細胞数
細胞数は、回収された肺胞洗浄液の1mlあたり、細胞が何個あるかを通常の血球計算版を用いて測定したものです。
上記データによると272人の健常非喫煙者の肺胞洗浄液を調べたところ、細胞数は(12.7±8.4)×10,000という結果でした。平均12万個。でもよく見ると、標準偏差が8万もある。それだけ、ばらつきが大きな集団、ということになります。
しかも喫煙者群だと、報告者にもよりますが20万〜40万程度に増えるようです。
さまざまな(肺胞に炎症が起こる)疾患で肺胞洗浄液中の細胞数は増加しますが、喫煙者ではそのあたりが目立ちにくくなることを知っておきましょう。
こうしたことを鑑みて、一応の基準として、健常非喫煙者での細胞数、これを10万〜20万、としておきましょう。細胞数の増加は、喫煙や炎症性疾患の存在を考えます。
■細胞分画・リンパ球サブセット
細胞分画も、先に書いたように、特に非喫煙者と喫煙者の間でばらつきがあります。特に喫煙者ではマクロファージが増加します。
健常非喫煙者における細胞分画の目安は、
で、正常値の目安は以下の通りです。
これを逸脱したものを、一応異常と扱っておきます。
また、リンパ球は見た目均一ですが、その表面マーカーでサブセットが分類されています。肺胞洗浄液中のリンパ球はほとんどがT細胞で、CD4陽性のヘルパーT細胞とCD8陽性のサプレッサーT細胞に分けられます。この比率(CD4+/CD8+:フォーエイト比、よんはち比)が疾患によって変化することが知られていて、臨床でも用いられます。
健常非喫煙者ではCD4+/CD8+は1〜2程度とされています。
* 臨床検査増刊号(第57巻11号)「はじめよう検査説明(仮題)」に改変の上掲載予定
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■細胞数
細胞数は、回収された肺胞洗浄液の1mlあたり、細胞が何個あるかを通常の血球計算版を用いて測定したものです。
上記データによると272人の健常非喫煙者の肺胞洗浄液を調べたところ、細胞数は(12.7±8.4)×10,000という結果でした。平均12万個。でもよく見ると、標準偏差が8万もある。それだけ、ばらつきが大きな集団、ということになります。
しかも喫煙者群だと、報告者にもよりますが20万〜40万程度に増えるようです。
さまざまな(肺胞に炎症が起こる)疾患で肺胞洗浄液中の細胞数は増加しますが、喫煙者ではそのあたりが目立ちにくくなることを知っておきましょう。
こうしたことを鑑みて、一応の基準として、健常非喫煙者での細胞数、これを10万〜20万、としておきましょう。細胞数の増加は、喫煙や炎症性疾患の存在を考えます。
■細胞分画・リンパ球サブセット
細胞分画も、先に書いたように、特に非喫煙者と喫煙者の間でばらつきがあります。特に喫煙者ではマクロファージが増加します。
健常非喫煙者における細胞分画の目安は、
- マクロファージ:85〜90%
- リンパ球:10〜15%
- 好中球:0.5~1%
- 好酸球:0.5~1%
- 好塩基球:0.5~1%未満
- 形質細胞:0.5~1%未満
で、正常値の目安は以下の通りです。
- マクロファージ:80%以上
- リンパ球:15%以下
- 好中球:3%以下
- 好酸球:0.5%以下
これを逸脱したものを、一応異常と扱っておきます。
また、リンパ球は見た目均一ですが、その表面マーカーでサブセットが分類されています。肺胞洗浄液中のリンパ球はほとんどがT細胞で、CD4陽性のヘルパーT細胞とCD8陽性のサプレッサーT細胞に分けられます。この比率(CD4+/CD8+:フォーエイト比、よんはち比)が疾患によって変化することが知られていて、臨床でも用いられます。
健常非喫煙者ではCD4+/CD8+は1〜2程度とされています。
* 臨床検査増刊号(第57巻11号)「はじめよう検査説明(仮題)」に改変の上掲載予定
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posted by 長尾大志 at 14:56
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2013年03月13日
べったりと白くなる連続性の(肺胞性)陰影・浸潤影とすりガラス影関連・肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・細胞成分1
肺胞に病変がありそうな、浸潤影やすりガラス影を呈した疾患には肺胞洗浄液を分析します。
肺胞洗浄液の構成成分には、大きく分けて細胞成分と液性成分の2つがあります。
細胞成分は文字通り、どんな細胞が肺胞にいるかを見たもので、細胞数、細胞分画、細胞表面マーカーなどの項目があります。
液性成分は肺胞洗浄液の上清に含まれる各種タンパク質やサーファクタント、サイトカインなどになりますが、臨床上カットオフ値まで確立した物質、というものはなく、まだまだ研究の段階である、といえるかと思います。そんなわけで、肺胞洗浄液の成分といえば細胞成分、という感じであります。
それで細胞成分の項目を見ていきたいのですが、項目を見るときに注意するところは、「正常値の幅が広い」「非喫煙者と喫煙者でかなり数値が異なる」ということです。
血液と異なり、肺胞洗浄液は洗浄手技や回収手技によって、つまり(おそらく)報告者によって、「正常」「平均」値が若干ずつ異なります。そこがまた、覚えることが多くなってややこしいところです。
また、喫煙者では気道や肺胞に煙に含まれているゴミが多量に沈着するため、お掃除をするために肺胞に多数マクロファージが動員されます。そのため、喫煙者のBALF中にはそもそも細胞数が多く、細胞分画でマクロファージの増加が認められてしまうのです。
このあたりのことを勘案して、一応の正常値、正常範囲を確認しましょう。
* 臨床検査増刊号(第57巻11号)「はじめよう検査説明(仮題)」に改変の上掲載予定
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肺胞洗浄液の構成成分には、大きく分けて細胞成分と液性成分の2つがあります。
細胞成分は文字通り、どんな細胞が肺胞にいるかを見たもので、細胞数、細胞分画、細胞表面マーカーなどの項目があります。
液性成分は肺胞洗浄液の上清に含まれる各種タンパク質やサーファクタント、サイトカインなどになりますが、臨床上カットオフ値まで確立した物質、というものはなく、まだまだ研究の段階である、といえるかと思います。そんなわけで、肺胞洗浄液の成分といえば細胞成分、という感じであります。
それで細胞成分の項目を見ていきたいのですが、項目を見るときに注意するところは、「正常値の幅が広い」「非喫煙者と喫煙者でかなり数値が異なる」ということです。
血液と異なり、肺胞洗浄液は洗浄手技や回収手技によって、つまり(おそらく)報告者によって、「正常」「平均」値が若干ずつ異なります。そこがまた、覚えることが多くなってややこしいところです。
また、喫煙者では気道や肺胞に煙に含まれているゴミが多量に沈着するため、お掃除をするために肺胞に多数マクロファージが動員されます。そのため、喫煙者のBALF中にはそもそも細胞数が多く、細胞分画でマクロファージの増加が認められてしまうのです。
このあたりのことを勘案して、一応の正常値、正常範囲を確認しましょう。
* 臨床検査増刊号(第57巻11号)「はじめよう検査説明(仮題)」に改変の上掲載予定
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posted by 長尾大志 at 16:45
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2013年03月12日
緊急告知・『病気がみえる vol.4 呼吸器』改訂第2版 3月19日発売決定!
以前に意味深?な投稿があったかと思いますが、万事整いまして、告知の運びとなりました。
このたび改訂第2版となります『病気がみえる vol.4 呼吸器』、初版からの追加部分の(一部ですけど)監修をさせていただきました。来週3月19日発売であります。
こちらで「立ち読み」ができますよ。私の担当した「症候」も立ち読みできます!
http://byomie.com/products-4.html
まあ、私が紹介しなくても、皆さん購入されると思いますが…(苦笑)。自分で言うのもなんですが、よくできています。是非どうぞ。
このたび改訂第2版となります『病気がみえる vol.4 呼吸器』、初版からの追加部分の(一部ですけど)監修をさせていただきました。来週3月19日発売であります。
こちらで「立ち読み」ができますよ。私の担当した「症候」も立ち読みできます!
http://byomie.com/products-4.html
まあ、私が紹介しなくても、皆さん購入されると思いますが…(苦笑)。自分で言うのもなんですが、よくできています。是非どうぞ。
posted by 長尾大志 at 18:44
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