2015年10月31日

カン違いとスレ違い

日々若い人の指導、というか、若い人にゴチャゴチャ言っていると、ジェネレーションギャップに戸惑いを覚えることがしばしばあります。でも、自分の研修医時代を思い出してみると、よく似ているな〜と思うところもたくさんあるものです。


その最たるものは、「自分を良く見せたい」「カッコ悪いところを同僚や上級医に見せたくない」という思いです。やはりカッコ悪いところは見せたくないし、「こいつ馬鹿だな」と思われたくない。それは当たり前のことなのです。私は、2年目の途中ぐらいまで(今も!?)この傾向が強く、できるだけその場を取り繕うような言動が多かったように思います。


今思うと、それってもったいなかったな〜と思うのですね。だって、上級医にしてみれば「こいつわかっていない=教えなきゃならない」なのですから。てことは、「これを知らない、これも知らない」というアピールは、教えてもらう機会を増やすことになるわけです。


私は2年目の途中ぐらいになって、ある程度自分のスキルに自信がついてくると、不思議なもので「知らない」ことをアピールすることが苦痛でなくなってきました。逆に、自分に自信がない人ほど、自分を守ろうとして「知ってますよ」アピールをするのでしょう。


知らないアピールをするようになると、おもしろいものでどんどん教えていただけるのです。おかげで、3年目ぐらいまで、ほとんど耳学問で内科全般のスキルを身につけることができました。本を読まなくても、毎日のように各分野の上級医に教えを乞い、ノート、メモが増えていきました。


やはりエキスパートに直接聞く、ってのが一番効率よく知識を蒐集できます。もちろんじっくり文献に当たる習慣、文献を正しく読むスキルも大切なのですが、「若いうちは現場で学ぶのが一番」ではないか、文献は大人になってからでもいいのではないか、そんな風に思いました。ただ私のように、本や論文を読まないまま年をとってしまうのもどうかと思いますが…。


もちろん上級医によっては、「教えなきゃならない=ウザい」となる人もいたりするのかもしれませんが…少なくとも今の滋賀医大には、そういう上級医はあまり見受けません。いてもすぐにわかります。こちらとしては、「知らないことを教えてあげたい」と手ぐすねを引いて待っているのに、カン違い?して「知ってますよ」アピールをされると、やっぱり冷めてしまいます。


上級医として、研修医、学生の皆さんにもっておいてほしいのは、知識ではありません。学ぼうという熱意です。そこのカン違いが多くて、こちらの熱意とスレ違いになっている、そこが残念なところです。


あ…ひょっとして、「こんなエキスパート気取りの勘違い野郎に教わりたくない」そういう意思表示だったりするのでしょうか…(汗)。

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2015年10月30日

症例検討クイズ2・急性呼吸不全・その後の経過3

PaO2は何とか保たれていますが、PaCO2の急速な悪化で呼吸性アシドーシス、pHの低下が出てきました。換気量の低下が背景にありそうですから、換気量を増やすためにしっかりと器械換気をさせる必要がありそうです。


  • 【SIMV+PSモード】

  • FiO2:70%

  • PEEP:8cmH2O

  • PS圧:12 cmH2O

  • PC圧(PC above PEEP):16 cmH2O

  • 換気回数: 14回



PC圧を上げてTVを増やし、器械換気の回数も増やす。その後PaCO2は40台、pHも7.3を超えて数日は小康状態でしたが、途中でファイティングが多くなり、鎮静をかけてPCVにしました。PaO2はよかったのでFiO2、PEEPを下げています。


  • 【PCVモード】

  • FiO2:60%

  • PEEP:8cmH2O

  • PC圧(PC above PEEP):14 cmH2O

  • 換気回数: 22回



その後治療に抗して悪化しました。その都度FiO2を上げ(60⇒70⇒80)、PEEPは血圧低下があったので上げず、換気回数を上げ(22⇒25)、とギリギリのところで調整を試みましたが、最後は残念ながら…となりました。


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posted by 長尾大志 at 16:40 | Comment(0) | やさしイイ血ガス・呼吸管理

2015年10月29日

症例検討クイズ2・急性呼吸不全・その後の経過2

pH正常範囲でPaCO2もHCO3-も問題なし。問題は酸素だけですね。ただ、SpO2低下があったときに呼吸状態が乱れ、若干頻呼吸気味となっていたようで、主治医はCPAPからSIMVに変更しています。


  • 【SIMV+PSモード】

  • FiO2:70%

  • PEEP:8cmH2O

  • PS圧:8 cmH2O

  • PC圧(PC above PEEP):8 cmH2O

  • 換気回数: 8回



おそるおそる様子を見ながら、という感じでしょうか。しかしその後状態はさらに悪化し、自発が減って、


pH 7.265, PaCO2 53.1, PaO2 81.6, HCO3- 23.1

となってしまいました。このままではいけませんね。


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posted by 長尾大志 at 16:16 | Comment(0) | やさしイイ血ガス・呼吸管理

2015年10月28日

症例検討クイズ2・急性呼吸不全・その後の経過1

第9病日には自発もしっかり出て、設定もCPAPになるまで改善していました。鎮静はほとんどかかっていない状態で、意識もしっかりしています。


  • 【CPAPモード】

  • FiO2:50%

  • PEEP(CPAP):6cmH2O

  • PS圧:6 cmH2O



O2がもう少し改善すれば、と思われていた矢先に、状態が急変。SpO2低下があり、血ガスを測定したところ、


pH 7.392, PaCO2 37.6, PaO2 56.1, HCO3- 22.4


となっていました。さて、どう解釈して、どう設定し直しますか?


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posted by 長尾大志 at 16:46 | Comment(0) | やさしイイ血ガス・呼吸管理

2015年10月27日

症例検討クイズ2・急性呼吸不全・人工呼吸設定1

敗血症でARDS、意識状態が悪く挿管、当初の設定は型どおりフルで器械に換気させる持続強制換気(continuous mandatory ventilation:CMV)、PCV(従圧式)でスタートしています。


ただ、意識障害のため高CO2となっており、pHにも影響が出ているので、hypercapnia(高CO2)はそれほどpermissive(許容できる)ものではありません。逆にO2には少し余裕がありますね。


本症例では、O2を決めるFIO2とPEEPはゆるめに、CO2を飛ばし気味にするべく換気量を多くするよう、PC圧と換気回数を多めに設定しました。


  • 【PCモード】

  • FIO2:70%

  • PEEP:8cmH2O

  • PC圧(PC above PEEP):18 cmH2O

  • 換気回数: 20回



で開始、その後状態は落ち着き、4時間後の血液ガスは


pH 7.348, PaCO2 40.7, PaO2 120.1, HCO3- 21.5


となりました。その後状態は改善し、一旦抜管直前まで向かったのですが…。


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posted by 長尾大志 at 18:16 | Comment(0) | やさしイイ血ガス・呼吸管理

2015年10月26日

症例検討クイズ2・急性呼吸不全・症例提示

65歳女性

<主訴>
発熱、呼吸困難


<現病歴>
左大腿部滑液包炎によるDIC、敗血症、ARDSの治療をCTRX、DAP、CLDMで行い、滑液包の洗浄、デブリを施行して一旦軽快していたが、その後呼吸困難が生じ、胆嚢炎による敗血症、ARDS発症と考えられた。
TAZ/PIPC投与、気管内挿管を行い、人工呼吸器管理となった。


血ガス所見と呼吸器のみに注目しまして、見て参りましょう。


血液ガス:pH 7.294, PaCO2 55.0, PaO2 103.9, HCO3- 21.3


意識状態がよろしくありません。


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posted by 長尾大志 at 21:10 | Comment(0) | やさしイイ血ガス・呼吸管理

2015年10月25日

COI(利益相反)について思うこと(めっちゃ私見)

今日は東京まで行って、新しい薬剤のエビデンスを勉強して参りました。


まあ、よくある?メーカーさんからのお誘いで、メーカーさんとしては、新発売のお薬のプロモーションといった側面が強いのでしょう。


呼吸器内科って、これまであまり新薬とかがなくて、こういう大々的なプロモーションの機会はそれほどありませんでした。まあ、私があまりそういう会にお呼ばれする立場でなかったこともあるかもしれませんが…。


現在、私たちの業界に限ったことではないのでしょうが、全国的、あるいは全世界的に、いわゆるCOI的なことは減らしていこう、医療業界でいうと、利害に左右されずに、エビデンスを積み重ねて治療を考えよう、という流れになっている印象があります。


私が医師になった頃は、今とは全然違っていて、それこそCOIなどという概念すらありませんでしたが、働いていたのがほとんど公的病院だったこともあり、ちょうど「これまではこんなこともしていましたが、これからは申し訳ありませんが出来ません」みたいな説明を受けることがすごく多く、「へ〜これまでは、こんなことまであったんだ〜」と感心するばかり。また、同級生で私立の施設で働く人たちに話を聞いて、「うへ〜」と思うことが多かったものです。


それももはや過去の話で、まあ今ではCOIもすっかりガラス張り(すりガラス?)になりました。逆にそれで「うへえ」という例もありますけど。( ゚д゚) チョットマエニキイチャッタ。


一般論として、自分にはそういう利益がなくて、他の人にそういう利益が向かっているのを見ると、やはりいい気はしないですね。現在ではけっこう少なくない業界において、特定の人なり団体だけに(不当に?)利益が向かうことを排除しようというのは、元々はそういう感情論から端を発して、「そもそも公平であるべき」という正論が乗っかってきて、これまで利益供与してきたけど、そろそろ止めたいな、という当事者の潜在的ニーズと合致して、社会的な流れになった、そんな印象を勝手に持ってます。


医療の業界でも、これまでの慣習に染まっていない系の、新しい考え方の先生方や、コメディカルスタッフの方々を中心に、メーカーの息がかかった勉強会は一切お断り、私たちは自分たちでエビデンスを調べて勉強します、みたいなスタンスを目にしたり耳にしたりすることが増えていますねー。


そういう方々からすると、私もこういう勉強の機会に参加したということは、メーカーに毒された、けしからんやつだ、ということになるかもしれません。まあこれまでは、上にも書きましたとおり、あまりメーカーさんとの関わりは少なかったと自負しております(なにせ新薬がなかったので…)。\(^o^)/


自分がお話しする講演会も、ほとんどが直接医師会さんとか学生さんの団体とかセミナー業者さんからお声がけ頂いた、というもので、特にメーカーさんに気遣いの必要がないものばかりでした。


でも今後例えばメーカーさん主催の講演会で講演をする、ということになると、これはCOIが発生することになります。もちろん現状でも、例えば学界の重鎮の先生方は、メーカーさん主催の研究会なりでお話をされていますが、で、もちろん私はお話を伺う立場ですので、いろいろなお話を伺ってはおりますが、「COIに引っ張られている」感って、普通は聴いてたらわかりますよね。


呼吸器や感染症の領域のお話を伺うことが多いので、余計にそう思うのかもしれませんが、この領域の先生方は、クリーンな先生がすごく多い印象があります(COIが多岐にわたるからかもしれませんが…)。(^◇^)つまり、エビデンスを淡々と積み上げて、それに基づく結論、考えをおっしゃる。その上で、「今日は○○社さんの提供ですから、○○にいいことを付け加えますと…」みたいな注釈を最後に付け加えられたりするのですね。それでよくわかる。


やっぱり、講演料が発生している以上、気持ち的に何も言わないわけにもいかない。あるいは何らかのことを依頼されたりすることもあるのかもしれません。でもまあそれはわかるわけです。それが人情、お仕事というものですし、聴いている方もそのつもりで聴きますから。


昔から義理、人情という言葉がありますが、ある意味、COIの元になるのはこの「義理、人情」だったりするわけです。義理堅い方、人情に厚い方はCOIがあると熱心にとある製品を勧めたりされるのかもしれません。COI排除の風潮はその「義理、人情」から外れている人のやっかみである、こんな極論まで耳にすることもあったりします。


長々と何が言いたいのかよくわからなくなってきましたが、今日の会では少なくとも、ちゃんとフラットな議論がなされていて、大変勉強になりました。もちろんCOI(義理人情)を感じるところもありましたが、それはちゃんと差し引いて、新しい薬への理解を深めることが出来ました。


それで今後とも、私はCOIに左右されないプレゼンをしますよ、ということを宣言しておきます。とりあえず。だから私がいいといったものは、本当にいいと思っているものです(笑)。



変な話、呼吸器以外の領域のお話を来伺うこともありますが、領域によっては、なかなかひどい驚くようなプレゼンを見かけることもあります。特に、例のあの領域は、なかなかひどい義理、人情に厚い方が多いようです。なかなか大きなCOIがあるようですね。もっと言いたいことはいっぱいあるけど、とてもここには書けません。残念!


まあ、COI排除主義の方々からすると、目くそ鼻くそと思われるかと思いますし、それは仕方がありませんが、それでもなんか言いたくなったので。

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posted by 長尾大志 at 20:38 | Comment(0) | 日記

胸部X線写真をリロードする

(昨日原稿だけ書いて、投稿しておりませんでした。今から連投します)

かねてより何度か告知しておりますが、今シーズン(秋)に講演させて頂いている(頂く予定の)内容は、胸部X線写真に関することが多いです。


で、講演が終わるごとに、「もっとこう言えばよかった」「こう言うと面白い」「この画像を使おう」といろいろとアイデアが湧いてくるものです。これは多くの方が経験されているのではないかと思うのですが、「やった瞬間」が一番コンテンツを客観的に見ていて、考えるところも多く、頭もフル回転しているものですから、多くのアイデアが降って湧いてくるのですね。


まあ一晩寝るとアイデアもどこかへ行ってしまいます。それで、帰りの新幹線でスライドの手直しに入ることが多いわけです。で、こういう機会が続くということは、けっこう手直しの機会が多くて、結果イイものが出来上がるというわけです。ありがたや〜です。


ちょうどこういう機会に、ケアネットさんから『胸部X線写真』に関する収録のお話を頂けたことは、いいタイミングだと思いました。ただいまスライドを絶賛作成中ですが、「胸部X線写真をリロードする」を合い言葉に、いい感じで出来ているように思います。


「裏を返すと、数年前に作成したコンテンツはもうダメってこと?」そう思われるかもしれませんが、全くそんなことはありません(笑)。『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』は、今も確認のためにチラチラのぞきますが、「よくこんなことまで書いたな〜」と感心しています。こちらはまだしばらく、改版の必要性を感じておりませんのでご安心下さい(苦笑)。

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posted by 長尾大志 at 20:09 | Comment(0) | 活動報告

2015年10月23日

症例検討クイズ1・まとめ

本症例は市中肺炎による急性呼吸不全でした。幸い初期治療で用いた抗菌薬が奏効し、比較的早い段階で軽快傾向となりましたので、呼吸器の設定も途中からはほぼ一本調子で緩めていけました。


まあ良くなるときというのはこんなモノかもしれません。そういうときって、多少設定がアレでも何とかなるものですから。


問題は悪い状態が続く、あるいは悪化してくるときでしょう。いろいろな制約がconflict、干渉してきて、「あちらを立てりゃ、こちらが立たず」状態になってしまいます。


そういうときにどちらを立てるか?決まり事はありませんのでその都度主治医の裁量によるところが大きいように思います。


ギリギリの攻防という症例、お役に立つかどうかはわかりませんが、来週取り上げられたら取り上げてみたいと思います。


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posted by 長尾大志 at 17:43 | Comment(0) | やさしイイ血ガス・呼吸管理

2015年10月22日

症例検討クイズ1・急性呼吸不全・人工呼吸設定8

そこで血液ガス。


pH:7.418 PaO2 : 103.0 mmHg PaCO2 : 42.1 mmHg B.E : 1.8 mmol/L HCO3 : 26.6 mmol/L Na : 140.7 mmol/L K : 3.1 mmol/L CL : 107.0 mmol/L A.G : 10.7 mmol/L  Glu : 99.0 mg/dL  


しごく平和な感じの結果となっております。自発もしっかり出ておりました。これを受けて、ウイーニングを進めて参ります。


ウイーニングにあたっては自発呼吸トライアル(spontaneous breathing trial:SBT)の開始基準を確認しておきましょう。


  • 原疾患が治療により改善

  • 痰の喀出が可能

  • PEEP<5cmH2O

  • P/F比>200mmHg

  • 血行動態が安定(昇圧剤使用不要)

  • 意識清明

  • 1回換気量が充分ある



上記の基準はほぼ満たしておりますから、次はTピース、またはCPAP+PSVに切り替えて見守り、OKならば抜管へ、という流れになります。


ここでは設定をCPAP+PSV:FiO2 0.35(35%)、PEEP(CPAP)6 cmH2O、PS圧 8 cmH2Oとし、呼吸や循環に異常がなかったため抜管としました。


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posted by 長尾大志 at 17:29 | Comment(0) | やさしイイ血ガス・呼吸管理

2015年10月21日

症例検討クイズ1・急性呼吸不全・人工呼吸設定7

この血ガスを受けて、呼吸器の設定をさらに緩めていきます。SpO2を見ながらFIO2を下げ、換気量を見ながらPC圧やサポート圧を減らします。


血行動態も改善してきましたので、徐々にノルアドレナリンやドーパミンを下げていきます。経腸栄養、リハビリも開始しました。


人工呼吸器の設定:

モード:SIMV+PS
FIO2 0.35(35%) PEEP 6 PS圧 8 PC圧 8 呼吸回数12回


自発呼吸が増えてきましたので、SIMVの呼吸回数を減らしていきます。最終的に、呼吸回数を8回まで減らして…。


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posted by 長尾大志 at 19:19 | Comment(0) | やさしイイ血ガス・呼吸管理

2015年10月20日

症例検討クイズ1・急性呼吸不全・人工呼吸設定6

採血結果を書くのを忘れていました。


HT 37.1
HB 12.6
WBC 53,000
PLTS 29.9万
TP 5.4
ALB 2.6
AST 86
ALT 56
NA 142
CL 108
K 3.5
UN 20.9
CRE 1.02
CRP 41.40



PaO2/FiO2=144/0.5=288なので 中等症ARDS→軽症ARDS に改善しました。酸素化は良好で、このまま、抜管を目指せる雰囲気です。


そこでFIO2を下げて肺傷害の軽減とウイーニングを図ります。
⇒FiO2を40%にします。


現在PEEP8cmH2Oなので、今後こちらも減らすことができるでしょう。まあ、慌てて減らすほど血圧やプラトー圧に問題がなければ、このままでも構わないでしょう。


昨日と比較して、アシドーシスは改善しています。

AG=Na+ −(Cl- +HCO3- )
  =142 −(108 + 19)
  =15

AGは前日20が15に低下していました。こちらも改善傾向が見られます。


呼吸状態はは落ち着いており、SpO2 100%でほとんど強制換気に乗っている状態でしたので、ウイーニングに向けて自発呼吸を出すべく、SIMV+PSに変更しました。また、換気量を減らして呼吸刺激を与えるために、PC圧も 16→12に下げました。


設定:SIMV PC 12, PEEP 8 PC16 FiO2 50%


この結果、1回換気量は700⇒500ml程度に減り、自発呼吸が少し出始めたので、観察しながら再調整を行いました。


換気量を見ながらPC圧、PS圧を少しずつ絞り、SpO2が良好なのでPEEPも下げ、最終的に下の設定で動脈血ガスを採りました。


モード:SIMV(PC)+PS
FiO2 40% PEEP6 PS圧 10 PC圧 10 SIMV回数12

モニター上TV380 SpO2 97%


血液ガス
pH7.421、PaO2 137、PaCO2 42.8、HCO3 27


だいぶ良さそうですねー。


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posted by 長尾大志 at 18:30 | Comment(0) | やさしイイ血ガス・呼吸管理

2015年10月19日

症例検討クイズ1・急性呼吸不全・人工呼吸設定5

その後翌日にかけて、尿量が回復して(9.0時間で600ml)血圧が安定してきました(収縮期血圧 129(ノルアドレナリン0.03γ、ドーパミン3γ)。良さそうな気配が漂ってきます。


呼吸器は、PEEP 8 FiO2 60% PC 16 PR 12の設定でSpO2 100%であり、FiO2 を50%としました。血圧が戻ってきましたので、無理にPEEPをいじる必要もないと考えました。


設定変更後には必ず動脈血液ガスを取ります。結果は、pH 7.405、PaCO2 31.0、PaO2 144.8、HCO3 19.0、BE -4.3。


アシデミアは解消されています。まだ換気量が多いからかPaCO2は低めですが、PaO2は充分すぎるほどですね。


さて、いかがしましょうか。


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posted by 長尾大志 at 18:15 | Comment(0) | やさしイイ血ガス・呼吸管理

2015年10月18日

岡山県医師会で講演させて頂きました。

今日は岡山県医師会の日医生涯教育講座にて、『今さら学ぶ胸部単純写真読影』と題した講演をさせて頂きました。


2つ講演のうち後半を担当いたしましたが、1つめの講演で胸部単純写真、肺癌検診的のピットフォール的なお話がありましたので、私からはもうちょっと、楽しく読影するためのコツのようなものをお話しさせて頂きました。


IMG_2662.JPG


講演の前に少し時間がありましたので、会場のそばの後楽園を見学。絶好の日和でした。


2015-10-18kourakuen 050.JPG


2015-10-18kourakuen 057.JPG


会のあとに役員の先生方と、夜の情報交換会に参加させて頂いたのですが、こちら大変興味深いお話ばかりで、楽しく勉強させて頂きました。


岡山県医師会の先生方、事務局の皆さん、お世話になり、本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

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posted by 長尾大志 at 23:11 | Comment(0) | 日記

2015年10月17日

授業準備着々

卒業試験、診断学講義も無事?終わり、いよいよ来月の系統講義月間が近づいてきました。


来年初頭にはアクティブ・ラーニングをテーマにしたFDも行われますし、夏に一通りのレッスンを受けたこともあって、アクティブ・ラーニングをやる気は満々であります。


実は診断学でもグループワークをやってみましたが、教室の作りが全くグループワークに向いていないことを実感しました。でもグループワーク自体はけっこう皆さん楽しそうに取り組んで頂き、かなり手応えを感じました。聞くと他の授業ではアクティブ・ラーニングをやっていないと。


昨日は解剖学の相見先生にクリッカーをお借りし、いろいろとアイデアがわいてくるのを感じました。問題をうまく作ればかなり機能しそうです。でもその時間があるかどうか…。さしあたり、手持ちの問題たちで今年は試行してみましょうか。


うまくすると、ウチの医学部教育に革命が起こせるかもしれません。楽しみです。

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posted by 長尾大志 at 15:59 | Comment(0) | 日記

2015年10月16日

症例検討クイズ1・急性呼吸不全・人工呼吸設定4

・モニター上TV 700mL、MV 8.4L/分を示し、プラトー圧は28cmH2OでSpO2 94%。血圧は90/50程度でした。


⇒ TV700mLは十分で、もっと減らしても良さそうです。プラトー圧が28cmH2Oはいささか高めなので、PC圧を下げるといいでしょう。



・動脈血液ガス所見は、pH7.368 、Pa 74.8Torr、Pa2 29.4、HCO3- 16.5でした。


上でも書きましたが、換気量が多く、PaCO2が低値です。PaO2は低めなので、少し何とかするか、もう少し粘るか、といったところですが、PEEPをいじろうにも血圧が低く(ノルアドレナリン使用中)、FIO2で対応せざるを得なかったのです。


結果、PC圧(PC above PEEP )を下げて16にしました。


その後も厳しい状態は続きます。ただ、数時間後の動脈血液ガスは、pH 7.346、PaCO2 28.8、PO2 139.7、HCO3 15.4、BE -8.7とO2とアシデミアは何とか落ち着いてきました。


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posted by 長尾大志 at 17:18 | Comment(0) | やさしイイ血ガス・呼吸管理

2015年10月15日

症例検討クイズ1・急性呼吸不全・人工呼吸設定3

引き続きますが、今日はこれからも全く自由時間がないため、データのみ示します。


モニター上TV 700mL、MV 8.4L/分を示し、プラトー圧は28cmH2Oでした。自発はありません。SpO2 94%。


動脈血液ガス所見は、pH7.368 、pO2 74.8Torr、pCO2 29.4、HCO3- 16.5でした。


さて、この結果を受けて、設定はどうしましょうか。


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posted by 長尾大志 at 16:00 | Comment(0) | やさしイイ血ガス・呼吸管理

2015年10月14日

症例検討クイズ1・急性呼吸不全・人工呼吸設定2

なんやかんやご託を並べましたが、基本方針(PCVで、permissive hypercapniaでいく)が決まってしまえば、最初に設定しないといけない項目は意外と少なかったりします。どちらかというと一旦決めてから、モニターや血ガスを見て再調整する、そちらの方が大事です。


  • FiO2:まずは100%で開始。SpO2の経過を見ながら下げていく。

  • PEEP:だいたい6〜8cmH2Oくらいで開始。SpO2、血圧、プラトー圧を見ながら調節する。

  • PC圧(PC above PEEP):プラトー圧20(〜25)くらいに抑える。*プラトー圧≒PC圧+PEEP

  • 換気回数:普通の人は12回くらい。それを参考に、換気量、血ガスを見ながら12〜20くらいまで。




本症例では、

  • 【PCモード】

  • FiO2:80%

  • PEEP:8cmH2O

  • PC圧(PC above PEEP):20 cmH2O

  • 換気回数: 12回


で開始しました。モニター上はTV 700mL、MV 8.4L/分を示し、プラトー圧は28cmH2Oでした。


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posted by 長尾大志 at 17:05 | Comment(0) | やさしイイ血ガス・呼吸管理

2015年10月13日

症例検討クイズ1・急性呼吸不全・人工呼吸設定1

なんせ低酸素と敗血症ですから、酸素を充分投与するのと抗菌薬で肺炎の原因菌を叩くのと、両方行っていきます。


抗菌薬は、最重症の市中肺炎ですから、肺炎球菌は想定しつつも治療失敗が許されませんので広域抗菌薬を使います。de-escalationが出来ればそうします。



で、呼吸管理ですが、悪化が急速なのと、循環動態、意識状態がよくないので、挿管人工呼吸を選択しました。まずはフルで器械に換気させる持続強制換気(continuous mandatory ventilation:CMV)に乗せてしまい、全身状態を落ち着かせることを考えます。



呼吸管理は、動脈血ガス分析結果をふまえて、人工呼吸管理の基本的戦略を思い出して下さい。



低酸素がメインで、高二酸化炭素は問題にならないと考えられますから、方向性としては

  • PaO2、SpO2を適正値にするために、FIO2、PEEPを上げる。

  • FIO2>60%の時間を出来るだけ短く(24時間未満に)する。

  • PEEPは、できるだけ血圧を正常に保つように、かつできるだけプラトー圧を30cmH2O以下に保つように設定する。



そのためには、従圧式PCVでプラトー圧を決めておく方が安心です。PC圧を低めに設定しておき、結果1回換気量は低めになりますが、モニターで換気量を確認し、血ガスでpH異常にならないかどうかを確認しておきます。


1回換気量が低くなって、分時換気量が減りますとCO2は貯留気味になるのですが、pHが異常にならない限りは高CO2を許容しましょう、というpermissive hypercapnia(許容できる高CO2)戦略で参りましょう。


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posted by 長尾大志 at 17:37 | Comment(0) | やさしイイ血ガス・呼吸管理

2015年10月12日

呼吸器内科の魅力再考

ここ最近進路相談を受けたり、見学にこられた方とお話ししたりしていて、呼吸器内科の魅力について考える機会がありました。


呼吸器疾患の興味深いところは、同じような症候でも病態の異なる疾患があるので、診断の奥深さ、これは間違いありません。そして身体診察と画像が密接に結びついていて、「自分、ちゃんとできている」ことが確認できる、これもやりがいのあるところです。詳しくは→呼吸器内科 ただいま診断中!を参照(笑)。


ジャンル的にも、感染症、アレルギー、悪性腫瘍、免疫・膠原病・血管炎に、循環障害、変性疾患といった、内科的疾患のほとんどのジャンルが肺では発生します。従って取り扱う薬剤も、抗菌薬、抗アレルギー薬、ステロイド、免疫抑制薬、血管拡張薬に抗癌剤、鎮痛薬と、ありとあらゆる薬剤を使います。


さらに吸入物質による疾患や換気障害など、呼吸器ならではの疾患も多くて、知的好奇心が刺激されます。生活上「何を吸っていたか」を聴取する、ということは、患者さんの生活を深く知ること。ナチュラルに生活歴に深く踏み込むことができます。


胸部画像が読めるようになると「できるドクター」感が高まりますし、グラム染色や病理組織が読めるようになると、さらにできる感が増しますよね。いや、別にできなくても問題ないので、苦手な方でも安心していただきたいのですが、この「できる感」、ある程度のキャリアを経てくると、やりがいにつながるんです。


感冒、喘息、COPD、肺炎を代表とするプライマリ・ケアから慢性呼吸器疾患、膠原病を背景に持つ感染症、免疫疾患のステロイド管理に免疫抑制薬、山ほど患者さんがおられる肺癌における緩和ケアまで、つまり急性期から終末期まで、人生のいろいろな場面を診ることにもなります。


以前から書いていますが、呼吸器内科は「大人の小児科」。臓器としては肺を診ますが、各系統の薬を使って全身、人生に深く関わるところがやりがいではないか、という点で意見が一致しました。

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