2016年10月31日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症20・間質性肺炎の治療4

IPFに対して抗線維化薬を使おうかというときに問題になるのが、「高い薬の割に効果が実感されない」ことでしょう。


特に患者さんがそうだと思うのですが、なにがしかの薬が始まって、期待することとしては、「今感じている症状がよくなる」ことだと思うのですね。でも抗線維化薬の効果は「悪くするスピードを抑える」。悪くならないようにする、ということですらない。


これで副作用を自覚したりすれば、「なんでこの薬を使っているのか」「こんな薬いらない」という思いが出てきて当然でしょう。


しかも薬価が高い。まあこれは、最近高額療養費制度が拡充されたことで、比較的軽症(T〜U度)の患者さんもカバーされるようになり、軽症例でも使いやすくなりました。これは抗線維化薬の機序を考えると、より軽症から使えるというのは喜ばしいことですが、逆にいうと、医療費が膨張する元となるわけです。


参考:IPFの重症度分類

  • T度:安静時PaO2≧80Torr

  • U度:安静時PaO2が70Torr以上80Torr未満、ただし6分間歩行時のSpO2が90%未満の場合はV度にする。

  • V度:安静時PaO2が60Torr以上70Torr未満、ただし6分間歩行時のSpO2が90%未満の場合はW度にする。また、危険な場合には測定不要。

  • W度:安静時PaO2が60Torr未満。



特にV度以上は難病医療費助成制度の対象となるので、ちょっとこのあたりはしっかりと理解しておく必要があります。



非専門医の先生方が無理に?これらの抗線維化薬を使うべきかは、ATS/ERS合同ステートメントにもありますように、議論のあるところだと思います。副作用対策や急性増悪時の治療にあまり慣れていない先生が使われても、メリットが感じられないようにも思います。



むしろIPF診療で、非専門医の先生方に意識して頂きたい、大切なことは、


  • 予後の悪い疾患であることを認識し、患者さんに正確に伝える。

  • 急性の悪化を予防する

  • 早めの酸素投与

  • 肺癌の早期発見



ここになると思います。


割とインパクトの強い統計なのですが、IPFは世にある多くの癌よりも5年生存率が短いのです。「癌より悪性の疾患」といわれているくらいです。まあ、肺癌や膵臓癌ほど悪くはありませんが…。


ですから、少なくとも、患者さんやそのご家族の方々に、「終わりが遠くはない」ことを意識して頂いておく、という点では、癌と変わるものではありません。



それから、特に急性の悪化を予防する、という点については、間質性肺炎が悪化するきっかけの多くは急性増悪、大体が感染がらみだということを意識しておく必要があります。


急性増悪が起こると、どっと線維化病巣が増え、肺機能が低下し、息切れ症状や労作時の低酸素が悪化します。IPFの悪化は、こんな風に…


スライド12.JPG


一本調子に悪化していくのではなく、こんな風に…


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急性増悪(≒感染)があるごとにカクン、カクンと悪化していくので、感染対策は本当に重要なのです。抗線維化薬だって、結局のところ、「増悪の頻度」などで勝負しているところをみても、急性増悪の有無が予後を握っていることは間違いない、ということになります。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2016年10月30日

第42回若鮎祭にて・医学クイズ

今日は子供たちを若鮎祭に連れてきて…。


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動物とふれあったり…


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スライムを作らせてもらったり…


子供たちが帰ったあとは、昨日告知した「医学クイズ」でプレゼンターをさせてもらいました。参加者が少なく、豪華賞品?の私のサイン入り著書は看護学科のSさんが勝ち取られました。


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同じくプレゼンターをしておられた、相見先生の授業の工夫を見せていただきました〜。なるほどですね〜。自分に足りないところがいろいろとわかりました。勉強になりました。相見先生、企画運営の石田君、お手伝いの方、参加いただいた皆さん、どうもありがとうございました。





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posted by 長尾大志 at 22:42 | Comment(0) | 日記

2016年10月29日

告知 明日の医学クイズ

今日の告知は、かなり内輪?の告知になります。


今日と明日、滋賀医科大学で大学祭「第42回 若鮎祭」が開催されておりますが、その中の企画の一環として、明日10月30日(日)、15時30分から臨床講義室で開催される、「医学クイズ」のプレゼンターとして登場します。


もちろん、豪華賞品の提供もさせていただきましたよ!まあ、私が提供するというからには、もうおわかりだと思いますが…サイン入りの○○です。


いろいろと他にも豪華景品を用意されているようですし、クイズも勉強になる?ものが多い?ということで、医学生の皆さん、ふるってご参加ください。

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posted by 長尾大志 at 20:32 | Comment(0) | 活動報告

2016年10月28日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症19・間質性肺炎の治療3

■ IPFと診断したら

上記『特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き(改訂第2版)』が出版された2011年頃には、まだIPFに対してステロイド+免疫抑制薬は広く使われていましたが、抗線維化薬(ピルフェニドン、オフェブ)が登場して、それなりの薬価のものでもあり、エビデンスらしきものも出てくるにつれ、エキスパートオピニオンから「抗線維化薬>ステロイドを含む治療」と変わってきています。


ATS/ERS合同ステートメントのニュアンスは「ステロイドは止めとけ。抗線維化薬は考えてみてもいい」。パッと見、そんなに積極的な推奨にも見えませんが…。やはり彼方のガイドラインは、「薬価に見合った効果があるか」というところが重視されますからね。片や此方では、ちょっとでも差が出れば、「エビデンスがでた、それ推奨!」となるところ。イヤ別に批判しているわけではありません。日本は豊か、恵まれてるってことです。


● ピレスパレジスタードマーク(200)9錠 分3後 

ずいぶん錠数が多くなりますが、後述するような用量調整はしやすいですね。



ピルフェニドンのエビデンスは、CAPACITY、ASCEND、それに本邦での臨床試験などが引用されています。


CAPACITY試験

Pirfenidone in patients with idiopathic pulmonary fibrosis (CAPACITY): two randomised trials.(Noble PWら、Lancet. 2011 May 21;377(9779):1760-9.)


2つの試験が行われています。ピルフェニドンはプラセボ群と比較して、努力肺活量の低下を抑制し、無増悪生存期間を延長させたのですが、48週であった差が72週でなくなったりして、苦しい結果となっています。なお、ピルフェニドンの量は1日2,400mgでした。



ASCEND試験

A phase 3 trial of pirfenidone in patients with idiopathic pulmonary fibrosis.(King TE Jrら、ASCEND Study Group. N Engl J Med. 2014 May 29;370(22):2083-92.)


ピルフェニドンはプラセボ群と比較して、努力肺活量が10%以上低下した症例が少なく、6分間歩行距離が短縮しませんでした。要するに悪化のスピードを抑えた、ということですね。生存率も、統計上はよかった、となっています。なお、ピルフェニドンの量はこちらも1日2,400mgでした。ちなみに本邦における最大用量は1,800mg/日(上記)です。


いずれも、副作用として無視出来ない頻度の消化器症状が報告されています。食後に飲む、胃薬を使う、用量を減らす(1,200mg/日)、胃薬を併用、等の対策が勧められています。


また、発売当初有名になった光線過敏症は、きちんと対策をすれば困るほどは起きない、とされています。


その効果(進行を抑制する)からも、臨床試験からも、軽症〜中等症例ぐらいから始める方がよさそうです。


● オフェブレジスタードマーク (150)2錠 分2朝・夕後



ニンテダニブのエビデンスは、TOMORROW、INPULSIS、それに本邦での臨床試験などが引用されています。


TOMORROW試験

Efficacy of a tyrosine kinase inhibitor in idiopathic pulmonary fibrosis.(Richeldi Lら、N Engl J Med. 2011 Sep 22;365(12):1079-87.)


ニンテダニブ使用群は、プラセボ群に対して、FVCの低下が10%以上、または200mL以上低下した人の割合が有意に少ない…なんか持って回った言い方ですね。まあそのぐらいしか差が無い、ということを表しています。急性増悪の頻度が有意に少ない、これはいいですね。



INPULSIS試験

Efficacy and safety of nintedanib in idiopathic pulmonary fibrosis.(Richeldi Lら、N Engl J Med. 2014 May 29;370(22):2071-82.)


概ね同じ感じですが、参加基準が%FVC≧50%、%DLcoが30〜79%と、そこまで重症でない症例で、ニンテダニブ群はプラセボ群に対して、FVCの低下率が有意に少ない、という結果でした。ただ、急性増悪を有意に抑制、とまではいきませんでした。


ピルフェニドンと異なり、光線過敏はありませんが、消化器系の副作用は多いです。特に下痢は、対処法マニュアルがあるくらいコモンに起こってきます。積極的にロペラミドを使うよう推奨されています。




ちなみにオフェブの添付文書に、「【警告】本剤の使用は、特発性肺線維症の治療に精通している医師のもとで行うこと。」と赤字で書いてあります。これは逆に考えると、非専門医の先生方は、特発性肺線維症に抗線維化薬を無理やり使わなくてもよい、と取れるのですね。


また、ATS/ERS合同ステートメントにいう「使用を条件付きで推奨」という文言は、IPF治療に精通した医師の元に通うのに、遠距離だったりして大変な患者さんの負担が生じるときには、必ずしも推奨しない、そういう意味合いが込められているのではないかと思います。


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2016年10月27日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症18・間質性肺炎の治療2

ステロイドの使い方、で気付かれた方も多いと思いますが、ステロイドの投与量、投与期間に、実はかなりの幅があるのです。倍の幅ですからね。ただ事ではない。まあそれが、「ガイドライン」というか「治療の手引き」の限界でしょうか。


ステロイド単独(cellular NSIP)療法のとき、PSL 0.5〜1mg/kg/日!体重60kgだったら、30mg/日〜60mg/日ですよ。中等量(30mg)か大量(60mg)か、どっちやねん!みたいなことですよね。もう少し指針らしきものはないものか。私見ですが、急性、あるいは重症呼吸不全を伴う症例では1mg/kg/日、そうでなくて治療に余裕がありそうであれば、0.5mg/kg/日、とされていることが多いように思います。


0.5mg/kg/日で開始したけれども思うように効果が現れない、というときに、1mg/kg/日に上げるのか免疫抑制薬を加えるのかはケースバイケースですが、癌の合併とか、免疫抑制薬を使いたくない、というときは増量、ステロイドの副作用(高血糖や精神症状など)がしんどい、という場合は免疫抑制薬、みたいな感じになっていると思います。



減量タイミングの幅も、2〜4週、って、なかなかの幅ですね。2週と4週では、漸減するたびに倍違いますから、最終、結構な違いになってきます。副作用のことを考えると、出来れば早めに減量したいのですが、あまり早いと再燃が心配。ということで、初期治療の反応がよく、陰影がスーッと消えていたら2週ごと、効果はあるんだけど、なかなかスーッとは消えない、という時はゆっくりと4週ごとに減量、という感じでしょうか。


また、例えば1mg/kg/日で開始して、4週ごとに5mg減量、としていては、体重60kgで、

60mg/日で開始・4週間⇒55mg✕4週間⇒50mg✕4週間⇒……

となりまして、15mgまで減らすのに40週間もかかってしまいます。これではちょっと長すぎ。ステロイドの副作用が気になりますので、特に多めの時期はもう少し早めに減らしてもいいでしょう。具体的には、1〜2週ごとに投与中の量の1割ぐらいで、とか、4週ごとであれば1回の減量幅を5mgではなく、そのときの投与量の2割ぐらいで、というのが一般的です。


そうすると20mg〜15mgあたりで1回の減量幅が5mgではなく、2.5mgの方が適切、となります。大体その辺で再燃も多く、そのあたりからは慎重な減量が望ましいと思います。


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2016年10月26日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症17・間質性肺炎の治療

■ INSIPと診断したら

ステロイド+免疫抑制薬での治療となります。


具体的な投与量など、統一見解としては、えらい先生の間でも温度差があるように思います。日本呼吸器学会が出している『特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き(改訂第2版)』もずいぶん旧いのですが、大枠はあまり変わっていないとすると、だいたい以下のような治療が一般的です。


・ステロイド単独(cellular NSIP)

PSL 0.5〜1mg/kg/日で開始
⇒PSLは2〜4週ごとに5mg減量
⇒1ヶ月ごとに治療効果を判定し、症状改善すれば治療終了


治療反応性が不良であれば、次の方法へ。


・ステロイド漸減+免疫抑制薬(fibrotic NSIP)

PSL 0.5mg/kg/日✕4週間+免疫抑制薬(シクロスポリン(CYA)3.0mg/kg/日分2、シクロホスファミド(CPA)1〜2mg/kg/日分1)
⇒PSLは2〜4週ごとに5mg減量+免疫抑制薬はそのまま
⇒3ヶ月後治療効果判定
⇒PSL 10mg/日(20mg/日隔日)+免疫抑制薬←維持量


ただしCYAは血中濃度のモニタリングを行い、投与量の調節をする必要があります。腎機能障害の予防、ということで以前はトラフ値で100〜150ng/mLを目標にしていましたが、最近では効果のことも有りC2(内服後2時間値)を測定することが多いと思います。目標値は800 ng/mLあたり、とかそんな感じです。


CPAは50mg1錠から開始し,1〜2週ごとに25 mgずつ増量して、1〜2 mg/kg/日とする、とされています。累積投与量が増えてくると骨髄抑制や二次発癌など、副作用のリスクが高まる、ということで、PSLが維持量になって落ち着いていればアザチオプリン50〜100mg/日に切り替えることが多いです。


なお、CPAの副作用を軽減するという目的で、1ヶ月に1回程度CPAを大量(500〜1000mg/回)に投与する、という方法もあります。エンドキサンパルスとも呼ばれます。こちらはIVのシクロホスファミドですが、なぜかIVCYと略されます。


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2016年10月25日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症16・原因のある間質性肺炎の診断11・HRCTからの分類4

じゃあ実際、どうするか?これは大変難しい問題で、専門家の間でも統一見解はありません。このあたり、主治医の考え方にもよるところ大だと思います。


一発逆転、よくなることを期待してステロイド(+免疫抑制薬)を使うか、ステロイドの副作用を敬遠して抗線維化薬を使うか。


肺生検を行わず、HRCTで鑑別困難な場合、この選択に優劣はありませんが、大事なのはここから。そう、「時間の経過、臨床経過を判断材料に入れて改めて診断を考える」ことなのです。


つまり、ステロイド(+免疫抑制薬)で始めても、抗線維化薬で始めても、期待した効果が得られない場合、「仮の診断」、および治療方針を柔軟に変更する、ということになるでしょう。ただし、「期待した効果」がどの程度を指すのか、これは全く基準がありません。


例えば、ステロイドだったら、客観的指標でよくなっているかどうか、とか、抗線維化薬だったら、悪化を食い止めているか=それまでの期間よりも悪化速度が鈍化しているか、あたりかなあ、と思いますが、どの程度鈍化していたら有意なのかはハッキリしません。


例えばニンテダニブのIMPULSIS試験のデータを大まかに見ると、プラセボが年間FVCの低下が220mLのところを110mLに減らした、ぐらいの感じなので、それまでのFVC低下よりも年間で100mL程度減少すれば、まあ御の字なのかもしれません。




もう1つの手がかりとして、気管支鏡でBALFリンパ球増多があるかどうかを確認すると、ステロイド投与の手がかりになる可能性があります。IPFではリンパ球分画の増加は見られませんが、INSIPをはじめステロイド反応性があるIPでは、リンパ球増多がしばしば見られます。加えて、肺病変先行型膠原病や慢性過敏性肺炎でも一般的にリンパ球増多が見られますので、IPFと他疾患を鑑別するのには参考になるでしょう。とはいえ、BALが出来る施設、というのも若干ハードルが高い気が…。


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2016年10月24日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症15・原因のある間質性肺炎の診断10・HRCTからの分類3

網状影の実物はこんな感じですね。


スライド10.JPG


スライド11.JPG


これらはPossible UIPパターンと考えていいでしょう。膠原病性のIPでよく見かけるパターンです。


Possible UIPパターン=UIPパターン−蜂巣肺


と単純化されていますが、要は蜂巣肺がないのでUIPパターンとは断言出来ないけれど、分布や網状影の存在から、UIPの可能性はある、ということ。Possible UIPパターンの中にもIPFが少なからず含まれていることがわかっていますが、ガイドラインの手順としては、肺生検をしてエキスパートたちの議論を経て診断せよ、みたいなことが推奨されています。基本、例のARS/ERS合同ステートメントでは、IPF以外は全部肺生検、という論調ですので。


ここで困るのが、「ウチでは外科的肺生検はハードルが高い」「ウチにはエキスパートなんていませんよ」という場合。というか、そういうことが出来る施設はなかなかありません。正直、ウチでも、外科的肺生検はなかなかやっていない。言葉はあまりよくありませんが、「どうせ(リスクを冒して)肺生検をやっても、ステロイドを使うかどうかしか決められないんでしょ」みたいな風潮もあるように思います。


ステロイドを使うかどうかに関して、ハッキリしているのは、


● 特発性で、蜂巣肺のあるUIPパターンを呈していたら、IPFなのでステロイドは使わない。


まあこれも、肺病変先行型の膠原病があったり、鳥関連の過敏性肺炎があったりで、「特発性で」の前提条件が崩れることもありますが、特発性の中では、議論の余地はないでしょう。


問題は、Possible UIPパターンをとる場合です。ここには当初蜂巣肺がなく、NSIPか?と思われていても経過中にIPFっぽくなってくる、あるいは蜂巣肺を来してくる症例や、肺病変先行型の膠原病なんかが含まれていて、そういうケースではステロイドの恩恵がある可能性があるわけです。


IPFでは最近ピルフェニドン(ピレスパレジスタードマーク)に加えて、ニンテダニブ(オフェブレジスタードマーク)が使えるようになりました。ピルフェニドンとニンテダニブの優劣、使い分けはまだ結論が出ていませんが、最近エキスパートの先生方はしきりにニンテダニブをオススメになっています。…が、それでも効果としては「進行を抑える」ことを期待するわけで、ステロイドで「改善を期待出来る」のであれば、なんかそっちの方がいいような気もします。


しかも問題は、「エキスパートたちの議論」がしばしば一致を見ない(言っちゃった…)ことで、肺生検標本を見ても、病理医の先生方の間でも、これはUIPなのかどうか、一致を見ないことだってあったりなかったり。


ということもあってか、例のARS/ERS合同ステートメントでも、「疾患経過による臨床分類」というカテゴリーわけがありまして、最初のHRCT+病理像に加えて、臨床像、経過を観察することで、もう少し診断材料を増やせないか、というものです。


  • 可逆性および一過性(RB-ILDの多く)⇒原因除去(禁煙)⇒3〜6ヶ月間程度再発の有無を観察する。

  • 可逆性だが増悪のリスクを伴う(cellular NSIPと一部のfibrotic NSIP、DIP、COP)⇒初期治療による反応を見て長期治療を考慮⇒短期的に治療反応性があれば長期的に観察。

  • 病変残存を伴うが安定性(一部のfibrotic NSIP )⇒現状維持を目標⇒疾患経過を長期的に観察する。

  • 安定することもあるが、進行性かつ不可逆性(一部のfibrotic NSIP )⇒病状安定を目標⇒疾患経過を長期的に観察する。

  • 進行性で治療しても不可逆性(IPF、一部のfibrotic NSIP )⇒進行を遅らせるのが目標⇒疾患経過を長期的に観察する。

(文献を改変)

ここではINSIPという病名になっていませんが、文献通りです。cellularとかfibroticとかついていて、病理像を意識した名前になっているようです。


ステートメント内では、「これがあるからといって肺生検をしない、なんてことはアカン」と釘を刺されていますが、このように「時間経過でどうなるかを、診断の材料にする」というのは、特に肺生検なしでやろうとする場合には役に立つ考え方かもしれません。



例えば、慢性線維化性IPに分類されるINSIP(fNSIP)とIPFですが、臨床症状、進行具合が少し似ているにもかかわらず、薬の使い分けが真逆といってもいい(ステロイドvs抗線維化薬)。習熟された放射線科医の先生であれば、かなりの確度で鑑別されるのですが、そうでない場合、どちらも、「Possible UIPの所見」を呈して鑑別困難だったりします。しかも、当初NSIPのように見えていた症例が経過中にどんどん蜂巣肺を形成してくることもある…。


じゃあ実際、どうするか?


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2016年10月23日

「最後」を宣言すること

今日のブログは、ふざけた内容、無理矢理な内容と思われる方もおられるかもしれませんので、あらかじめご注意願いますが、私は大まじめです。


先日のNMB48 6th Anniversary LIVE、初日にて、NMB48の大組閣が発表されました…いや、組閣や研究生の昇格、その是非や意見はここで取り上げるべき話題ではありませんので、それはいいのですが、その後発表された「上西恵の卒業発表」を見て思ったことを書きます。


突然の卒業発表で、事前に聞かされていなかった(らしい)須藤凜々花が「わああああああああああああああああん!」と、最近あまり聞いたことがないくらい号泣して舞台袖にはけていきましたが、NMB48における母親のような存在であった上西恵が、突然「いなくなる」ことを実感した衝撃がすごく伝わってきました。



閑話休題、つい先日、死すべき定め――死にゆく人に何ができるか(アトゥール・ガワンデ 著、原井 宏明 翻訳)を読みました。読書記を書こうにも、内容が深く大きく、気軽には書けないのですが、現代医学によって極限まで引き延ばされた生命が、それでも終わりに近づく、その終わり方が、私たち医療関係者も、そうでない方々も、想像もしていなかった状態になってきている、それをどのように支えるのか、そういうテーマで、とにかく非常に「重い」です。若い、希望に満ちた医療関係者の人は、読むとすごくしんどいかもしれません。


全編を通したメッセージとして受け取ったのは、生きているものには必ず死が訪れる、それを意識して、準備しておく(物理的にも、精神的にも)ことがこれからますます「よく生き、よく去る」ためには必要となってくるだろう、ということ。私たち医療関係者のほとんどは、患者さんを「治す」ことだけを習ってきました。けれども、超高齢化社会で大切なことは、「生きている間、よりよく生きる」。そのためには、終わりがあるならば、早めに知っておく方が、絶対にそこから逆算してよりよく生きるために家族や周りの人たちができることがあるはず、それを正しく知っておいていただく、というのも私たちの、大変重要な役割なのだと思いました。


いつか必ず訪れるその時が、突然なのか、前兆、予感があるのかによって、その時までの過ごし方が変わってくる。上西恵が卒業するまでの間、須藤凜々花の生き方、過ごし方がどのように変わるのか。個人的に注目します。

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posted by 長尾大志 at 17:28 | Comment(0) | 日記

第14回 滋賀耐性菌研究会に参加

10月〜11月はお勉強のシーズンですね。今週も2件、勉強会に参加致しました。


特に今日の第14回 滋賀耐性菌研究会におきまして伺った、北野病院の藤本卓司先生によります『肺炎の診断と抗菌薬適正使用』のお話は、大変ためになりありがたかったです。


しかし、このお話をウチの若手がほとんど拝聴しに来ていなかったのが残念至極でありました。ということで、ウチの若手に今日の内容をシェアするためにかいつまんで箇条書きにしていきます。以前に拝聴した長崎大の迎先生による、最近話題の細菌叢解析の内容を盛り込まれたお話でしたので、その時のお話を思い出しながら、かなり自分の中で消化でき、今後の診療、指導に役立てられそうです。


(ここから講演内容引用)

・本当にいい検体が採れれば、グラム染色は強力な意思決定ツールになる。


・グラム染色をすると、感染症かどうか、原因菌の手がかりになる。


・ティッシュに包んで捨てた痰は、ティッシュに唾液成分が吸い取られて核となる膿性成分が残っているため、実はかなり有用な検体となる。あきらめずに染めて見るべし。


・塗抹で肺炎球菌が見えているのに、培養でH.influenzaeや緑膿菌が生えてくる、ということはしばしば経験されるが、塗抹で見えずに生えてきた菌は得てして口腔内のコンタミだったりする。


・今の細菌検査室では、培地の色によって、H.influenzaeか緑膿菌か、なんてことも提出翌日にはわかっていたりするので、細菌検査室と仲良くしておくと翌日には治療方針が固められる。


・PCGは1日6回投与、と思うとハードルが高いが、肺炎だったら1日4回で充分。100万UあたりKが1.7mEq含まれていて、300万Uだと5.1mEq。これを生食100mLで溶かすと51mEq/Lになる。Kは40mEq/Lを超えると血管痛が起こると考えていて、その計算で300万Uを200mLの生食に溶かして投与している。1日800mL投与することになるので、心不全や腎不全患者ではABPCを使っている。


・「嫌気性菌感染は混合感染だし、βラクタマーゼを産生するからSBT/ABPC使っとけ」みたいなことを全国でされているが、それには反対。腸内細菌を根こそぎ入れ替えることになり、長い目で見たときに人類の禍根となる恐れがある。実は口腔内、下気道由来の嫌気性菌でPCG耐性があるのはPrevotellaのみで、他のFusobacteriumPeptostreptococcusなどは100%PCG感受性なのである。で、「網羅的細菌叢解析」で確認すると、市中肺炎のうち無視できない割合(30%以上)でPrevotellaが関与していたのは6%、院内肺炎(+医療・介護関連肺炎)でも6%にしか過ぎなかった。要するに(βラクタマーゼを産生して)PCG、ABPCに耐性を持つ「嫌気性菌」は、肺炎の10%に満たない!誤嚥性肺炎=SBT/ABPCはもう止めよう!


・緑膿菌は弱毒菌なので、待てない重症例は少ない。


・緑膿菌が繰り返し痰からでている、という症例でも、まあそれは保菌であって、その症例が肺炎になったときは、やはり強毒菌である肺炎球菌とかが原因菌であることも少なくない。


・例えば緑膿菌が繰り返し痰からでている、という症例が肺炎になった。そこで喀痰グラム染色。双球菌が見えたら文句なくPCG。重症でなければ、藤本先生はペニシリン系で入ることが多く、その際には翌日もグラム染色。菌が減っていればそのまま続行する。


・緑膿菌肺炎に対して、PIPCとTAZ/PIPCはあまり差を感じない。緑膿菌ではなく、むしろMSSAや嫌気性菌に対して、βラクタマーゼ阻害薬が必要である。


・緑膿菌が喀痰培養で生えてきた症例のうち、肺炎の原因菌として考えられるのは25%。


・良質な喀痰を得るために、以下のような努力をしているか。

 1.体位ドレナージ 20-30分は寝てもらう。

 2.生食で喀痰を洗浄する。

 3.3%食塩水 はあまりやらない。

 4.吸引チューブの気管内挿入

(引用ここまで)

迎先生のご研究を引用されて、ともかく「できる限り次世代のために抗菌薬を温存する、適正使用を普及させる」という熱いご意志を感じました。私も大いに賛同します。今日(昨日)得た知識を滋賀でも普及させて参ります!

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posted by 長尾大志 at 00:00 | Comment(0) | 学会・研究会見聞録

2016年10月21日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症14・原因のある間質性肺炎の診断9・HRCTからの分類2

蜂巣肺、と簡単に申しますが、これがまた、突き詰めれば突き詰めるほどに難しいものなのです。ここでは、専門家向けの議論は思い切って端折り、概要をつかんで頂くことを優先してお送りします。


定義としては、正確を期してFleischner Society: Glossary of Terms for Thoracic Imaging(David M. Hansellら, Radiology, Mar 2008, Vol. 246:697–722)から引用したいと思います。


「蜂巣肺(honeycombing)は、典型的には径が3-10mmで、壁の厚みは1-3mmの円形の陰影が集蔟したもので、蜂の巣に似ている。それは肺病変の終末期を意味する。CTスキャンでは、典型的には径が3-10mmだが時には2.5cmにも及ぶ嚢胞が集合して見える。蜂巣肺は通常は胸膜直下にあり、明瞭な壁をもつ。」


この定義以外に、嚢胞というか円形の陰影が重層〜少なくとも3層以上ある、隣り合う嚢胞は壁を互いに共有する、空間的・時間的不均一性がある、等の特徴が挙げられています。ここを突き詰めると大変ですので、軽く流しておきましょう。


ということで典型的には先に挙げた写真のような陰影となります。シェーマとしては、下のような図で表されます。


スライド7.JPG


スライド8.JPG


もう一つ出てきた「網状影」、こちらもFleischner Society「網状パターン」の項を紐解いてみましょう。


「胸部X線写真上は、網状影は無数の小さな(短い)線状影の集まりで、その総和として網に似た陰影を呈する。この所見は通常間質性肺疾患を意味する。網状影を構成するのは小葉間隔壁、小葉内の(微細な)線状影、蜂巣肺における嚢胞の壁などで、いずれにせよHRCTではより明瞭に見られる。蜂巣肺と網状影は同義と考えられるべきではない。」


肝心なところは、「網に似た陰影」ですが、付け加えるならば、間質性肺疾患の存在を反映して、背景にすりガラス影があるのが一般的です。


スライド9.JPG


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2016年10月20日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症13・原因のある間質性肺炎の診断8・HRCTからの分類1

病理学的パターンを「ある程度」反映するものとしてよく用いられるのがHRCTです。侵襲はあまりありませんし、繰り返し施行することが可能ですので、大変頼りになりますが、必ずしも万能ではない、ということも知っておいて頂きたいです。まずは典型的な「パターン」をご紹介します。



HRCT所見のUIPパターン


スライド1.JPG


スライド2.JPG


これはHRCTではありませんが、胸膜直下、肺底部優位の分布がよくわかる胸部単純X線写真です。


下にはHRCTで、胸膜直下、肺底部優位の分布・網状影・蜂巣肺に代表される典型例を見て頂きます。


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呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2016年10月19日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症12・原因のある間質性肺炎の診断7・病理学的な側面からの分類

特発性群、あるいは原因のある間質性肺炎、いずれにおいても、その病理像は治療反応性や予後と関係が深いものです。ただそのニュアンスは疾患分類において多少(結構)異なりますし、(2016年10月)現在、各々の病理像そのものに私たちがどこまで迫れているか、これも実は心許ないところがあるのです。


一体どういうことか、まずは現状での病理学的分類を整理してみましょう。主に特発性群を分類するのに使われる病理パターン(「病名」ではありません)には、以下のものがあります。


  • 通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumonia:UIP)

  • 非特異性間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia:NSIP)

  • 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎(respiratory bronchiolitis associated interstitial lung disease:RB-ILD)

  • 剥離性間質性肺炎(desquamative interstitial pneumonia:DIP)

  • 器質化肺炎(organizing pneumonia:OP)

  • びまん性肺胞障害(diffuse alveolar damage:DAD)

  • リンパ球性間質性肺炎(lymphocytic interstitial pneumonia:LIP)



これらは各々、以下の病名に対応した病理所見です。すなわち、上の病理所見を持つ、特発性の間質性肺炎に、こういう病名がつく、ということになります。



■ 主要なIIPs

  • 慢性線維化性IP

  • 特発性肺線維症(IPF)⇒病理:通常型間質性肺炎(UIP)

  • 特発性非特異性間質性肺炎(INSIP)⇒病理:: idiopathic nonspecific interstitial pneumonia)

  • 喫煙関連間質性肺炎

  • 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎(RB-ILD)⇒病理:呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎(RB-ILD)

  • 剥離性間質性肺炎(DIP)⇒病理:剥離性間質性肺炎(DIP)

  • 急性/亜急性間質性肺炎

  • 特発性器質化肺炎(COP)⇒病理:器質化肺炎(OP)

  • 急性間質性肺炎(AIP)⇒病理:びまん性肺胞障害(DAD)



■ 稀少なIIPs

  • 特発性リンパ球性間質性肺炎(ILIP)⇒病理:リンパ球性間質性肺炎(LIP)

  • 特発性PPFE(IPPFE)⇒病理:PPFE




これらの分類は病理学的に決められているものですから、当然その診断には胸腔鏡下(外科的)肺生検による大きめの(1cm角とか)組織が必要です。ですが、全身麻酔科での手術のリスクそのものに加えて一定頻度であり得る急性増悪のことを考えると、実際問題なかなか踏み切れるものではありません。


幸い、以前書いたように、IIPsの診断は、病名を細かく分類しなくても、大きく分けて


  • IPF:ステロイドの効果が無い、使わない方がいい。

  • IPF以外:ステロイドが効く可能性がある、使ってみる方がいい。



の2つに分ければ、おおよその治療方針(要はステロイドを使うか使わないか)が決まりますので、とにかくIPFの診断が大事なのです。


で、その大事なIPFの診断だけは、できる限り専門外の先生方にも診断して頂けるように、外科的肺生検なしで診断可能、というふうにガイドラインでも定められているのです。


具体的には、まずは薬剤や鳥抗原への曝露、膠原病や血管炎、といった既知の原因がみられないことを確認し、高分解能CT(HRCT)でUIPパターンを認めればIPFと診断出来ます。


ここでUIPパターンという言葉が出て参りました。これもUIPパターン、Possible UIPパターン、Inconsistent with UIPパターンの3つがきちんと定められております。


  • UIPパターン:4つの所見全てを満たす

  • 胸膜直下、肺底部優位の分布

  • 網状影

  • 蜂巣肺(traction bronchiectasisはあってもなくてもよい)

  • UIPパターンに矛盾する所見(Inconsistent UIPパターン)がない



  • Possible UIPパターン(UIPの可能性ありパターン):3つの所見全てを満たす

  • 胸膜直下、肺底部優位の分布

  • 網状影

  • UIPパターンに矛盾する所見(Inconsistent UIPパターン)がない



  • Inconsistent UIPパターン(UIPに矛盾するパターン):7つの所見のうち、いずれかがある

  • 上中肺優位の分布

  • 気管支血管束周囲優位の分布

  • 広範囲のすりガラス陰影(範囲が網状影の範囲より大きい)

  • 小粒状影が多数見られる(両側、上葉優位)

  • 嚢胞が散在(多発、両側、蜂巣肺から離れた場所に存在)

  • びまん性のモザイクパターン/エア・トラッピング(両側、3葉以上に存在)

  • 肺区域や葉に及ぶコンソリデーション




読影は、間質性肺疾患に精通された放射線科医にお任せ頂けるのであればそれに越したことはありませんが、ご自身で読影しなくてはならない、ということもあるでしょうから、典型的な例を挙げておきます。


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2016年10月18日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症11・原因のある間質性肺炎の診断6・血管炎に合併した間質性肺炎・肺病変

血管炎にもしばしば肺病変を合併します。間質性肺炎以外の病変も多いのですが、間質性肺炎も見られます。呼吸器内科に縁のある(肺病変を起こしうる)代表的な血管炎と、その特徴は…。


  • 間質性肺炎ないし肺胞出血、腎障害はじめ全身臓器に炎症、MPO-ANCA陽性⇒顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)

  • 喘息を基礎に持つ頑固な炎症症状、多発する神経症状、好酸球増多、MPO-ANCA陽性⇒好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA、旧アレルギー性肉芽腫性血管炎)

  • 頑固な上気道(耳、眼、鼻、咽喉頭)の炎症に引き続いての発熱、喀血や肺の結節の後腎障害、PR3-ANCA陽性⇒多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA、旧ウェゲナー肉芽腫症)



上に挙げたような特徴的な症状と、比較的特異度の高いANCAを測定することで、典型的な症例では比較的容易に診断に至ります。しかしもちろん非典型的、診断困難な症例も決して少なくありません。


血管炎の中で間質性肺炎を合併することが多いのはMPAで、しばしば臨床上IPFとの鑑別が問題になることがあります。逆に、IPFでも、MPO-ANCA陽性例がしばしば見られ、その後経過中MPAに進展したという、肺病変先行型膠原病的な、肺病変先行型血管炎とでもいうべき病態が見受けられます。


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2016年10月17日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症10・原因のある間質性肺炎の診断5・膠原病に合併した間質性肺炎2

例えば、よく測定される自己抗体と、それが特異的な意味を持つ膠原病には以下のようなものがあります。


  • RF、抗CCP抗体⇒慢性関節リウマチ

  • 抗ARS抗体(抗Jo-1抗体を含む)⇒多発性筋炎、皮膚筋炎

  • 抗トポイソメラーゼT抗体(以前は抗Scl-70抗体)・抗セントロメア抗体・抗RNAポリメラーゼ抗体⇒強皮症

  • dsDNA抗体・抗Sm抗体⇒全身性エリテマトーデス

  • 抗U1RNP抗体⇒混合性結合組織病

  • 抗SS-B抗体⇒Sjogren症候群

  • 抗リン脂質抗体⇒抗リン脂質抗体症候群



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2016年10月16日

2016年〜2017年の予定告知

ふと気づけば、予定がずいぶんたまっていました。これまでに詳しくお伝えできていなかったところも多いので、改めて告知させていただきます。



■ 第14回滋賀県呼吸療法セミナー「3学会合同呼吸療法認定士試験対策セミナー」

11月6日(日) 9:00〜15:50 
NIPRO研修施設 iMEPニプロホール(南草津駅徒歩3分)


こちらは朝の1時間半を担当します。呼吸療法認定士試験対策講座の1コーナーですが、呼吸生理の基礎と血ガスについて、例題を解きながらの1時間半です。


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■ 第3回みやこ呼吸器カンファランス

11月18日(金) 19:00〜21:00 
ANAクラウンプラザホテル京都 2階


基調講演として30分、私が胸部画像の見かたのコツをお話ししたあと、府立医大病院の関連施設の先生方による症例検討会が行われます。参加ご希望の先生は共催の杏林製薬さんにお尋ね頂ければと思います。



■ 呼吸器スキルアップセミナー in OSAKA 2016
http://plaza.umin.ac.jp/~kinki/forum.html

11月19日(土)  14:00〜17:10 予定 
大日本住友製薬株式会社 本社(地下鉄御堂筋線「淀屋橋」駅または、地下鉄堺筋線「北浜」駅)


学会主催、呼吸器学会近畿支部の主立った先生方と仲良くなれるこちらの会。今年のテーマは「肺癌」「気管支鏡」。私が「気管支鏡」コーナーの最初のイントロ(15:00〜15:15)をお話ししたあと、ブースごとにEBUS-TBNA、ガイドシース、EWS、サーモプラスティの実技を体験して頂きます。


今年は皆さんに触っていただくため、定員が少ないので、既に定員の7割以上申し込みがあるようです。当日参加はできないようですので、参加希望の方はお早めにリンクよりお申し込みください。できるだけ多くの方に、今や気管支鏡で(内科的に)ここまでやっている!ということを体験してもらいましょう。



■ 徳島県板野郡医師会 学術講演会

11月22日(火) 19:00〜20:30 
東徳島医療センター


昨年は「今さら学ぶ胸部単純写真読影」というタイトルでしたが、今年は「改めて学ぶ胸部単純写真読影」として昨年の基礎編を少し復習しつつ、「検査前感度を上げる」テクニックをご紹介します。参加ご希望の先生は共催の大正富山医薬品さん、アステラス製薬さんにお尋ね頂ければと思います。



■ 第2回臨床基礎セミナー

11月25日(金) 17:30〜19:00
本庄第一病院(秋田県) 8階研修センター


『間質性肺炎の取り扱い』として、間質性肺炎とCTについて、ここまでやっていただければ、というところをご紹介します。研修医の先生方、学生さんも参加されるそうです。


多くのご施設でお困りのところだと思いますので、お呼びいただければどちらにでも馳せ参じます!



■ 平成28年度 内部障害研究会 第2回研修会

11月27日(日)10:00〜(受付9:30〜)
滋賀医科大学医学部附属病院 1階 多目的室



■ まるごとわかる![呼吸][循環]アセスメントと疾患の理解
https://seminar.shorinsha.co.jp/seminar/detail/78

12月11日(日) 9:45〜16:30
東京 JA共済ビル カンファレンスホール

12月18日(日)  9:45〜16:30
大阪 大阪国際会議場 10階会議室


看護師さん向けセミナーです。両日とも、私は午前中の「呼吸器」セッションを担当します。詳しくはリンク先をご参照ください。




平成29年分

■ 千葉呼吸器・総合診療勉強会(仮題)

平成29年1月7日(土)  14:00〜18:00
クロス・ウェーブ船橋


私は14:00〜16:00、『やさしイイ呼吸の基礎と動脈血液ガスの見かた』を担当します。


もうお一方、総合内科ホスピタリスト気鋭の若手、JCHO東京城東病院総合内科チーフの森川暢先生は、『フレーム法で考える臨床推論』のお話をされます。



■ 日臨技近畿支部 臨床一般検査分野研修会

平成29年1月15日(日) 9:00〜16:00
ピアザ淡海 207会議室


私は14:40〜15:40の1時間、『胸水をみたときに臨床医が考えること』を担当します。


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■ 志太医師会 学術講演会

平成29年2月7日(火) 19:00〜20:00
志太医師会館(静岡県藤枝市)


通算7回目!いつもお呼びいただき、ありがとうございます!内容を評価いただけているかな、と自信につながります。今回は少しテーマを絞って、お困りであろうあの疾患などを取り上げようと思います。



■ 兵庫県保険医協会 第526回診療内容向上研究会

平成29年3月11日(土) 17:00〜19:00
兵庫県保険医協会会議室(予定)
神戸市中央区海岸通1-2-31 神戸フコク生命海岸通ビル5F


こちらは「胸部X線ルネッサンス」のテーマを頂戴しておりますので、兵庫県の先生方の診療内容向上に少しでもお役に立てるようなお話をできればと思います。



おかげさまで多くお声がけいただいておりますが、呼吸器疾患の知識普及への道はまだまだ。これからも頑張って参ります。よろしくお願い申し上げます。

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posted by 長尾大志 at 15:05 | Comment(0) | 活動報告

2016年10月15日

呼吸器の勉強をしたい。そうだ、滋賀医へ行こう。

10月から、当呼吸器内科に勉強に来られた村山先生の歓迎会を木曜日に開催しました。


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村山先生は、長野県で総合診療を4年あまりされた後に、地域の呼吸器医療が崩壊していることに危機感を抱かれて呼吸器を志望された、熱いハートの持ち主です。


もうそれだけでも素晴らしいのですが、さて呼吸器の勉強をしようかと全国の数ある呼吸器教育施設を見回して、あえてウチに見学しに来ていただいた。その時のカンファレンスの様子、(主に食事会の?)ほんわかムードに合ったという事でしょうか、最終的にウチを選んで頂いた、これまた素晴らしい。


もちろんウチの先生方の指導には間違いないと自信がありますが、加えて村山先生の総合診療力が、ともすると専門志向で凝り固まりがちなウチのメンバーにどんな化学反応を起こしてくれるか、楽しみでしようがありません。


改めて写真を見ると女性が多いですね。ウチも女医さんが増えたものだなあ。



そういうわけで、呼吸器の勉強をしたい、という方のガッツリした研修から、地域に呼吸器科医がおらずしっかりした研修ができなかった、ブランクがあるのでやり直したいけど不安…といった方の短期間の研修まで、いろいろと支援できますので、滋賀医科大学呼吸器内科までお問い合わせください。

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posted by 長尾大志 at 16:38 | Comment(0) | 日記

2016年10月14日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症9・原因のある間質性肺炎の診断4・膠原病に合併した間質性肺炎

膠原病の多くに肺病変、特に間質性肺炎を合併します。また、膠原病のタイプによって、ある程度どのような肺病変が生じるか、予後や治療反応性にも一定の傾向が見られます。逆に間質性肺炎においては、基礎に膠原病があるかどうかで、治療・予後がずいぶん変わってきます。


例えば、特発性であるIPFとよく似た画像/病理所見(UIP)を持つ膠原病性のIPは、ステロイド投与が避けられるIPFとは異なりステロイド治療の積極的な適応となりますし、予後は良いといわれています。


また、急速に進行する間質性肺炎で、IPFの急性増悪と紛らわしいamyopathic(筋炎症状のない)DM-IPは、ステロイド+免疫抑制薬2剤併用療法など、積極的な治療が行われます。


したがって、間質性肺炎が存在する、となったら、膠原病が基礎にあるかないかを確認することも、環境や薬剤を確認するのと同様、重要なことであります。



通常膠原病の診断、というのは、各々膠原病のタイプに特徴的な症状、症候があって、そこから診断を進めていくものです。例えば、

  • 朝のこわばり、左右対称に(特に中手節関節や手関節に)生じている多発関節炎:慢性関節リウマチ

  • ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候、筋症状:皮膚筋炎、多発性筋炎

  • 皮膚硬化、舌小帯短縮、肺高血圧、食道運動の低下:強皮症

  • 眼・口腔の乾燥症状、環状紅斑:シェーグレン症候群

  • 中途半端に重複する膠原病症状、肺高血圧、レイノー症状、手指のソーセージ様腫脹や浮腫:混合性結合組織病


のように。


ところがここで紛らわしいことに、「肺病変先行型の膠原病」という一群が存在するのです。すなわち、結果的には膠原病なんだけれども、間質性肺炎などの肺病変が先行し、その先行している時期には他の病変が見られないために、一見特発性に見えてしまう、というものです。


そうすると初診時に「特発性だ」と診断して、積極的な治療を行わなかった、その後膠原病っぽい症状が出てきて、「治療すべきだった」となる可能性があるわけです。


そういうことがわかってきましたので、その時点で原因不明、特発性とされる症例についても、「膠原病っぽい要素がある」「膠原病の香りがする」ようなものはちょっと別扱い、ないし膠原病として治療を始めておく、という考えが出てきました。


例えば60歳以上で男性は特発性が多いけれども50歳未満で女性なら膠原病が基礎にあると疑え、とか、スクリーニングとして抗核抗体(>320倍)やRF(>60)が高力価(カッコ内)だったら疑え、とか、診断基準は満たさないものの少しでも上みたいな症状があったら疑え、とかですね。最近では、初診時の時点でスクリーニング的に自己抗体をガバッと手当たり次第に測定しておく、で、引っかかったものについてマークしておく、ということもされています。


choosing wisely(適切に医療資源を選択する)の観点からすると、スクリーニングとして手当たり次第に抗体を測定、というのは、あまりほめられたものではないようにも思いますが、症状が出る前から抗体陽性であれば肺病変先行型を疑う、といわれると、やむを得ないのかなという感じです。


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2016年10月13日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症8・原因のある間質性肺炎の診断3・薬剤性肺炎の診断・治療

そういうわけで、私たちが行っている薬剤性肺炎(肺障害)の診断・治療手順は、


  • とにもかくにも病歴から、薬剤による間質性肺炎(肺障害)ではないかと疑う。

  • 被疑薬を中止。

  • 症状があればステロイド投与。低酸素が強い場合や、重症化することが予想される被疑薬であれば大量投与、症状が強くなければ中等量の投与を。

  • 可能であればDLST施行し診断を確定する努力をする。

  • 経過を確認する。



ということになります。薬剤によって経過やステロイドの反応も異なりますので、経過の確認も含めて総合的に診断することになります。


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2016年10月12日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症8・原因のある間質性肺炎の診断3・薬剤性肺炎

■ 薬剤性肺炎の診断、検査

薬剤性肺炎にも基準はあります。日本呼吸器学会薬剤性肺障害の診断、治療の手引き作成委員会によります「薬剤性肺障害の診断・治療の手引き」を参照しますと…


  • 原因となる薬剤の摂取歴がある:市販薬、健康食品、非合法の麻薬、覚醒剤にも注意

  • 薬剤に起因する臨床病型の報告がある:臨床所見、画像所見、病理パターンの報告

  • 他の原因疾患が否定される:感染症、心原性肺水腫、原疾患増悪などの鑑別

  • 薬剤の中止により病態が改善する:自然軽快もしくは副腎皮質ステロイドにより軽快

  • 再投与により増悪する:一般的に誘発試験は勧められないが、その薬物が患者にとって必要で誘発試験の安全性が確保される場合

(「薬剤性肺障害の診断・治療の手引き」より引用)

…テなことが書いてあります。が、しかし、実際の診断となると、なかなかこんな風にうまくはいかないものであります。


まあ、とにもかくにも、繰り返しとなりますが、病歴が大事です。新しい薬剤を開始してから咳嗽、呼吸困難、発熱などが生じてきたときには、胸部X線写真、胸部CTなどを確認し、薬剤による肺障害を疑う。そういう流れになります。


そもそも紳士淑女のたしなみとしては、新しい薬剤を処方しようかというときには、少なくとも副作用に「間質性肺炎」「肺障害」などの文言がないかを確認しておきたいものです。そういう薬剤を開始するときには、患者さんに「咳とか息切れとか、熱が出てきたらすぐに教えて下さいね」とあらかじめ説明しておいて頂きたいと思います。また、投与中定期的に聴診、胸部画像検査やKL-6等の測定もお願いしたいところです。


とはいえ、頻用薬、それほど有名でないもの、健康食品やサプリメントなど、思わぬところからも薬剤性の肺障害は起こってきます。


…何気なく「肺障害」と書いておりますが、薬剤性「肺障害」の概念は薬剤性間質性肺炎を含む、もう少し広い範囲の疾患群を指します。肺障害を構成する病型としては、


  • 間質性肺炎

  • ARDS

  • 肺胞出血

  • 肺水腫

  • 好酸球性肺炎

(「薬剤性肺障害の診断・治療の手引き」より引用・改変)


などなどがある、ということになります。ですから肺障害⊃間質性肺炎、なのですが、ここら辺は混同されていることも多いようです。臨床の現場では、どれであっても結局は薬剤中止⇒ステロイド、となるわけですから、無理もありませんが。


診断の手順としては上に書いたとおりですが、発症時に使用していた薬剤を洗い出し、「それっぽい」ものを抽出する作業が重要です。何をもって「それっぽい」とするか。やはりタイミングと頻度、それに病型を総合的に考えることになるでしょう。また、他の原因を除外することも大事です。


直接因果関係を確認出来るのは誘発試験なのは間違いありませんが、あえてわざわざ病態を再現する、という手法は倫理的に問題があるということで、行うことは推奨されません。ウチでもやってません。ただ、それゆえに、この薬剤性肺障害の診断には非常な困難がつきものとなったことも紛れもない事実であります。


診断につながる検査として期待されているものには薬剤リンパ球刺激試験(DLST:drug lymphocyte stimulation test)があります。患者さんの末梢血からリンパ球などを採ってきて培養し、被疑薬と混ぜてリンパ球がどれだけ増殖するかを見る、というものですが、取り扱いには問題が多い。


一応のカットオフ、というものはありますが、薬剤によってはそれ自体にリンパ球刺激能を有していたり、逆にリンパ球機能抑制作用があったりして、結果の判定が困難なものがあります。また、そもそもDLSTの結果と被疑薬の再投与とに相関がなかった、とする報告もありまして、過度にあてにしてはならない、という位置づけです。


上記の診断基準にも、DLSTの表記は見られません。もちろん、臨床的に「それっぽい」ものが陽性であったりしたら、その結果は尊重されるべきでしょう。なおDLSTは2016年10月現在、薬疹以外の保険適応はありません。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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