2017年01月31日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの外科治療

線維空洞型のように菌量が多い病態では、抗菌化学療法の効果が非力であることから、手術療法を考慮されることもあるかと思います。


NTM症の外科治療に関しては、日本結核病学会の「指針(Kekkaku Vol. 83, No. 7 : 527_528, 2008)」を参照して頂くのがいいと思います。


(ここから引用)
外科治療(肺切除術)の適応 として、

(1)排菌源または排菌源となりうる主病巣が明らかで、かつ以下のような病状の場合

  • 化学療法にても排菌が停止しない、または再排菌があり、画像上病巣の拡大または悪化傾向が見られるか予想される。

  • 排菌が停止しても空洞性病巣や気管支拡張病変が残存し、再発再燃が危惧される。

  • 大量排菌源病巣からのシューブ(急速な悪化)を繰り返し、病勢の急速な進行がある。



(2)喀血、繰り返す気道感染、アスペルギルスの混合感染例などでは排菌状況にかかわらず責任病巣は切除の対象となる。


(3)非結核性抗酸菌症の進行を考えると年齢は70歳程度までが外科治療の対象と考えられるが、近年の元気な高齢者の増加や、症状改善の期待などを考慮すると70歳代での手術適応もありうる。


(4)心肺機能その他の評価で耐術である。


(5)対側肺や同側他葉の散布性小結節や粒状影は必ずしも切除の対象としなくてよい。
(引用ここまで)



外科手術を行ってもそれで解決、とはならず、あくまで外科手術は菌の多い部分を「減らす」ものであり、化学療法の併用は必須です。


明快にまとめられているので、参考になりますね。問題は手術を引き受けて下さる、相談に乗って頂ける呼吸器外科医の先生が近くにおられるかどうか、ということになるかもしれません。


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2017年01月30日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの治療・薬に対するあれこれ・投与期間など

治療期間についても、定まったものはありません。日米のガイドラインでは「菌陰性化後約1年間投与」なんて書いてありますが、エビデンスのある話ではありません。


ただ、「菌陰性化後」という言葉もあるように、菌が陰性化するかどうか、陰性化したタイミングを認識することは重要であります。その治療の効果があったかどうかがある程度わかりますから。ということは、治療中にも喀痰を定期的に採らなくてはならない。診断時にやっとの思いで採った、なんていうケースでは至難の業でしょうが、試みては頂きたいところです。


初回治療時には60〜80%で菌が陰性化するようですが、その後治療を止めるとまた悪化する例も少なからずあり、投与期間が菌陰性化後1年でいいのか、もっと長ければ再悪化が防げるのかわかっていません。再悪化したら再治療となりますが、止めると悪化⇒止められない、となってしまう症例もしばしば経験されます。まあそこは、副作用がなければ続けざるを得ない、という感じでしょうか。


現実的には菌が陰性化するかどうか(効果がどの程度か)を見ながら、また副作用が出てこないかどうかを確認しながら、まずは「菌陰性化後約1年間」を意識して投与します。


ただまあ、すぐに菌が陰性化、あるいは画像がきれいになって、効果がスゴくあったと考えられる場合は投与期間が短くてもいいのか、あるいは、出来るだけ菌を減らすべく長い方がいいのか、ということについてもハッキリした答えはありません。何となく、安全に使えるのであれば長い方がよさそう、という感触はありますが…。



SMは注射ですし、第[脳神経障害のこともありますから、2年や3年とはなかなかなりにくいでしょうが、少なくとも6ヶ月、有効例ではより長く使用したいといわれているようです。


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2017年01月29日

音羽病院にての胸部X線レクチャー

来月、2月18日(土)に音羽病院さんで胸部X線写真のレクチャーをやらせて頂きます。


だいぶ内容ができて参りましたので、少しチラ見せします。タイトルはいつもの「ルネッサンス」ですが、音羽病院さんの研修医の皆さん方も多く参加される、とのことで、今回は最近の『BRONCHO』で試みている、「所見に繰り返し曝露し、見る『眼』を養う」、をテーマに、少しまとまった数の写真を見て頂こうと思います。


○○とか、○○周りの陰影を診るコツとか、○○○○の見え方とかですかね。


あとは、症例検討。これまでにBRONCHOでお示ししたいくつかの症例と新作をお示しする予定です。いわゆる臨床推論でよくある疾患もありますが、それではありがちになってしまうので、いくつかココならではの面白そうな問題も用意して臨みたいと思います。

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posted by 長尾大志 at 20:26 | Comment(2) | 活動報告

2017年01月28日

メディカ出版看護セミナー 詳細決定

メディカ出版の看護セミナー、パンフレットができましたので告知します。


http://www.medica.co.jp/seminar/detail/131
あ、ココにはパンフレットはない…?


『急性期・術後の呼吸器ケア』【呼吸器】のタイトルではこれまでに何度かやらせて頂いておりますが、今回は、ベースの講義はある程度残して(もちろん細々とカイゼンして)、その習ったことを、実際の現場で遭遇する状況に応用して頂く、皆さんに考えて頂く時間を設けて、より現場で役立つ力を養って頂けるよう工夫しております。


血ガスの解釈、なかなか勉強・練習する機会がない…

酸素投与、やっちゃいけないことってあるんですか…

人工呼吸管理中にこんなことが起こった、どう考えればいい…?


神戸 2017年06月10日(土) 神戸クリスタルタワー 3階クリスタルホール
東京 2017年06月24日(土) 損保会館 2階大会議室


今回は、昨年、一昨年とは異なり、たぶん花火とは重ならないと思います…。

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posted by 長尾大志 at 14:52 | Comment(0) | 活動報告

2017年01月27日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの治療6・薬に対するあれこれ・診断と治療開始のタイミング・治療すんのかい!?せーへんのかい!?

そもそも、MAC症と診断したら全例直ちに治療するか、イヤその前の診断という話に戻ります。


線維空洞型は菌量も多く、進行が早くて予後が悪いので、診断即治療。これはいいでしょう。問題は近年増加している結節気管支拡張型の方です。まず診断自体、菌量が少なくてなかなか喀痰から菌が検出されないことも多いのです。また、そもそも罹りやすい「高齢でやせ型の女性」は普段から「カーッ、ペッ」と痰を吐くこともしない、Lady Windermereタイプの振る舞いなワケです。


そうすると、そもそも「痰が出ません」「痰なんて、出したことがない」みたいな話になります。だいたいそういう方は、健診発見無症状か、症状で受診したとしても「咳」「痰が絡む」程度の症状であったりして、痰が出るわけではない。それでパラパラッと中葉舌区なんかに、粒状影+気管支拡張像が見える。そういうパターンが多いでしょう。


痰が出て診断出来れば、次の話になりますが、この時点で足踏みすることも多いのではないかと思います。結節気管支拡張型で無症状の場合、「痰なんかでません」といわれたらどうするか…。


ここで考えなくてはならないのが、「MAC症と診断⇒即治療」となるかどうか、ということです。MAC症、特に結節気管支拡張型の臨床経過、予後にはかなりばらつきがあり、特に初期にはあまり進行しない、あるいは改善したように見える症例も少なくありません。そういう患者群ではランダム化比較試験が難しく、介入すべきなのかしなくてもいいのか、はたまた副作用のことを考えるとしない方がいいのか、議論のあるところになるわけです。


まあ結局結論は出ておらず、「専門医に相談してね」みたいなことになっていますが、専門医だって困っているのです。そんなこと言われても困りますわね。じゃあ実際どうするか。


現状ではどこにも明記されておらず、高齢者で、症状がなくて、あるいはあってもたまに痰が出る程度、画像上陰影もそんなに強くない、そんな場合、まずは経過観察をしてもよいのでは、悪化があればその時点でまた考えましょう、そんなフワッとした感じの考え方がコンセンサスではないかと思っています。


とすると、上のような場合、どっちにしろ経過観察なら、無理して診断しなくても、という考え方も出来るでしょう。CT画像的にMAC症の疑いで、痰が採れないときには、ちょっと経過観察、と。


それで悪化するようなら、もうちょっと痰も採りやすくなるだろうから、その時点で診断を考える。明らかに悪化傾向があれば、普通にやって痰が採れなくても、生理食塩水や高張食塩水の吸入後喀痰を誘発するとか、胃液培養や気管支洗浄(出来れば)に踏み切りたいところです。要するに、「治療したくなるタイミングになったら、きちんと診断出来るよう材料を採る」ということですね。


一方で、現在の化学療法に絶対的な効果が保証されておらず、しかも着々と進行する症例も多い、と考えると、とにもかくにも出来るだけ早く、診断時に治療を行ってみるべきだ、とする考え方もあります。


「ガイドライン」や「統一見解」のない世界ですから、どちらが絶対・正解というわけではありません。効果の点、副作用について患者さんやご家族によく説明し、よく相談されて方針を決めていただきたいと思います。


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2017年01月26日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの治療5・薬に対するあれこれ・EB・SM/KM

そう、エタンブトール(EB)には視覚障害の副作用がある、これはご存じの方も多いでしょう。エタンブトール中毒性視神経症などといわれています。


エタンブトール中毒性視神経症の発症は体重あたりの1日投与量に依存し、25 mg/kg/日以下での発症は少なくて15 mg/kg/日以下では比較的まれであると報告されています(臨眼 57 :687-690, 2003.)。


投与期間については、、投薬開始から2ヶ月経過後以降に発症し、半年〜1年程度で発症してくることが多いようですので、投与日数もある程度関係するようです。


EBの視神経症はSMの第[脳神経とは異なり可逆性、とはされていますが、投与を中止しても数ヶ月間は進行し、その後回復傾向となるといいます。ただし、回復しない例も報告されていますので、ともかく早期に視力・視野などの異常を発見できるよう、普段から定期的に眼科的診察・検査を受けておくこと、毎日新聞を片眼で読み、見えにくい、何かおかしいといった症状があればすぐに眼科受診するよう説明しておきます。



時にEBでも広範囲な皮疹が生じることがあります。対応はまず休薬ですが、多剤併用療法を行っている場合、一旦休薬した後は減感作療法により1剤ずつ再開して、各々安全に使えるかどうかを確認する必要があります。



SM/KMは注射薬ですから線維空洞型など重症例によく使われます。また、上にも書きましたが不可逆性の第[脳神経障害を生じうるために、使いにくい、若干ハードルが高い、と感じられる方も多いでしょう。私もそうです。


SMはアミノグリコシドの中でも難聴よりは前庭神経障害を起こしやすいといわれています。めまいが起こるということですから、患者さんにはよく説明して、めまいがあればすぐに教えてもらうようにします。重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1p01.pdf)によると、総投与量が増える、投与間隔が短い、耳毒性を有する他の薬剤と併用する、などにより障害のリスクは上昇するとされています。


SMは1日1g注射で、累積投与量20g前後で副作用を認めることが多いといいます。週3回の注射でしたら7週間、2ヶ月ぐらいですから、その頃には眼や耳と、いろいろと要注意ですね。


聴器毒性を回避するために、SMはじめアミノグリコシド系薬の吸入療法が試みられたりもしておりましたが、局所濃度が高くならないと耐性を誘導する、など、用量設定の問題で一時立ち消えていたと思っていたら、また最近復活しつつあるようです。まだ確たるエビデンスはないようですが…。


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2017年01月25日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの治療4・薬に対するあれこれ・RFP/RBT

RFPは抗結核薬としておなじみですが、発熱や皮疹、肝障害といった副作用があります。CAMでもそうですが、非結核性抗酸菌に対して効果が期待出来る薬剤はあまり多くありませんので、1つが使えなければ使わなくてもいい、他を当たればいい、という考え方にはなりません。つまり、原則として、ガイドラインに書いてある通りの治療をしたい、ということです。先の「見解」(Kekkaku Vol. 87, No. 2 : 83_86, 2012)にも、副作用対策についてきちんと書いてありますので、抗結核薬を使われる際には是非参照して頂きたいと思います。


まあでもCAM耐性だったら代替薬、これは仕方ありません。ただCAMの副作用であれば、例えばQT延長みたいにヤバいやつは仕方ありませんが、消化器系のものであれば、投与法の工夫や胃腸薬の投与、一旦休薬〜再投与チャレンジなどで何とか使って行きたいところです。


RFPはどうでしょう。有名な副作用として、肝障害、白血球減少症、それに皮疹や発熱などがあります。肝障害への対応は「抗結核薬使用中の肝障害への対応について」(Kekkaku Vol. 82, No. 2 : 115_118, 2007)に詳しいので参照頂きたいですが、基本はAST/ALT値が施設基準の5倍以上になったら中止、改善してチャンスがあれば再投与、という感じになります。かつては強力ミノファーゲン注を使っていたこともありましたが、エビデンスはありません。


白血球減少も、やはり薬剤中止の対応になります。投与開始数ヶ月以内に発生しますが、多くの場合は白血球2,000/mm3、血小板10万/mm3以下になることは少ないですが、それ以下になる場合には中止を考慮する必要があるでしょう。


また、皮疹は、広範囲なものであれば中止⇒減感作療法で対処出来るケースが多いです。減感作療法のやり方は「日本結核病学会治療委員会:抗結核薬の減感作療法に関する提言」Kekkaku Vol.72, 697_700, 1997. http://www.kekkaku.gr.jp/ga/ga-1.htm)を参照して下さい。


RFPに似た薬剤、ということで、RFPを代替する、あるいはRFPを上回る効果を期待されて登場したのがリファブチン(RBT)です。でも〜でも〜実際登場してみると、何ともかんとも使いにくい。


まずはRFPが投与出来ない、あるいは効果が不十分、というときに使いたいわけですが、「他のリファマイシン系薬剤に対し過敏症のある患者には投与しない」といきなり釘を刺されています。効果の点ではin vitroの活性がRFPよりも高い、とされますが、臨床的に有意な差が認められているわけではありません。


特殊な副作用としてぶどう膜炎があり、しかもそれが投与量に依存する。投与開始から2〜5ヶ月で発症が見られています。RBTはCAMと併用すると血中濃度が上がってしまう、てなこともあり、RBTをRFPに替わって、無条件にNTM治療の第一選択に、ともならないと思います。


わかりやすいのはRFPと比較してCYP3A4に対する作用が弱く、そのテの相互作用は少ない、というところで、そのテの薬を併用する場面では選択しやすいと思います。そのテの薬とはプロテアーゼ阻害薬や逆転写酵素阻害薬、まあHIVの薬ですね。要はHIV合併でHAARTを併用するようなNTM(結核も)のときには、RFPより使いやすい、といったところでしょうか。


もちろんnon-HIVにおけるNTM症に使用してもよいとは思います。


RBT 300 mg⇔ RFP 600 mg換算になるのですが、CAM併用時には血中濃度が上がるため、RBT投与量は当初150mgとし、6ヶ月以上副作用がないことを確認して300mg/日まで増量可とされています。EBを併用する際には特に注意が必要です…。


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2017年01月24日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの治療3・薬に対するあれこれ・CAM

CAMは副作用が比較的少なく使いやすい薬、と認識されています。そのために小児から濫用されて一般細菌に効かなくなってしまった…という話はまた改めてするとして、CAMには消化器系の副作用がしばしば見られ、用量が増えると副作用も増えるといわれています。副作用を軽減するためには、いくつかの工夫が必要です。


  • 投与量を減らす

  • 減らすといっても、600mg未満だと効果の点で心配なので、特に高齢者(70歳以上)の場合、低用量より開始し徐々に増やす

  • 分1よりも分2投与


例えば、400mg分2⇒600mg分2⇒800mg分2、と数日〜1週間毎に増やします。


抗結核薬の感受性は、MACの治療効果を推し量る上では役に立たないとされています。唯一、CAMだけは液体培地を用いてMICを測定することが出来、4μg/ml以下を感受性、32μg/ml以上を耐性と判定します。耐性であると判明すればCAMは中止します。


とはいえ、初回治療ではCAM耐性はほとんど考えなくてよい、とされています。でもですね。「副鼻腔気管支症候群」「慢性副鼻腔炎」に対して、CAMをダラダラ長期間使われている症例をよく見かけます。これ、今後問題になってくると思います。後で触れるかもしれません。


副作用や耐性などでCAMを使えない、てな場合、キノロン系としてシタフロキサシン(STFX)が代用されます。キノロン系も確たるエビデンスがある、というわけでもないのですが、なにせ副作用があまりないものですから、気軽に?使われていうことが多いです。これまで、レボフロキサシン(LVFX)やモキシフロキサシン(MFLX)もよく使われていましたが、最近ではSTFX、とする意見が多いようです。


  • RFP 10mg/kg(最大600mg)/日 分1

  • EB 15mg/kg(最大750mg)/日 分1

  • STFX 100-200mg/日 分1



CAM単剤、CAM+キノロン、という投与法がかつては副作用が少ないこともあり、半ば気軽に行われていましたが、今では耐性の元となるため厳禁、とされています。まだされておられる先生方、厳禁です!3剤以上併用が原則です。


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2017年01月23日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの治療2

それから、抗結核薬。やはり非結核性抗酸菌、結核と性質が似ているところがあり、抗結核薬がある程度効果を現しますが、抗結核薬のうちイソニアジド(INH)はMACには効果が乏しく、使われることはありません(M.kansasiiには使われます)。


抗結核薬の中ではリファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)、ストレプトマイシン(SM)・カナマイシン(KM)の効果が認められていて、標準治療に使われます。ただ、SM、KMは筋肉注射での投与となりますので、外来診療では若干ハードルが高くなり、優先順位としては少し下がります。


投与量としては、概ね肺結核の治療と同じ量です。


先に挙げた2012年の日本結核病学会・日本呼吸器学会の見解で示されている標準療法は、以下の通りです。

(表)
  • CAM 600-800mg/日(15-20mg/kg)分1または分2(800mg/日なら分2)

  • RFP 10mg/kg(最大600mg)/日 分1

  • EB 15mg/kg(最大750mgまで)/日 分1

  • SMまたはKM(各々15mg/kg以下、最大1,000mgを週2〜3回筋肉注射)は必要に応じて



つまり、CAM、RFP、EBの3剤が基本で、ある程度以上の重症例にSMを追加する、という感じです。


ちなみに米国胸部学会(ATS)/米国感染症学会(IDSA)の提言(An official ATS/IDSA statement: diagnosis, treatment, and prevention of nontuberculous mycobacterial diseases.
Griffith DE, ら Am J Respir Crit Care Med. 2007 Feb 15;175(4):367-416. )では、結節気管支拡張型であれば週3回投与(1回投与量多め)でよい、となっています。


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2017年01月22日

やってみる以上に効率よい教育はない?

私のような末端のものには全くなにも知らされていないのですが、本学のカリキュラムが大?変更になるようです。その「説明会」が、近々あるらしいのですが、何がどう変わるか全くわからなくて、いったい何を説明されるのかもわからない。まあそもそも、「大」変更かどうかもわかりません。


前々から、国際基準に対応して臨床実習を72週に、ということは本学でもいわれていて、臨床教育講座の教授選の時にも争点というかビジョンを語るように、ということもありました。ですから、「いよいよか」と思うわけですが、どう考えても臨床実習を変えようとすると基礎や臨床の学部教育にも手を入れる必要があり、それがひいては本学の(ちょっと時代に取り残されつつある)教育を大改革する(最後の)チャンスかな、と思っていました。


なので、まあ自分がもし改革する側に立ったらどのように手を入れていくか、とにかくまずは対話。実際教育をされている先生方の考え、ビジョンを伺い、こちらの考えをお伝えしながら、学生にとって「いい」教育を考えていく。できる限り多くの学生さんにも話を聞いていく。「できる」人だけでない人も、どうすればやるのか。そんなことも探っていきたい…そういうことを考えたり妄想したりもしていたわけですが、今回のカリキュラム変更で、実際どんな感じに変わっていくのか、本当に楽しみです。


ウチを回ってきていた臨床実習の学生さんに、臨床実習をどうすればいいか、どんな感じのものがこれまでよかったか、などなど尋ねてみていたのですが、やはり何かを「やる」のがいい、というのは口をそろえて挙がってきます。そしてそれだけ「やる」ことが少ない、今の見学型ポリクリの限界でありましょう。


昨日あった緩和ケア講習会でも、やはり「やらせる」ことに力点が置かれていて、ある程度ファシリテーターにばらつきがあろうとも、やらせればそれが学びになる、という感じでカリキュラムが組まれていたのが印象的でした。


そうなってくると、その先を探りたくなるのが人情というもの。まあまずはカリキュラムを確認して、その中で何ができるかを考えます。

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2017年01月21日

滋賀県緩和ケア研修会 ファシリテーター

今日は、表記の会にファシリテーターとして丸一日、参加して参りました。


IMG.jpg


参加者としては昨年参加し研修を受けたわけですが、今年の参加は振り返りのよい機会となりました。日によっては、ファシリテーターは講義には参加せず、ワークショップのみの参加、ということなのですが、私が参加したこの日は、朝から講義にも参加すべし、となっておりまして、勉強させて頂きました。


いろいろとお話に参加させて頂いて、思うところはたくさんありましたが、そのまま書くのは憚られますので、明日頭を冷やして書けそうであれば書こうと思います(意味深)。

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posted by 長尾大志 at 16:53 | Comment(0) | 日記

2017年01月20日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・(線維空洞型)MACの治療1

近年増加しているのは結節気管支拡張型の方で、こちらの診断、および治療を考えるのに悩ましいケースがしばしばあるのです。


線維空洞型は菌量も多く、進行が早くて予後が悪いわけですから、菌の検出はより容易で診断は困難ではないでしょう。そして、診断したらすぐに治療開始、そういう意味ではあまり悩ましくはありません。まあ、効果が乏しくて悩ましい、ということはあると思いますが…。


治療は化学療法、つまり抗菌薬を使います。MACに効果がある抗菌薬としては、まずクラリスロマイシン(CAM)です。MACにCAM、うまく出来ています(何が?)。同じマクロライド系であるアジスロマイシン(AZM)もある程度効果が認められていますが、HIV感染ベースの症例で効果に差があるとの報告もあり(差がないという報告もあり)、通常はCAMが先に記載されています。


CAMだったら、一般細菌や普通の?非定型病原体に使われているところの400mg/日ではなく、その倍量の800mg/日を使うことが推奨されています。今では保険適応上もマイコバクテリウム属への投与は800mgが認められています。


胃腸障害など、副作用が生じたり、懸念されたり、という場合、量を減らさざるを得ないこともあるでしょう。体重が少ない場合に600〜400mgに減量することは結核病学会でも認められています(肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解―2012年改訂 - 日本結核病学会非結核性抗酸菌症対策委員会 日本呼吸器学会感染症・結核学術部会.Kekkaku Vol. 87, No. 2 : 83_86, 2012)し、特に高齢者の場合、まず400mg分2から開始し、600mg、800mgと増やしていくのも一法です。


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2017年01月19日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診断3・画像所見でみるMACの病型

非結核性抗酸菌症のうち、原因で最も多いのはMACです。MAC以外の非結核性抗酸菌が相手、となりますとどうでしょう。M.kansasiiだったら、まだ与しやすいですが、それ以外だと呼吸器科以外ではいささか荷が重い、と思われるかもしれません。ということで、まずはMACの病型について考えてみます。


肺MAC症の病型は画像の特徴から大きく分けて2つある、といわれています。


  • 線維空洞型
    名前には「線維」と入っていますが、いわゆる肺線維症みたいなことではなく、空洞形成が病変の中心です。陳旧性肺結核やCOPD、じん肺など、元々肺組織の破壊性病変がある症例に多いといわれています。

  • 結節気管支拡張型
    こちらは元々肺が壊れていない症例で見られ、結節や気管支・細気管支の拡張像が見られるもので、新たに発症する症例ではこちらが多いです。



結節気管支拡張型は中高年の女性が、人前で咳をするのははしたない、ということから咳をしないようにしていて、それで菌を喀出できずに罹るんじゃないか、みたいなことがいわれています。それでオスカー・ワイルドの戯曲”Lady Windermere’s Fan”の登場人物の振る舞いにちなんで”Lady Windermere症候群”とも呼ばれています。


一般的に線維空洞型の方が菌量が多く、治療に難渋して予後が悪い、結節気管支拡張型の方が菌量が少なく、予後がよい、とされています。


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2017年01月18日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診断2・画像所見

胸部画像で典型的な所見、とサラッと書きましたが、典型的って、どんな陰影?って話です。


先の「基準」には、胸部画像所見として『結節性陰影、小結節性陰影や分枝上陰影の散布、均等性陰影、空洞性陰影、気管支または細気管支拡張所見のいずれかを示す』としてあります。


流し読みしていると、「フーン」てなもんですが、よくよく見ると、胸部画像で見られる大概の所見が含まれていることに気付かれるでしょう。結核同様、非結核性抗酸菌症も、多種多様な陰影を呈するのです。


例えば、結節性陰影、小結節性陰影はこんな陰影。


スライド36.JPG


分枝状陰影の散布、といいますと、こんな感じでしょうか。


スライド37.JPG


均等性陰影、なかなかいい症例がありません。他の疾患でこんなイメージです。


スライド38.JPG


空洞性陰影はよく見かけますね。


スライド39.JPG


気管支または細気管支拡張所見はこんな感じでしょうか。空洞もありますけど。


スライド40.JPG


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2017年01月17日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診断

まずは診断です。正しい診断なくして治療なし。で、こちらも肺結核同様、喀痰なり胃液なり気管支洗浄液なりから菌を検出する、これが標準となります。ですから同じく、痰をしつこく採りましょう、気管支鏡も考慮しましょう、となります。ただ、結核との違いは「抗MAC抗体」なる抗体検査が適用出来ること。


抗MAC抗体(MAC特異的血清診断)は、MACの壁を構成する抗原成分に対する抗体を測定していて、感度40〜80%、特異度90〜100%程度です。結核におけるIGRAと異なり、肺非結核性抗酸菌症が発症して十分量の菌がいる、ということを意味しますから、IGRAよりは「診断の」役に立ちそうです。


でも抗原成分がMAC以外の非結核性抗酸菌にも存在すること、それから環境中のMACに曝露しても抗体が産生されうるともいわれていることから、これだけが陽性=MAC症、とは決めがたいところです。臨床上、画像上疑わしくて、喀痰が1回だけ陽性、なんて症例で陽性であれば、役に立ちそうですけど。


一応、日本結核病学会・日本呼吸器学会による確定診断の基準は、臨床的基準として

  • 胸部画像で典型的な所見所見がある

  • 他の疾患を除外出来る


上で、細菌学的基準のいずれかを満たすとされています。この原則はその通りですので、現状では抗MAC抗体は、あくまで「補助診断」という位置づけになります。


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2017年01月16日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症について

肺結核と診断した瞬間、保健所に届け出る必要があり、その治療についてもある程度決まったものがあります。培養陽性であれば専門施設へのコンサルトをされることも多いでしょう。そんなわけで、肺結核の診療において、悩ましい問題、というのは比較的少ないのではないでしょうか。


一方最近では、すっかり肺結核よりも多くなった肺非結核性抗酸菌症。こちらには悩ましい症例も多いです。それなのに、患者さんの症状もはっきりせず、呼吸器にコンサルトしたものかどうか、それすらも悩んでしまう。そんな場面も多いのではないでしょうか。


結局どうしたものか、ガイドラインを見てもよくわからない。近くに気軽に聞ける専門医がいない…。


いや、実のところ私たちも、「本当にこれでいいのか」悩みながら診療を行っているのが実際のところです。というのも、

  • 治療薬の決定版がない

  • その割には(それゆえに)多剤、長期間の治療が必要で、副作用の懸念がある

  • 進行がゆっくり、あるいは進行しない例もある

  • 一方で、治療抵抗例では悪化し出すと手がつけられない

  • 外科治療の適応が難しい・外科治療自体が困難


といった状況があるのですね。エビデンスがないというか、足りないというか。それゆえに「こうすべし」と言い切れない。でも、何か指針はほしい。という感じでしょうか。少し考えてみましょう。


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2017年01月15日

平成28年度 日臨技近畿支部 臨床一般検査分野研修会『湖国で学ぶ!一般検査〜Good for everyoneを目指して〜』

今日は午後から、表記の会で講演をさせていただきました。私の担当は、『胸水をみたときに臨床医が考えること』ということで、臨床医は胸水の結果でどういうところを注目しているか、大事な項目はどれか、というようなお話をさせていただきました。


当地は夜中からの雪で、道路状況が危ぶまれましたが、却って道が空いており、スンナリと到着できました。遠方から来られた他の講師の先生方も、無事に到着、帰られたようで何よりでした。


講師の先生とのお話で、私の書籍をお読み頂いていることをお知らせ頂いて、ハッピーでした。また、胸水のpHを血ガス測定器で測定することのご意見を頂き、今後の参考になりました。


お招き頂いた皆様、関係の方々、本当にありがとうございました。


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posted by 長尾大志 at 19:48 | Comment(0) | 活動報告

2017年01月14日

大学入試センター試験

今日は、大学入試センター試験の試験監督をしておりました。


幸い当地では雪がちらつくものの交通機関の乱れなどなく、つつがなく終了したようでよかったです。国内では遅れなどもあったようですが、まずは明日まで無事に終了すること、受験生の皆さんが努力の成果を発揮できることをお祈りしております。


そして明日私はこちら。


胸水ポスター1.jpg


胸水について、臨床検査技師の方々と考えて参ります。参加される皆様、よろしくお願い申し上げます。

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posted by 長尾大志 at 21:19 | Comment(0) | 日記

2017年01月13日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・IGRAについて

これも、以前から何度もこちらで書いていることではありますが…。


誰でも、同じ結果が得られるんだったら、楽な方がいい、まあこれはわかります。でも、結果が違うのに、楽な方を進むのはどうでしょう。そう言われると、「結果が違うんだったら、結果によるよね」と思われるでしょう…。




IGRA(interferon gamma release assay:インターフェロンガンマ放出試験)という検査があります。IGRAは一般名で、商品名としてはQuantiFERON-TB-Goldレジスタードマーク(QFT-G/QFT-3G:クォンティフェロン)、T-スポット.TBレジスタードマークが有名です。


この検査のポイントは、「採血をすれば、結核感染の有無が高精度にわかる」というもの。「採血」という、気軽な、楽な方法で、「高精度に」わかるのがミソです。そのため、割と気軽に「結核の診断法」として用いられているのが気になります。


「Tスポット陽性なので、結核と考えられます」
「クォンティフェロン陰性なので、結核は否定的です」
と、かなり短絡的に、結果と診断がリンクしてしまっていることが多いのですね。


IGRAの意味するところはあくまで、結核の「感染」です。IGRA陽性は結核菌が体内に入って感染が成立していることを意味しますが、イコール「肺結核(=発症)」ではありません。これは繰り返し強調したいところです。


IGRA陽性は、あくまで感染。肺結核の可能性はありますが、肺結核の診断は、あくまでも「喀痰・胃液・肺から結核菌を証明すること」ですから、IGRA陽性であれば、頑張って菌を証明する努力をしましょう。


特に70歳以上の高齢者の方は、戦後の結核蔓延期、菌がそこら中でまき散らされていた時期に吸い込んでしまっている可能性があり、IGRA陽性者が多いのが現状です。そうなるとIGRA陽性に診断的意義は期待出来ません。


IGRA陰性のときはどうか。IGRA陰性は、結核菌の感染がない、と考えてよい。とすると、それで結核が発症する可能性は低いと考えられます。



結論として…

・IGRA陽性であっても、肺結核とは限らない。喀痰検査、胃液培養、気管支鏡などを施行し菌の検出に努めるべし。

・IGRA陰性であれば、肺結核をさしあたり考える必要はない。


IGRAという簡便な検査だけで、結核の診断は出来ません。楽な検査ではありますが、得られるものも少ない。これは覚えておいて頂きたいと思います。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2017年01月12日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺結核の診断

間質性肺炎もいろいろ書いてきて、どこまで網羅したやらわからなくなってきましたので、一旦頭を冷やすことにします。


しばらくはこれまたご質問の多い、肺結核と非結核性抗酸菌の診断と治療について考えてみることに致します。



肺結核

肺結核は診断してしまうと、呼吸器専門医なり専門施設に紹介、というケースが多いようですから、診断の方が治療よりも問題となることが多いでしょう。


肺結核の診断には、喀痰、または胃液から結核菌を検出することが何よりも大切です。Tスポットもツ反も、傍証でしかありません。これは間違いない。


肺結核を疑うような状況、症状があり、矛盾しない画像所見があれば、積極的に喀痰検査を3回(3連痰)行うべきです。どうしても採取出来ない場合、胃液培養を3回行います。早朝の食前に経鼻胃管を挿入し、シリンジで吸引するだけです。外来で施行可能。気管支鏡よりもよっぽどハードルが低く、しかも確実に診断が可能な検査ですので、是非積極的に行って頂きたいと思います。


肺結核を疑う状況

・既往がある

・塗抹陽性患者の接触者である

・下記のようなリスクがある

  • 重喫煙者

  • 糖尿病

  • 胃切除後

  • AIDS

  • 担癌状態・血液疾患

  • 人工透析中

  • ステロイド・免疫抑制治療中

  • 珪肺




肺結核を疑う症状

・長引く咳・痰で喘息のような変動性に乏しい

・微熱・寝汗や体重減少がある。



・矛盾しない画像所見

・「肺結核に矛盾する画像所見なんてない」と諫められるように、様々な画像所見を呈することが知られている。

・したがって、「胸部X線写真で何らかの陰影が見られる」のであれば、それは結核を疑う根拠になる。

・典型的には粒状影〜結節影、空洞を伴うことが多い。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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