2017年02月28日

第111回医師国家試験問題解説・身体診察を疎かにする事なかれ2

H37〜38
次の文を読み,37,38の問いに答えよ.
26歳の男性.左胸痛と息苦しさとを主訴に来院した.
現病歴:昼ごろに咳き込んだ際,左胸痛が出現した.しばらく様子をみていたが改善せず,呼吸困難も出現したため夜間救急外来を家族とともに受診した.
既往歴:16歳時に右側,18歳時に左側で同様の症状のため通院.
生活歴:会社員.独身.両親と同居.喫煙は15本/日を5年間.飲酒は機会飲酒.
家族歴:特記すべきことはない.
現症:意識は清明.身長172cm,体重52kg.体温36.9℃.脈拍84/分,整.血圧112/76mmHg.呼吸数16/分.SpO2 94%(room air).皮膚と口腔内は乾燥している.眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない.頸静脈の怒張を認めない.頸部リンパ節を触知しない.心音に異常を認めない.呼吸時に胸郭の動きに左右差を認める.呼吸音は左側で減弱しているが,副雑音は聴取しない.左胸部の打診は鼓音を呈している.腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない.下腿に浮腫を認めない.
検査所見:血液所見:赤血球480万,Hb 15.5g/dL,Ht 47%,白血球8,400(桿状核好中球30%,分葉核好中球45%,好酸球1%,好塩基球1%,単球6%,リンパ球17%),血小板23万.血液生化学所見:総蛋白7.3g/dL,アルブミン4.7g/dL,総ビリルビン0.3mg/dL,AST 20U/L,ALT 18U/L,LD 195U/L(基準176〜353),ALP 189U/L(基準115〜359),クレアチニン0.6mg/dL,Na 137mEq/L,K 4.4mEq/L,Cl 97mEq/L.CRP 0.3mg/dL.動脈血ガス分析(room air):pH 7.41,PaCO2 39Torr,PaO2 62Torr,HCO3− 24mEq/L.


H37
立位で胸部X線撮影を行った.
想定される所見はどれか.
a 左肺野多発腫瘤影
b 左肺野浸潤影
c 左肋骨骨折
d 左肺虚脱
e 胸水貯留



こちらも、身体診察を使う問題です。まあでも昼ごろに咳き込んだ際(ピンポイント)、左胸痛が出現した、ということで、発症様式が特徴的である点、16歳時に「右側」、18歳時に「左側」で同様の症状、と、「側」のある病態である点から、診断としてはわかってしまうわけですが。


一応診察上は、呼吸時に胸郭の動きに左右差を認め、呼吸音は左側で減弱しているが副雑音は聴取せず、左胸部の打診は鼓音を呈している、ということで気胸は間違いないでしょう。


選択肢がちょっといやらしいですが、気胸は胸部X線撮影でd肺の虚脱所見が見られます。



H38
胸部X線写真を確認して初期対応を行い入院となった.
この患者に手術を勧める根拠となるのはどれか.
a SpO2
b 既往歴
c 喫煙歴
d 性別
e 年齢


まあこれは知識の問題です。b既往として気胸を繰り返す場合には手術適応です。


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2017年02月27日

第111回医師国家試験問題解説・身体診察を疎かにする事なかれ

もう少しだけ、国試問題の解説を続けます。


H28
62歳の男性.呼吸困難を主訴に来院した.1ヵ月前に呼吸困難が出現し,増強してきた.喫煙は30本/日を40年間.体温36.4℃.脈拍104/分,整.血圧132/86mmHg.呼吸数24/分.SpO2 92%(room air).心音に異常を認めない.呼吸時に胸郭の動きに左右差を認める.左胸部の打診は濁音を呈し,聴診では左肺の呼吸音が減弱している.
考えられるのはどれか.
a 気胸
b 肺炎
c 肺気腫
d 無気肺
e 肺塞栓


イヤ臨床実習の学生さんを見ていて、身体診察に対する「温度差」みたいなものを感じているんですよ。熱心な人は積極的に練習してみるんだけれど、なんか事務的に、「形だけ出来てりゃいいんでしょ」みたいな人もいる。


これって、OSCEとかで、「形さえ出来てりゃ合格」という教育がなされているからではないか、と思ったりするわけです。それと、ひょっとしたら他科では身体診察をちゃんとやらせてもらっていないのでは?という穿った見方も出来たりして。


自分の学生時代のことは棚に上げて、この状況はいかがなものか、と思いますが、考えてみれば自分の学生時代も、身体診察のことなんてこれっぽっちも習っていなかったような。誰にも教えてもらわずに、興味なんて生まれるわけがないですよね。


呼吸器内科では幸い、身体診察の所見がいろいろあって、しかもある程度(胸部X線写真などを使って)答え合わせが出来る、という恵まれた状況だと思うのですね。それで、学生さんに興味を持ってもらうべく、いろいろやってみるのですけど…このように国家試験にもでる、となれば、もう少しきちんと所見をとる、という方向に目を向けてもらえないかなー、と期待しています。


本症例では胸郭の動きに左右差を認め、左胸部の打診で濁音、聴診で左肺呼吸音が減弱…ということで、左胸郭内の含気が低下して肺が動いていない様子がわかります。選択肢ではb肺炎、が若干紛らわしいですが、1ヶ月前からの慢性経過なので否定的と考えてよいでしょう。正解はd。


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2017年02月26日

第24回びわこ臨床研修ネットワーク学術講演会に参加してきました。

昨日は第24回びわこ臨床研修ネットワーク学術講演会@ピアザ淡海に参加してきました。こちらは滋賀県の病院協会、まあ研修病院の集まりみたいなところが主催されている、県下で研修している先生方と指導医の先生方との集いです。


DSCF5233.JPG


ピアザ淡海から見る琵琶湖の眺望はいつも落ち着きます。すっかり滋賀県民。


初期研修医2年目のU先生に、「アレルギー性気管支肺真菌症治療中に突然の血小板減少を来たし、診断に苦慮した一例」を発表していただきました。まあ、本当の意味でいろいろ苦慮した一例です(汗)。


biwako.JPG


国立病院機構 東近江総合医療センターのT先生をはじめ、数件のご質問を頂きましたが、全く私たちの出る幕なく、しっかりと答えておられたのが印象的でした。よかったよかった。


県と県下の病院が連携して、研修医の先生やその他の先生方を呼び込んでいるところがうらやましいところですが、この会のように、県下の病院間での連携もされているわけで、もっと発展するといいのに、との思いを強くしました。

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posted by 長尾大志 at 20:26 | Comment(0) | 日記

2017年02月25日

京都医療センターの会(呼吸器合同カンファレンス)に参加して参りました。

昨日は、表記の会(正式名称はよくわかりません…汗)に、初めて参加させていただきました。


iryousenta.JPG


こちらは、京都南部にある呼吸器内科のある病院の先生方が、症例を提示、ディスカッションを行う、という趣旨の会で、音羽病院の土谷先生にご紹介いただいたものです。


京都医療センターの三尾先生には京都大学でお世話になって以来の再会、その他、滋賀医大出身の外科の先生にもお目にかかったり、懐かしい顔ぶれに、タイムスリップをしたようでした。


やっぱり、他施設の先生方と顔を合わせていろいろお話をする、という機会はいいものだ、と再確認。


できればこれからも参加したいところですし、滋賀でもこういう会ができれば、という思いを新たにしました。

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posted by 長尾大志 at 20:40 | Comment(2) | 日記

2017年02月24日

第111回医師国家試験問題解説・睡眠時無呼吸症候群+α

D58
52歳の女性.就寝中に呼吸が止まるのを夫に指摘されて来院した.3ヵ月前から動悸と昼間の眠気とを感じている.4ヵ月前からうつ病で内服治療中である.喫煙は10本/日を30年間.飲酒はビール1,000mL/日を20年間.身長161cm,体重78kg.脈拍76/分,整.血圧156/104mmHg.心音と呼吸音とに異常を認めない.簡易モニター検査後のポリソムノグラフィで無呼吸低呼吸指数は26(基準5未満),無呼吸の最長持続時間は112秒(基準9未満),睡眠中のSpO2は最低値77%,平均値96%,いびきの回数は428/時間である.
この患者に対する働きかけとして適切なのはどれか.3つ選べ.
a 「禁煙しましょう」
b 「減量手術をしましょう」
c 「飲酒を制限しましょう」
d 「仰向けに寝るようにしましょう」
e 「内服薬の見直しについて相談しましょう」



これも学生さんは困ったかもしれません。新傾向というか現実に即したというか意地悪というか


就寝中に呼吸が止まる、昼間の眠気、ポリソムノグラフィーから、睡眠時無呼吸症候群の診断は問題ないでしょう。問題はココから。


おそらく出題者の意図としては、「睡眠時無呼吸症候群=○○、みたいな問題は出さないゾ」ということなのでしょうが…狙い過ぎか。


その他の状況として、喫煙、大量の飲酒、うつ病の内服治療、肥満傾向(BMI30)があります。ってことで、「全人的にみる視点を学生も持っておくように」みたいな意図があるのでしょうかね。


さて選択肢をみますと、c「飲酒を制限しましょう」飲酒は睡眠時無呼吸症候群のリスクとなりますし、e「内服薬の見直しについて相談しましょう」うつ病の内服薬もリスク。d「仰向けに寝るようにしましょう」仰向けは気道の閉塞につながりますから×ですね。


問題は残る2つですが、国試的にはb減量手術なんつー大げさな治療を積極的に勧めるのは、よほどの根拠がないと…BMIたかだか30ですから、アウト、って感じでいいのかもしれませんが、a禁煙、これだって、別に睡眠時無呼吸症候群のリスクとは言えない。と言えれば言えるわけで、「ん?」という感じです。


まあおそらく、「この患者さんに対する働きかけとして」という文言から、「睡眠時無呼吸症候群だけでなく、この患者さんの有する病態に対しての働きかけ」という意味合いと取れば、禁煙でよかろうとなるように思いますが。


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2017年02月23日

第111回医師国家試験問題解説・ポリソムノグラフィ

そして、医師国家試験に戻りましょう。


B9
ポリソムノグラフィに含まれないのはどれか.
a 脳波
b 血圧
c 筋電図
d 心電図
e SpO2



これ、どう思われますか?ポリソムノグラフィに必須の項目、といえば、脳波、筋電図、SpO2でしょう。これは間違いない。


あとは血圧か心電図…まあ、血圧測定は刺激になりますから、心電図のところが多いか…でも血圧測定しているところもあるけど…苦しい選択。


「含まれない」という表現も紛らわしい。必須の、ということであればbもdもSASの診断に必須とは言えません。でも循環動態をモニターするために通常は測定します。だったら血圧も含んでもよい、と言えるでしょう。無理やり感はありますが、どちらか、問われたらbかなあと思います。


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2017年02月22日

第106回看護師国家試験問題解説・喀血とは・高齢者の肺

例年通り、ここで看護師国家試験問題の解説作成がカットインして参りました。割とシンプルな問題ですので、すすっといきましょう。


A12
喀血が起こる出血部位で正しいのはどれか.
1.頭蓋内
2.気道
3.食道
4.胆道


喀血は気道内の出血です。正解は2。


P49
高齢者に術後の呼吸器合併症が発症しやすい理由で正しいのはどれか.
1.残気量の減少
2.肺活量の低下
3.嚥下反射の閾値の低下
4.気道の線毛運動の亢進


これ、一瞬、どれもそうじゃないか、なんて思ってしまったのですが、よくみると間違っている項目ばかりです。正解は2。


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2017年02月21日

第111回医師国家試験問題解説・ナニコレ?

E57
68歳の女性.腹膜炎の手術後でICUに入院中である.3日前に消化管穿孔による急性汎発性腹膜炎で緊急手術が行われた.術後は気管挿管されたままICUに入室し,人工呼吸管理を受けている.本日から呼吸状態が悪化し,気管からピンク色泡沫状の分泌物が吸引された.心拍数86/分,整.血圧120/80mmHg.動脈血ガス分析(FIO2 0.7):pH 7.32,PaCO2 42Torr,PaO2 69Torr,HCO3- 23mEq/L.胸部X線写真(両側肺野にすりガラス影)を別に示す.心エコーで左室駆出率60%,左室壁運動に異常を認めない.有意な弁膜症を認めない.

診断はどれか.
a 肺炎
b 肺胞出血
c 心原性肺水腫
d 急性間質性肺炎
e 急性呼吸促迫症候群〈ARDS〉



こちら、微妙です。国試レベルだったらたぶん正解は1つになるんでしょうけど、臨床の現場を知っていればいるほど、正解は1つに絞れないですよね。現場重視を謳う国家試験にしては、ちょっとアレじゃないか、と思った次第です。


それはさておき、医師国家試験レベルでの解答は…


  • 急性汎発性腹膜炎で緊急手術後

  • 両側すりガラス影・呼吸不全

  • 循環障害、心疾患の否定

  • 気管からピンク色泡沫状の分泌物が吸引



ということで、挙げられている条件からはアレしかなかろう、という感じなのでしょうけれども。


基礎に感染、術後という状態があり、両側すりガラス影を来した呼吸不全、心不全は否定…そうです、診断は…



ARDSでしょうね。


正解:e



でもこれ、確かにARDSの診断基準に基づいて、心不全の除外は出来てますけど、肺胞出血の除外、急性間質性肺炎の除外は出来てるんか、と問われたらどうでしょう。


出来てませんよね…。


ひょっとすると出題された先生は救急畑の方で、ARDSの診断基準のことに集中されていたのかもしれません。心不全の除外をすべし、と明記されていますからね。少なくとも呼吸器専門医試験でこの問題が出たら、正解はe 1つにはならないでしょう。


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2017年02月20日

第111回医師国家試験問題解説・画像一発

今年もメディックメディアさんから、医師国家試験問題の解説を作成するお仕事を頂きました。いち早く国家試験の問題をチェック出来る、ありがたい機会であります。今年は結構新傾向、既視感のない問題がみられ、受験生の方々の中から「心折れた」という声も聞かれたような気がいたしますが、私なりの解釈、独り言も少し交えて、解説の下書きをしたいと思います。あ、こちらはあくまで、下書きですよ〜お仕事はもっとキッチリ解説いたします。



E41
68歳の女性.易疲労感と咳嗽とを主訴に来院した.6ヵ月前から左上葉肺癌で抗癌化学療法と放射線療法とを受けていた.2ヵ月前に治療は終了し経過観察されている.2週間前から易疲労感と乾性咳嗽があり,次第に悪化したため受診した.身長160cm,体重58kg.体温36.6℃.脈拍88/分,整.血圧126/80mmHg.呼吸数18/分.SpO2 96%(room air).眼瞼結膜は軽度貧血様である.心音に異常を認めないが,左胸部で気管支呼吸音と軽度のwheezesを聴取する.血液所見:赤血球389万,Hb 10.2g/dL,Ht 32%,白血球5,800,血小板25万.血液生化学所見:総蛋白6.7g/dL,アルブミン3.7g/dL,総ビリルビン0.3mg/dL,AST 16U/L,ALT 13U/L,LD 273U/L(基準176〜353),クレアチニン0.9mg/dL,Na 143mEq/L,K 4.4mEq/L,Cl 105mEq/L,CEA 4.8ng/mL(基準5以下).CRP 1.3mg/dL.胸部X線写真(左上肺野に限局性の浸潤影)と肺野条件の胸部CT(左上葉にビシッと境界線のある限局性の浸潤影)とを別に示す.

最も考えられるのはどれか.
a 癌性リンパ管症
b 放射線肺炎
c 細菌性肺炎
d 肺水腫
e 膿胸



イヤ、これで画像なしはキツいですよね。たぶん。転載可能かどうかわからないので、イラストで再現しますと…


スライド1.JPG


まあこれを見てしまうと診断は簡単、ではないでしょうか。


ビシッと、いかにも人工的な境界線のある浸潤影…。


あんまり急性・炎症感の強くない症状、所見…。


診断は…


放射線肺炎でしょう。


正解:b


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2017年02月19日

教育のエンタメ化

昨日音羽病院の先生方と、本当にいろいろとお話しして、ブレストのようにいろいろなアイデアが出てきました。


その中で何度も話題になったのが、「楽しく学ぶ場にできれば」ということ。


同じやるなら楽しくワイワイやりたい。なるべく初参加の方とかのハードルを下げたい。そのためには、「楽しくできる」よう、学びをエンタメ化できないか、ということでいろいろな意見を伺いました。


昨日試みたコレ↓も、試みの一つです。これはけっこういい感じであったと思います。


聞く耳.JPG


特に学生さん、初期研修医の先生対象の会で試みていきたいですね。イヤそれ以外にも機会があればやってみたいですが…。

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posted by 長尾大志 at 19:58 | Comment(0) | 教育理念・メッセージ

2017年02月18日

洛和会音羽病院 医療関係者向け講演会『やさしイイ呼吸器教室 特別レクチャー 〜Dr.長尾の胸部X線ルネッサンス〜』

今日は午後から、洛和会音羽病院さんにて、医療関係者向け講演会『やさしイイ呼吸器教室 特別レクチャー 〜Dr.長尾の胸部X線ルネッサンス〜』をやらせていただきました。


実は音羽病院さんにおじゃまするのは初めてだったのですが、まず行ってみて驚いたのが「めっちゃ近い」ということ。こんなに近かったのに、なぜか交流がなかったのですね…。


会場がパンパンになるくらいの参加者の皆さんと、いろいろ答えて頂きながらの2時間でしたが、あっという間に時間が経ってしまいました…。


会場.JPG


いつもそうなんですが、工夫しているところ、頑張っているところをご評価いただけると大変うれしいもので、ついつい頑張ってしまいます。頑張りました。


集合.JPG


終了後いろいろとお話をさせていただきましたが、モチベーションの高い先生方とお話ししていると頭の中が活性化されて、今後の活動のヒントがたくさん出てきたように思います。今後も音羽病院さんとはいろいろと活動させていただくことになりそうです。


今回回の企画・運営をいただいた土谷先生、歓待していただきいろいろと教えていただいた長坂先生、そもそものお声がけをいただいた森川先生、そして坂口先生、味水先生はじめ呼吸器内科の先生方、本当にありがとうございました!今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

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posted by 長尾大志 at 23:41 | Comment(0) | 活動報告

2017年02月17日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・COPD4・COPDの診断その他

COPDの診断にちょっと戻りますが、喘息以外の


閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans:BO)
肺リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)


の鑑別には、胸部CTで、胸部X線写真では見つけられない、特徴的な所見を見つける(BO:呼気時のモザイクパターン、LAM:多発嚢胞)ことが必要です。


そんなわけで、COPDの診断をある程度キッチリつけようとすると、胸部CTはほしいかな、ということになります。もちろん胸部X線写真で所見がわかる、と書いた他の疾患の鑑別にもCTは有効ですし異常の検出に役立つでしょう。


それにそもそもCOPD、いや喫煙者であれば、肺癌発症のリスクがあるわけで、1度はCTをみておきたい、という事情もあります。肺機能は出来なくても胸部CTにはアクセス出来る、という施設は多いんじゃないでしょうか。


まあCTのことは置いとくとしても、いずれの疾患もまずはまれであるということ、そして、病歴からある程度想定は可能であるということも知っておいて頂きたいです。



BO―病歴から


特発性のBOはあまり報告されておらず、骨髄移植や肺移植後の合併症としての発症がよくみられますが、リウマチなどの膠原病に合併することも知られています。それ以外に、マイコプラズマやウイルスなどの感染症や有毒ガスの吸入によって生じることもありますから、そういった病歴の確認が重要です。



LAM―若年女性


好発年齢は20〜40歳代で女性に多い疾患です。若い女性の呼吸困難って、コモンなものは喘息くらいしかありません。喘息とは異なって、呼吸困難に変動性がなく進行していくような場合、自然気胸が繰り返す場合などに想起する必要があります。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2017年02月16日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・COPD4・薬物以外の治療

COPDの場合、薬剤で病態(破壊された肺胞)がよくなる、というわけではなく、高齢ゆえ併存症が様々にある、ということもあり、喘息とは違って薬物療法だけで事足りるというわけには参りません。


薬物以外の治療・管理、具体的には

  • 禁煙

  • インフルエンザ・肺炎球菌ワクチン接種

  • 感染時の適切なコントロール

  • ADL低下対策・呼吸リハビリテーション

  • 栄養療法

  • 酸素療法・換気補助療法

  • 併存症(虚血性心疾患・高血圧症・心不全・心房細動・肺高血圧症・骨粗鬆症・消化器疾患・抑うつ・気胸・肺癌など)の管理と早期発見・早期介入

  • 上記を含むトータルの患者教育


あたりとなります。無意識のうちに「高齢者一般の治療・管理」の一環としてなされている項目も多いでしょうが、今一度抜けているところなど確認頂ければと思います。


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2017年02月15日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・COPD3・ICSはCOPD増悪を抑制するのか?

COPDの薬物療法を考える上で避けては通れないのが、ICS問題です。ICSは投与すべきなのか否なのか。結論を言うと、結論は出ていません(2017年2月現在)。┐('〜`;)┌ヤレヤレ…


検討によって、「ICSで増悪抑制する」「ICSで感染、肺炎は増加する」…まあ、ICS/LABAを売りたい企業とLAMA/LABAを売りたい企業によるエビデンス合戦の様相もあったりなかったり、相反する結果が出ているようですし、ここで結論は出せません。


言えることは、「喘息の要素があったら、絶対ICSを含める」と、「COPDの要素があったら、LAMAを含める」。それ以上は、増悪が多いとか痰が多いとかであればICSを加えて経過を見て、でも肺炎に罹るようならICSを外す、みたいな、個別の対応になるのではないかと思います。歯切れよく「こう」とは言えない印象。



投与例(2017年3月現在):薬剤がいっぱいありますのでややこしいです。出来るだけシンプルにしてみます。


  • 軽症例:労作時の息切れ程度
    LAMA単剤
    LAMAが副作用(前立腺肥大・緑内障の悪化)などで使えない場合:LABA単剤
    喘息合併あればICS/LABA

  • 中等症例:上記では症状がよくなりきらない、しばしば増悪する
    LAMA/LABA、よくならなければLAMA/LABA +ICSまたはICS/LABA+LAMA
    喘息合併あればLAMA/LABA +ICSまたはICS/LABA+LAMA
    ただしICSのみの製剤はCOPDに保険適応なし

  • それ以上、さらに加えるとしたら…
    +喀痰調整薬
    +テオフィリン系

  • 痰が多い、増悪頻度が多い…
    +マクロライド系
    基本はエリスロマイシン、MACがいないことが確認出来ればクラリスロマイシンやアジスロマイシンも可だが、効果が見られなければ中止を考慮。




商品の名前は、商品名と吸入デバイス(吸入器)の名前が混在していてややこしいです。一般名も併記するとさらに混乱が増す気がするので、商品名とデバイス名のみ併記しています。まだ先発品しかありませんので…。デバイス名が同じものは同じメーカーのもので、複数種を処方する場合は、デバイスを揃える方がいいでしょう。商品名のレジスタードマークは省略しています。順番に意図はありません。何となく登場順な感じですが。


LAMA(商品名:デバイス名)

  • スピリーバ:レスピマット

  • シーブリ:ブリーズへラー

  • エクリラ:ジェヌエア

  • エンクラッセ:エリプタ



LABA

  • セレベント:ディスカス

  • オンブレス:ブリーズへラー

  • オーキシス:タービュヘイラー



LAMA/LABA

  • スピオルト:レスピマット

  • ウルティブロ:ブリーズへラー

  • アノーロ:エリプタ



ICS/LABA

  • アドエア:ディスカス・エアゾール

  • シムビコート:タービュヘイラー

  • レルベア:エリプタ



繰り返しになりますが、ICSの単剤には、COPDでの適応を持つものはありません。


なにせたくさんありますので、なんか忘れているような気も、間違えているような気もしますが…訂正すべきところがありましたら、是非ご指摘をお願い致します。m(__)m


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2017年02月14日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・COPD2

このうち、鑑別が最も問題となるのは喘息でしょう。困ったことに、しばしばCOPDと喘息は合併も見られ、COPDか、喘息か、はたまたCOPDと喘息の合併(Asthma-COPD Overlap Syndrome:ACOS)か、しばしば迷います。


診断によっては使用する薬剤も(微妙に?)異なるので、キッチリ診断をつけなくてはならないような気もしますが、ここは合理的に参りましょう。「治療」のために「診断」するのです。


使用する薬剤が微妙に異なる、診断のポイント、まず大事なのは…


「喘息(の要素がある)症例には、吸入ステロイド(ICS)を使うべし!」


これはマストです。絶対です(2017年2月現在)。喘息、あるいは喘息の要素がある場合、ICSを必ず使います。ここで、流行りのLAMA/LABAなんかを使ってはいけません。ICSなしでLABAを使うのは、禁忌と考えて頂きたいですね。


喘息の要素は、やはりその「変動性」に表れます。

  • 分単位、時間単位、あるいは日単位で悪化したりよくなったりする「変化」

  • 昼間はいいのに夜から朝方にかけて悪化する「変動」

  • 刺激のあるものやほこりの吸引、運動、感染などで起こる「発作」

  • 全く症状のない期間が存在する「寛解」

病歴にそういった要素があれば、喘息がある⇒ICSを使う、ということになります。


そしてCOPDの診断に関して言えば、


「COPD(の要素がある)症例には、LAMAを使う」


「使うべし!」とまでは申しませんが、使った方が患者さんは楽かな〜とは思います。で、COPDの要素とは…

  • 高齢、重喫煙歴

  • 症状は日常的に存在、寛解せず徐々に悪化

  • それから身体診察や胸部X線写真における過膨張所見

というところです。そういった要素があれば、LAMAを使うと。


身体診察上の過膨張、ないし過膨張に伴って生じる所見とは

  • 樽状胸郭

  • 濁音界の低下

  • 気管短縮

  • 胸鎖乳突筋の発達


あたりです。


喘息の要素、ならびにCOPDの要素が同じくらいあれば、それがいわゆるACOSという病態と考えて頂いて差し支えないと思います。その場合、使用する薬剤としてはICS、LAMAにLABAも加える、いわゆる三剤併用となるでしょう。


喘息でしたらICS+LABAで大半の症例はよくなります。


COPDの場合、高齢であるということもあって併存症が様々にありますので、薬物療法だけで事足りるというわけには参りません。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2017年02月13日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・COPD1

高齢喫煙者の呼吸器症状(咳・痰・呼吸困難)といえば、原因として最も多いのが慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)です。罹患率は人口の5%以上、慢性に呼吸器症状を呈する高齢喫煙者の半分以上がCOPDともいわれています。以前よりは認知率は上がっているようですが、まだまだ診断されることが少ないといわれているCOPD、早めの介入のためにも、早めに診断しておきたいですね。


ですが、COPDの診断にはスパイロメトリー・肺機能検査が必須、とされていて、なかなか小規模なクリニックや非専門医の先生方には診断して頂けない場面が多いように見受けます。私たちも結局二言目には「スパイロはどうですか?」ですから。1秒率や%1秒量がわからないと話が進みません。


COPDの診断基準:(COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第4版による)

  • 気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーで1秒率(FEV1/FVC)が70%未満であること

  • 他の気流閉塞をきたし得る疾患を除外すること



鑑別を要する疾患として挙げられているのが、

  • 喘息

  • びまん性汎細気管支炎、

  • 先天性副鼻腔気管支症候群

  • 閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans:BO)

  • 気管支拡張症

  • 肺結核

  • じん肺

  • 肺リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)

  • うっ血性心不全

  • 間質性肺疾患

  • 肺癌



です。このガイドラインには逃げ道がなくて、「スパイロせざるもの、診断するべからず」みたいな、原理主義的なところがあるのですね。


でも、原理主義を押し通すがゆえに、診断されるべきCOPD患者さんが未診断なままでいる、というのはいかがなものか、とも思うのです。原理原則は大事ですが、患者さんのために何をするのか、という合理主義で物事を考えたいところです。


原理主義的に申し上げると、スパイロメトリーがない、というセッティングであれば、一度は呼吸器専門医にご紹介頂き、治療指針などを定めて頂きたいところです。昨今、喘息や肺線維症の合併、鑑別、それにたくさん出てきた吸入薬の使い分け、HOT導入・設定など、専門医がお役に立てるところは少なからずあると考えます。


それでもどうしても、諸事情で気軽にはコンサルト出来ない、あるいは、離島や遠隔地のようなケースもあるでしょう。そのときに合理的にはどうすればいいか。


そこで、COPDを臨床的に診断する「妥当」な方法を考えてみましょう。それには症候からのアプローチが優れています。GOLDのウェブサイト(http://goldcopd.org/)に掲載されている『2015 Asthma, COPD and Asthma-COPD Overlap Syndrome (ACOS)』の表に基づいて考えてみます。


上にも書いたとおり、慢性に呼吸器症状を呈する高齢喫煙者の半分以上がCOPDともいわれています。すなわち、慢性に咳、痰、息切れなどがある、高齢の(少なくとも40歳以上)、喫煙者(少なくとも20本✕20年以上)であれば、COPDの可能性が高い。次に、上の「鑑別を要する疾患」を除外する必要がありますが、その多くが、胸部X線写真で何らかの特徴的な所見を有しています。


COPDはある程度の典型例・重症になると胸部X線写真で嚢胞形成や過膨張所見などが見られますが、多くの疾患とは鑑別が可能です。COPD同様に閉塞性障害が主体の、

  • 喘息

  • 閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans:BO)

  • 肺リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)



も、胸部X線写真で所見に乏しく、それだけではしばしばCOPDと鑑別が難しいです。


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2017年02月12日

教育方法改善に関するFD・SD研修会「学習活動の評価のあり方とその基準作成:ルーブリック評価を中心に」

カリキュラム説明会に引き続き、大阪市立大学大学教育研究センターの平 知宏先生によります、教育方法改善に関するFD・SD研修会「学習活動の評価のあり方とその基準作成:ルーブリック評価を中心に」が行われ、引き続き参加いたしました。


以前から「大学教育」業界系のお話では、どうやら「教員が誰であっても、クオリティが変わらないような教育システムを作る」というところに重きが置かれている印象を受けていたのですが、ルーブリックもまさにそれで、細かく採点基準を設けて、それに沿っているかどうかで点数をつける、というもの。私自身は昨年受講した「アクティブ・ラーニング」のコースでルーブリックの作成はやっていたので、まあどういうものかはわかっていましたが…改めてお話を伺って、いくつか疑問・意見がでて参りました。

  • そもそも、大学における「教育」で、「人柄」「性格」が変容することが期待できるのでしょうか。おそらく患者さんを前にした「行動」を変えることはできるでしょうが、その場合、臨床実習の現場における様々な場面におけるルーブリックを設定しておく必要があります。作成、採点、いずれもかなりの労力が必要です。
    〜個人的には、学生が「気づいていない」患者さん側の視点からの意見を学生に伝えるのは、学生の行動変容を促すのに有効ではないかと考えていて、実際に臨床実習で実践しています。

  • 仮に、大学における「教育」で、「人柄」「性格」が変容することが期待できないのであれば、「このような医師を育てる」アウトカムに沿った人材を入学時点で選抜する、アドミッションポリシーの明確化が必要でしょう。
    〜私自身は選抜に関与していませんが、選抜された結果である学生さんと相対していて、いろいろと思うところはあります。また、選抜に当たっておられる先生からもいろいろな思いを伺っています。

  • 大学の課程でやる、しかも「評価」がある以上、そこには必ず「対策」が生まれるでしょう。CBTやOSCEの例を見てもわかるように、「対策」は商業化され、システム化されていきます。こちらの意図した「行動」をとるようにルーブリックを組んでも、ルーブリック対策向けの行動しか取れなくなる。そうやって醸成された行動が、大学の期待する「アウトカム」なのかどうかは、検証する必要がありますが、そんなことが検証できるのでしょうか。
    〜そこまでやらずにルーブリックという「仏」だけ作っても、「仏つくって魂入れず」になるのではないか。お得意の「アリバイ作り」のための仕事だけやりました、ということになりはしないか、ということを危惧するのです。

  • 上の内容とかぶりますが、いい年をした大学生が「〜という行動がとれるか」ということを評価して、それができるようになることが、果たして実社会に出て社会人となる、医療人となる際に、「こうなって欲しい」人物像に近づくことと同義なのかどうか、そこはきちんと評価されるべきです。
    〜これが小学生であれば、小学生のうちに「〜という行動ができる」ことは、将来の人格形成に影響がありそうな気がしますが、いい年をした大学生、評価者に「気に入られる」行動をするぐらいは可能じゃないかと思うのですけれども。逆に考えると、それだけ今の大学生は「未熟である」という前提があるのでしょうか…。

  • 学生さんの振り返り、行動指針にルーブリックが使える、という点については同意します。

  • 個人的にはいい年をした大学生に行動変容を促すには、中身に訴えかける必要があると思っていて、「こうあってほしい」人物像に近づけるために、何をさせるか、与えるか、話すか、を突き詰めて考えることが必要ではないかと思っています。ただ、そのためには、各教員が信念を持って学生さんに相対しなければなりません。
    〜「どんな教員がやっても同じような結果が出る」今の教育システムの方向性は、なんだか以前の「みんな平等」「ゆとり教育」の教員版、にも見えてきます。どこかの施設で批判されていたように、ただ作業量を増やして「仕事をしています」というポーズをとるためのものでなく、教員の側こそが、アウトカム基盤型で教育を考えなくてはならないと思います。


「大学教育にルーブリックを取り入れる」ことに関して、現役大学生の皆さん、教員の皆さんからの異論、反論、お待ちしています。できればルーブリックというものがどんなものかをご理解いただいた上で、ご意見をお寄せください。

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posted by 長尾大志 at 14:23 | Comment(0) | 教育理念・メッセージ

2017年02月11日

医学科新カリキュラムの概要について説明会・教育方法改善に関するFD・SD研修会

昨日は医学科新カリキュラムの概要について説明会、ならびに、教育方法改善に関するFD・SD研修会があり、参加して参りました。


医学科新カリキュラムについては、これまでワーキンググループ、教授会など、ごくごく閉ざされた空間で論議されてきたとのことで、私のような末端のものには全くうかがい知ることができておりませんでした。


それで昨日初めてその全貌が一般教員に向けて明らかになったのですが、これまで旧態依然の状態であった滋賀医大のカリキュラムの根幹から手を入れて、一気に世界水準まで到達するかという期待を抱いておりました。


また、カリキュラムが新しくなるということは、全教員の教育に対する姿勢、方針の統一、そういったことをやっていくチャンスでもあるので、そちらも楽しみにしておりました。



そういう大事なことをするのに、どうして説明会が30分しかないのか。概要を説明したら終わりではないのか。ちょっと疑問であったわけですが…蓋を開けてみますと、概要の説明で終わりでした。ううむ。


そして肝心のカリキュラムの中身ですが…なんというか…私が感想を言うのも憚られる感じです。ココに書いたことが一人歩きしてもアレですし。


まあともかく、仏つくって魂入れず、にならないよう、教員が魂を入れていかなくてはならないのだろうな、ということは思いました。その話が実は引き続いて行われた「教育方法改善に関するFD・SD研修会」に続いて行くのですが、その話は明日。

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posted by 長尾大志 at 19:53 | Comment(0) | 日記

2017年02月10日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・止まらない咳35・急性〜慢性の咳で、肺炎以外、画像で見えないもの・気管支結核、気管支内の腫瘍

■ 気管支結核、気管支内の腫瘍

これはもう、忘れたときにやってくる、ぐらいのレアなケースになりますが、いずれも見落としをしたくないのは間違いありません。なんてったって、結核と腫瘍ですから。


とはいっても気管支内にあるだけで無気肺も起こしていないような病変は、なかなか単純X線写真では発見出来ず、「X線写真では異常なし」となってしまうかもしれません。でも咳の出る症例で全例胸部CT、気管支鏡、というのも現実的ではありません。


そこで、なるべく見落としを少なくするためにはどうするか。



まず、当たり前のことではありますが、これまでに挙げた「咳の鑑別」をしっかり詰めていくこと。ここが疎か、あるいは雑になってしまうと、非典型的な部分が多々あるのに「まあ喘息だろう」「まあGERDかな」と思考がストップしてしまいます。


ですから、最初に診断をつけてそれで終わり、ではなく、経過、治療反応性も含めて診断の見直し、振り返りをすることも重要です。


喘息と思って治療していたけれども、ビシッとよくならない、しばしば遭遇するケースですが、後鼻漏やGERD、COPDの合併なんかはよくあることです。それらの治療を併用することでよくなることもある。でもでも…考えられる治療を全部やってもやっぱりよくならない、そんなときには、今一度精査が必要なのかもしれません。


そこで比較的ハードルが低いのは、「痰を採る」こと。痰が出るケースでは、やはり積極的に検査をして頂きたい。細菌、抗酸菌の存在、好酸球や好中球のの増多、悪性細胞の検出などなど、得られる情報は意外に多くあるものです。


肺機能(スパイロメトリー)も、出来ない施設では仕方がありませんが、出来るのであれば得られる情報は多く、有用です。閉塞性障害だけでなく、上気道の狭窄もフローボリューム曲線が特徴的なパターンになるのでわかります。


健常者であれば、フローボリューム曲線は図のようになりますが…


スライド41.JPG


上気道が狭窄していると、その部分で呼出流速が頭打ちになるため、曲線もある速度以上が出ずに頭打ちになる、そういう曲線になります。このパターンを見れば、「上気道狭窄がある」ことがわかり、CTや気管支鏡などを行う根拠になります。


スライド42.JPG


もちろん検査だけでなくて、診察上も、中枢付近で吸気に連続性の雑音を聴取したら肺の外、上気道の狭窄があることがわかりますから、その場合にはさらなる精査を行います。


まあでも、検査や診察ではわからない、悩ましいケースも多いのです。やはり、症状が治ってしまわない、治療がうまくいかない場面では、一度はCTあたりまで、ということになるのかもしれません。


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2017年02月09日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・止まらない咳34・急性〜慢性の咳で、肺炎以外、画像で見えないもの・胃食道逆流症

慢性の咳の原因として胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)が話題に上がるようになったのは、私が医師になってしばらくした頃だったかと記憶しています。


その後、喘息に合併して難治化するとか、そもそも喘息発症の原因になるとか、喘息に関わった報告が多数見られるようになり、2005年の『含嗽に関するガイドライン』で取り上げられたことで、咳の原因としても広く知られるに至った印象です。



診断するにはまずは疑うことが大事です。典型的には『含嗽に関するガイドライン 第2版』に診断基準として挙げられているのは、以下のような症状です。

  • 食道の逆流症状:胸焼け、食後胃重感、おくび(ゲップ)、呑酸(酸っぱいものが上がってくる感覚)、喉頭違和感

  • 喉咽頭の逆流症状:咳払い、喉頭痛(喉がイガイガ)、嗄声

  • 前屈位、会話、食事で増強する咳。



上記のような症候を呈する、他の原因に使われる薬(気管支拡張薬、吸入ステロイド薬、抗アレルギー薬)が無効な咳に、PPIを試験投与して効果があれば診断可能…とされてはいますが、上記のような特徴的症状を呈しない症例も、決して少なくはないともいわれています。


咳払いや、喉がイガイガといった症状は、後鼻漏にも似た症状がありますし、必ずしも特異性の高い症状ではないのも困ったところです。そこで、咳の出る場面(前屈位、会話、刺激物や脂っこい食事)、咳が軽減する場面(立位、飴、飲水)が手がかりになることもあります。「胸焼けはないですか〜」で終わるのではなく、丹念に症状を確認することで診断に至ることも経験されますから。



また、頑固な咳や難治性の喘息症例では、GERDがしばしば合併している、ともいわれていますので、そういう場合、あまり典型的症状がなくても、(GERDの合併を想定して)一度はPPIを試験投与してみる、というケースがあるかもしれません。


GERDにPPI、というのはいいのですが、必ずしもビシッと?効くわけではありません。2週間ぐらいで効くこともあれば、2〜3ヶ月かかることもあり、判断には時間がかかるのです。


PPIだけでなく、リスクとなるような生活習慣(肥満、喫煙、飲酒、激しい運動、カフェイン、チョコレート、脂っこい食事、炭酸、柑橘類、トマト製品など)を避ける、ということも有効なことがあります。(Chronic cough due to gastroesophageal reflux disease: ACCP evidence-based clinical practice guidelines. Irwin RS. Chest. 2006 Jan;129(1 Suppl):80S-94S. Review.)


逆にいうと、PPIの投与だけでなく、生活習慣にも介入することで、診断、治療の質が向上する可能性があるわけです。他に、薬剤でも降圧薬として頻用されているCa拮抗薬をはじめ、硝酸薬、抗ヒスタミン薬、三環系抗うつ薬などは下部食道括約筋を弛緩させ、GERDを悪化させるといわれていますから、注意が必要です。


胸焼け=GERD=PPI=すぐに効く、というだけではないことを知っておきましょう。


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