2017年03月31日

大動脈弓を追う

気管の左隣にリンパ節腫脹などが見えてくると、どんな風に見えるでしょうか。


元々気管の左隣に存在するのは、大動脈弓という大きな構造物です。で、大動脈弓の上には、大動脈から分岐した3本の動脈があるのですが、椎骨と重なったりしていることで、それほど存在感はありません。まあそれでも、確かに存在はしているのですが。


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のように、大動脈弓のてっぺんあたりまで、線が見えるのが通常です。


大動脈周囲のリンパ節腫脹があったりすると、こんな風に…


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気管の左、大動脈弓の上あたりが妙に白く見えて、大動脈の線も見えなくなります。大動脈弓とシルエットサイン陽性の陰影が気管の左側に見られる、ということです。

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posted by 長尾大志 at 16:54 | Comment(0) | 胸部X線写真で、ここまでわかる

2017年03月30日

傍気管線を認識する

手術歴とかがありますと、気管周りは見えにくくなりますから、あくまで参考ではあります。また、上大静脈が気管の右隣に、紛らわしく見えることもあります。


また、気管のあたりが何かおかしいな…と感じたときには、「傍気管線」も使えることがあります。


ただし傍気管線も、正常でもハッキリ認識出来ないことがありまして、認識出来ない=異常、とは言い切れません。


例えば、以前の写真では見えていたのに見えなくなった、とか、先に挙げた気管周りの異常と共存している、とかになりますと、積極的に異常を疑っていくことになるでしょう。



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posted by 長尾大志 at 19:10 | Comment(0) | 胸部X線写真で、ここまでわかる

2017年03月29日

気管の横に白い部分があるか

正常では、気管の右隣には、あまりこれといって構造物はありませんでしたね。上大静脈は気管より前にあって、接してはいません。


左隣は、大動脈弓と、それに続く下行大動脈、上方には、大動脈から分岐する3つの動脈があります。


ですから、気管の右隣に病変が生じてくると、右横に白い部分ができてくることになりますし、左隣に病変ができると、大動脈の周囲に白い部分が増えてくることになる。


昨日述べた「気管が追いにくい」所見と組み合わせることで、「なんかこの辺がおかしい」と目星をつける根拠になります。


例えば、昨日の症例だと…


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正常では肺しか診られないこのあたりが、なんか白くなっている。ここに何かあるのではないか。


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CTを撮ると、気管の右隣〜前面にかけてリンパ節があります。こいつが、

  • 気管の走行を見えにくくして、かつ

  • 気管の横の白い部分を形成している、ということになります。

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posted by 長尾大志 at 21:28 | Comment(0) | 胸部X線写真で、ここまでわかる

2017年03月28日

ハッキリと気管が追えるか

ニュアンスとしてお伝えするのが難しいのですが、見慣れてくると、気管〜気管分岐部〜主気管支あたりをハッキリ追えるかどうか、わかるようになってきます。


通常だと、


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のように、スッスッと分岐のところが追えるのですが…。


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こちら、何か追いにくくないでしょうか。ハッキリしない、といいますか。


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たぶん、こんな感じなんでしょうけど、追いにくいのです。このような場合、気管に重なって、リンパ節など腫瘤が存在している可能性があります。

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posted by 長尾大志 at 18:33 | Comment(0) | 胸部X線写真で、ここまでわかる

2017年03月27日

縦隔内にある構造物は、気管、食道や血管・心臓

縦隔内にある構造物は、気管、食道、血管、それに心臓です。それ以外に存在するのは、それら大きな構造物の間にある結合組織や脂肪組織と、幾ばくかのリンパ節といったところです。


で、正常の胸部X線写真や胸部CTで見えるのは、気管、食道、血管、それに心臓だけと考えてOKです。


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ほぼ正常症例のCT像。目印となる大動脈弓でのスライス(下)と、その少し上のスライス(上)です。

@上大静脈
A大動脈弓
B気管
C右腕頭静脈
D(右)腕頭動脈
E左腕頭静脈
F左総頸動脈
G左鎖骨下動脈
H食道


リンパ節もたくさんありますが、通常は見える大きさではありません。それが、肺癌や感染症その他の疾患で、リンパ節腫脹を来すと、そのリンパ節が目に見えるカタマリとして認識出来るようになります。もちろんCTの方が感度は高いのですが、胸部X線写真でも結構見えるものなのです。

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posted by 長尾大志 at 19:52 | Comment(0) | 胸部X線写真で、ここまでわかる

2017年03月26日

21世紀 適々斎塾に参加させていただきました。

昨日と今日は、21世紀 適々斎塾に参加させていただきました。こちらは、総合診療、臨床推論をケーススタディーなどを通してベテランの先生方と学生さんやレジデント、若手の先生方が一緒に学ぶ場なのです。普段はビジター参加はなかなか困難なのですが、今回特別にビジター参加が叶いましたので、この機会を逃すわけにはいかない、と、2日間みっちり勉強させていただきました。


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会場は、あべのハルカスのご近所、大阪市立大学でした。まあ都会ですね!滋賀医大ののどかさが実感されます。


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今回の講演は、中西内科 中西重清先生の「黙って座ればぴたりと当たる」からスタート。60もの症例の診察動画を見せていただきました。この臨場感!医学生さんに是非見ていただきたい。


続いてJCHO本部顧問 徳田安春先生による、心音聴診と、雑音発生の機序。これは面白い。やはり機序がわかると、理解が深まります。今年のOSCEまで覚えている自信はありませんが、こういうことがスッと言えると、学生さんの興味がわくだろうな…。


これが昨日。昨日は帰宅して、振り返りをしていたらブログの更新をすっかり忘れていました。失礼いたしました。


今日は午前中、再びJCHO本部顧問 徳田安春先生によります、症例検討。ああ、こうやって進めるといいのか…と、大いに参考に。


昼食休憩を挟んで、獨協大学 志水太郎先生の「診断戦略」のお話。名著「診断戦略」の解説をしていただきました。発売の頃に読んではおりましたが、理解が深まり、志水先生の目指しておられるところが何となくわかった気がします。


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そして最後はいたがねファミリークリニック 板金 広先生が症例提示をされてのDr.G形式「症例検討2題」。学生チーム、研修医チーム、若手医師チームとベテラン医チームに分かれての検討は、なるほど盛り上がりました。


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4月からのポリクリ改めクリクラに向けて、モチベーションが大いに刺激され、いろいろな考えがまとまったような気がする2日間でした。塾長の中西先生、今回参加の段取りを頂いた板金先生、ご指導いただいた先生方、本当にありがとうございました!

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posted by 長尾大志 at 21:03 | Comment(0) | 活動報告

2017年03月24日

縦隔とは

縦隔、とは、左右の肺の間にあるスペースのことです。あたかも家(特にマンションやアパートなど)にある「パイプスペース」のごとく、中を管(気管、食道や血管・心臓)が通っています。臓器でも、構造物でもないただの空間ですから、圧されたり、引っ張られたりすると、容易に動きます。


(解剖の教科書参照)


特に上の方にある、気管〜気管分岐、食道や大血管などは、圧されたり引っ張られたりする病変を見つけるのに便利です。気管周りを見るときに知っておきたい構造物とその見え方を確認しておきましょう。


気管〜気管分岐部〜左右の主気管支、上大静脈〜右房、大動脈弓あたりは、胸部X線写真ではこのように見えます。


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気管は空気の棒みたいな黒い帯状の構造物として見えます。声帯狭窄部からほぼ正中を走り、気管分岐部で左右に分かれます。右主気管支はごく短いですが、左主気管支は結構長く、よく見えることが多いです。


上大静脈は鎖骨のあたりから見えるようになり、下に降りてそのまま右房(右2弓)に移行します。


上行大動脈は角度の関係で正面写真では見えません。大動脈弓〜下行大動脈はハッキリと見え、横隔膜を越えると見えなくなります。


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大動脈の高さでのスライスでは、上大静脈(橙)、大動脈弓(赤)は前から見たときに接線を形成しますから、正面像で線として認識出来るのです。


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鎖骨の高さになってくると、上大静脈も、大動脈から分岐した太い動脈(総頸動脈、鎖骨下動脈、腕頭動脈)も接線をなさないことが多く、正面像で線はあまり認識出来ません。


上大静脈の見え方には個人差があり、線がほとんど認識されないケースもしばしばあります。


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この症例では、気管の右側に線があるようなないような…。


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CTで見ると、上大静脈の接線が椎骨と重なっている…それで目立たない模様です。


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この症例はどうでしょう。上大静脈の線、見えるような、見えないような…。


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CTだとしっかり接線があるように見えるのですが、こんな感じで、正面像だとごく薄くしか見えないこともあるのです。

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posted by 長尾大志 at 18:18 | Comment(0) | 胸部X線写真で、ここまでわかる

2017年03月23日

気管の動きを見るときのポイント

圧す病変、引っ張る病変がなくても気管や縦隔が偏って見えることがあります。例えばそもそも正面から撮られていない(ポータブル写真などに多い)、側彎がある、亀背・円背があるなど、いろいろな理由で気管の位置がずれて見えるのです。


ですから、気管の偏位にも意味のあるものとないものがあることになります。何らかの病変が気管の近傍に存在して、かつ気管が動いている場合には、その動きには意味がある。でも、気管近くに何も病変らしきものがなければ、その動きはあまり意味を持たない。


そこで、気管の偏位を認めたら、まずは撮影条件(ポータブルかどうか)、正面性を確認します。正面から撮られていなければ、気管の位置はあまり気にしなくていいでしょう。


そして気管の偏位を起こしうる原因となる陰影、ないし病歴を探しましょう。具体的には、気管の近くに何らかの陰影があるかどうか。それから、容量の変化を反映して、横隔膜が挙上、あるいは低下しているかどうか。あとは胸部(肺・心臓・食道など)の手術歴があるかどうか。


原因となる陰影、病歴がない「気管の偏位」には、診断的価値はあまりありませんので、時間が限られているカンファレンスなどでは、あえて所見として挙げないこともあります。

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posted by 長尾大志 at 18:16 | Comment(0) | 胸部X線写真で、ここまでわかる

2017年03月22日

オッカムの剃刀

オッカムの剃刀、ご存じの方も多いと思いますが、患者さんに起こっている症状・所見が一元的に説明出来るような鑑別診断を考える、というやり方です。


これに対してヒッカムの格言、という、考え方があります。どの症例においても偶然に複数の疾患に罹患しうるため、症状に対して複数の原因を探すべきだ、という考えです。


通常の疾病は、ある一定の確率で起こるとすると、その疾病が合併する確率は


罹患率✕罹患率…


となりますから、単発の場合よりもずいぶん可能性が低くなるので、まずは単一の疾患で考えていこう、というのが臨床推論におけるオッカムの剃刀の根拠だと思います。


ただ、いろいろな症例を経験すると、ヒッカムの格言が当てはまるケースも経験されるわけで、実際臨床の現場では、オッカム、ヒッカム、どちらも考えるべきなのです。


高齢者では併存疾患が多い。高齢というだけで、いろいろな疾病の発症リスクが高まる。

それ以外に、

  • 糖尿病症例

  • COPD症例

  • AIDS/HIV感染症症例などなど…


他にも様々な、「合併症を起こしやすい」病態がありますから。


じゃあどうして、ここであえてオッカムの剃刀を持ちだしたか。それは、胸部画像の読影をする上で「楽しくて、勉強になる」からです。


画像で見られるいくつかの所見を整理・統合して一つの疾患を考える、という作業は、各疾患で見られる所見をまとめて振り返る機会になるとともに、謎解きの要素が多分にあり、知的好奇心が刺激されます。また、ビシッと筋の通った読影ができたときにはとっても気持ちよい。


もちろん見える所見の各々を説明出来る鑑別診断をたくさん挙げる、ということも必要ですが、まずは、見られる所見のすべてが1つの疾患で説明出来るかどうかを考えてみる。ちょっと意識してやってみましょう。

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posted by 長尾大志 at 14:45 | Comment(0) | 胸部X線写真で、ここまでわかる

2017年03月21日

胸部画像読影のコツ1

非専門医の先生方の診療について、いろいろと込み入ってきましたので、ここらで小休止を入れまして、少し胸部X線写真やCTのことについて、最近ご質問を受けたことを中心にまとめていきたいと思います。



石灰化像

■ 胸膜班

胸膜面に沿って拡がる、大変輝度の高い石灰化病変(の痕)です。結核性胸膜炎の痕と、アスベスト吸入による胸膜斑(プラーク、plaque)とが原因の多くを占めます。厳密には、結核とアスベストでは石灰化の起こる場所が違うそうで、アスベストによる胸膜斑は血流のある壁側胸膜にできるといわれています。


CT像を模式図で書くとこんな感じですね。石灰化は縦隔条件でよくわかります。


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胸壁近くの胸膜が肥厚しています。肥厚した胸膜の、肺に近い方ではなくて胸壁に近い方(壁側胸膜)が石灰化のために白く見えるのです。実際のCTではこんな感じ。


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肥厚した胸膜の胸壁に近い方が、石灰化のために白く見えていますね。


この場所では結構X線が吸収されますから、胸部X線写真では高濃度に(白く)見えます。前から見ると結構広がりを持った、濃い陰影に見え、接線方向では、かなり濃い線として認識されます。こんな感じです。


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拡がっている胸膜斑を前から見ると赤丸のように見え、横隔膜に沿った石灰化を接線方向から見たものが、赤矢印のように線として見えるのです。CTで見ると横隔膜に沿った石灰化はこんな風に見えます。


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posted by 長尾大志 at 18:24 | Comment(0) | 胸部X線写真で、ここまでわかる

2017年03月20日

束の間の春休み

5年生の臨床実習が金曜日で終わり、大学も春休み体制となりました。ポリクリという名の臨床実習は今年度まで、来年度、つまり4月からはクリニカル・クラークシップ(クリクラ)という名前になります。例のカリキュラム改革の一環として、臨床実習にも改革のメスが入る…はずではありますが、今のところ何も変わろうとはしていないように見えます。


3月の終わりにクリクラのためのワーキングみたいなもの(第2回)がありますが、どう考えても4月には間に合いそうにないです。


なんか資料みたいなものも回ってきましたが、あくまで資料であり、全学で臨床実習の方向性をそろえていこう、というものではありません。より学生医師を医師らしく扱う、ということで、そういった時間割を作成せよ、とか、評価を改革する、ということでルーブリックを評価に使う、であるとか出てきていますが、結局、スタート地点である「学生の教育を全学でどのような理念でやっていくのか」の議論がなくて、ただ「国際基準」の要求する「項目」を取りそろえました、というだけにとどまっているように見えるのが何ともかんとも。


例えばルーブリックに基づいて採点をしても、その結果はものすごく大雑把にしか反映されない。正直、現カリキュラムにおいて、ウチの5回生はかなり「ぬるい」環境にいると思いますけど、それを締めようと思えば、進級に関わってくるポイントを設けることになる。そこまで思い切れるかどうかは、このワーキングが決めるものではないのです。


…それはワーキングよりもっと上の委員会が決めることのようですが、今年の医師国家試験の結果を踏まえれば、もはや改革待ったなし、という状況です。あまり書きすぎる前に自重しなくては。



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posted by 長尾大志 at 21:43 | Comment(0) | 日記

2017年03月19日

今後の予定告知、4月〜7月 いろいろ決まって参りました。

■ 福井県内科医会学術講演会
『呼吸器科領域疾患の聴診・打診による診断、そして治療』

平成29年4月8日(土) 17:30〜
福井県医師会館にて


呼吸器症状を訴える症例を外来で診療する上での、病歴から聴診・打診の使い方、そして投薬までの概要をお伝え出来れば。どこまでお伝え出来るか…。



■ メディカ出版 看護セミナー
『急性期・術後の呼吸器ケア』

http://www.medica.co.jp/seminar/detail/131
神戸 2017年06月10日(土) 神戸クリスタルタワー 3階クリスタルホール
東京 2017年06月24日(土) 損保会館 2階大会議室


血ガスの数字を読む・人工呼吸のアラームに対処する・ハイフローシステムの理屈を知る・
経鼻カニュラとマスクの理屈を知る・NPPVの理屈と適応を理解する・
チェストドレーンバックの観察と対応…


以前のセミナーより、内容を少し深くし、最後に実際の現場で起こりそうなことを考えて頂く時間を設けました。より実践的な内容をお持ち帰り頂けると思います。



■ 産業医科大学 呼吸器講演会
平成29年6月1日(木)

若い先生方による喘息や間質性肺炎などのお話の後ですので、やはり疾患のお話よりは、病歴とかのお話の方がいいかなあ、と考え中。



■ 洛和会音羽病院 医療関係者向け講演会『やさしイイ呼吸器教室 特別レクチャー第2回 〜Dr.長尾のERで役立つ胸部X線『とか』レクチャー〜』
平成29年6月3日(土)

洛和会音羽病院さんでの2回目は、研修医の皆さんが慣れてきた頃に、というリクエストで、ERで役立つ胸部X線『とか』についてのレクチャーです。ERで役立つのは、胸部X線写真だけじゃないですよね…。



■ 岡崎市医師会学術講演会
平成29年6月16日(金)

呼吸器症状から診断に至る、検査の使い方や処方など、診療の道筋をお話することになりそうです。



■ 西伊豆病院勉強会
平成29年7月15日(土)〜7月16日(日)

総合診療畑の先生方には有名な、西伊豆健育会病院さんでの2日間にわたる勉強会にお招き頂きました。仲田院長先生、救急の坂本先生とまたご一緒出来る、これは楽しみでしかないです。

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posted by 長尾大志 at 23:22 | Comment(0) | 活動報告

2017年03月18日

今後の予定告知、2017年4月・奈良県西和医療センターにて

平成29年4月7日(金)、世界のキタカズこと、奈良の北和也先生よりお招きを頂きまして、奈良県西和医療センターでの院内勉強会でお話をさせていただくことになりました。


奈良県西和医療センターのジュニア・シニアレジデントの先生方を中心に、3本立てでお話をさせていただきます。声が持つかな…?


ようやく準備ができましたので、内容を少しご紹介できます。



■ 奈良県西和医療センターにて 平成29年4月7日(金)15時〜


1.「呼吸器問診と鑑別診断」

ジュニア・シニアレジデントの先生方を中心に、呼吸器症状からの鑑別診断のたて方〜身体診察や検査の選択などについて、先生方の知識、スキルの棚卸しをさせて頂こうかな、と思っております。


2.「間質性肺炎の取り扱い」

非専門医の先生方が多いと伺っておりますので、「間質性肺炎の取り扱い」にはお困りではないかと。診断〜治療の進め方を再確認していただければと思います。


3.「肺結核のお話」

全職種、職員さん向けの講演、という体ですが、時々やってくる肺結核を不必要に恐れることなく、正しく取り扱っていただくための基礎知識をご紹介します。



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posted by 長尾大志 at 11:49 | Comment(0) | 活動報告

2017年03月17日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・薬剤による咳

■ 薬剤性咳嗽

薬を飲み始めたら咳が出た、という病歴があれば、当然薬剤による咳嗽が鑑別に挙がります。患者さんが気付かれていないこともありますから、正しい病歴聴取が本当に大切です。


「咳嗽」の副作用があるので有名な薬剤はACE阻害薬ですね。ものによりますが、頻度は10〜30%程度と、結構高い。ただし最近では、同じような作用でも咳が出ない、ARBに取って代わられ、「ACE阻害薬による咳」自体を見かけることが少なくなりました。


ACE阻害薬による咳ほど多くなくても、咳が出るような副作用としては、薬剤性間質性肺炎や肺胞出血、それにアスピリン喘息が挙げられます。


それぞれ病態に特徴はあり、診断には画像をはじめ各種検査がひつようではありますが、とにもかくにも薬剤の副作用情報、薬剤を使用しはじめたタイミング、それに咳が出だしたタイミングが重要であることは強調しておきたいと思います。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2017年03月16日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・誤嚥による咳

ドレーンについて、一段落つきました。咳の鑑別に戻ります。


■ 誤嚥

誤嚥性肺炎ではなく、誤嚥によるむせ・咳、こちらは高齢化によって増えてきている印象です。こういう咳に、気軽に?安易に?咳止めを投与するとどうなるか…咳反射を減弱させ、誤嚥性肺炎への道を進むことになります。

高齢者、脳血管障害の既往がある患者さんの、
食事中、食後の咳、痰(の絡んだ感じ)。

という訴えでは、誤嚥の要素を疑う必要があります。もちろん症状だけで決めつけることはできませんし、他の疾患が併存する可能性もあり、胸部X線写真も確認をしておきたいところですが、少なくともそういう訴えのある方に、「咳止め(中枢性鎮咳薬)」を処方するのは避けたいものです。


一般的によく使われる「咳止め」は咳中枢の感度を鈍らせて咳を止めるものですから、誤嚥がある場合には咳の感度が鈍ることで悪化の危険性があるのですね。まずは、高齢者には禁忌、と考えて頂いてもいいと思います。


そういう、不顕性の誤嚥、初期は食後以外には出ませんが、進行してくるとしょっちゅう咳き込む、むせる。逆に咳が出なくなったら、反射がなくなってきた…ということかもしれません。


初期の?誤嚥による咳に対して、漢方薬の半夏厚朴湯は効果的なことが多いです。


半夏厚朴湯 7.5g 分3間



咳を止める、ということではなくて、誤嚥性肺炎の予防として使われるものは、有名どころで言うとACE阻害薬があります。空咳が出る、という副作用を逆用して、咳を出させることで誤嚥した物質が肺内に入ることを防止する、ということです。ですから咳は増えます…。


それ以外に、パーキンソン症候群などでも用いられるアマンタジンは、ドーパミン合成能の促進作用があり、咳反射の低下を改善するといわれていますが、パーキンソンの治療としても中途半端ですし、少し使いにくい面があるように思います。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2017年03月15日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・これでよかった?胸腔ドレナージ学び直し8・癌性胸水に用いる薬剤と手順

■ タルク(ユニタルクレジスタードマーク

タルクは使用量が多いとARDSが発症した、ということで、保険の縛りがありますが、成功率はまあいいようです。


(添付文書より)

<効能・効果>

悪性胸水の再貯留抑制

《効能・効果に関連する使用上の注意》
本剤は悪性胸水の再貯留抑制のために使用し、腹水の減少を目的として本剤を使用しないこと。

<用法・用量>

通常、成人には、本剤(4g/バイアル)を日局生理食塩液50mLで懸濁して、胸膜腔内に注入する。


タルク投与でまれに発現することが知られているARDSは、10g以上の投与で発現率が高いとされています。安全性を考慮し、5gを超えるタルクの投与は避けるべきとの報告があることから、追加投与や両側胸腔への投与など、総投与量が5gを超えるような投与法については認められていません。

(添付文書よりの引用ここまで)


それ以外にも選択基準、除外基準、いくつかの注意点がありますので、実際に使う場合には、「ユニタルクレジスタードマーク適正使用ガイド」を参照して下さい。
http://nobelpark.jp/product/unitalc/unitalc_gm.pdf



■ ピシバニールレジスタードマーク

元々抗癌剤として開発された薬剤ですが、今や抗癌剤としてはオワコン?で、その炎症惹起性を利用した癒着剤としてのみ使われています。


他の一般的な薬剤と異なり、KEという単位を使いますが、5KE〜10KEを生食100mLなどに溶かして使います。他の薬剤同様ドレナージチューブから注入し、クランプ〜体位変換の後吸引、という手順です。



癒着術の手順は、気胸のときとほぼ同じですが、とにかく大事なことは、「肺がきちんと再膨張して、壁側胸膜と臓側胸膜がピッタリ接触している状態でやる」ということでしょう。胸水が残っていて、胸膜が離れている状態で薬剤を入れても、糊付け効果は期待しにくいですから、胸水が抜けてしまってからやる方がいいでしょう。


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「ドレーンから胸水が出なくなるまで待つのですか?」とよく尋ねられますが、特に癌性胸水だと毎日相当量の胸水が出続けていることは多いです。胸水の産生はあっても、肺が再膨張さえしていれば、癒着術は試みるべきです。また、既に胸膜播種病変によって臓側胸膜がカチカチになり、完全には再膨張が得られない、というケースでも、一部でもくっつけば…ということで行われることもあります。


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@ 1%キシロカイン10〜20mLをドレナージチューブから胸腔に注入します。


A 薬剤(タルクレジスタードマーク、ピシバニールレジスタードマーク、ミノマイシンレジスタードマークなど)+生理食塩水50〜100mLを点滴ラインにつなぎ、ドレナージチューブから胸腔に注入します。


B チューブのクランプを行い、2時間待ちます。


C その間体位変換(仰臥位〜右下側臥位〜腹臥位〜左下側臥位、のように4方向で1時間)を行います。


D 2時間経過したら、クランプを解除し−15〜20cmH2Oで吸引を開始します。チューブの閉塞がしばしば起こりますので、肺の虚脱がないか、適宜確認します。チューブが閉塞したら肺の虚脱がないか、胸部X線写真で確認します。


E 排液量が1日150〜200mLになったらドレナージチューブを抜去します。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2017年03月14日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・これでよかった?胸腔ドレナージ学び直し7・癌性胸水の場合

癌性胸膜炎から癌性胸水が生じてきた場合、胸膜にできた播種病変を縮小させる方法は全身化学療法しかありません。しかしながら、分子標的療法や小細胞肺癌など、一部の化学療法を除いては、胸膜播種病変に対して効果を期待するのは難しい。


そうすると胸水はどんどん増えてきます。そしてだんだん肺を圧迫して虚脱させ、低酸素や呼吸困難を来したり、アルブミンが胸腔内に漏れ漏れになることで倦怠感や悪液質の原因になったりします。


そこで、全身化学療法でコントロールの難しい癌性胸水に対しては、ドレナージを挿入して胸水を排液し、その後胸膜癒着術を施行されることが多いです。


胸膜癒着術は、胸膜を癒着させるということで、壁側胸膜と臓側胸膜を物理的にくっつけることです。よく「糊付け」に例えられますが、実際に使うのは糊というよりも、刺激性・炎症を起こすような薬剤です。悪性胸水に適応のあるタルク、ピシバニールがよく使われますが、テトラサイクリン系抗菌薬を併用したりもします。


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呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2017年03月13日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・これでよかった?胸腔ドレナージ学び直し6・胸水貯留の場合

胸水が貯留した、そういう場面でもドレナージを行います。


胸水は常に産生され、吸収されています。諸説あるようですが、胸水は壁側胸膜の毛細血管由来で、胸腔を通過して壁側ないし臓側胸膜にて吸収されます。その量は数十〜数百mLといわれています。


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胸水の産生が増加した、または吸収が少なくなった、ということで胸水(の異常に多い量の)貯留が起こります。元々健常者でも5〜10mLは貯留しているわけですから、あえて「貯留」というのは、それよりもずいぶん多くて、胸部X線写真やエコーなどで画像的に確認出来る状態のことをいいます。


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胸水でも、心不全や低アルブミンなど、圧力によって滲みだしてくる漏出性胸水は、その圧力を軽減させる治療を優先し、ドレナージは通常行いません。


一方、癌や感染症、結核などの病変があって血管透過性が亢進して出てくる滲出性胸水、特に内科的?(投薬による)治療で改善が期待出来ないような病態ではドレナージを施行します。


細菌性肺炎に随伴する胸水でも、素直な(膿胸のように固まる傾向のない)ものであれば抗菌薬投与で治癒が期待出来ます。また、結核性胸膜炎でも、抗結核薬のみで治ることが多い。こういうものでは必ずしもドレナージ、とはなりません。


感染症でしたら、やはり膿胸。膿胸では抗菌薬の効果が期待しにくく、ドレナージなしでは治療になりません。


肉眼的に胸水が膿性である、とか、pH<7.2、とか、画像で隔壁が見える、ということになりますと、早急にドレナージが必要でしょう。ボヤボヤしているとすぐに隔壁がカチカチになって部屋がたくさん出来てしまい、ドレナージしても部分的にしか水が抜けない、ということになります。


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ドレナージでうまく胸水が抜けない、固まりつつある状態では、胸腔鏡によってフィブリンの膜(壁)を掻爬・洗浄する治療が必要になります。胸腔鏡が出来ない、施設に呼吸器(の手術が出来る)外科医がいない、リスクなど患者さんの状況によってはストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、t-PAといった線維素溶解薬を注入します。


(例)ウロキナーゼ12万単位+生理食塩水100mL 1日1回 3日間

点滴ラインにつないで全開で注入後、2時間程度クランプ、その後開放。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2017年03月12日

びわこ闘魂外来素案

昨日は闘魂外来・闘魂祭@草津総合病院、として、滋賀県ではじめて闘魂外来が行われる、ということで、臨床研修を少しでも改善させることは出来ないか、ヒントを頂きに行って参りました。


闘魂外来は、ご存じの方はご存じと思いますが、かの徳田安春先生をはじめとして総合診療領域で全国的に有名な先生方が全国で続けておられる、学生さんの学びの場。意識の高い学生さんが集まってこられます。


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どんな感じでされているのか、お話だけは伝え聞いておりましたが、やはり百聞は一見にしかず、参加してたくさんの発見がありました。


もちろん昨日の参加者の皆さんは勉強意欲の高い学生さんが多かったわけですが、やりようによっては、大学で展開し、すべての学生さんに学んでもらうことは問題なく出来そうです。以下、備忘のため、今日の学び、考えたこと、参加されていた先生方とお話ししていて気付いたこと、教えて頂いたことなどをごちゃ混ぜに記しておきたいと思います。



・初診外来は学びの宝庫。


・やってみさせる、に勝る教育はない。全部やらせることに意味がある。そして行った医療行為の根拠を学習させると学びが深まる。


・実は今滋賀医大の呼吸器内科でやっている臨床実習は、途中まで闘魂外来であった。処方までさせるのはどうかと思っていたが、教員次第で処方も可能である。


・屋根瓦式、では研修医にも学びが多い。研修医の教育も同時に行うことが可能である。


・運営する教員のスキルがかなり重要。形だけの『指導医講習会』より、1回の闘魂外来参加が望ましい。


・これが臨床実習で成立するためには、4年生までに臨床推論の学びを終わらせておく必要がある。ということは例えば滋賀医大だと、カリキュラムの全面見直しが必要だろう。たぶん現状のカリキュラムでは学生に1からすべてやらせるのは無理がありそう。


・逆に、1年、2年でも1度でもこういう場を経験しておくと、勉強のモチベーションを保てるであろう。どんどんアーリーエクスポージャーをやるべきだが、そのシステム作りが大変重要。カリキュラムを作る側は、相当の覚悟をもってカリキュラムを作成するべき。


・M先生の曰く「滋賀医は関西の、イヤ日本の医学部を見渡しても教育熱心なスタッフが揃っている。」たいへん励みになるお言葉を頂きました。


・このような「教育効果抜群の外来」は、学生さんや研修医にとっては魅力的な勉強の場となる。例えば研修医のリクルートには大変有効であろう。


・しかしながら、忙しい、患者さんをたくさん診なくてはならない外来では成り立たない。1症例あたり1〜2時間必要である。従前の外来をこなしながらやるのは不可能。外来医に加えて、教育専用教員を配置する必要がある。4月から滋賀医大に出来るという「教育医長」は、その役割を担えるのか。たぶん無理。


・大学で行うのは、科の間の壁が結構問題になりそう。手っ取り早くは科の中で臨床実習を置き換えることだが、厚生労働省、あるいは世間の求める「総合力」を培うには、科の壁を越えた体制作りが必要であろう。


・また、大学だと症例の偏りなどが問題となる。そういう意味では一般病院で、ある程度教員に余裕があり、教育に理解のあるところ。症例の豊富なところに、大学教員を派遣して行うのが現実的かもしれない。


・ということで、滋賀医大の関連でいうと、東近江総合医療センターやJCHO滋賀病院が候補になるだろう。総合内科外来に週1回でも教育専用教員の配置、学びカンファレンス開催などを行えば、魅力的な学びの場が出来るような気がする。


今回講師をお勤め頂いた徳田先生、平島先生、松本先生、北先生、主催頂いた草津総合病院の島田先生、スタッフの皆様方、ご参加の松下先生や西澤先生、そして今回闘魂外来の企画運営をして下さった山本さん、お世話になり本当にありがとうございました!今後ともよろしくお願い申し上げます。



楽しそうな闘魂外来を中座しまして、その後神戸で開催された、兵庫県保険医協会 第526回診療内容向上研究会にて、「胸部X線ルネッサンス」のお話をさせて頂きました。


やはり先生方、胸部X線写真に関してはいろいろとお悩みのことが多いようで、ここ最近にない多数の参加を頂いたそうです。公演後の質疑応答も、なかなか大変な盛り上がりで、ありがたかったです。


お招き頂いた広川先生、ご司会を頂いた清水先生、ご参加頂いた先生方、境様はじめ運営スタッフの皆様方、お世話になり本当にありがとうございました!今後ともよろしくお願い申し上げます。

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posted by 長尾大志 at 15:12 | Comment(0) | 活動報告

2017年03月11日

平成28年度滋賀医科大学ベストティーチャー賞を受賞しました

昨日は平成28年度、滋賀医科大学の卒業式でした。ご卒業の皆さんはおめでとうございます。みんな国試受かっているといいなあ。


そして同日、学位授与式が行われました。当科のF先生、そしてH先生の2名が、奮闘の末論文をイイ雑誌に掲載され、無事に学位を取得されました。めでたい!


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それから私事ですが、平成25年度に引き続きまして、平成28年度滋賀医科大学のベストティーチャー賞を受賞いたしました。
http://www.shiga-med.ac.jp/photo/170310_2.html


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ベストティーチャー賞の受賞は、それ自体大変ありがたいことではありますが、じゃあ平成26年度、27年度はベストなティーチャーではなかったんかい、という素朴な(ひねくれた?)疑問が湧いてきます。それで問い合わせをしたところ、いくつかのルールが判明しました。


○ ベストティーチャー賞は教授・准教授・講師・学内講師から選ばれる

助教は教員扱いされていないのか、って疑問がありますが…。いずれにしてもそのため、平成25年度以前は私には資格がなかったわけです。


○ 平成26年度以前、ベストティーチャー賞が選ばれる講座は持ち回り制?であった。

詳しくはわかりませんが、基礎学・基礎医学、臨床医学、看護学の講座の持ち回りであったようです。ある年は臨床医学講座から1名、次の年は看護学講座から1名…という感じ。ちなみに平成25年度は臨床医学講座の私、平成26年度は看護学講座から選ばれています。持ち回りですから一度選ばれるとしばらく回ってこないわけです。でも…


○ 平成27年度からは基礎学、基礎医学、臨床医学、看護学からそれぞれ1名選出、となった。

なぜか理由はサッパリわかりませんが、突然受賞人数が増えました。じゃあ早速受賞できるのかと思いきや…


○ 2年(2回)連続での選出はしない。

理由はよくわかりませんが、同じ人ばかりだと他の人のモチベーションがアレだからでしょうか。よくわかりません。


まあ、とのことで、平成26年度は看護学だったので受賞見送り、平成27年度は2回連続になるので受賞見送り、今年の受賞となった模様です。でも昨年度の授業評価をみると、自由記述のところのポジティブな意見、全教員に対する意見のうち過半数が私のものでしたので、昨年もたぶんベストのはずだと思い込んでおきます。(^o^)

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posted by 長尾大志 at 23:16 | Comment(0) | 活動報告