2017年05月31日

非専門の一般内科医のための抗がん剤、化学療法の考え方1

まあ、これは肺がんに限ったことではなく、悪性新生物すべてに共通する考え方ではあると思いますが…。


がんが体内に存在すると、徐々にではありますが細胞分裂を繰り返し、増殖していきます。倍々で増えていきますから、2倍⇒4倍⇒8倍⇒16倍⇒…10回細胞分裂すると1024倍になります。1回細胞分裂するのに数ヶ月かかることが多いのですが、1回細胞分裂しても細胞数≒体積が倍になるわけです。どんどん大きくなっていきます。


その場で大きくなるだけであれば、手術などで除去すればいいのですが、問題はその場を通る血管やリンパ管を流れる液体に乗って、がん細胞が遠くへ運ばれていくことです。遠くへ運ばれたがん細胞は血行性転移やリンパ節転移巣として発育し、できた臓器の機能を損なったり、数自体が増えることで栄養やエネルギーを奪って悪液質にしたりします。


ひとたび血行性転移が成立している、ということは、原発巣から血流内にがん細胞が流れ込んでいる、ということですから、通常転移は1箇所だけでなく、あちこちに生じ、予想も出来ないということになります。そうなると化学療法、体内全域に行き渡る抗がん剤によって、転移巣ごと細胞分裂を止める、あるいは免疫細胞に作用するなどの治療を行うことになります。


肺がんは他臓器の癌よりも予後が悪いとして知られていますが、その理由としては血行性転移が多いことが挙げられます。肺は元々酸素を目一杯効率よく体内に取り込むために、血管が豊富で、肺胞内と血液の間には薄い薄い上皮+内皮しかありません。ですからひとたびそこにがんができてしまうと、血行に乗るハードルが低いのですね。それで、固形癌だったらまず考えたい、手術で除去する、という選択肢が採れないことが多い、それが予後の悪さにつながっています。


以前でしたら手術不能=予後はせいぜい1年、というのが肺がん業界の常識でしたが、2000年以降の分子標的治療、免疫治療の画期的な進歩によって、いくつかのブレイクスルーがもたらされ、手術不能、あるいは再発例であっても「がんと共生」し、それまで考えられなかった長期生存が期待出来るようになりました。


これまであった「5年生存率」、肺がん業界では、「治癒」とイコールの意味でした。手術でがん組織を取りきって、治癒してしまえば5年間、いやそれ以上生きられる。でも取り切れなければ早晩転移や再発巣がぐんぐん大きくなってきて、3〜5回程度の細胞分裂(≒がん組織の体積が8〜32倍になる)を起こす1年程度の経過で生命を維持出来なくなる、そんな感じであったわけです。


でもこれが、細胞分裂をストップ出来たり、少なくとも細胞が増えるのと減るのが同じくらいである状態に維持出来たりすれば、(つまり進行がなければ、)患者さんは生き続けることができるわけで、そのあたりのことが、特にここ数年でぐぐっ、と進歩してきた感がありますね。担癌状態でも5年生存される症例が、決して珍しくはなくなってきています。
(もちろん、一方で、なかなかそういった恩恵を受けられないケースもまだまだあることも紛れもない現実であります。特に喫煙者の肺がんは、後で述べる間質性肺炎の合併などあるため大変厄介です。)


という前置きをふまえまして…肺がん診療の基本的考え方を。


肺がんに限らず、がん化学療法は昨今日進月歩であり、どんどん新しい薬剤が登場して、毎年のようにガイドラインや取り扱い規約が書き換えられています。ですから、ここでは現時点での最新のガイドラインをフォローする、というよりは、現在のガイドラインに通底する基本的な考え方を解説し、今後も長く応用して頂けるようにしたいと思います。



1.とにかく手術出来るものは手術を

とはいえ、その確実性において、手術に勝る治療はありません。手術で取り切れる可能性が高ければ手術する、これは大原則です。予後をグンと伸ばすために検討すべき第一の方策ですね。


手術をして取り切れる、と見込まれるのは、少なくとも画像上、原発巣と同側のリンパ節転移しか病変が見えない、ということです。原発巣も、手術が無理なところ(心筋とか)に食い込んでいるとダメ。リンパ節転移って、種となるがん細胞が流れてきて、大きくなるにはけっこう時間がかかりますから、数が増えているということはそれだけ微少な(=見えないけど後で出てくる)転移が既に成立している可能性が高まる≒再発の可能性が高まるわけです。


なので、リンパ節転移が拡がっているもの中心に、化学療法とか化学放射線療法を加えて再発率を低下させる試みが行われているわけなのです。


手術できない、しない症例に関しては、次に予後を伸ばせる因子を検索します。



2.組織型を確認する

次に予後がグンと伸びるのは、driver mutationが明らかで、それを薬でブロックするとメッチャ効果があるものです。遺伝子の突然変異によって、細胞分裂が無軌道に行われるスイッチが入る、そのスイッチを切る薬がある、と言い換えてもいいでしょう。


基本的には1ポイントの変異でして、喫煙者は少ない。喫煙によって発がんする場合、もっとあちこちに傷がついて(変異して)1ポイントでは済まないのでしょうか。タバコがんである小細胞肺がんや扁平上皮がんでは見られない現象で、非小細胞肺がん・非扁平上皮がんのときに見られます。


ですから肺がん、と診断がついたら、まずは小細胞肺がんと非小細胞肺がんを分け、続いて非小細胞がんの中で扁平上皮がんと非扁平上皮がんを分けます。



3.小細胞肺がん

小細胞肺がんはさらなるブレイクスルーがない限り、昔ながらのPI(シスプラチン+イリノテカン)、PE(シスプラチン+エトポシド)、CE(カルボプラチン+エトポシド)です。


病変が限局していて、胸部放射線照射と併用する場合はエトポシドを、高齢とか、心機能、腎機能に心配がある場合もエトポシドを使います。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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2017年05月30日

症例検討会BRONCHO8−9

MJ分類P3、Geckler分類5、についてはしっかりした炎症の現場から採取された、よい痰だということですね。

喀痰塗抹検査はGram陽性球菌1+(双球菌貪食像あり)、血液培養検査でもGram陽性双球菌がしっかり見え、尿中肺炎球菌抗原+もあわせて肺炎球菌肺炎+菌血症であると確認しました。



Q:治療薬は?


適切な治療薬投与により、経過は順調で、入院4日目以降は解熱し、軽快退院されました。


スライド9改.jpg


症例検討会BRONCHO

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posted by 長尾大志 at 14:31 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年05月29日

症例検討会BRONCHO8−8

肺炎から敗血症を疑っているわけですから、喀痰塗抹培養と血培は必須。尿中抗原もグラム染色ができない場面、グラム染色とあわせて、いずれも有用ですから、やっておきたい検査でしょう。


インフルエンザ、マイコプラズマに関しては、臨床的に強く疑うかどうかです。インフルエンザを強く疑うかどうかは、時期的なものと周囲の流行がポイントになります。ただ本症例では、症状が始まってから日数が結構経っていますので、この段階でインフルエンザの確認をしても治療介入への影響は少ないと考えられ、積極的に勧められるものではない×でしょう。


臨床情報からはマイコプラズマはじめ非定型肺炎による肺炎の要素(表引用)はなさそうですし、マイコプラズマによる敗血症もあまり経験されません。積極的にほしい検査とは言えないでしょう×。



〈喀痰塗抹検査〉
MJ分類P3、Geckler分類5 好中球3+急性炎症所見あり
ヒメネス染色 陰性
Gram染色


スライド7.JPG


血液培養検査:2セット中2本陽性


スライド8.JPG


〈感染迅速検査〉
尿中肺炎球菌抗原+、レジオネラI抗原−
インフルエンザA,B − (汗)


Q:喀痰塗抹/血液培養の結果は?


症例検討会BRONCHO

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posted by 長尾大志 at 16:45 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年05月28日

新人たちの

4月から呼吸器内科に入局となった、I先生とK先生、そして2年目ながらずっと呼吸器を選択してくれているY先生、3人とも、真面目にしっかり患者さんに向き合い、知識の吸収も大変よく、将来が楽しみでなりません。


いつもここでは言っていることですが、呼吸器内科は気管支鏡にまつわる手技たち、胸腔ドレーンや局麻下胸腔鏡など、手技はそれなりにありますし、キッチリできるのは前提条件なのですが、必ずしも手技一辺倒ではなく、しっかりと患者さんに向き合い総合的に診療した上で、強みである専門性を発揮するところにやりがいがあるのです。カンファレンス他でそのあたりの機微も伝わっているとうれしいです。


最近隙があれば、彼らと外来初診症例の問診から検査、処方まで「闘魂外来」方式で一緒にやっているのですが、やっぱりこの方式の教育効果は高い!と実感します。3年目でもそこまでするの?と思われるかもしれませんが、するのです。特に患者さんへの説明は、よりよい医師ー患者関係を構築するための腕の見せ所。見てもらうことで微妙なニュアンスを実感してもらうことができると信じています。


「書籍プレゼントキャンペーン」もまだまだ行っておりますが、ウチに来る先生方は既に持っている、というケースが多く、せっかくのキャンペーンも活かされていなかったりします。まあそもそも、「レジデントのための」本が多いので、1年目に読む人が多そう。


今多く書いている初級者向けの本よりも、プレゼントのためにはもう少し上級者向けの本を書くべきなのかもしれませんが…それは私の出番ではなさそう。上級者向けの本を書くべきなのは、もっと格調高い先生方にお任せしようと思います。まだまだ、研修医の先生方や非専門医の先生方に向けた活動を続けていくのが私の仕事かなあと思っております。

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posted by 長尾大志 at 16:22 | Comment(2) | 日記

2017年05月27日

5月が終わりました。

臨床実習、初期研修とも、数グループが過ぎ、新しい制度が過ぎていっておりますが…。やはりまだ、新しい取り決め、特に評価については馴染めていないのが実際のところです。とにかく思うのが、学生さんの不均一性。ヤバイ班、ありますよね−。でも、どう評価、フィードバックするかは難しい。クリニカル・クラークシップワーキングもなかなか前途多難な感じでありますし…。


臨床実習入門という、シミュレーターを使った模擬身体診察練習も始まりましたが、これまたモチベーションをどうやって上げていくのか、完全に教員に丸投げられていて、カリキュラムを作る側の工夫が微塵も感じられません。私もいろいろと試行錯誤し、ようやく軌道に乗ってきて、楽しくできるようになってきましたが…他の先生方、どうされてるんでしょう??以上、心の声でした、。


以前の告知に加えて、メディア仕事のお声がけを複数頂いています。一つはあの先生とのコラボ、教育効果の高そうな試みに参加できるのがめっちゃ楽しみです。

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posted by 長尾大志 at 22:29 | Comment(0) | 日記

2017年05月26日

症例検討会BRONCHO8−7

全部気になるワイ、といわれたらその通りなのですが、問いたかったこととしては、肺炎〜敗血症としたときに評価すべき項目でした。


敗血症のSOFAスコアでは、

  • 呼吸状態

  • 凝固能

  • 肝の予備能

  • 循環状態

  • 中枢神経への影響


を確認することになっています。そういう意味では肝胆道系酵素○、腎機能≒循環動態○が気になる、と答えて頂きたかった。


CKもWBCもCRPもプロカルシトニンも、もちろん気になるでしょうし気にして頂くのですが、予後因子、治療方針の変更までには至らない△ということですね。


Q:あと、ほしい検査は?

喀痰塗抹培養
血液培養
尿中抗原(肺炎球菌・レジオネラ)
インフルエンザ抗原
マイコプラズマ迅速


あ、血培は必須でしたね。


症例検討会BRONCHO

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posted by 長尾大志 at 16:18 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年05月25日

症例検討会BRONCHO8−7

その他の検査も見ていきましょう。


<入院時検査所見>
〈血液検査〉

HT (% ) 32.7 L
HB (g/dl ) 11.3 L
RBC (1000000 ) 3.63 L
WBC (1000 ) 34.8 H
PLTS (1000 ) 270
NEUT (% ) 95.6 H
EOSIN (% ) 0.0
BASO (% ) 0.3
LYMPH (% ) 1.5 L
MONO (% ) 2.6
MCV (μ3 ) 90
MCH (pg ) 31.1
MCHC (% ) 34.6
A型インフル ( ) (−)
B型インフル ( ) (−)
TP (g/dl ) 6.9
ALB (g/dl ) 3.0 L
AST (U/l ) 66 H
ALT (U/l ) 54 H
LDH (U/l ) 265 H
ALP (U/l ) 445 H
G-GTP (U/l ) 92 H
T-BIL (mg/dl ) 1.34 H
A/G ( ) 0.77 L
NA (mmol/l ) 140
CL (mmol/l ) 103
K (mmol/l ) 3.9
UN (mg/dl ) 44.1 H
CRE (mg/dl ) 2.35 H
eGFR ( ) 22.2
CA (mg/dl ) 8.4 L
CPK (U/l ) 1537 HH
CRP (mg/dl ) 29.52 HH
ヨウケツ ( ) (-)
ニユウビ ( ) (-)
CEA (ng/ml ) 1.4
プロカルシトニ (ng/ml ) 9.71 H



Q:気になる所見は?

肝胆道系酵素上昇
腎機能悪化
CK上昇
WBC,CRPの高値
プロカルシトニン高値


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posted by 長尾大志 at 18:30 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年05月24日

症例検討会BRONCHO8−6

だいぶ引っ張って参りましたが、いよいよ胸部X線写真を見て頂きましょう。そもそも呼吸器系の症例検討では、まずX線、みたいな風潮がありますが、本来はこのくらい、病歴と診察でしっかり議論しておくべきではないかと思っていて、日頃のカンファレンスではこんな感じで進めるよう意識しています。若い人に伝わってるかな…。


胸部X線写真では、右に陰影がありそうですよね。実際に見てみましょう。


スライド2.JPG


Q:所見を述べてください。

右上肺野に無気肺
右上葉にコンソリデーション
両側びまん性にすりガラス影
右上肺野に空洞病変
右胸水



あ、読影の基本は皆さん、もうご存じだという前提で進めますね。基本についてはブログの過去記事『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』を参照してください。



何気なく問題を出しましたけど、これだけで所見、わかりますか??


既往にさりげなく書いてあった、「8年前に肺癌に対して化学放射線療法を行い、終診となっていた。」たぶんこれ、画像診断をする上では重要な所見じゃないでしょうか。化学放射線後って、結構縦隔が動いたりしますし…ということで、以前の胸部X線写真を確認しますと…。


スライド3.JPG


こちらは5年前のものです。もうちょっと最近のものはないのか。探して見ると、偶々他科で腹部大動脈瘤を指摘され、フォローされていたCTのスカウト画像が手に入りました。


スライド4.JPG


この写真を見ると、右上肺野の濃厚な陰影はこのときはありませんが、気管の偏位や右横隔膜の上昇は認められ、8年前の化学放射線療法による放射線肺炎〜線維化によって、右上肺がゆっくり収縮してきているようです。


今回はそこにコンソリデーションが乗って、濃厚な陰影になったものと考えられます。したがって右上肺野は無気肺ではなく×、コンソリデーション○、しかも毛髪線とおぼしき線でハッキリ境界されていますから、この陰影は上葉の陰影だとわかります○。右肋横角も以前から鈍ですので、胸水あり、という所見にはならない×でしょう。


CTもなんだかんだで撮っています。当初は以前の写真が参照出来なかった模様で…(汗)。答え合わせのつもりで見てみましょう。


スライド5.JPG


上葉にある嚢胞、または空洞は、今回のepisode以前からあったようですね。重喫煙者ですから嚢胞があったのでしょうか。


スライド6.JPG


このスライスでは、3ヶ月前の放射線肺炎像がよく見えます。ぴしっとまっすぐ境されていますね。で、今回は正常だったところにコンソリデーションが出ています。エアブロンコグラムも見られます。


ということで、元々あった放射線肺炎後の変化に、右上葉のコンソリデーションが乗った、そういう所見と考えました。


症例検討会BRONCHO

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posted by 長尾大志 at 19:57 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年05月23日

症例検討会BRONCHO8−5

これまでのところ、肺炎からの菌血症〜敗血症が疑われますから、次は診断確定へのステップと、治療の同時進行になります。


敗血症の場合、チンタラ診断を待っている暇はありませんから、悪寒戦慄があってqSOFA2点であれば、(これはどこでも判断可能!)直ちに血培⇒広域抗菌薬投与、輸液、循環・臓器モニター開始が必要です◎。敗血症になっているということは菌が体内でじゃんじゃん増えているわけで、20分で2倍⇒1時間で8倍に増えます。血培も抗菌薬も、1時間遅れると取り返しがつきません。A.S.A.P.=as soon as possible、であります。


胸部X線写真は肺炎の診断にはまだまだ必須だと思いますが、CTまではどうでしょうか○?△?。胸部X線写真で両側に広範な濃度上昇があったり、疑問に思われるような陰影があったりすれば、わからなくもありませんが…。


敗血症・敗血症性ショックの定義は最近新しくなりました。敗血症は以前の定義、SIRS(systemic inflammatory response syndrome)で強調されていた「炎症」よりも「臓器不全」があることが強調され、新しい定義(SOFA)では

  • 呼吸(P/F比)

  • 凝固(血小板数)

  • 肝機能(ビリルビン)

  • 循環(平均動脈圧)

  • 中枢神経(GCS)


を、( )内の指標を用いて評価します。ここでは急いで、肺以外の臓器障害を評価しなくてはなりません。◎


敗血症性ショックは、敗血症によって、ショック(臓器障害を来す低血圧)を起こした状態ですが、輸液やカテコラミンに反応しない低血圧に加えて、細胞障害、代謝障害を来している状態を表すと定義されました。


この細胞および代謝障害を表す指標として、乳酸値が用いられます◎。乳酸値>2mmol/L(18mg/dL)。乳酸増加による代謝性アシドーシスを代償するべく頻呼吸となり、呼吸数≧22回、となるわけですね。肺炎でも頻呼吸になるし、敗血症性ショックでも頻呼吸になるのです。


さてそれではプロカルシトニンの測定はこの場合必須でしょうか?エビデンスとしては弱いものしかありませんし、個人的には悪寒戦慄やqSOFAの方がよっぽど有用だと思っています△。


症例検討会BRONCHO

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posted by 長尾大志 at 13:59 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年05月22日

症例検討会BRONCHO8−4

入院時身体所見、まずバイタルサインですが、意識は清明で、脈拍数122bpmと頻脈です。血圧は普段は120前後のところ89/58mmHgですから低い。体温は36.5℃で診察時は発熱なし、呼吸数24回/分で頻呼吸、SpO2は95%(room air)ですから低酸素血症はあっても軽度です。


レジオネラ肺炎の可能性、ということであれば比較的徐脈に注意しますが、ここでは発熱なしで頻脈ですから、とりあえず当てはまりません。


血圧が低いのは菌血症〜敗血症の可能性。頻呼吸と軽度の低酸素からは肺の感染症、肺炎の存在を疑うことになります。頻呼吸と血圧低下は敗血症の判定にも使われようかというqSOFA(quick Sequential Organ Failure Assessment)のスコアに含まれていますから、これだけで2点=敗血症の疑いあり、ということになります。


qSOFAスコア

  • 呼吸数≧22/分

  • 意識レベルの変容

  • 収縮期血圧≦100mmHg




診察所見で目立つものは、右肺野のcoarse crackles聴取、これからも肺炎はありそう◎、となるでしょう。菌血症〜敗血症もあやしい○です。


尿路感染もあるかもしれませんが、少なくともCVA叩打痛など、積極的に示唆する所見には乏しいと言えます。肺結核も、鑑別に入れることを強く推奨するわけではありませんが、否定するものでもありません△。


ということで、次にやるべきことが決まって来ましたね。


Q:やるべきことは?

胸部X線写真、CT
肺以外の臓器障害を評価
喀痰培養、尿培養、血液培養
プロカルシトニン測定
輸液による血圧の維持


症例検討会BRONCHO

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posted by 長尾大志 at 18:13 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年05月21日

講演予定(続き)

まだまだ詳細が決まっていないところが多いのですが、ご予定をあけておいて頂くためにも、早めにわかっている範囲で告知させて頂きます。



・呼吸機能イメージング研究会サマーセミナー
http://plaza.umin.ac.jp/~jspfi/held_info.html
9月29日(金)〜30日(土) 日時詳細未定 ピアザ淡海にて

詳細は決まっておりませんが、会の趣旨からは画像の話になるかなあ、と思っております。



・市立敦賀病院にて
10月6日(金) 18時〜20時

『大阪どまんなか』など数々の勉強会の中心となられた、笹本先生のお誘いです。1症例を経時的に見ていって、例えば呼吸不全について鑑別・画像診断・検査データの解釈・抗菌薬の選択・呼吸管理・呼吸器リハビリなど入院から退院までの流れの中でそれぞれのことがらを講義、というお題を頂いています。何か新しいものができそうです。



・宿坊合宿
10月7日(土)〜8日(日) 日時詳細未定

こちらも熱い勉強会、楽しみですねー。



・亀井道場
10月28日(土)〜29日(日)

ありがたいことです。亀井道場へのお招きは3度目になります。少しはお役に立てたようで、大変励みになります。また新ネタを仕込んで参りたいと思います。



・鳥取県東部医師会講演会
11月2日(木) 19:00 〜 20:00

以前からお声がけ頂いておりましたが、都合が合わず、今回ようやく鳥取の地におじゃまする機会を頂きました。X-P健診の精度を上げるためのヒントとなるようなお話ができればと思っております。



・日本集中治療医学会関西支部看護セミナー
11月18日(土) 13:00 〜 16:30 場所 iMEPホール

呼吸生理の基礎について、集中治療の現場に活かして頂けるようなお話をさせて頂きます。



・日本プライマリ・ケア学会連合会教育講演
11月26日(日) 13:00 〜 14:00

おそらくその頃には出版されている(はずの)書籍にちなみ、『プライマリ・ケアで必要な呼吸器に関することがら』と題してのお話になります。

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・南京都病院看護師さん勉強会講演
12月7日(木) 17:45 〜 19:15 場所 国立病院機構 南京都病院

血ガス・血液検査の見かたと症例の評価について。

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posted by 長尾大志 at 16:41 | Comment(0) | 活動報告

2017年05月20日

講演予定続々

5月は特に講演もありませんでしたが、6月からは頑張って参ります。少し告知を怠っている間にたくさんお話を頂きました。


・産業医科大学 呼吸器セミナー 陰影の成り立ちと胸部読影(仮)
6月1日(木) 19時〜 千草ホテル
〒805-0061 福岡県北九州市 八幡東区西本町1丁目1−1



・やさしイイ呼吸器教室 長尾先生による胸部X線レクチャー第2回! 〜呼吸器内科 ただいま救急外来!〜
http://otomarukun.seesaa.net/article/448769887.html
6月3日(土) 16時〜
◆場所 洛和会音羽病院 C棟 講義室
(〒607-8062 京都府京都市山科区音羽珍事町2)



・メディカ出版看護セミナー『急性期・術後の呼吸器ケア』
http://www.medica.co.jp/seminar/detail/131
神戸 6月10日(土) 神戸クリスタルタワー 3階クリスタルホール 9時〜
東京 6月24日(土) 損保会館 2階大会議室 9時〜



・岡崎市医師会学術講演会『胸部X線読影と肺炎の診療(仮)』
6月16日 (金), 20:00 〜 21:00
場所 岡崎市医師会 公衆衛生センター, 〒444-0875 愛知県岡崎市竜美西1丁目9−1



・西伊豆健育会病院講演会『専門医のおられない施設で困っている疾患の取り扱い(仮)』
7月15日(土)〜16日(日)



・第1回 耳原総合病院 GP+1セミナー
http://www.mimihara.or.jp/ms/index.html
7月30日(日)10:00〜(受付開始9:30)
場所:耳原総合病院 みみはらホール
■プログラム
  10:00-10:05 開会の辞
  10:15-10:30 感染症・身体診察クイズ:提示
  10:30-11:40 講演 「感染症プラチナ特講2017 『症例から学ぶ感染症流儀』」
           岡 秀昭 先生 (埼玉医科大学総合医療センター 総合診療内科/感染症科)
  11:50-12:40 講演 「呼吸器感染症の身体診察」
           藤本 卓司 先生 (耳原総合病院 救急総合診療科)
  12:40-13:40 懇親会(昼食)
  13:40-14:50 講演 「グラム染色/培養道場in耳原」
           山本 剛 先生 (西神戸医療センター 臨床検査技術部)
  14:55-16:05 講演 「胸部X線写真で見えるもの〜この陰影は何を見ているのか〜」
           長尾 大志 (滋賀医科大学病院 呼吸器内科)
  16:05-16:25 感染症・身体診察クイズ:解説
  16:25-16:30 閉会の辞



・福岡大学にて テーマ未定
8月19日(土) 16:00 〜 18:00



・メディカ出版看護セミナー『よくみる症例から学ぶ 呼吸器疾患〜おさえておきたい観察ポイント〜』
http://www.medica.co.jp/seminar/detail/171
東京 8月26日(土) 建築会館 1階ホール 9時〜
大阪 10月21日(土) 私学会館 4階講堂 9時〜



・手稲渓仁会病院にて、理学療法士さん向け、身体診察と医療・介護関連肺炎について講演
9月2日(土) 13:30 〜 16:30 

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posted by 長尾大志 at 21:39 | Comment(0) | 活動報告

2017年05月19日

症例検討会BRONCHO8−4

病歴はこのあたりにして、診察に進みましょう。研修医の先生による診察記録です。


<入院時身体所見>
身長:158p、体重:57s、BMI:22.83、意識清明、JCS:0、GCS15 E4V5M6、PR:122bpm、BP:89/58mmHg(普段は120前後)、体温:36.5℃、RR:24回/分、SpO2:95%(room air)


〈頭頚部〉
眼瞼結膜蒼白なし
眼球結膜充血なし、黄染なし
眼球運動:複視なし、輻輳可、眼振なし
副鼻腔:tapping painなし、圧痛なし
側頭動脈:圧痛なし
咽頭粘膜:発赤なし、白苔なし、口蓋垂正中
扁桃:発赤なし、腫大なし
舌:発赤なし、挺舌正中
口唇:発赤なし
顔面:表情筋左右対称、触覚左右差なし
耳介:牽引痛なし
頚部:リンパ節腫脹なし、甲状腺腫大なし

〈胸部〉
心音:整、雑音なし
呼吸音:右肺野coarse crackles聴取

〈腹部〉
平坦軟、圧痛なし、皮疹なし、反跳痛なし、腸蠕動音正常

〈背部〉
CVA叩打痛なし、脊柱叩打痛なし

〈四肢〉
冷感なし、足背動脈触知可、橈骨動脈触知可、浮腫なし


Q:この時点での鑑別診断は?

肺炎はありそう
尿路感染もあるかもしれない
菌血症〜敗血症もあやしい
肺結核も鑑別に入れておくべき


症例検討会BRONCHO

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posted by 長尾大志 at 17:30 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年05月18日

症例検討会BRONCHO8−3

肺癌の転移は、こういう急性な発症様式をとることはあまりありません。しかも症状からは転移巣が多臓器にわたっている必要がありますから、なおさら、それらが「同時に、急性に」起こる可能性は低いと思われます。


他に間質性肺炎の可能性ですが、急性発症のもの、慢性経過のものが急性増悪した、膠原病や血管炎・自己免疫疾患の合併など、こちらは可能性が十分考えられますね。


そういった点から、示された症状以外の、膠原病や血管炎を示唆するような症状はないか、そして間質性肺炎のリスクとなるような、鳥の接触歴、粉塵曝露(工場での作業内容)、薬剤・健康食品・サプリメント(にんにく卵黄も含む)摂取などについても情報収集が望ましいと言えるでしょう。まあ、画像などでクサイ、となってからでもいいかもしれませんが。


銭湯利用者の似た症状の流行、というところは多分にレジオネラを意識しています。一応。でもその他接触可能性のあるグループの流行状況も含めて確認はしておくべきでしょう。


症例検討会BRONCHO

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posted by 長尾大志 at 18:19 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年05月17日

症例検討会BRONCHO8−2

病歴からの第一印象は、まず数日前からの発症、これは感染症を疑わせるものです。疾患の性質として、


  • 突然発症:破れた、詰まった、捻れた

  • 急性発症:感染症、慢性疾患の急性増悪、自己免疫疾患などなど

  • 慢性発症:いろいろ…悪性腫瘍の可能性、慢性疾患など



という感じであろうと思われます。大腸菌は20分に1回細胞分裂しますから、1時間で8倍、10時間で8の10乗で10億倍…というわけで、一般細菌による感染症では、(もちろん免疫力との攻防はありますが、ひとたび突破されると)数日で症状が完成してくることがおわかり頂けるかと思います。


比較的急性の発症で悪寒戦慄あり、という症状。悪寒戦慄というのはただの悪寒(寒気がする)とは違い、布団をかぶってもガタガタ震えが止まらないような状態をいいます。そこまでのことが起こることはそうそうありません。菌血症に特徴的な症状とされていますから、まずこの時点で警報を鳴らします。


それ以外の症状として発熱、咳、鼻汁、嘔吐。一般的に、感染症というくくりで考えると、一般細菌による臓器感染は、その臓器由来の症状が生じるものの、他臓器由来の症状は起こりにくい。それに対して感冒などのウイルス感染症では、多彩な臓器由来の症状が見られることが多いとされています。


とすると発熱に加えて咳がある、気道感染症を想起します。でも、例えば細菌性肺炎であれば、発熱に加えて咳、痰、呼吸困難などの症状が起こりますが、消化器症状や鼻汁などは見られないことが多い。まあ、鼻汁だけでしたら先行する上気道炎の名残でも矛盾はしないかもしれませんが、嘔吐が生じているのは、細菌性肺炎らしくはない。


消化器症状のある肺炎とくれば、レジオネラ肺炎か。そんなことも連想しますが、菌血症があるとすれば、これは一臓器にとどまるものではありませんから、消化器症状があってもいいでしょう。


前医でAZMが投与されていますが、無効であった。この意味するところは何でしょうか。そもそも昨今では、細菌感染症にAZMが有効であるということは期待しない方がいいくらいです。ましてや菌血症であればなおさら。ある程度効きそうな抗菌薬を投与して無効であれば、「細菌感染以外の疾患を考える」ということになるかもしれませんが、AZMを投与されても…情報はあまり増えませんが、AZMの副作用(肝障害、下痢など)が生じている可能性は想定しておく必要があるでしょうね。


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posted by 長尾大志 at 19:55 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年05月16日

症例検討会BRONCHO8−1

画像に関して書いておきたいことが一段落つきましたので、Web上BRONCHO(Biwako Respiratory Outstanding Next Conference of Hospital and Outpatient care)を再開していこうかな、と思います。実は何を隠そう、そういうお仕事のお話も頂いているからです。そうです。お仕事がらみです。



ただし、これまでとは異なり、症例のデータなどは実際ものとは少し改変した形での掲載となります。どちらかというと、症例についての細かい真贋?よりは、症例を元にしたディスカッションのところが大切です。要は、症例をベースにして講義を展開していく感じですね。


特に若い先生方にとって、何かの参考になれば幸いです。



症例:70歳代男性

<主訴>
発熱、咳嗽

<現病歴>
1日目、庭仕事をしてから夜間38.5℃の発熱、悪寒戦慄、咳、鼻汁、嘔吐を自覚した。自宅にて様子をみるも軽快せず4日目A医院を受診。アジスロマイシン(AZM)を処方され、2日間内服したが症状が改善しないため、当院当科に紹介受診された。

<既往歴>
8年前に肺癌に対して化学放射線療法を行い、終診となっていた。

【内服薬】
A医院での投薬
フスタゾール 10mg 3T
ビオフェルミン6mg 3T
ムコスタ 100mg 1T
ナウゼリン 10mg 1T
ジスロマック 250mg 2T
ロキソニン 60mg 頓服

【生活歴】
職業:電車工場勤務
飲酒:機会飲酒
喫煙:60本/日×40年間(20〜60歳)
健康食品:にんにく卵黄
旅行歴:なし
温泉歴:銭湯へはよく行く

【環境】
ペット:なし
周囲の感染:なし
肺炎球菌ワクチン未接種

【家族歴】
兄:癌 (詳細不明)

<アレルギー>
なし



Q:病歴からの第一印象は?

肺癌の転移が怪しい
感染症で間違いない
間質性肺炎の疑いもある
初期投薬がAZMなのはいかがなものか




Q:他に病歴でほしい情報は?

鳥の接触歴
工場での作業内容
にんにく卵黄の成分
銭湯利用者の似た症状の流行


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posted by 長尾大志 at 17:43 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年05月15日

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)について

気管支拡張症の原因として時々見かけるアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosis:ABPA)について、少し補足しておきます。


ABPAは平たくいうと、肺内に住み着いたアスペルギルスによってアレルギー性の炎症が起こり、喘息症状が生じて、かつ気管支拡張など肺の破壊が進行する疾患です。


最近ではアスペルギルス属以外の真菌でも、似たような病態を呈することが報告されていて、アレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis:ABPM)と総称されることもあります。



特徴的な画像所見として、拡張した気管支の中に粘液栓といわれる、痰のカタマリが貯留してできた棍棒様の陰影が見られます。気管支拡張は上肺野優位で、比較的中枢の気管支に多く見られます。


スライド108.JPG


拡張した気管支の先に粘液栓が見えることもありますが、図のように気管支拡張なく粘液栓だけが見えることも多く、その場合は気管支と同じような走行で、分岐しているところが見えたりすることから粘液栓と判断します。


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posted by 長尾大志 at 18:43 | Comment(0) | 胸部X線写真で、ここまでわかる

2017年05月14日

昔(の研修制度)はよかった、という郷愁と、そういう選択肢を準備できないものかという思い

思うに現在の初期研修では、自分が将来所属する「医局」というものを決めずに研修を開始します。で、2年間の初期研修の後に、その先のキャリアを決めていく方式。


もちろんこのやり方には、キャリアの自由度であったり、何よりローテーションによる総合力の涵養であったり、メリットが多々あるのは理解しておりますが、おそらく研修医諸君にとって最もストレスがかかるであろう「研修開始の数ヶ月」に、全く寄る辺ないと申しますか、ちょっとそのあたりはかわいそうだなあ、と思ったりするのです。


私が研修していた20年前には、医局に所属してから働き始め、特に最初はその医局で研修を開始していました。私のように手先が不器用で、学生の時にろくろく教科書を読んでいたかったような、まあいわゆる「出来の悪い」研修医であっても、それなりに?大切に扱ってもらえて、丁寧に教えてもらえて、相談や悩みにも乗ってもらえていたように記憶しています。


自分のことを思い返すと、特に働き始めの数ヶ月はしんどかったもので、「自分は医者に向いていない」「もう辞めた方がいいのではないか」などと夜な夜な思い悩んでいたものです。それでも、朝が来ると病院に行かなければならない。行けば行ったで指導医、上級医の皆さんと仲良くして頂いて、なんやかんやでそのうちにできるようになってきて、いつの間にやら自信もついてきたものでありました。


今ではたぶん、そういう相談役をになうのは、「臨床研修センター」のようなところであったりするのでしょうが、本当に親身になって相談に乗ってくれるのか、いささか心許ない気がするのですね。


自分が市中病院に出たときも、最初は慣れない環境に苦しんで、しかも1年目にやっていなかった内科全般の臨床が始まったもので、その時にも大変なストレスでしたが、その時に自分を支えてくれたのが、「呼吸器の専門家」としての矜恃、それまでに培っていたものでした。ですから私見ですが、研修の最初にしっかり専門教育を受けるのもいいものだと思っています。



また、これまでに研修医の先生に起こった問題では、進路決定時の様々な(上級医、からの?)圧力がストレスになって、とか、悩んだ挙げ句、とか言うことも聞きます。自分の時は、キャリアの選択肢にそれほどの自由度はありませんでしたが、自由すぎる選択肢も、却ってストレスにもなったりします。昨今の研修医諸君のキャリアの自由度がうらやましくもありますが、自分の時はアレでよかったのかなあ、とも思いますね。



見ていたDVDは、研修医の先生方がストレスでdropoutする、とか、もっと悪い結果にならないような対処法を述べておられたわけですが、それって一つには、最もストレスがかかるであろう「研修開始早々」や「進路決定時」などに、研修医の先生方に「寄る辺」がない、ということも問題なのかなあ、妻の感想を聞いて、そんなことを思いました。

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2017年05月13日

研修医の先生方のストレスとか諸問題について

研修医の先生方のストレスマネージメント、について取り上げたDVDを車に入れて、最近ずっと見ていたのですが、今日たまたまウチの妻が私の車に乗ったときに、そのDVDを見たんですね。


「今頃の研修医の先生って、こんなに大切に扱ってもらってるんやな〜」
「研修医様、って感じやなあ」


などと感想を言っていたので、


「いやいや結構ストレスがたまって、いろいろ問題になったりするんやで〜」と説明していると、


「でもそれって、○○やからやないの?昔はちがったんちゃうの?」と、至極ごもっともな感想が。
なんか、目から鱗、というか、部外者だからこそ、といえる素直な感想が、今の初期研修の弱点をズバリと言い表しているようで、なんかある意味すごく納得しました。

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2017年05月12日

乳房に惑わされて…??見るべきポイント

・対称性と位置

通常乳房は左右ほぼ同じ高さに、同じような大きさで位置します。「実際は左右差があるものですよ。」という声があろうことは承知しておりますが、あくまで画像上の問題です。乳癌の術後などになると画像上でもわかるほど左右差が出ますけれども…。


胸部X線写真では両側下肺野、やや外側よりに存在する高吸収域として認識されます。位置に関しては個人差が大きく、軟部組織の質量が大きいほど、また高齢になるほど、下部に位置することはおわかり頂けるかと思います。


スライド104.JPG


昨日の症例ではこのくらいの軟部組織厚です。他部位の倍近くの厚みがあるわけです。



・乳房下縁の線、特に肺野から軟部影にまではみ出す
・下になるほど白くなるが、下縁の線を境に肺野濃度が戻る

下の図では黄色い線が、乳房下部の接線による空気との境界線です。しばしば(個人差はあるものの)この線は肺外の軟部影にまで及び、「肺内の陰性ではない」ことを示唆します。


スライド105.JPG


下縁の線が横隔膜よりも上にある場合、肺内の陰影との鑑別は容易です。線を境に濃度が急に高くなり、上に行くにしたがって濃度が低下していきます。


両側下肺野の濃度が上昇している、といえばIPFなど間質性肺疾患を想起しますが、その手の疾患では、両側下肺野、横隔膜直上の陰影が最も強いことが多いものです。一方、乳房による濃度上昇は、線の下は元の濃度に戻りますので鑑別は容易です。


でも、乳房下部が横隔膜よりも下だったら、どう判断するか。たとえばこちら。


スライド106.JPG


下肺野の濃度が上昇しているように見えるけど…どうでしょう?


この症例では、横隔膜が少しぼやけている⇒シルエットサイン陽性、と考えられますので、下肺野の横隔膜付近に陰影があると判断しました。


それ以外には…



・側臥位で撮影すると乳房の位置がズレて白くなる部位が変わる

CT撮ったらわかるでしょ!


スライド107.JPG


それはそうですが、すぐ撮れない状況もあるわけで、そういう場合は側臥位で撮ると乳房の位置=濃度の高い箇所が移動しますので、それとわかります。



あと、画像ではありませんが、間質性肺疾患の存在を疑う場合には、聴診上fine cracklesの存在を確認します。それがなければその可能性は低い、と考えてもいいでしょう。

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posted by 長尾大志 at 17:23 | Comment(0) | 胸部X線写真で、ここまでわかる