2017年06月30日

症例検討会BRONCHO11−3

診察所見ではO2吸入を要する低酸素血症と右上の呼吸音減弱があり、炎症所見も見られます。


胸部X線写真では、右上にコンソリデーションがみられますので、検査結果から素直に考えると右上の肺炎○ということになります。原因が細菌かどうかはともかくとして。


右肋横角は鋭で、積極的に胸水を示唆する所見とは取れず×、結節が多発しているとも言いがたい×。右下肺野は濃度が高く見えますが、乳房外縁(黄線)をまたぐと微妙に元の濃度に戻っていそうで、これは乳房の濃度かと考えました。左乳房が乳癌のために全摘されていることから左右の濃度差が生じているものと考えます。


スライド24.JPG


LVFX投与3日目で効果なく、撮影した胸部X線写真で上記の所見であったところから、主治医はまず細菌性肺炎(LVFX無効例)と考え、抗菌薬を広域のPIPC/TAZに変更されています。その3日後、治療効果なく、胸部画像はこんな風になりました。


スライド25.JPG



Q:あれれ…何が起こったのでしょう?

肺胞出血
肺炎の悪化
間質性肺障害
癌性リンパ管症


症例検討会BRONCHO

トップページへ

posted by 長尾大志 at 15:44 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月29日

症例検討会BRONCHO11−2

癌化学療法中に生じた発熱、咳、胸部異常影を呈した症例です。免疫低下が想定される状態でもあり感染症の可能性をまず考えたいところですが、比較的急性の発症であり、急性(細菌性)肺炎◎>>経過の比較的ゆっくりな肺結核・肺真菌症△ということになるでしょう。もちろん経過の早い真菌症もありますので、その時点における免疫状態(好中球数など)を把握しておく必要はあります。


もちろん抗癌剤の副作用としての薬剤性肺障害も想定する必要があります◎。というわけで身体所見、検査結果を早く確認したいですね。ご覧に入れましょう。



<入院時身体所見>
身長:161cm 体重:53kg  BMI:20.4
HR:107bpm BP:107/72mmHg BT:36.7℃ RR:16/min SpO2:95%(鼻カヌラ 3L)

眼瞼結膜貧血なし、眼球結膜黄染なし
咽頭軽度、舌に白苔あり
頸部リンパ節触知せず、甲状腺腫大なし
胸部:心音 整  肺音:右上呼吸音減弱
腹部:平坦 軟 蠕動音亢進減弱なし
四肢:下腿浮腫なし、両側足背動脈触知可



<入院時検査所見>
HT 36.1
HB 12.0
WBC 17.2 H
PLTS 328
SEG/NEUT 97.4 H
TP 5.4 L
ALB 2.5 L
AST 17
ALT 20
LDH 262 H
ALP 254
G-GTP 23
CHE 200 L
LAP 53
T-BIL 0.52
NA 135 L
CL 101
K 4.4
UN 12.3
CRE 0.35 L
IG-G 579 L
IG-M 145
IG-A 138
CRP 4.51 H
GLU 179 H
A1C(NGSP) 6.3 H


LVFX投与開始3日目の胸部X線写真は…


スライド23.JPG



Q:診察・検査所見の解釈は?

右上葉の肺炎
右胸水
右下肺野のすりガラス影
多発肺転移


症例検討会BRONCHO

トップページへ

posted by 長尾大志 at 16:27 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月28日

症例検討会BRONCHO11−1

症例 70歳代女性


<主訴>
発熱、咳嗽


<現病歴>
20年前乳癌に対し乳房切除術を施行された。10年前に再発し、内分泌療法や経口抗癌剤で治療されていた。
このたびCTで多発骨転移、多発肝転移を指摘された。胸椎転移による背部痛に対し、放射線治療+内分泌療法(アナストロゾール)を施行した。その後化学療法としてアバスチン+パクリタキセルを開始。1サイクル目終了翌日(day29)に39度台の発熱、咳嗽が出現した(第1病日)。
そこで1-2日目にLVFX内服、3-6日目に PIPC/TAZ 4.5g✕3点滴投与したが症状、炎症反応の改善なく、CTで肺に異常陰影を認めたため、6日目に当科紹介受診。


[既往歴]
42歳 左乳癌(papillo-tubular carcinoma)→乳房切除術
44歳 胆石症→腹腔鏡下胆嚢摘出術
52歳 両側卵巣嚢胞→腹腔鏡下右卵巣切除+左卵管卵巣切除


[家族歴]
父:不整脈


[生活歴]
喫煙:20歳台の数年間 5本/日
飲酒:ビール350mL缶 1本/日
粉塵・アスベスト暴露歴:なし
職歴:主婦

<アレルギー>
ハウスダスト、花粉症など



Q:乳癌化学療法中に生じた発熱、咳、胸部異常影、まず考えたいものは?

免疫低下状態でもあり肺結核を考える
免疫低下状態でもあり肺真菌症を考える
免疫低下状態でもあり急性肺炎を考える
抗癌剤の副作用として薬剤性肺障害を考える



Q:LVFX、PIPC/TAZの効果がみられないことから何を考える?

肺結核
肺真菌症
薬剤性肺障害
転移性肺腫瘍


症例検討会BRONCHO

トップページへ

posted by 長尾大志 at 17:56 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月27日

症例検討会BRONCHO10−8

昨日挙げたもの以外に、最近話題の疾患としては、デング熱やエボラ出血熱なんかも比較的徐脈で有名ですね。高熱の割にそれほど脈が速くない、というのは意識していないと気付かないことも多いですが、呼吸数と並んでバイタルサインで軽視されがちな項目、として注意喚起しておきたいと思います。


比較的徐脈を呈する状態で、ウチで多いのは圧倒的に腫瘍熱と薬剤熱なんですけれども、徐脈になるような薬剤を使っている症例でも「比較的」徐脈になりますから、確認は必要ですね。


聖路加国際病院の岡田正人先生の提唱された『薬剤熱の比較3原則』、すなわち

  • 比較的徐脈

  • 比較的CRPが低値

  • 比較的元気


は覚えやすくて有名ですが、薬剤熱の10%程度にしか比較的徐脈を認めないともいわれており、また、腫瘍熱でも上の比較3原則が合致することも少なくありませんので、イコールではないことに注意が必要です。



比較的徐脈、実例を2例ほど。


■ 20歳代男性

<病歴>
1,2週間前に虫に刺されたあとに気づいた。本日全身に発疹が出現し37.8℃の発熱があり近医受診、当院に紹介受診された。


<診察所見>
麻疹様にもみえる全身紅斑。
前頚部、鎖骨上窩、腋窩、鼠径部にリンパ節腫脹あり
手のこわばりあり。浮腫軽度。感覚・運動障害なし。
左上腕外側に4cm大の皮下硬結あり。中心に虫刺様の皮疹あり。圧痛あり。


スライド21.JPG


リケッチア感染症(ツツガムシ病)による発熱、比較的徐脈でした。



■ 60歳代女性

<病歴>
早朝から散歩に出かけたが、帰宅後に倒れた。激しい後頭部痛、後頚部痛の訴えあり、繰り返す嘔吐を認め救急搬入された。搬入時は、E1V4M5。瞳孔不同なく、対光反射は減弱してはいるが、両側あり。明らかな片麻痺なし。頭部CTでクモ膜下出血を認めた。


スライド22.JPG


体温調節中枢障害による発熱、比較的徐脈と考えられます。


症例検討会BRONCHO

トップページへ

posted by 長尾大志 at 17:08 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月26日

症例検討会BRONCHO10−7

比較的徐脈(相対的徐脈)は、「発熱があるのに、それに比較して脈がゆっくり」という状態です。


一般的に体温が0.55℃上昇すると脈拍は10/分増加することが知られています。ですから、体温上昇があると、

(体温−平熱)÷0.55✕10 

だけ脈拍数が増えることになります。ですから平熱に対して現在の体温からおよそ計算した脈拍数より20以上少ない場合、比較的徐脈といいますが、いちいち計算は面倒ですね…それに、39℃以上でないと感染症の診断として意味がない、ともいわれております。


そもそも、健常時の体温や心拍数がわからないと、この計算式ではよくワカラン、ということにもなります。そこで、群星沖縄臨床研修センターの徳田安春先生は「39℃で110番」と覚えると覚えやすい、と教えて下さいました。確かに覚えやすいですね。39℃で110/分以下だったら比較的徐脈と考える、ってことです。


比較的徐脈を呈しやすいといわれている疾患たちを以下に挙げますが、必ずしもそうとは限らない、といわれているものもあり、あくまで鑑別診断を挙げるための参考として知っておくとイイ、位の感じでしょう。ですから、ガチガチに計算して厳密に定義を適用する、というよりも、ささっと「こういう可能性があるかも」と鑑別診断を挙げる、という使い方がかっこよさそうです。


比較的徐脈を呈しやすい疾患

  • 腸チフス・パラチフス・サルモネラ

  • マラリア

  • レプトスピラ感染症

  • オウム病など非定型肺炎

  • レジオネラ感染症

  • 下垂体や体温調節中枢の障害

  • 腫瘍熱

  • 薬剤熱



症例検討会BRONCHO

トップページへ

posted by 長尾大志 at 18:14 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月25日

書籍企画会議@6階レストラン

先週から始まった6年生のアドバンスド臨床実習のおかげで、日中ほぼ自由時間がなくなりましたが、そんな中、とあるお昼のひとときに、若手の先生方を捕まえて書籍企画会議みたいなことをしておりました。


初期〜後期研修医の先生方に向けて、研修マニュアルorノートみたいなものを作りたい、ということで、いろいろと聞き取り。ある程度自分の若かった頃を思い出して、「こんな感じかなあ」と想像していたのは、合っている面もあれば合っていないところもありました。やはり現場の声は大切です。


19420878_1348710741910824_4856701692774921514_n.jpg


一通り終わって帰ろうとしたら、サプライズで少し早めの誕生日お祝いをしてくれました。本当の意味でサプライズで驚きました。I先生、K先生、どうもありがとう!一週間の疲れも吹き飛びました。

トップページへ

posted by 長尾大志 at 21:49 | Comment(0) | 活動報告

2017年06月24日

メディカ出版セミナー『急性期・術後の呼吸器ケア』東京会場@損保会館、ありがとうございました。

今日は1日、メディカ出版セミナーさんの『急性期・術後の呼吸器ケア』東京会場@損保会館でした。いつも最初に簡単なアンケートをするのですが、安定の「今日のセミナー講師のことは知らなかった」多数で、名前だけでも覚えて帰っていただけるように頑張ってお話をいたしました。参加いただいた皆さん、ありがとうございました。


IMG_20170624_091833.jpg


メディカ出版さんから以前に出た『呼吸器ケア2016年10月号〜素朴なQにカンペキA!長尾先生のやさしイイ気胸・胸水・胸腔ドレナージ』、ほとんど社内に在庫がなくなっていたそうで、最後の8冊を物販に出しておられましたが、おかげさまで、一瞬で売り切れたそうです。でももう買えなくなってしまったのは残念。amazonでもどえらく値上がりしています…。


IMG_20170624_183728.jpg


帰りの新幹線ではもう夕方だし、ずっと天気は薄曇りだし、あまり期待していなかったのですが、見事な富士山がぽっかりと。久しぶりにお姿を拝見しました。ありがたいことです。また明日からの活力になります。

トップページへ

posted by 長尾大志 at 23:07 | Comment(2) | 活動報告

2017年06月23日

症例検討会BRONCHO10−6

レジオネラ肺炎の特徴は、一言で言うと「変な肺炎」です。


普通の細菌性肺炎ですと、肺以外の症状が出ることはあまりありません。せいぜい敗血症やショックなどかなり重症の肺炎で意識障害を来すとか、その程度ではないでしょうか。


でもレジオネラ肺炎では肺炎以外の症状が前面に立つことも多いものです。

  • 意識障害、頭痛:細菌性肺炎ではよっぽどの重症例。

  • 消化器症状:下痢、嘔気・嘔吐、腹痛など。

  • 高熱(比較的徐脈を伴う)

  • 関節痛



逆に咳や膿性痰といった、いかにも肺炎、な症状はあまりみられません。


ウチみたいな呼吸器科ですと「肺炎、だけど変」みたいな見つかり方をすることが多いのですが、救急の現場でしたら「意識障害、だけど肺にも所見」「下痢、消化器症状、だけど肺にも所見」みたいな見つかり方をすることも少なくないでしょう。


そういうときに参考になる検査所見。もちろん尿中抗原検査は特異的で、頼りになりますが、血清群が1のものしか陽性にならず、感度の低さが問題とされています。以下のような検査値異常があると、レジオネラを考えるきっかけになると思います。


  • 肝酵素上昇:肝機能障害=消化器症状を意味します。

  • 高CK血症:一般的には特異度の高い所見といえるでしょう。まあ細菌性肺炎でも、激しい悪寒戦慄があったり、筋肉注射を受けたりすると高値にはなりますが、レジオネラでは本症例のように4ケタぐらいになることも珍しくありません。

  • 低Na血症:結構特異度が高く、鑑別に役立ちます。

  • 低P血症:こちらも結構特異度が高いとされています。





明日6月24日(土)はメディカ出版セミナー『急性期・術後の呼吸器ケア』東京会場@損保会館です。これから東京に向かいます。明日参加予定の皆さん、よろしくお願い申し上げます!

http://www.medica.co.jp/seminar/detail/131


症例検討会BRONCHO

トップページへ

posted by 長尾大志 at 16:55 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月22日

症例検討会BRONCHO10−5

肺関連の症状とデータ、画像的には肺炎の存在が考えられますが、発熱と同時に軟便、という違和感、さらにデータ上低Na、低P、高CPK、オマケに?比較的徐脈もあるとくれば、診断はレジオネラ肺炎となるでしょう。尿中抗原陽性で確認出来たかと思います。


治療はキノロン系抗菌薬投与になります。本症例でもLVFX使用し、経過は…


スライド20.JPG


いかにも、の比較的徐脈ですね。治療後経過は良好で、入院5日目には解熱し無事に退院されました。



Q:レジオネラ肺炎の特徴を挙げて下さい。


Q:比較的徐脈の鑑別は?


症例検討会BRONCHO

トップページへ

posted by 長尾大志 at 17:45 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月21日

症例検討会BRONCHO10−4

昨日はあえて選択肢を書きませんでしたが、おわかりでしたでしょうか。


胸部X線写真では一見異常所見がわかりにくいと思いますが、cracklesを聴取したのと同じ左下肺野をよ〜く見てみると…濃度上昇が見られますね。


スライド18.JPG


下行大動脈のシルエットサイン陽性であり、下葉の濃度上昇があるとわかります。CTを見ますと…


スライド19.JPG


確かに左下葉、下行大動脈に接してコンソリデーションが見られます。


血液検査データを見てみると、目立つのが


WBC 17.4 H
CRP 26.26 HH
プロカルシトニン3.87 H
PLTS 138 L
FIBG 815 H
Dダイマ- 1.5 H
LDH 263 H
UN 31.4 H
CRE 1.27 H
NA 129 L
CL 95 L
P 2.1 L
CPK 2096 HH
GLU 512 HH


といったところですね。炎症反応が強く、フィブリノゲンやLDHの増加は炎症反応と臓器障害を想起しますし、高血糖は糖尿病症例のシックデイであまり特異的ではありませんが、低Na、低P、高CPK、これはいかがでしょうか。ここに先の『違和感』を解くカギがあるのではないでしょうか。


その他の検査結果を見てみましょう。



【静脈血ガス】
pH7.417 PvO2 26.9, PvCO2:43.2, BE2.8, HCO3 27.3, Na128, K4.8, Cl97, AG9.0, 282.6Osm, Glu473, Lac 23

【尿検査】
WBC-, 蛋白2+, pH6.0、潜血3+、比重1.010、ケトン1+、糖5+

肺炎球菌抗原(-)
レジオネラ抗原(+)

【腹部エコー】
腎盂拡大なし、尿閉なし、IVC 4/16mm

【ECG】
HR 77bpm、V1でrsR'、V1-3で陰性T波→右脚ブロック



Q:診断は何でしょうか?治療はどうしましょうか?


症例検討会BRONCHO

トップページへ

posted by 長尾大志 at 13:47 | Comment(2) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月20日

症例検討会BRONCHO10−3

診察上、腹部症状に乏しく、あまり胃腸系疾患を想起する感じではありませんでした×。むしろ低酸素血症と呼吸促迫、診察上左下肺に限局したcourse cracklesを聴取したということで肺に何かありそう○、でも肺炎にしては肺外症状が多く、なんか変だ◎、そんな感じになります。尿路感染はハッキリした所見に乏しい○ですが、否定するには尿検査が必要でしょう。



<入院時検査所見>
【血液検査】
HB 13.1
WBC 17.4 H
CRP 26.26 HH
プロカルシトニン3.87 H
PLTS 138 L
FIBG 815 H
PT-INR 1.24 H
APTTP 36.6
APTTC 29.0
Dダイマ- 1.5 H
ALB 2.8 L
AST 68 H
ALT 23
LDH 263 H
UN 31.4 H
CRE 1.27 H
eGFR 43.9
NA 129 L
CL 95 L
K 4.9
CA 8.4 L
P 2.1 L
CPK 2096 HH
GLU 512 HH
KL-6 180.1


胸部X線写真は…


スライド17.JPG


Q:所見を述べてください。他にほしい検査は?


症例検討会BRONCHO

トップページへ

posted by 長尾大志 at 17:55 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月19日

症例検討会BRONCHO10−2

病歴聴取の段階ではいろいろな可能性が考えられると思います。急性発症の発熱と軟便(下痢)、であればまずは急性胃腸炎≒感染症○でしょうが、高齢者の発熱といえば尿路感染症や誤嚥性肺炎△、という連想もあるかもしれません。ただ、いずれも軟便が生じるのは典型的ではありませんね。感染というとHIV始めSTD関連もあるかもしれませんので、そういう生活歴もいずれ聴取する必要はあるかもしれません○。


発熱と軟便といえば炎症性腸疾患もそうなのですが、もう少し若年で、発見動機がもう少し慢性という感じでしょう△。急性に生じた膠原病や血管炎の可能性もありますから、他の症状が知りたい◎ところです。それから提示された以外の薬剤摂取についても要確認ですね。



ちなみに来院時の症状は発熱と軟便のみでした。パーキンソン病の重症度はYahr U度で、日常生活はほぼ可能、誤嚥も明らかなものはなかった模様です。提示された以外の薬剤摂取はありませんでした。



<入院時身体所見>
身長159.4cm 体重60.9kg(BMI 24)、BT 39.3℃、HR 82/分、BP 131/72mmHg
SpO2 93%(room air)→99%(マスク5L)、呼吸やや促迫
意識:JCS I-1,GCS E3V5M6 見当識障害ないが受け答えはゆっくり


口腔内:乾燥なし
頸部リンパ節腫脹なし
心音:整、雑音なし
肺音:左下肺にcourse crackles聴取
腹部:平坦、軟、圧痛なし、腸蠕動音亢進低下なし
CVA叩打痛なし
四肢:末梢冷感なし、下腿浮腫なし、明らかな筋力低下なし
強剛:両肘・膝関節の強剛なし


さて情報が増え、少し方向性が見えてきたでしょうか。



Q:この時点での鑑別診断は?

やはり急性胃腸炎だ
肺炎がありそう
肺炎にしては変だ
尿路感染はハッキリしない


症例検討会BRONCHO

トップページへ

posted by 長尾大志 at 17:42 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月18日

最後の自転車乗り

子育ても1人目の時は何かと世話を焼き、映像もたくさん残っているものですが、4人目となりますと、成長の過程で特にしっかり介入せず、いちいち適当でもなんとかなる、ということがわかっているからか、あまり熱心にそういう介入ごとをしてこなかった節があります。


ただ、三女の自転車乗りについて、ちょっとつまずきが見られる、とのことで、今日少し介入してみました…と思ったら、今日いきなりできるようになっていました。ちょうど本日誕生日のお祝いパーティーでしたので、いいタイミングでしたね。


1497761376677 (2).jpg


以前にも書いたことですが、上達の過程では決して直線や曲線的にスキルが上がっていくものではなく、階段状に、いきなりスキルが上達することが多い。懸命に練習していてもなかなかうまくいかなかったものが、あるとき、いともあっさりと、できてしまうということがしばしば経験されます。


ちょうど4月から働き始めた初期研修医諸君は、いくつか「うまくいかない」手技を経験しているかもしれません。しかし、初期研修医の間にやるような手技は、必ずやできるようになる手技ばかりです。1回2回の失敗で落ち込むことなく、1回2回の成功でおごることなく、地道に研鑽を積み重ねていって欲しいものです。

トップページへ

posted by 長尾大志 at 21:48 | Comment(0) | 子育て日記

2017年06月17日

岡崎市医師会学術講演会『胸部X線ルネッサンス〜』

昨日は、岡崎市医師会にて胸部X線写真の「異常陰影のとらえ方」と、肺炎の最新の話題を、なんと1時間に詰めこんでお話致しました。


どちらも本来でしたら90分ぐらい頂く話題でしたので、かなりテーマを絞り、なんとか合わせて65分ほどで無事に終わりました。岡崎市医師会の田那村先生、お招き頂きありがとうございました。


IMG_20170616_195654.jpg


特に抗菌薬の使い方のところでは、この4月に新しい肺炎ガイドラインが発表されたこと、そして厚生労働省が抗菌薬の使い方に関して『抗微生物薬適正使用の手引き』を公表したこともあり、これまで申し上げていたことをさらにしっかりとお伝えする必要性を感じておりましたので、後援頂いた第一三共さんには配慮しつつも『ガイドライン』『手引き』の骨子をしっかりと解説させていただきました。第一三共さんはさすが、懐が深いですね。こういう講演で演者の好きなようにやらせていただけるのはありがたいことです。

トップページへ

posted by 長尾大志 at 23:57 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月16日

症例検討会BRONCHO10−1

症例 70歳代男性


<主訴>
発熱 全身倦怠感

<現病歴>
一昨日から家人が見るに少し歩きづらそうにしていた。昨日より40℃の発熱と倦怠感あり、発熱と同時に便が軟便となっていた。自宅で一晩様子を見ていたが解熱せず、本日朝当院救急外来を受診した。


<内服>
メネシット100mg 3錠分3
ミラペックス1.5mg 1錠分1
ミラペックス0.375mg 2錠分2
グリメピリド1mg 3錠分3
メトグルコ500mg 2錠分2
エクア50mg 2錠分2
アクトス15mg 0.5錠分1
オルメテック20mg 1錠分1
アムロジピン2.5mg 1錠分1
プラバスタチン10mg 1錠分1


<既往歴>
2型糖尿病
パーキンソン病

<家族歴>
母:パーキンソン病

<生活歴>
飲酒・喫煙:経験なし

<アレルギー>
食物:なし
薬剤:なし



Q:病歴から考えることは?

急性発症の発熱であり感染症を考えたい
誤嚥性肺炎の可能性もあるが軟便が不自然
尿路感染症があやしい
炎症性腸疾患がまず考えられる



Q:病歴で他にほしい情報は?

発熱と軟便以外に症状はあるのか
元々パーキンソンがあるがADLはいかほどか
嚥下はスムースか、誤嚥はないか
最近の活動範囲、訪問したところ


症例検討会BRONCHO

トップページへ

posted by 長尾大志 at 16:01 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月15日

症例検討会BRONCHO9−8

…で、スルッと終わろうかとも思いましたが、やっぱり感受性検査の見かたも、ごく簡単に説明しておきましょう。


昨日の表をご覧下さい。MICというのは、最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration)といい、その抗菌薬がどのくらいの濃さになったら菌が生えてこないかを表すものです。当然、数字が小さい方が、薬がよく効くということですが、菌と薬によって臨床的に「効く」かどうかを判定するMIC(=ブレイクポイント)が異なっています。


いちいちこちらでMIC値から判断するのも大変ですから、S:susceptible=感受性あり、I:intermediate=中間、R:resistant=耐性、 と表記してくれているのです。まあ、Sだったら効く、Rだったら効かない、Iだとケースバイケース、基本はSを選択する、みたいな感じで考えておかれるといいでしょう。


表ではABPC、ABPC/SBT、AMPC/CVA、CCLがRで、その他はSです。Sだったらどれも同じ、ということはなくて、やはり少ない量で効く=MICの小さなものが効果が高い、と考えていいでしょう。もちろん投与量にもよってくるのですが…。


というわけで、表内でS、中でもMIC値の少ない(1未満の)ものから選ぶと、CTRX(セフトリアキソン)やCTX(セフォタキシム)、それにペネムやキノロンとなるので、その中ではなるべく狭域のセフェムで、みたいなことになるわけです。


症例検討会BRONCHO

トップページへ

posted by 長尾大志 at 19:00 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月14日

症例検討会BRONCHO9−7

なぜか関西弁丸出しになってしまいましたが、カンファレンスではこんな感じだったりしますので、まあ臨場感があると思って頂ければ、


さて治療経過です。治療というものはある意味開始してからが勝負で、想定通りにことが進んでいるか、期待した効果が得られていないか、はたまた合併症・副作用が生じていないか、ということを考えながら経過を見るわけです。


肺炎だったら、そもそもの症状、すなわち発熱や呼吸状態がどのように変化しているかを見なくてはなりません。発熱はシンプルですが、呼吸状態だったらまず呼吸数。ハアハアしていたのが安らかな呼吸になっていたら、それは効果ありでしょう。


SpO2だって大事ですが、いつの間にか投与されている酸素流量が変わっていたりすることがあるのでご注意を。SpO2も血ガスも、同じ酸素の条件で比較しないと単純には評価できません。もちろん状態がずいぶん変わっているのに、無理やり同じ条件を維持する必要もありませんし、明らかに必要酸素流量が減っていればそれはめでたいことです。



で、本症例の経過ですが、3日目なのに解熱していません。うまくいっている×とはいいがたい。やっぱり経過がちょっと地味だし、グラム染色で見えた菌がGNRなので、H.influenzae⇒BLNARかなあ○。と考えるわけです。じゃあ、治療替えなアカンやろ○。


でも、PCsが効かない、イコール、ひょっとしたらレジオネラなんでしょうか×、とはならないでしょう。やっぱりレジオネラって、それなりの、それっぽい特徴(肺炎だけど肺だけじゃない)があって疑われるものであって、PCsが効かない、というキーワードだけで診断されるべきではないと考えます。


ということで、抗菌薬ABPC/SBTは効いていないのではないか、となったタイミングで、最近検査室から培養(H.influenzae)、および薬剤感受性結果がもたらされました。結果はこちら。


スライド15.JPG


Q:で、どうしますか?

男は黙ってそのまま継続!
CTRXに変更
治りが悪いのでMEPMを使っておこう
何にでも効くLVFXにしておこう



…これも、もういいですね。Qにするほどでもありませんでした。CTRXに変更です。MEPMやLVFXをこんなところで無駄遣いする意味がわかりません…。変更後はこういう経過でした。解熱してからは食事摂取も改善し、元気になられて退院となりました。


スライド16.JPG


症例検討会BRONCHO

トップページへ

posted by 長尾大志 at 13:36 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月13日

症例検討会BRONCHO9−6

肺炎といえば、もちろんグラム染色を見たい◎わけですが、尿中抗原については、過去の感染でも陽性になったりしますから、そこまで強く思うわけではありません。でもあれば参考にはなりますし、気軽ですから、まあ取っておきましょう○。


本症例で使うべき抗菌薬については、いささか難しくて、まずはペニシリンでいけばいい○、ってなものですが、ちょっと経過が長くて地味な症状が若干気になるのです。喀痰の確認と、ペニシリンできちんとよくなるかどうか、確認が必要です。


ただまあ、キノロンでいく△、という発想にはならないように思います。効くとは思いますが…。理由はさんざん書いていますので、改めて書くまでもないと思います。


ちなみに、塗抹でこんな感じの菌が見えました(本症例ではありませんが…汗)。どうしますか?


スライド13.JPG


こちらではABPC/SBTが開始されました。入院3日目までの経過表はこんな感じ。


スライド14.JPG



Q:評価はいかがですか

うまくいっている。このままでいきましょう。
どこがやねん!治療替えなアカンやろ。
やっぱり菌が○○○なので、○○○○○かなあ。
PCsが効かない、ひょっとしたら○○○○○なんでしょうか。


症例検討会BRONCHO

トップページへ

posted by 長尾大志 at 19:07 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月12日

症例検討会BRONCHO9−5

胸部X線写真の所見は、左下肺野のコンソリデーション◎ですね。左横隔膜が多少ぼやけているようでもあり、肋横角も若干鈍かもしれませんが、胸水の存在はハッキリしません△。


コンソリデーションのシルエットサインは、どの線とも陽性ではありません。まず心陰影と陰性なので下葉の陰影だろうと思われます。そういうわけで左上葉には特に異常はないと考えます。また、容量減少所見も認めないことから、この濃度上昇は無気肺ではない×とも考えます。



CTでは…


スライド11.JPG


スライド12.JPG


確かに左下葉のコンソリデーションでした。胸水はありません。というわけで、肺炎の診断でよいと思います。


<A-DROP>
年齢-
BUN上昇-
呼吸不全±呼吸数24回で軽度増加あり
意識障害-
血圧低下なし
→1-2点


一過性意識低下のエピソードがあり、頭部CTを撮影されていますが、脳に器質的な病変はなく、ECGも確認しましたが不整脈も認めませんでした。意識は来院時にはすっかり回復していました。



Q:さて肺炎、抗菌薬治療はどうしましょうか。できたら根拠も考えて頂きますようお願いします…。

グラム染色を見たい
まずはペニシリンで
ここはキノロンで
尿中抗原が見たい!どうしても!


症例検討会BRONCHO

トップページへ

posted by 長尾大志 at 20:41 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年06月11日

メディカ出版さんのeラーニングに参加

昨日のセミナーの後、打ち合わせが1件ありました。


メディカ出版さんが看護師さんやコメディカルスタッフさん向けの、eラーニングをやっておられるのですが、そこで流す動画を撮りませんか?というお話で、まだ先のことではありますが、参加させていただくことになったものです。


もう世の中、自施設スタッフの教育もアウトソーシングの流れなのですね。まあ確かに、なにかと当てにならない?医師とかに任せるよりも、標準的レベルの教育ができる方がいい、ということなのでしょうか。


しかもシステム化することで、各人の学び具合まで把握することができると。これはスゴイ。というか、某元看護師さんによれば「そんなところまで見られるのはかなわん」。確かに。


うちも大学としては、甚だチープなeラーニングしかありませんけど、大学教育もアウトソーシングされていくのかなあ、という感想を持ちました。そのぐらい、よくできているシステムなのですね。その気になればすぐに導入できそう。その場合、教員(私を含む)の仕事がなくなりそうではあります。いずれにしても、近い将来、大学教員の存在価値が問われるであろう、という危機感を念頭に、自分ならではの大学に、学生さんに貢献できることがらを追求していかなければなりません。

トップページへ

posted by 長尾大志 at 11:44 | Comment(0) | 活動報告