2017年08月31日

症例検討会BRONCHO18−4

胸部X線写真、見覚えのある画像じゃなかったですか?実は先週にも出てきた写真なのでした。先週は軽〜く「両側網状影、すりガラス影。両側肺門の拡大」といいましたが、少し詳しく、分布についても触れると、「両側、胸膜側・下肺野優位の網状影+すりガラス影、両側肺動脈影の径拡大あり」となるでしょう。


血液検査でSP-D、KL-6高値、そして両側、胸膜側・下肺野優位の網状影+すりガラス影ですから、間質性肺炎の存在を想起することは容易です。


間質性肺炎とすると、さらなる問題は、予後と治療を左右する分類の問題、まずは「特発性か、原因のあるものか」。


年齢・性別からも、他の症状からも、膠原病を示唆するものはありませんし、スクリーニング的に取られた自己抗体では陰性ばかりです。そして間質性肺炎を惹起する薬剤の服用、吸入物質もないようです。とすると特発性か…。


特発性としたら、HRCTによるパターン分類。そうです、HRCTが必要ですね。



<胸腹部単純CT>

スライド69.JPG


Q:HRCTの所見は?


症例検討会BRONCHO

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posted by 長尾大志 at 18:58 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年08月30日

症例検討会BRONCHO18−3

ここまで、というのは病歴と身体所見ですね。


心不全に関しては、病歴からはアリ(糖尿病、心筋梗塞の既往)ですが身体所見上は、頻脈、不整脈なく、頸静脈、心音/呼吸音などにも目立った所見がないことから、強く疑われる感じではありません。


COPDですと胸鎖乳突筋肥大など頸部の所見や、呼吸音の減弱、心尖拍動部の移動や濁音界の低下などが見られるものですが、それもなし。


両側下肺野優位にfine cracklesを聴取したことより、間質性肺炎の存在が考えられ、ばち指の存在もそれを裏付けるものです。


なお、慢性の肺血栓塞栓症を身体所見から否定するというのは困難ですが、少なくとも間質性肺炎よりは可能性が少なそうです。


皮疹なし、爪血管床発達なし、関節痛なし、朝のこわばりなし、レイノー現象なし、というのは、間質性肺炎に関連して、膠原病のスクリーニングをしている、と思って頂ければ。



そして糖尿病のコントロール状態ですが、前医での評価が入院時には届いておらず、現段階では詳細不明としておきます。少なくとも、眼底の評価(網膜症)、尿検査・腎機能検査(腎症)、神経症の評価を早い段階でしておく必要があるでしょう。



<入院時検査所見>
<血液検査>
HB (g/dl ) 16.5
WBC (1000 ) 9.6 H
SEG/NEUT (% ) 74.5 H
PLTS (1000 ) 221

TP (g/dl ) 7.7
ALB (g/dl ) 4.0
AST (U/l ) 22
ALT (U/l ) 16
LDH (U/l ) 358 H
ALP (U/l ) 257
G-GTP (U/l ) 39
T-BIL (mg/dl ) 0.58

NA (mmol/l) 142
CL (mmol/l) 105
K (mmol/l) 4.4
UN (mg/dl ) 22.3 H
CRE (mg/dl ) 0.99
eGFR ( ) 59.2

UA (mg/dl ) 6.5
CA (mg/dl ) 9.4
P (mg/dl ) 2.6

AMY (U/l ) 69
CPK (U/l ) 70

CRP (mg/dl ) 0.45 H

PT-INR ( ) 1.15
APTTP (秒 ) 33.2
Dダイマ- (μg/ml) 1.4 H
FIBG (mg/dl) 368

ケイコウ (倍 ) 40 未満
RF (IU/ml) 3
C-ANCA (U/mL ) 1.0 未満
P-ANCA (U/mL ) 1.0 未満
コウJO-1          (-)
コウARSコウタ        5.0 未満
抗CCP抗 (U/ml ) 0.6 未満
抗SS-A抗 (U/mL ) 1.0 未満

肺サーファクタ (ng/ml ) 363 H
KL-6 (U/ml ) 1682 H

A1C(NGSP (% ) 7.1 H
GLU (mg/dl) 241 H


<動脈血液ガス>安静時、nasal2L/min
PH ( ) 7.469 H
PCO2 (mmHg ) 31.1 L
PO2 (mmHg ) 52.4 L
HCO3 (mmol/l) 22.3
BE (mmol/l) 0.1
O2CT (ml/dl ) 19.4
O2SAT (% ) 87.9 L


<胸部Xp>

スライド68.JPG


Q:胸部X線写真の所見は?


Q:検査結果までふまえて、現段階での鑑別診断は?さらに必要な検査は?


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posted by 長尾大志 at 19:38 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年08月29日

症例検討会BRONCHO18−2

まず気になるのは、当然労作時呼吸困難や低酸素の状態でしょう。原因疾患は何か、低酸素は本当にHOTが必要な程度なのか、労作時呼吸困難が悪化した、その程度、悪化のスピードなど、気になる点が満載ですね。


そして糖尿病のコントロール状態。心筋梗塞を発症しているわけですから、そこそこ血管系に不具合が生じていそうです。メチコバール、キネダックと、神経症の薬も使われていますし、合併症の評価も必要でしょう。


労作時呼吸困難・低酸素の原因疾患としては種々の疾患が想定されますが、糖尿病の存在、心筋梗塞の既往から、合併症として心不全の有無を確認しておく必要はあるでしょう。




<入院時バイタルサイン>
BT 36.1 ℃, HR 68 mmHg, BP 105/68 mmHg, SpO2 90 %(安静時、nasal 2L/min) ※体動にて容易に70%台まで低下,RR 28/min


<入院時身体所見>
頭頸部:眼球結膜黄染・眼瞼結膜蒼白なし
    右眼球結膜に出血点あり
    頸部リンパ節腫脹なし
    胸鎖乳突筋肥大は明らかにはなし
    起坐位にて頸静脈怒張なし

胸部:心音 整、明らかな雑音なし ややII音亢進
   肺音 両側下肺野優位にfine crackles

腹部:平坦、軟、肝脾腫触知せず
   蠕動音正常

四肢:浮腫なし
   右足背に紫斑+右下肢静脈瘤あり
   ばち指+
   指先のチアノーゼあり

その他:皮疹なし、爪血管床発達なし、関節痛なし、朝のこわばりなし、レイノー現象なし


Q:ここまでで、呼吸困難・低酸素の原因疾患は何が考えられますか?

心不全
COPD
間質性肺炎
肺血栓塞栓症
その他


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posted by 長尾大志 at 18:14 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年08月28日

症例検討会BRONCHO18−1

症例 60歳代 男性


<主訴>
労作時の呼吸困難


<現病歴>
30年ほど前から2型糖尿病があり、長期間放置されていたが、数年前から近医糖尿病内科に通院していた。
数ヶ月ほど前から労作時呼吸困難があり、近医でHOT導入(nasal 2L/min)となった。その後も労作時呼吸困難が悪化し、当科紹介受診された。


<内服・吸入薬>
シムビコート 1日2回 2吸入
スピリーバ  1日1回 1吸入
バイアスピリン100mg1錠朝後
アマリール0.5mg 1錠朝後
エクア50mg 2錠分2朝夕後
メチコバール500μg 2錠分2朝夕後
キネダック 2錠分2朝夕後
エフィエント3.75mg 朝後
パリエット 10mg 朝後
リピトール 1錠分1朝後


<既往歴>
30歳代- 2型糖尿病
2年前  心筋梗塞(PCI)、白内障手術


<生活歴>
喫煙: 20-40本/日✕40年、50歳代以降禁煙
飲酒:ビール350ml1本/日程度
職業:自営業
粉塵暴露:なし
鳥類暴露:飼育なし、羽毛布団・ダウンジャケット使用なし、鶏糞の使用歴あり
住居:築50年木造
健康食品:特になし


<家族歴>
祖父:胃癌
母:胃癌、脳梗塞


<アレルギー>
特記なし
花粉症なし、喘息なし


Q:まず確認すべきこと(気になること)は?


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posted by 長尾大志 at 17:46 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年08月27日

メディカ出版看護セミナー『よくみる症例から学ぶ 呼吸器疾患〜おさえておきたい観察ポイント〜』と収録をしてきました

一昨日は収録1件。ケアネットさんでまた番組をやらせていただきます。また詳細が固まりましたら告知しますね。


そして昨日は、メディカ出版さんの看護セミナーで、『よくみる症例から学ぶ 呼吸器疾患〜おさえておきたい観察ポイント〜』というタイトルのお話をさせていただいておりました。なんだかんだでこちらの更新ができておりませんでしてご心配をおかけしました。


昨日も熱心な参加者の方々にたくさんご質問を頂き、なるほどこういうポイントがあるのだな、とよくわかりました。「急性期・術後の呼吸器ケア」偏に参加されていた、熱心な方もちらほら。


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昨今の事情から会場写真のupができず、食べ物写真になりがち…ですが、帰りの富士山「奇跡の瞬間」美しい夕焼けでした。外が暗くて室内が映り込んでおりますが…。

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posted by 長尾大志 at 19:53 | Comment(0) | 活動報告

2017年08月25日

症例検討会BRONCHO番外編・胸部の画像で見ッテQ!5

昨日の写真、いかがでしたか?


正解は「両側網状影、すりガラス影。両側肺門の拡大」でした。ただの網状影+すりガラスだけではありませんね。


さてそれではこれから私、東京へ向かいます。夕方にとある収録です。これはかな〜り楽しみです。それから明日のメディカ出版さんセミナーにご参加の方、よろしくお願い申し上げます。


『よくみる症例から学ぶ 呼吸器疾患〜おさえておきたい観察ポイント〜』
http://www.medica.co.jp/seminar/detail/171


あ、昨日の画像は、よ〜く覚えておいて下さいね。


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posted by 長尾大志 at 12:09 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年08月24日

症例検討会BRONCHO番外編・胸部の画像で見ッテQ!4

昨日の画像も、論理的思考を働かせて読影して下さい。


正解は、「右中葉の結節影。右肺門、および気管分岐部、それから傍気管リンパ節腫脹」です。


それでは、このシリーズも一旦終わり、最後の問題です。


スライド68.JPG


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posted by 長尾大志 at 19:13 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年08月23日

症例検討会BRONCHO番外編・胸部の画像で見ッテQ!3

昨日の画像も、順番にちゃんと読んだら、難しくはありませんね。


正解は「左上葉無気肺」でした。


それでは今日の1枚。


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posted by 長尾大志 at 22:10 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年08月22日

症例検討会BRONCHO番外編・胸部の画像で見ッテQ!2

昨日の画像はおわかりでしたか?


お、めっちゃ簡単やん、ついに長尾先生、多忙のあまりちょっとアレになった?と思われた方もおられるかも知れません。まあ、初老ですから…。イヤイヤ。


ちゃんと意図があって出題しておりますよ。


いや、結節がある、そりゃわかるでしょう。どこに思考力が要るのか。それはその結節の「場所」です。長尾先生アレやな、と思われた方、場所まできちんと答えられたのでしょうね?



正解は「右の下葉に結節影」ですよ。


それでは今日の1枚。


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posted by 長尾大志 at 21:10 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

メディカ出版看護セミナー『よくみる症例から学ぶ 呼吸器疾患〜おさえておきたい観察ポイント〜』今週末です

今週末に迫っておりましたのに、すっかり告知を忘れておりました。


・メディカ出版看護セミナー『よくみる症例から学ぶ 呼吸器疾患〜おさえておきたい観察ポイント〜』
http://www.medica.co.jp/seminar/detail/171
東京 8月26日(土) 建築会館 1階ホール 9時〜


呼吸器疾患の看護に役立つ「考え方」が定着するように、肺と呼吸の基礎から診察のやり方をマスターして頂き、さらによくある疾患で「何が起こっているのか」を知ることで、各々の現場で、丸暗記でなくきちんと考えて対処出来るようになって頂きたい。現場力を上げましょう。

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posted by 長尾大志 at 08:21 | Comment(0) | 活動報告

2017年08月21日

症例検討会BRONCHO番外編・胸部の画像で見ッテQ!1

今日は(も)やることがギチギチで、あっという間に日が暮れてしまいました。ということで、今日は「胸部の画像で見ッテQ!」をお送りいたします。こかで聞いたようなタイトルですが…BRONCHOで取り上げてもいいくらい、思考力を要する画像だと思いますので、手抜きだと思わず(苦笑)チャレンジしてみて下さい。


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posted by 長尾大志 at 19:10 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年08月20日

福岡大学呼吸器若手育成セミナー「呼吸生理と血ガスの見かた/人工呼吸器の考え方」無事に終えました。

そういうわけで、昨日は福岡大学の石井寛先生にお招き頂き、呼吸器若手育成セミナーで「呼吸生理と血ガスの見かた/人工呼吸器の考え方」のお話をさせて頂きました。


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福岡大学さんには初めて伺いましたが、地下鉄直結で便利!ステキな環境でうらやましい限りです。


講演は、呼吸生理の基礎と人工呼吸器についてがテーマでしたが、聴かれる方が医学生さん、看護師さん、理学療法士さん、それに初期研修医から呼吸器内科の先生方、ということで、呼吸生理は基礎的なことから、血ガス〜人工呼吸器のところは、結構応用の利く、「どう考えて設定をするか」といったところまで、結構欲張って詰め込みました。時間的にも収まって安堵しました。


肝心の内容も、概ね皆さんに喜んで頂けたようで、こちらもホッとしました。


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石井先生と獺祭スパークリングと。


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拙著の読者の方もたくさん。サイン会?も盛況でした。何よりうれしかったのは、「学生の時呼吸器に苦手意識があったのが、先生の本を読んで呼吸器に興味がでて、進路も呼吸器を選択したんです!会えてうれしいです!」と言っていただけたこと。これまで自分がやってきたこと、苦労が報われた、そんな風に感じられました。なかなか教育に携わって、報われたと実感できることってないんですが、本当によかったです。


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さてお料理も、インスタ映え?する見た目、お味も素晴らしく、幸せなひとときでした。


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思わず写真を撮りたくなりますね!


石井寛先生はじめ福岡大学の先生方、いろいろお世話になりまして、ありがとうございました!
今後ともよろしくお願い申し上げます。

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posted by 長尾大志 at 15:56 | Comment(0) | 活動報告

福岡大学にお邪魔しました。

今日は、福岡大学の石井寛先生にお招き頂き、呼吸器若手育成セミナー「呼吸生理と血ガスの見かた/人工呼吸器の考え方」というタイトルでお話しさせて頂きました。


終了後たくさんの方とお話しさせて頂いたのですが、大変多くの気づきがあり、ちょっとまたこれからのプレゼンに革命が起きそうです。


気付けば…ああ…日付が変わっておりました。現場リポートは明日(今日)に。

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posted by 長尾大志 at 00:00 | Comment(0) | 活動報告

2017年08月18日

症例検討会BRONCHO17−6

HRCTでUIPパターンと判断され、病歴、身体所見から膠原病やじん肺、過敏性肺炎である可能性は低く、血液検査では自己抗体の有意な上昇がないことから、UIPパターンを持つ間質性肺炎で、原因となるものがない、特発性肺線維症と考えられました。


現状の評価として、


肺機能検査:%VC 61.6%で拘束性障害、FVC実測値2.25L %FVC 60.0%
%DLCO 38.4%で拡散障害あり。


動脈血ガス検査:室内気、安静時でPaO2 96.4Torr、A-aDO2 8.7と開大なし。


6分間歩行試験では歩行負荷にてSpO2 96%→89%と低下したものの、修正Borgスケール2と息切れ感は著しいものではない。


安静時PaO2≧80Torrであり、特発性肺線維症の重症度分類判定表によって、重症度はTとなりますが、特発性肺線維症として指定難病申請を行うことが可能です。将来高額な抗線維化薬を使用することを念頭に置くのであれば、指定難病の申請を行っておくことは有用でしょう。


また、在宅酸素療法の保険適用基準にある『労作時の著しい低酸素』、これは微妙です。ここの判断にはあまり客観的な指標はなく、主治医の主観に任されている面が大きいでしょうから、在宅酸素については症状、経過、患者さんの希望などから導入を決めていくことになるでしょう。


治療介入としては、間違いなく取り入れるべきものとして急性増悪の予防(うがい、手洗い、感冒時の対処)、肺癌の定期的スクリーニングなどがありますが、それはわかってるけど、治療薬はどうなんだ、という話ですよね。


特発性肺線維症ですから、ステロイド、免疫抑制薬は使いません。これはいいですね。


では抗線維化薬は?これまでにもさんざん書きましたが、難しいところですね。その判断は専門医に任せて下さい、といいたいところですが、1つの目安として、悪化傾向がどの程度か、ということがあります。


それもいろいろな指標がありますが、1つご紹介しておくのはFVCの低下度合い。これは予後予測因子として知られていますし、ニンテダニブの臨床試験でも取り入れられています。これが半年で5〜10%以上低下していると、ちょっとヤバい、なんとか悪化を食い止めたい、そういうニュアンスになろうかと思います。


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posted by 長尾大志 at 18:38 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年08月17日

症例検討会BRONCHO17−5

胸部CTでは、立派な蜂巣肺が、胸膜直下、肺底部優位に認められます。UIPパターンといっていいでしょう。


UIPパターンをもつ間質性肺炎の予後や治療方針などを決める上で大切なことは、原因があるものかどうかどうかです。これは検査というよりも病歴が大きなウエイトを占めます。


例えば鳥関連抗原が原因の慢性過敏性肺炎であれば抗原回避が大切ですし、薬剤が原因であれば中止しなくてはならないことが多い。膠原病があれば、一般的に特発性よりは予後がよく、ステロイドを試してみようという気になる、などなど、原因があるものかどうかは大切な要素です。原因のあるなしは、病歴をしっかり聴取するとある程度はわかります。


また、膠原病については、病歴上症状がなくても、スクリーニングで自己抗体を測定することでわかることもあります。ですから検査も必要、となります。


そして、重症度や現在の状態を知るために行う検査としては、

  • 呼吸機能検査(肺機能検査)特にFVCとDLco

  • 動脈血ガス・A-aDO2

  • 労作時の酸素飽和度低下


が挙げられます。


ですから追加でさらにほしい検査は、労作時の酸素飽和度低下を調べる、6分間歩行試験、これをやりました。


<6分間歩行試験>
       SpO2(%)  HR(bpm)
安静時   96       97
1分     91       101
2分     89       111
3分     90       112
4分     89       111
5分     89       113
6分     90       114

・移動距離  392m

・修正Borgスケール
安静時:呼吸0  倦怠感0 
終了時:呼吸2  倦怠感0.5



Q:診断は?評価は?治療方針は?


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posted by 長尾大志 at 18:51 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年08月16日

症例検討会BRONCHO17−4

胸部X線写真では、両側下肺野優位にすりガラス影〜網状影を認めます。明らかな蜂巣肺、とまではいえませんが、UIPパターンに似た像です。3ヶ月前と比較すると…


スライド65.JPG


陰影は少し増えてきているようです。


間質性肺炎のさらなる診断のためには、胸部CTは必須でしょう。


<胸部CT>

スライド66.JPG


スライド67.JPG



Q:胸部CTの所見は?


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posted by 長尾大志 at 19:15 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年08月15日

症例検討会BRONCHO17−3

やった検査は以下の通りです。両下肺野にfine cracklesを聴取し、間質性肺炎の可能性があったので、膠原病や血管炎のスクリーニングもある程度行われています(注:ウチで間質性肺炎症例では必ずこの項目を取る、ということではありません)。


<入院時検査所見>
TPLA- HBs-Ag- HCV-Ab-

<血液検査>
抗核抗体40倍
C-ANCA 1.0 未満
P-ANCA 1.0 未満
コウJO-1 陰性
抗CCP抗 (U/ml ) 0.6 未満
抗SS-A抗 (U/mL) 1.0 未満

HB (g/dl ) 12.4
PLTS (1000 ) 176
RBC (1000000 ) 3.74 L
WBC (1000 ) 5.3
APTTC (秒 ) 29.0
PT-INR ( ) 1.01
Dダイマ- (μg/ml ) 0.3
ホタイカ (U/ml ) 61.1 H
TP (g/dl ) 7.2
ALB (g/dl ) 3.8 L
AST (U/l ) 24
ALT (U/l ) 17
ALP (U/l ) 118
G-GTP (U/l ) 34
T-BIL (mg/dl ) 1.32 H
NA (mmol/l) 139
CL (mmol/l) 103
K (mmol/l) 4.0
UN (mg/dl ) 20.5
CRE (mg/dl ) 0.81
eGFR ( ) 72.2
UA (mg/dl ) 6.5
CA (mg/dl ) 9.2
P (mg/dl ) 3.7
T-CHO (mg/dl ) 158
TG (mg/dl ) 65
HDL-C (mg/dl ) 62
LDL-C (mg/dl ) 73
IG-G (mg/dl ) 1628
IG-M (mg/dl ) 22 L
IG-A (mg/dl ) 525 H
C3 (mg/dl ) 96
C4 (mg/dl ) 20
CRP (mg/dl ) 0.67 H
RF (IU/ml ) 2
BNP (pg/ml ) 14.50
GLU (mg/dl ) 92
A1C(NGSP (% ) 5.8
F-T4 (ng/dl ) 1.13
F-T3 (pg/ml ) 2.8
TSH (μIU/ml) 2.72
KL-6 (U/ml ) 852 H
FERRITIN (ng/ml ) 191.5
SP-D (ng/ml ) 341 H


<動脈血ガス検査>(室内気)
PH ( ) 7.432
PCO2 (mmHg ) 38.1
PO2 (mmHg ) 96.4
HCO3 (mmol/l) 24.9
A-aDO2 8.7


<肺機能検査> 
VC:実測値2.38L %VC 61.6%
FVC:実測値2.25L %FVC 60.0%
FEV1.0:実測値1.84L %FEV1.0 60.5%
FEV1.0%:81.88%
%DLCO:38.4%


<心電図>
一度房室ブロックあり


<心エコー>
EF 62.7%
TR TRPG:29.5mmHg RAPs:3 mmHg RVPs:32.5mmHg
IVC IVC(i):5.7mm IVC(e):12.6mm 呼吸性変動あり


<胸部X-p>

スライド64.JPG


Q:胸部X線写真の所見は?さらにほしい検査は?


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posted by 長尾大志 at 14:54 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年08月14日

症例検討会BRONCHO17−2

この病歴は生活歴周りのこと中心に、結構いろいろと聴いてくれています。きっと『間質性肺炎疑い』ということで、研修医の先生も張り切って下さったのでしょう。


それであればこそ、病歴をもう少し掘り下げてほしかった気がします。現病歴に、(主訴にある)労作時の息切れに関する記載がありませんし、膠原病や血管炎などを連想させる、肺外の症状についても記載されていません。


病歴には、こういう症状が「ある」という情報も大事ですが、こういう症状が「ない」という情報もまた重要です。陰性情報も書かなきゃわからない。「なかったんだから書かなくてもいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、書いてないことは「ない」のではなく、「見てない」「聴いてない」ということにしかならないのです。これは肝に銘じておきましょう。


本人の自覚症状として最近(ここ半年程度)労作時息切れの訴えがあり、妻によると数年前から歩く速度が遅くなってきたとのことで、かなり前から無意識に歩行をセーブしていたようです。


また、肺外の症状に関しては、明らかなものはありませんでした。



<入院時身体所見>
<バイタルサイン>
体温36.3度 脈拍数85回/分 血圧129/69 SpO2 96%(室内気、安静時)


<身体所見>
眼球結膜黄染なし
眼瞼結膜貧血なし
頸部リンパ節腫脹なし
頸部血管雑音なし
呼吸音:両下肺野にfine crackles聴取
心音:整・明らかな雑音はなし
上肢:ばち指なし、Gottron兆候なし、皮膚硬化なし、指の腫脹なし
下肢:浮腫なし・後脛骨動脈触知・足背動脈触知
皮疹なし



Q:必要な検査は?もう早く画像を見たいですか?


症例検討会BRONCHO

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posted by 長尾大志 at 19:03 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2017年08月13日

「フィードバック」で人は育つのか

評価にしてもフィードバックは必要、とはよくいわれています。そりゃそうですね。でも、20代半ばのいい年こいた人が、「あなたの行動がこうだから直しなさいよ」といわれて、「はいそうですか」と直すのか、という話です。


ただでさえ、その年代の人たちは「ほめられて育った世代」今年の日本医事新報の正月号にも書きましたが、ここ1-2年で、学生さんのメンタリティはかなり変質してきているように思われます。


それで思うのが、個々の具体的な「行動」よりも、基本的メンタリティの方がずっと重要ではないか、ということ。それは「他人に対して誠意があるか」「勉強をし続ける覚悟があるか」みたいなことになるように思います。


でも25歳にもなったいい大人の、基本的なメンタリティなんて、どうやったら変わるのか。教育で変えられるのか。これのエビデンスもほしいところですが、もし変えられないとしたら、アドミッションポリシー(要は入試、選考の基準みたいなもの)はめちゃくちゃ大事ですよね。でも、これまではそれが全く以てないがしろにされてきたのです。まあそれでも何となく医者はできていたわけですが。


メンタリティができていれば、行動は後からついてくるもの。具体的な行動の方法論は、できた上級医の背中を見ればよい。患者さんとのやりとり。ちょっとしたひとことが患者さんにとってどれほど大きなことか。わかっている人なら、何度か見ればできるようになるはずなのです。


実際、現場で実習をやっていて、学生さんの心に訴えかけるのはそのあたりのことなのかなあと思いますし、現場でできるのはやはり見せることしかないと思うのです。でも、カリキュラムを決める方々には、よくわからない理論ではなく、現実を見て物事を決めて頂きたいと切に願います。

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2017年08月12日

「評価」で人は育つのか

今年度になって、まあ、いろいろな事情があって、学生の臨床実習と、初期研修医の研修における「評価」がかなりスケールアップしました。


スケールアップ、というのは、決してグレードアップではなく、評価の項目がやたら多くなり、細かくなったことのみを指します。


ルーブリックという、「こういうことが出来る」系の具体例が採点基準となっていて、めっちゃできる=松、まあまあ=竹、あまりできていない=梅、的に、行動を観察して評価を当てはめていく形式です。多くの大学などで導入されているようですから、評価するかされるか、経験された方もおられるでしょうが、実際にやっておられない方には、ちょっとイメージが湧きにくいかもしれません。


私は少し前にアクティブ・ラーニングに関する通信講座を受けた際に、初めてルーブリックというものを学びました。その時には、「レポートや小論文の採点をするのには便利だなあ」という印象しかありませんでしたが、これを行動の観察にも用いる、と聞いたときには、ちょっと違和感を覚えたものです。


神戸大学の岩田健太郎先生が週刊医学会新聞の連載『ジェネシャリスト宣言』で以前書かれていたのですが、「医学教育の専門家は『データは集めれば集めるほどよい』という信憑にとりつかれていて、やたらとそうした妥当性に低い情報を集めたがる」「評価されている側がその評価を妥当であると感じているかが大事なのに、実際はそう感じていない」まさにその通りです。


医学教育学会で教育の専門家の方々による発表を拝見していても、データを集めて「発表のための研究」となっているものがあるのですね。もちろん数は少ないのですが、「それで、どう育てるのか」という理念がない。


本気でエビデンスを構築するつもりならば、1〜2年でお手軽にできるような、「アンケート」結果でものをいうのではなく、実際にそういうカリキュラムにしたらアウトカムはどうだった、どういうドクターが増えた、そこまで意識して研究をすべきでしょう。

そういう長期的な視点で研究ができないのが、現在の日本の研究者が置かれている状況…という話はまた別の話ですね。


エビデンスがないのに空論だけで体制が決められ、書類とデータ入力の事務作業がどんどん増える教員が、本当に大切な「プロフェッショナリズム」を後輩に教える暇もなくなっている、というのが現状ではないでしょうか。


それこそ今盛んにいわれている「プロフェッショナリズム」。これも岩田先生が書かれていたことですが、プロフェッショナリズムを「評価して」、その評価されている現場での医師の行為は、本当にプロフェッショナルか、という疑問があります。プロフェッショナリズムとは、たれも見ていないときでも同じように行動出来ることで、見られていないとできないのは偽りのプロフェッショナリズムだと。


ガチガチの評価をすることで、却って、「評価されているときだけ上辺を繕った行動を取ればいい」という、昨今問題になっている「バレなければいい」メンタリティを産む土壌になるのではないか、とも述べておられ、これにも強く同意するものであります。


プロフェッショナリズムは、「理想的な」行動をなぞることではなく、上級医が背中を見せてこそ涵養されるものではないか、と考えますが、ここで難しいのが「その上級医が必ずしもプロフェッショナリズムを持っていないのではないか」というところ。


ここだけの話、昨今話題?の新専門医制度ですが、あれを…(以下、やっぱりここで書くのは止めておきます)

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