2021年05月31日

胸部X線写真・側面像の見かた6・横隔膜〜肋骨線

左右横隔膜の見分け、特に左右が重なり合う感じで見えるときにはちょっと難しく感じますが、これにも読影のコツがあります。

正面像からもわかるように、基本的には、右が上、左が下、なのですが、RL像だと宣言に近い右がより拡大されて下方に映ることから、左右が重なり合う感じで見えることがあるわけです。それでは左右の差はどこで見分けるか。

@右側は肋骨線が外側に見える、その続きが右横隔膜
 右がより拡大されることから、後肋骨線がより外側に見えるはずです。キッチリ真横から撮影された場合には。撮影が斜めであると、その限りではありません。

A心臓は通常左横隔膜に乗るので、左横隔膜は心臓と重なるあたりで消える

ということを意識して追いかけていただくと、この写真のように右(紫)、左(赤)が認識していただけるかと思います。

スライド16.JPG


これらの「正常で見られる線」を認識していただき、それとの位置関係やシルエットサインなどから大体の位置を推測します。ただ側面像は正面像以上に重なりが多く、特に「右にあるのか左にあるのか」を認識するのは至難の業です。あくまで正面像を補完するものとして、ご利用は計画的に。

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posted by 長尾大志 at 14:10 | Comment(0) | 胸部X線道場

2021年05月30日

胸部X線写真・側面像の見かた5・大動脈

続いて大動脈を確認しましょう。側面では上行〜弓〜下行の一部がよく見えますが、下行大動脈の下部は接線が出にくいため、側面像ではあまり見えないことが多いです。

スライド13.JPG

ここらあたりの接線を見ていることになりますね。

スライド14.JPG

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posted by 長尾大志 at 11:23 | Comment(0) | 胸部X線道場

2021年05月29日

鹿児島生協病院・鹿児島民医連にて 後期研修Webセミナー

去る27日、鹿児島生協病院さんのお誘いで『後期研修Webセミナー』をさせていただきました。

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こちらは鹿児島民医連の関連のクローズドな会でしたので、事前告知は致しませんでしたが、専攻医の先生方の症例ベースのご質問、日ごろの疑問にお答えし、プラスショートレクチャー、みたいな感じで、進行役の小松先生がキッチリとプログラムを作っていただき、あっという間の2時間+懇親会、でした。小松先生、何から何までお世話になり、ありがとうございました!

3年前に奄美大島でご一緒した先生方にもご参加いただき、大変懐かしく、また行きたいなーとの思いが強くなりました。平元先生、このたびのご縁を頂きありがとうございました!!是非再訪の機会を!

コロナ禍でこういう機会がずいぶん減っておりましたが、今後ぼつぼつと再開しつつありますね。いろいろと展開を期待しております。お気軽にご用命ください!

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posted by 長尾大志 at 16:15 | Comment(2) | 活動報告

2021年05月28日

胸部X線写真・側面像の見かた4・心陰影

続いてどこを見るかは人それぞれですが、順番的に正面に準じて、心陰影を見ましょうか。

心陰影の意味合いは、当たり前ですが正面像とは違う場所に線が描出されることに注意してください。正面像では右2弓が右房、左4弓が左室と接するはずですが、側面像の前縁が右室、後縁上部が左房、下部が左室と接します。心拡大があると角度が少し変わることがあるのと、後縁上部が見えにくいこともあります。

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イメージ的に正面像と同じ部位を同じ色にしてあります。前縁は肺の左舌区、後縁は左下葉に接しますので、正面像同様シルエットサインを使えば接する病変を認識することも可能です。

CT像ではここが接してるなあ、ということがおわかりいただけますでしょうか。

スライド12.JPG

こんな感じで接線が出ていて、側面像でここの接線が前縁(緑)、後縁(橙)の線として認識されるわけです。

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posted by 長尾大志 at 14:08 | Comment(0) | 胸部X線道場

2021年05月27日

胸部X線写真・側面像の見かた3

左右の上葉口が本管から分岐するあたりの、短軸方向で丸く切れるところは基本的に気管と重なって見えるはずで、右の方が左よりも上方に存在します……というところを図にするとこんな感じです。

スライド14.JPG

5/25の元々の写真で、丸く黒い部分を探してみてください。

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posted by 長尾大志 at 11:54 | Comment(0) | 胸部X線道場

2021年05月26日

胸部X線写真・側面像の見かた2

正面像で物陰になる、心臓、横隔膜、縦隔、骨の裏にあたるような場所は、側面の方が見やすい場面があります。肺野をできるだけ広く投影するために、通常は左側面像を撮影しますが、右側に病変がある(ことがわかっている)場合には右側面像を撮ることもあります。

側面像はまっすぐ撮れないこともあったりすること、そして正面以上に(分厚いために)「重なり」が多くなるため、なかなか見にくいことも多いかなあと思います。それでも見かたは正面像と変わるものではなく、まずは「正常で見えるもの」を正しく認識するところからスタートです。

まずは、気管を見つけましょう。

スライド10.JPG

気管を見つけたら、そのまま左右の上葉口を見つけにいきます。上葉の入り口は本管から分岐するときに上向きに曲がっていきますが、ちょうど短軸方向で丸く切れるところがあるはずです。基本的に気管と重なって見えるはずで、右の方が左よりも上方に存在します。

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posted by 長尾大志 at 13:45 | Comment(0) | 胸部X線道場

2021年05月25日

胸部X線写真・側面像の見かた1

最近、というか、以前から、ありがたいことに胸部画像、特に胸部単純X線写真の読影についてお話をさせていただくことが多いのですが、その際に主に開業医の先生方からいただくご質問として、側面像の読影についてがあります。

これは至極当然のことで、開業されている先生の多くはCTへのアクセスが、少しハードルが高い。ご施設では側面像までしか撮影ができない、という事情があって、側面像でなんとか病変にアプローチできないか?というご質問をいただくわけです。

実際問題、私が普段診療をしている大学病院では(幸か不幸か)CTへのアクセスが非常に容易で、研修医の先生方も簡単に(と言うと語弊がありますが…)CTを撮影できるわけです。特に救急の当直、初診外来を担当していると、特に救急の現場でCTでないと見えないものを見逃すということはあってはならず、それを避けるためにCTは多用される傾向にあるかと思います。

そういうこともあって、研修医の先生は「単純側面像」を撮られることはなく、結果、私自身の手持ち画像にも側面像がない…なので教えない…ますます撮らない…という悪循環?で、なかなか側面を撮りましょうという話にならないのです。

また、理由の一つとして「側面像でないと見えない陰影」がそれほど多くはないということもあるでしょう。もちろんそういう陰影もあるということは承知しています。側面でないと見えない場合にはもちろん側面像でフォローをしますが、正面像で事足りる場合は正面像でフォローをするということになるかと思います。フォローアップという意味でも、正面でも見えるものを側面像もわざわざ撮るのはハードルが高い。体の厚さが前後(径)と左右(径)では左右の方が大きく、側面像の方が浴びるX線線量が多くなります。ということもあり、そのリスクとベネフィットを天秤にかけて考えるに、全ての症例に対して側面像を撮影することはメリットが大きくないのかなと考えられます。

そして健診(スクリーニング)の場合ですが、スクリーニングにおいてもやはりある一定の確率で、「正面像では見えないけれども側面像でだけ見える」という像が存在する可能性があるわけですが、そういう事例のためにすべての健診症例に対して(正面像よりも高線量の)側面像を撮影する意義があるかという話になるということです。

以上のような理由から、側面像をたくさん見る機会というのはなかなか昨今では失われていますが、さはさりながら、側面像の見え方、何が見えているか・どう見えているかということを知っておくことは、側面像のフォローアップをしたりするにあたって大事なことかと思いますので、ある程度側面像が集まったこの段階で一度まとめておきたいと思います。今後の私の「胸部X線写真読影」系講演では、下のスライドが出てくるかもしれません笑。

スライド4.JPG

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posted by 長尾大志 at 16:12 | Comment(0) | 胸部X線道場

2021年05月24日

COPDとその増悪について、再考7

先にも述べましたが、増悪に関する話をすると必ず問題になるのが、肺炎が起こっている場合です。もともとCOPDでは気道のクリアランスも良くないですし、しばしば肺炎を起こしてくることが知られています。で、肺炎を起こすと基礎の状態よりも、一段階悪くなるわけです。健康な方でも、肺炎を起こすと呼吸状態も悪くなりますし、痰も増えるし咳も増えるし息も苦しくなる。ということはCOPDに肺炎が合併すると、当然普段よりも状態が悪くなる。それを「増悪」と呼ぶかどうか、ということです。

ここは問題というか、実ははっきりして決まってないというか、恣意的な部分もあり、必ずしも明らかに「肺炎だけ」が起こっているという場合は増悪に入れないという考え方があるのです。ガイドラインを作っている委員の先生方の立場にもよりますが、肺炎を増悪に入れてしまうと、「使用することで肺炎の頻度が高くなる薬剤」が不利になる、的な事情もあったりなかったりラジバンダリ。まあ、「増悪はあくまでCOPDそのものの『閉塞性障害』の悪化を言うのだ」と言われればそうですが。

例えばCOPD症例で肺炎が合併したことによって、普段よりは状態が悪い。呼吸音ではもちろんクラックルは聞こえるにしても、狭窄音(音連続性ラ音)方が聞こえない、というようなケースであれば、これはただただCOPDに肺炎が乗っかってきた(COPDプラス肺炎)けれども、COPDそのものの増悪ということにはしないという立場もあるわけです。

そういう時は抗菌薬は使うものの、全身ステロイドは使わないと。

実際、症例を色々みていると、その治療でよくなるケースも結構あるものです。なのでちょっとそういうところが定義であったり考え方であったり、少し違ったりするところもあるのかなという風には思います。

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posted by 長尾大志 at 14:39 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

2021年05月23日

COPDとその増悪について、再考6

もう一つは増悪時にステロイド薬を使うのかどうか。特に全身ステロイドです。吸入ステロイドは増悪時みたいな時には使わないので、増悪時に全身ステロイドを使うかどうかがしばしば問題になります。

なんとなくの目安というか、特に非専門の先生であったりあるいは初期研修医の先生にお話をするときにある程度割り切って申し上げているのが、今ゼーゼーいってる、wheezesとかrhonchiとかそういう狭窄音(連続性ラ音)が身体所見として表現されている場合は、ステロイドを使ってもいいのではないかみたいな、クリアカットにお話しすると、そういうことになるかなと思います。

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posted by 長尾大志 at 15:32 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

2021年05月22日

COPDとその増悪について、再考5

まあ、昔は「肺は元々無菌で、そこに菌が入って肺炎になる」みたいなことが言われていて、私もなんとなくそう信じていたわけですが、これだけ外部と「ツーツー」で空気が入っている場所が無菌はありえんですよね…。あくまで菌の「パワーバランスの変化」で下気道感染症がおこると。


最後に北海道大学の鈴木先生から、「頻回増悪者とはどのようなタイプなのか?日本人集団に注目して」というタイトルでお話を頂きました。

頻回増悪者は1秒量も低め、予後も悪い、QOLも悪い、繰り返しやすい、やせ、などそりゃそうだ、というものが関与しているとこれまでに分かっています。

北海道コホートでは「臨床的に喘息」と考えられる症例は除外されていますが、それでも頻回増悪者の中に好酸球増多(≧300μL)、アトピー素因、気道可逆性がある!検査結果が得られた症例が少なからず含まれていて、ICSを使うと増悪が減った、予後が改善した、という結果が得られています。そして検査所見が喘息様でなくてICSを使った方は予後が悪かったと。ここでも…うーむ。

ということで、こちらのシンポジウムではどちらかというと「喘息という診断がなくても、末梢血好酸球が高いようなときにはICSを足していっていいのでは」という結論になってきたわけですが、当初の疑問「増悪時に抗菌薬を使うか」問題には明確な回答が得られずじまいでした。


でまあ現状の私の理解としては、一つの目安としては喀痰を調べて膿性痰があるとか、グラム染色して好中球がうじゃうじゃいるとか、それからもちろん肺炎球菌、インフルエンザ桿菌他プロテオバクテリア門、そういう気道感染症を起こすような菌がうじゃうじゃ見えたり、ということになると、迷わず抗菌薬を使ってもいいですよねという話になる。これは議論の余地なしで、もう一つの要素として発熱があったり、炎症反応というのがしっかり出ているようであれば、抗菌薬を使うということで今はやっているかなあと思います。

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posted by 長尾大志 at 13:27 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

2021年05月21日

COPDとその増悪について、再考4

長瀬先生のご講演では、なんにしても、COPD好酸球増多群では、増多していない群に比べて、増悪時のステロイドが効果的(ただし再増悪が多いかもしれない)であり、逆もまたそうである、つまりCOPDで好酸球が増多していない群では、増悪時のステロイドが効かないというか悪さするかも、という研究が紹介されました。まあ考えてみればそうかなという感じですが、このあたりも喘息成分が入っている、と解釈した方が納得しやすいところではあります。

とはいえ、一方で、喘息とCOPDの定義そのものが、(特に喘息)実のところガチっと決まっていないがゆえに、「好酸球が多かったらステロイドを」みたいな、ガチっと診断しなくても治療方針は決まるような論調になっているのかなあと感じました。

さらにはそういう症例で、IL-5抗体を使ってもいいのでは…となって、ああ、そういうことですか、となりました笑。

逆に好酸球が少ないような症例でも、増悪時に漫然とステロイドを使うことは、ひょっとすると今後のガイドラインでは見直されるかもしれない、という講演後の座長の先生からのコメントもありました。

続きまして、秋田大学の中山先生によります、「好中球性炎症(気道感染)による増悪」。

従来無菌とされてきた下気道にも細菌叢が存在していることが明らかになり、COPDや喫煙者だと粘膜の破綻などによってそれのバランスが崩れる、というところが増悪の原因ではないか、というお話でした。

たくさんの刺激的なお話がありましたが、長瀬先生のお話にも関連して、好酸球性炎症のある気道の方が細菌叢の多様性が高く、予後がよい、COPDや好中球性炎症があると細菌でもプロテオバクテリア門(ヘモフィルスやモラキセラ、シュードモナス属といった、毎度おなじみの菌群)が増え、多様性が失われる。COPDが重症になったり増悪したりするとプロテオバクテリア門が増えてファーミキューテス門(ストレプトコッカスやベイロネラ(歯垢菌)属)が減る、といった、なんとなく普段の喀痰を見ていて感じていたことが、もう遺伝子レベルで解明されているのだなあ、と感銘を受けました。

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posted by 長尾大志 at 18:04 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

『やさしイイ胸部画像教室 実践編』訂正がございます。

早速?『やさしイイ胸部画像教室 実践編』に誤りが発見されましたので、訂正させていただきます。

378ページの写真、1週間後の冠状断CTですが、同じ写真が2枚並んでおります……。
もしよろしければ、下の写真と入れ替えてご覧いただければ幸いです。

378ページ訂正用写真.jpg

大変申し訳ございませんでした。日本医事新報社様の書籍ページでも訂正させていただいております。

https://www.jmedj.co.jp/book/search/detail.php?id=2074

なお現時点では、またamazon様でのご購入はできなくなっておりまして、予約で在庫がなくなってしまったとのことでしたが、今回は明日以降補充されるとのことでした。お急ぎの方は、上記日本医事新報社様には在庫がしっかりあるとのことですので、上記サイトでお買い求めくださいませ。

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posted by 長尾大志 at 11:34 | Comment(0) | 書籍の訂正

2021年05月20日

COPDとその増悪について、再考3

權先生のご講演では増悪の定義の歴史に触れられました。増悪の捉え方として「症状」によって(患者さんの申告で)捉えるか、治療に実際に変化(追加治療)があったかどうかで捉えるか、これは研究の手法として考えるべきことですが、その紹介もいただきました。

そもそも増悪の多くは炎症によって起こると考えられていますが、この炎症がいわゆる感染性の炎症(細菌感染・ウイルス感染)、そして感染でない炎症(好酸球性炎症)それから細胞があまり見られない乏細胞性(非炎症)などに分けられます。ただ増悪が多い病態の考え方においては、実はまだ各国で統一見解がなく、国別にみたガイドラインではいくらか異なる分類がなされています。例えばGOLDでは2020年からACOという言葉は使わないと宣言?をされていますし、喘息のガイドラインのGINAでも同様に、喘息があれば喘息として治療、喘息がなければCOPDとして治療ということで、ACOという言葉を使わない方向になっています。

一方で例えばスペインのガイドラインでは、ACOをCOPDの一つのフェノタイプとして認識されていたりするので、この辺は色々な立場や考え方によってズレがあるのですが、日本においては日本のガイドラインをまずは尊重して診療をされるということでいいのかなと思います。

どういう病名をつけるかということはともかく、まぁ結局喘息の要素があればICS/LABA、喘息の要素がなければLAMAからLABAという形、そして増悪が頻回である、あるいは末梢血好酸球が多い(>300/μL)、そういったことを満たすとICSを乗せる。その治療手順においては各国それほど差がないかなといった印象です。

引き続き帝京大学の長瀬先生による「好酸球性炎症による増悪」。

好酸球性炎症についての疫学、これまでの研究をまとめられましたが、末梢血好酸球が多い、という基準として(>2%)が採用されている根拠、だいたい増悪の20-30%を占めるということを示されました。また、末梢血好酸球が多い群は予後がいい、ということもわかっております。

そこで必ずわいてくる疑問が、「それって結局喘息じゃね?」というところですが、ここがどうもグレーですね。これまでの海外の報告では、「喘息と診断された症例」「COPDと診断された症例」に分けていろいろとバイオマーカーなどの解析をされていますが、そもそもの診断は本当に正しいのか、個人的にはまだ眉に唾をつけています…。



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posted by 長尾大志 at 17:49 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

2021年05月19日

COPDとその増悪について、再考2

まずは日本大学權先生の『COPD増悪期の分類』というお話。

COPD の増悪期に関して、まず日本呼吸器学会のガイドライン2018の記載を見ますと、「COPDの増悪とは、息切れの増加、咳や痰の増加、胸部不快感・違和感の出現あるいは増強などを認め、安定期の治療の変更が必要となる状態をいう。ただし、他疾患(心不全、気胸、肺血栓塞栓症など)の先行の場合を除く。症状の出現は急激のみならず緩徐の場合もある。」と定義されています。

一方で世界的なガイドラインであるGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)では、定義を「An exacerbation of COPD is defined as an acute worsening of respiratory symptoms that results in additional therapy.」と、割とそっけなく書いています。まあ、普段より悪くなって、普段以上の治療が必要、って感じです。

増悪の原因として多いのは、呼吸器感染症と大気汚染とされていますが、約30%の症例では増悪の原因が特定できないとされています。治療でしばしば問題になるのが抗菌薬を増悪時に使うのかというところです。

すごく大雑把な「COPD増悪時薬物療法」の基本は、俗にABCアプローチといわれているもので、A:Antibiotics|抗菌薬、B:Bronchodilators|気管支拡張薬、C:Corticosteroids|ステロイド薬ということになっていますね。この中で、増悪時に気管支拡張薬を使うということに関しては、まあまあ議論なく皆さん同意いただけるかと思うのですが、必ず問題になるのが抗菌薬を使うかどうかっていうところです。

抗菌薬に関しては本当に色々と議論がありますが、そもそも増悪の原因として細菌感染が関与している可能性がまあ結構あるというのが背景にあるために、以前からCOPDが悪くなって入院してきたら抗菌薬もいっとこうかみたいな感じでされていたかと思います。ただ昨今はやはりAMR、薬剤耐性化の問題もあって、不要な抗菌薬はなるべく使わないでおきたいというのが大きな考え方になっているので、その時にどうするかということが議論になってきたように思います。

で、GOLDのガイドラインでは、なんと肺炎は「増悪の鑑別診断」とされている、つまり増悪には含まれません。あくまで肺炎のない「いつもより悪い状態」が増悪ということです。肺炎だったらまあ抗菌薬を使いますし。ここには議論の余地がない。で、増悪に対しての抗菌薬は「細菌感染の所見があったら考慮」。

日本のガイドラインはここの定義自体がグレーで、「他疾患(心不全、気胸、肺血栓塞栓症など)の先行の場合を除く。」なので肺炎は除外されないとも取れる、微妙な書き方になっています。

吸入薬(の新製品)に絡んだ臨床試験では、そういうわけで増悪には肺炎を含まないのが基本です。肺炎は別扱い。で、なぜこの「増悪」が昨今取り上げられるかというと、トリプル製剤(ICS/LABA/LAMA)に代表される吸入薬の新製品の効果として「増悪の回数を減らした」という項目があるから、なんですね。


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posted by 長尾大志 at 18:40 | Comment(1) | COPDポイントレクチャー

2021年05月18日

COPDとその増悪について、再考1

胸部X線写真読影のお話も佳境に入ってきた感がありますが、amazonリンク先をご覧になった方はお分かりかもしれませんが、昨日時点で注文できなくなっていて、どうなってるんだろう?と心配しておりましたところ、18日現在どういう加減か注文できるようになっておりました!よかったです。

そして、やさしい胸部画像教室実践編、amazon様で1位をいただきました!!!ありがとうございます。

amazonランキング.jpg

というわけで、ここにきてちょっと色々やらなくてはいけないことが山積みになってきており、ここで久しぶりに、少し胸部X線以外の話題を取り上げていきたいと思います。

まずはCOPDについて。実は先日行われた第61回日本呼吸器学会学術講演会でのシンポジウムで、「COPD増悪の再考」という、非常に興味深い演題があり、いろいろと考えさせられました。そこでのお話を聞いて考えたことを少しまとめていきたいと思います。

その前に、まず/初めに、なんですが、COPDの患者さんが「急に状態が悪くなること」を皆様何とおっしゃいますか?まさか急性増悪という言葉を使われてはいませんよね……。『COPD診断と治療のためのガイドライン第5版』をよくご覧ください……。どこにも「急性増悪」という用語はございません……。結構この用語を使っておられる方が多くてちょっと気になっていたので少し述べさせていただきました。

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posted by 長尾大志 at 18:08 | Comment(3) | COPDポイントレクチャー

2021年05月17日

胸部X線読影道場ふたたび541

亀井道場は結構ぐったりするので、更新が滞りましたが復活しましたので再開します。

それほど異常はない…?というのが初見での感想でしたが、紹介状には「健診発見の結節影」との記載が。

ああ、そういうことですね。右3,4,5肋骨に重なって結節様の高吸収域が見られます。なーんとなくですが、きれいに並んでいるような…整列しているような…病歴をおたずねすると、少し前に転倒して右胸部打撲……とはいえ健診発見の紹介例、念のためCTを撮影します。

スライド395.JPG

ということで、前胸部打撲、肋骨骨折後の変化が「結節影」に見えた一例でした。「整列」がキーワードかと。『やさしイイ胸部画像教室【実践編】厳選100症例で学ぶ読影の実際』にも別の症例を掲載しております。

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posted by 長尾大志 at 13:49 | Comment(0) | 胸部X線道場

2021年05月16日

亀井道場、無事?終了しました〜〜

ということで、気合十分で臨んだ亀井道場、無事に終えることができました!

とはいえ、3時間×2日間は結構キツく、特に喉が途中で悲鳴を上げておりましたが…ともかくも無事に終わりました。

途中で頂いた「側面問題」含め、まだまだ当方がお示ししなくてはならない課題も多いなあと改めて実感する、いい機会になりました。

たくさん感想をいただきましたので、引用させていただきます。

(引用ここから)
・楽しく学べた。コメントがよかった

・コメディカルです。明日も参加します。書籍でも非常に分かりやすかったのですが、講義を受け、非常に理解しやすく覚えやすかったです。多職種での議論にはとても必要な知識だと感じてます

・ありがとうございました。還暦を過ぎた呼吸器内科医です。最近、胸部単純の側面写真を、撮らない先生方がおられる事に違和感が有ります。先生は、ルーチンには撮られますか?部位診断では有用だと思いますが、撮らないのが最近のトレンドなのでしょうか?先生は、講義の時は、生徒には側面写真は、どのように指導されていますか?

・本当にありがとうございました顔1(うれしいカオ)線に注目するレントゲンの読み方はとても参考になりました!教科書を買わせていただきます顔1(うれしいカオ)

・長尾先生の本に書き込みながら受講しました!!とても勉強になり、楽しい時間でした。ありがとうございます!!にこにこ

・とてもわかりやすく勉強になりました。胸部単純の奥深さを実感しました。明日からの外来に役立てます!

・これだけたくさんの写真をたくさん見られたのは勉強になります。最後の駆け足の写真も時間を取っていただけるとより嬉しいです。質問にそのままお答えしていただけた点とても勉強になりました!

・ありがとうございました。本を読ませて頂いてましたが、やはり直接お話を伺うと重要なポイントがよくわかります。線を意識する事が本を読んでいるだけよりも理解出来ました。

・とても勉強になりました 滋賀県の70才の内科医です シルエットサインが頭に入りました 有難うございました

・勉強になりました。ありがとうございました!何度でも受講したいです!先生の書籍で復習します!"

・素晴らしい内容!臨場感抜群で一気に沢山の読影をさせて貰い、勉強になりました。最高です。

・大変勉強になりました。ありがとうございました。CT編もお願いできればと思います。

・それでも、どこかで側面写真について御指導下さい。開業医は、すぐにはCTとはいかないので

・単純X線写真の読影を体系的に学ぶことができる機会は今までなかったので、今回勉強会に参加して、大変勉強になりましたし、有意義な時間を過ごすことができました。投票を用いた形式は、アウトプットの練習ができて、非常に良かったです。

・単純X線写真からこれほどにまで多くの情報を読み取れることにとても驚きました。ありがとうございました。

・後期研修で、診療所で勤務しています。CTは専門医に紹介になるため、胸部レントゲン読影が重要になります。今回は大変勉強になりました。ありがとうございました。

・非呼吸器専門の開業医です。日常診療にとても有意地なご講演ありがとうございました。意識しながら、繰り返しながら、診療に活かして行きます。

・先生の本とvideoを有効活用します。ありがとうございました。

・学生ですが少しずつ分かってきたところが多くなってきたと感じます。

・非常にわかりやすく勉強になりました。
(引用ここまで)

来週以降もありがたいことにいろいろあります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

5/19 Antaa配信「やさしイイ胸部X線写真読影」
5/20、5/26 クローズドの会
6/5 適々斎塾 合水塾
6/12、13 適々斎塾 呼吸器疾患Webinar
7/3、4 適々斎塾 呼吸器疾患バーチャルクリニック
7/10 メディカ出版Webセミナー

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posted by 長尾大志 at 15:17 | Comment(0) | 活動報告

2021年05月15日

亀井道場!!

今日はこれから亀井道場です。時節柄こちらもリモート道場でやらせていただきますが、これまで対面でやっていたころとは桁違いの参加者数を聞いてテンションが上がっております。今回Zoomの制限から参加できる人数が100名ということで、まあそんなに参加する方はおられないだろう、と思っておりましたが、確かFacebookでひっそりと告知をされて、翌日ぐらいには「いっぱいになりました!」とご連絡をいただいたような。キャンセル待ちの方も数十人おられるとかおられないとか。

貴重な土日、2日間をつぶして、今更?胸部X線写真読影について学ぼう、という、熱心な方々ですので、気合を入れて臨みます。お昼ご飯は…

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そしておやつに…

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気合十分です!

本日ご参加の皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます!!

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posted by 長尾大志 at 13:38 | Comment(2) | 活動報告

胸部X線読影道場ふたたび540

今回の画像はこちらです。健診発見、ノーヒントで。

スライド394.JPG

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posted by 長尾大志 at 10:15 | Comment(2) | 胸部X線道場

2021年05月14日

胸部X線読影道場ふたたび539

昨日の画像、陰影としては左>右の肺野高吸収域、すりガラスっぽい感じでしょうか。部分的に濃度が高く結節のように見えるところもあります。CTをご覧ください。

スライド393.JPG

肺野の病変はベースの肺野濃度がすりガラス影として上昇しているわけではなく、左下肺優位に気道散布性の両側粒状影、一部癒合した限局性コンソリデーションを認めます。また中枢〜末梢の気管支壁も肥厚しています。

気管支・細気管支領域の病変、それが重なり合うことによって単純X線写真では肺野の濃度が全体的に上昇しているように見えたということのようです。本症例はインフルエンザ罹患後の肺炎(気管支肺炎)と考えられた一例でした。

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posted by 長尾大志 at 17:30 | Comment(0) | 胸部X線道場