コロナ禍になって、止むに止まれず、というところではありますが、私たちの日常に、ZoomをはじめとしたWeb会議システムが常駐し、空間を超えて会議、ミーティングやカンファレンスが開催されるようになりました。これまでわざわざ出かけなくては聴けなかったお話が自室で拝聴できるようになり、本当に「知識を得る」ことに関しては便利になりましたね。
そこで、次のステップとして、「時間を超えて」学びを得る、というところに注目された会社がありまして。
もちろん収録された動画を視聴するといった意味では、時間を超えての学びというものはこれまでもあったわけです。ただ、例えばあるスキルを上達させたいという時には、どうしても双方向的に誰かに自分のアウトプットしなしたものを評価してもらうという手順が必要になります。それがこれまでは、例えば対面で一人が胸部X線写真の読影をして、指導医がそれに関して添削をする・突っ込むということでの学びがあったわけですが、これを時間と空間を超えて実現させてもらいました。
「tsucom」というシステムで、「収録されたアウトプット」に対してこちらも「収録で評価をする・ツッコむ」ということが可能になりました。時空を超えて遠隔の指導医の指導が得られるシステム、ご興味ありましたらこちらからご覧ください。⇒
https://lp.tsucom.com/contents/nagao-chest-xray
2022年02月28日
2022年02月27日
胸部X線読影道場ふたたび669
右上肺野、中肺野、そして左上肺野から肺門、それに下肺野にかけて、割とべたっとした高吸収域が「斑状」に分布しています。
各々、特に左肺野の陰影は、接している線を消している(シルエットサイン陽性)ことから、病変は主に左上葉(上区・舌区)に存在していることがわかります。

胸部CTを見ると、高吸収域はべたっとした、エアブロンコグラムを伴う、コンソリデーションであるとわかります。限局性の高吸収域が斑状に分布していることから、胸部単純写真からも、なんとなくOPなんかを想起する陰影かなあ、ということが推察されるかと思います。
各々、特に左肺野の陰影は、接している線を消している(シルエットサイン陽性)ことから、病変は主に左上葉(上区・舌区)に存在していることがわかります。
胸部CTを見ると、高吸収域はべたっとした、エアブロンコグラムを伴う、コンソリデーションであるとわかります。限局性の高吸収域が斑状に分布していることから、胸部単純写真からも、なんとなくOPなんかを想起する陰影かなあ、ということが推察されるかと思います。
posted by 長尾大志 at 19:44
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| 胸部X線道場
2022年02月26日
2022年02月25日
胸部X線読影道場ふたたび667
パッと見て気づくのは左下肺野の高吸収域です。左4弓下方はシルエットサイン陽性で、左S5、舌区の病変と考えられます。右の肺野については、あまり目立つ所見はなさそうですが、下肺野にチラチラ高吸収域はあるかもしれません。

CTを見ると、やはり左S5に、気管支拡張像とちょっと高吸収な部分があります。で、右にも軽度ですが気管支拡張像が見えますね。う〜ん、なかなか単純写真では見えにくい……。非結核性抗酸菌症でした。
CTを見ると、やはり左S5に、気管支拡張像とちょっと高吸収な部分があります。で、右にも軽度ですが気管支拡張像が見えますね。う〜ん、なかなか単純写真では見えにくい……。非結核性抗酸菌症でした。
posted by 長尾大志 at 19:54
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| 胸部X線道場
2022年02月24日
2022年02月23日
間質性肺炎(急性期)について 島根大学総合診療医センター ビデオオンデマンド
『総合診療医センター』ビデオオンデマンド、今回の『間質性肺炎(急性期)について』ついに!完結!?です。
急性に呼吸不全を呈する、両側びまん性の陰影を見たら……なんか知らんけどステロイドパルス!!!から、少し先を見据えた、呼吸器内科医だったらこう考える的な思考をご紹介します。
実はこっそり?『慢性型間質性肺炎について』動画と続き物になっております。是非ご覧ください。
間質性肺炎(急性期)について⇒
https://shimanegp.com/1207/
急性に呼吸不全を呈する、両側びまん性の陰影を見たら……なんか知らんけどステロイドパルス!!!から、少し先を見据えた、呼吸器内科医だったらこう考える的な思考をご紹介します。
実はこっそり?『慢性型間質性肺炎について』動画と続き物になっております。是非ご覧ください。
間質性肺炎(急性期)について⇒
https://shimanegp.com/1207/
posted by 長尾大志 at 17:33
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2022年02月22日
胸部X線写真読影動画 島根大学総合診療医センター ビデオオンデマンド
『総合診療医センター』ビデオオンデマンド、今回ついに!胸部X線写真読影の基礎から学べるビデオを作成いたしました!!
胸部X線写真読影の基礎から学べるビデオ、いろいろなところでお話をさせて頂いてはいたのですが、収録したものがあるようでなかった、と申しますか、あまりきちんとしたものを公開していなかったかと思います。このたびはその基礎部分を、続き物ビデオ2本で学んでいただけます。是非ご覧ください。
胸部X線写真読影〜基本作法編〜⇒
https://shimanegp.com/1195/
胸部X線写真読影〜肺野所見編〜⇒
https://shimanegp.com/1198/
胸部X線写真読影の基礎から学べるビデオ、いろいろなところでお話をさせて頂いてはいたのですが、収録したものがあるようでなかった、と申しますか、あまりきちんとしたものを公開していなかったかと思います。このたびはその基礎部分を、続き物ビデオ2本で学んでいただけます。是非ご覧ください。
胸部X線写真読影〜基本作法編〜⇒
https://shimanegp.com/1195/
胸部X線写真読影〜肺野所見編〜⇒
https://shimanegp.com/1198/
posted by 長尾大志 at 17:24
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| 動画置き場
2022年02月21日
胸部X線読影道場ふたたび665
スミマセンまた間が空きましたが、664の読影所見としては、気管の右横に軟部影がありまして、傍気管線の消失と外に凸のモコモコ感があり、周囲に粒状影も見られますね。肺門も太くなっているようです。
また、気管から気管分岐部あたりを見ると、その陰影に圧されて、特に分岐部から右主気管支が狭窄している様子が見られます。右の中間気管支幹あたりの気管支壁は肥厚しているようです。
ということで、右肺門から縦隔に至る腫瘤影+縦隔リンパ節腫脹、および癌性リンパ管症もしくは肺内転移を疑う所見、ということになるかと思います。胸部CTはこんな感じ。

また、気管から気管分岐部あたりを見ると、その陰影に圧されて、特に分岐部から右主気管支が狭窄している様子が見られます。右の中間気管支幹あたりの気管支壁は肥厚しているようです。
ということで、右肺門から縦隔に至る腫瘤影+縦隔リンパ節腫脹、および癌性リンパ管症もしくは肺内転移を疑う所見、ということになるかと思います。胸部CTはこんな感じ。
posted by 長尾大志 at 20:52
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| 胸部X線道場
2022年02月20日
間質性肺炎(急性期)について 島根大学総合診療医センター ビデオオンデマンド
『総合診療医センター』ビデオオンデマンド、引き続きどんどんup中です!
今回は、以前upした『慢性型間質性肺炎について』の続編、といいますか、こちらが続編といいますか、急性期、両肺真っ白、という症例を呼吸器内科医はどう考えてどうしているか、ということを述べています。
https://shimanegp.com/1207/
今回は、以前upした『慢性型間質性肺炎について』の続編、といいますか、こちらが続編といいますか、急性期、両肺真っ白、という症例を呼吸器内科医はどう考えてどうしているか、ということを述べています。
https://shimanegp.com/1207/
posted by 長尾大志 at 17:15
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| 胸部X線道場
喘息・COPDの急性期管理について 島根大学総合診療医センター ビデオオンデマンド
『総合診療医センター』ビデオオンデマンド、どんどんup中です!
今回は、以前upした『喘息・COPDの診断/慢性期管理について』の続編、といいますか、こちらが続編といいますか、続き物ビデオでございます。
大体地域の外来では、「元々診断がきちんとついていない」方が「とにかく急性に悪化して来院」することが多いわけで、その場合には「喘息の増悪期」なのか「COPDの増悪期」なのか分からないことも多い。そんなときの考え方をご紹介します。で、診断が付いたら慢性期=安定期治療に入ります。
https://shimanegp.com/1204/
今回は、以前upした『喘息・COPDの診断/慢性期管理について』の続編、といいますか、こちらが続編といいますか、続き物ビデオでございます。
大体地域の外来では、「元々診断がきちんとついていない」方が「とにかく急性に悪化して来院」することが多いわけで、その場合には「喘息の増悪期」なのか「COPDの増悪期」なのか分からないことも多い。そんなときの考え方をご紹介します。で、診断が付いたら慢性期=安定期治療に入ります。
https://shimanegp.com/1204/
posted by 長尾大志 at 16:49
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| 動画置き場
2022年02月19日
胸部X線読影道場ふたたび664
posted by 長尾大志 at 09:03
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| 胸部X線道場
2022年02月17日
喘息・COPDの診断/慢性期管理について 島根大学総合診療医センター ビデオオンデマンド
『総合診療医センター』ビデオオンデマンド、どんどんupしております。
今回は「喘息・COPDの診断/慢性期管理について」、こちらから参照していただけます。私のビデオ以外にも、島根が誇る多くの総合診療医の先生方によるお役立ちビデオもたくさんありますので、是非ご覧ください。
喘息・COPDの診断/慢性期管理について⇒
https://shimanegp.com/1098/
今回は「喘息・COPDの診断/慢性期管理について」、こちらから参照していただけます。私のビデオ以外にも、島根が誇る多くの総合診療医の先生方によるお役立ちビデオもたくさんありますので、是非ご覧ください。
喘息・COPDの診断/慢性期管理について⇒
https://shimanegp.com/1098/
posted by 長尾大志 at 16:50
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| 動画置き場
2022年02月16日
第111回看護師国家試験問題 寸評
というわけで、今年の医師国家試験問題解説は3問担当でした。
続けて第111回看護師国家試験の問題解説もやって参りましたが、こちらも既視感のある問題が2問。やはり過去問やりこみはこちらでも重要だなあ、と改めて実感しました。
111A18は呼吸パターンの波形?をみてチェーンストークス呼吸を選ぶ問題。これも頻出ですし絶対取りたいですね。
111P43で気になったのは、いまだ問題文に「肺気腫」という用語が使われている点。ご丁寧にpulmonary emphysemaのルビまで振ってあるんですが、問題作成者の先生は一体いつの時代の知識をもって問題作成されているのか…はたまた、いまだに国試の用語基準が変わっていないのか…とするとそっちの方が問題かも…と、いろいろ心配になるレベルの、かつCOPDに関して基礎レベルの知識を問う問題でした。
続けて第111回看護師国家試験の問題解説もやって参りましたが、こちらも既視感のある問題が2問。やはり過去問やりこみはこちらでも重要だなあ、と改めて実感しました。
111A18は呼吸パターンの波形?をみてチェーンストークス呼吸を選ぶ問題。これも頻出ですし絶対取りたいですね。
111P43で気になったのは、いまだ問題文に「肺気腫」という用語が使われている点。ご丁寧にpulmonary emphysemaのルビまで振ってあるんですが、問題作成者の先生は一体いつの時代の知識をもって問題作成されているのか…はたまた、いまだに国試の用語基準が変わっていないのか…とするとそっちの方が問題かも…と、いろいろ心配になるレベルの、かつCOPDに関して基礎レベルの知識を問う問題でした。
posted by 長尾大志 at 11:22
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| 医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説
2022年02月15日
第116回医師国家試験問題解説7 慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉の呼吸機能について
COPDや気管支喘息といった閉塞性肺疾患、それから特発性肺線維症など拘束性障害を来す疾患の呈する呼吸機能障害については毎年毎年出題される頻出問題です。
で、それほど選択肢のバリエーションもありませんし、新しい検査や治療薬のように、毎年毎年新しい事柄が出てくるわけでもありませんので、だいたい出題される事柄というのは決まってくるわけです。
ですから過去問をしっかりやりこんでおけば、この手の問題は必ずできるはずなんですね。昨今の国試はこのように「過去問をしっかりやり込んで、絶対に出来ないといけない問題」がかなり多くなってきていますから、こういう問題を絶対に落とさないように、もうとにかく過去問をやりこむまずそこに集中していただく必要があると思います。
COPDは長期間の喫煙により、肺のプロテアーゼ(蛋白分解酵素)が活性化され、肺胞が少しずつ溶けてなくなることと、末梢気道の慢性的な炎症により過分泌が起こり、痰が増加することによって「息の吐きにくさ」が起こり、吐き切れない空気が肺内にたまって肺が過膨張する、と理解しておけば、まあ大体の事柄は答えられますね。
残気量は増加し、1秒率が低下(70%未満)しますし、肺拡散能も低下し、フローボリューム曲線は下に凸の形となります。
肺コンプライアンスはこういう時に時々出てきて、どっちだったっけ?となりがちですが、肺の伸展性(柔らかさ)を表すもので、コンプライアンスが高いと肺が柔らかい、低いと肺が硬いということです。
まあ、他の選択肢が正解できればわかるはず……。
正解:d
で、それほど選択肢のバリエーションもありませんし、新しい検査や治療薬のように、毎年毎年新しい事柄が出てくるわけでもありませんので、だいたい出題される事柄というのは決まってくるわけです。
ですから過去問をしっかりやりこんでおけば、この手の問題は必ずできるはずなんですね。昨今の国試はこのように「過去問をしっかりやり込んで、絶対に出来ないといけない問題」がかなり多くなってきていますから、こういう問題を絶対に落とさないように、もうとにかく過去問をやりこむまずそこに集中していただく必要があると思います。
COPDは長期間の喫煙により、肺のプロテアーゼ(蛋白分解酵素)が活性化され、肺胞が少しずつ溶けてなくなることと、末梢気道の慢性的な炎症により過分泌が起こり、痰が増加することによって「息の吐きにくさ」が起こり、吐き切れない空気が肺内にたまって肺が過膨張する、と理解しておけば、まあ大体の事柄は答えられますね。
残気量は増加し、1秒率が低下(70%未満)しますし、肺拡散能も低下し、フローボリューム曲線は下に凸の形となります。
肺コンプライアンスはこういう時に時々出てきて、どっちだったっけ?となりがちですが、肺の伸展性(柔らかさ)を表すもので、コンプライアンスが高いと肺が柔らかい、低いと肺が硬いということです。
まあ、他の選択肢が正解できればわかるはず……。
正解:d
posted by 長尾大志 at 20:20
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| 胸部X線道場
2022年02月14日
第116回医師国家試験問題解説6 慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉の呼吸機能について
116F4
慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉の呼吸機能について正しいのはどれか.
a 残気量減少
b 1秒率>70%
c 肺拡散能増加
d 静肺コンプライアンス増加
e 上に凸のフローボリューム曲線
昨今の国試では、こういう、必修といいますか、基礎事項を問う、絶対に落としてはいけない問題と、新傾向の、落とす人もいるだろうけれども、よく考えるとわかるよね、という問題がはっきりしてきている印象です。基礎事項を問う問題はこれまで過去に何度も何度も、手を変え品を変え、同じような事柄が問われ続けているわけで、過去問をしっかりやりこんで確実に取っていかなくてはなりません。こちらもそういう問題になると思います。
慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉の呼吸機能について正しいのはどれか.
a 残気量減少
b 1秒率>70%
c 肺拡散能増加
d 静肺コンプライアンス増加
e 上に凸のフローボリューム曲線
昨今の国試では、こういう、必修といいますか、基礎事項を問う、絶対に落としてはいけない問題と、新傾向の、落とす人もいるだろうけれども、よく考えるとわかるよね、という問題がはっきりしてきている印象です。基礎事項を問う問題はこれまで過去に何度も何度も、手を変え品を変え、同じような事柄が問われ続けているわけで、過去問をしっかりやりこんで確実に取っていかなくてはなりません。こちらもそういう問題になると思います。
posted by 長尾大志 at 14:59
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| 医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説
2022年02月13日
慢性型間質性肺炎について 島根大学総合診療医センター ビデオオンデマンド
『総合診療医センター』ビデオオンデマンド「慢性型間質性肺炎について」、こちらから参照していただけます。私のビデオ以外にも、島根が誇る多くの総合診療医の先生方によるお役立ちビデオもたくさんありますので、是非ご覧ください。
慢性型間質性肺炎について⇒
https://shimanegp.com/1104/
慢性型間質性肺炎について⇒
https://shimanegp.com/1104/
posted by 長尾大志 at 15:14
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第116回医師国家試験問題解説5 パン工場に出勤したときに出る咳、職業性喘息
ちなみに職業性喘息でよく知られているものを挙げておきましょう。
動物の毛|獣医師やトリマー
海産物の殻や肉片|エビ・カニ食品業者
小麦粉|製パン業者や製麺業者
キノコの胞子|ビニールハウス内作業者
ラテックスゴム手袋|医療従事者
茶葉|製茶業者
動物の毛|獣医師やトリマー
海産物の殻や肉片|エビ・カニ食品業者
小麦粉|製パン業者や製麺業者
キノコの胞子|ビニールハウス内作業者
ラテックスゴム手袋|医療従事者
茶葉|製茶業者
posted by 長尾大志 at 10:12
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| 医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説
2022年02月12日
第116回医師国家試験問題解説4 パン工場に出勤したときに出る咳
今一度問題文を読んでみましょう。
38歳の女性.
3週間前から乾性咳嗽が出現するようになり改善しない.
夜間には落ち着いているが日中仕事中に咳が出る.
これまで喘息を指摘されたことはない.
18歳から花粉症を認めている.
1年前から製パン工房でパートとして平日週5日働いている.
週末,家にいるときには日中も症状がないが,月曜日に職場に行くと咳が出る.
喫煙歴はない.ペットは飼育していない.
体温35.2℃.呼吸数16/分.SpO2 96%(room air).
呼吸音に異常を認めない.
血液所見:赤血球360万,Hb 11.4g/dL,
白血球5,700(分葉核好中球56%,好酸球12%,好塩基球0%,リンパ球32%),
血小板32万.
CRP 0.2mg/dL.
胸部X線写真に異常を認めない.
まあキーワードしかございませんね。3週間前から続く乾性咳嗽ですので、定義上は遷延性咳嗽ということになります。これまで喘息を指摘されたことがないということですが、18歳から花粉症(アレルギー性疾患)がある38歳の女性ですから、喘息の初発は十分あると考えられます。
何より製パン工房に行った時に咳が出て、職場から離れると咳が出ないというのは、いかにも何らかの物質への曝露によるアレルギーと考えるのが自然です。ここで国試過去問に毒されていると、「(入院して)曝露から免れると改善する」という病歴からは過敏性肺炎が想起されると思いますが、過敏性肺炎にしては発熱というキーワードがなく、選択肢の検査を見渡してみても、過敏性肺炎で行われるような検査がひとつもありませんね。
今回の選択肢を見てみると、見事なほど気管支喘息(または咳喘息)を念頭に置いた検査等が選択肢に並んでいます。問題文を読まずに選択肢だけ見て仲間外れを探す、としても正解は導き出されるのではないでしょうか。
喘息という病態は、気管支が刺激に対して過敏になっていて狭窄する、それが可逆性があり、日内変動をする。もうこれでb、d、eは気管支喘息のための検査であると分かりますし、cIgE抗体が気管支喘息やアトピー性皮膚炎の時に有用な検査であることはご存知でしょう。
一方、a肺拡散能検査は「肺胞に障害があるとき」に肺胞における酸素の拡散能を見る検査(拡散能が低下しているかどうかを見る検査)であり、喘息のような気管支の障害が生じる疾患では有用ではありません。
実臨床の現場では、職場でのストレスによる心因性咳嗽という可能性もあるかもしれませんが、この問題では選択肢を眺めることで正解にたどり着くと思います。
今回この問題は、このような「暴露から免れた時に改善するアレルギー性疾患としての」気管支喘息をQBやイヤーノートに掲載するという意味で、意義深い問題になったと考えます。
38歳の女性.
3週間前から乾性咳嗽が出現するようになり改善しない.
夜間には落ち着いているが日中仕事中に咳が出る.
これまで喘息を指摘されたことはない.
18歳から花粉症を認めている.
1年前から製パン工房でパートとして平日週5日働いている.
週末,家にいるときには日中も症状がないが,月曜日に職場に行くと咳が出る.
喫煙歴はない.ペットは飼育していない.
体温35.2℃.呼吸数16/分.SpO2 96%(room air).
呼吸音に異常を認めない.
血液所見:赤血球360万,Hb 11.4g/dL,
白血球5,700(分葉核好中球56%,好酸球12%,好塩基球0%,リンパ球32%),
血小板32万.
CRP 0.2mg/dL.
胸部X線写真に異常を認めない.
まあキーワードしかございませんね。3週間前から続く乾性咳嗽ですので、定義上は遷延性咳嗽ということになります。これまで喘息を指摘されたことがないということですが、18歳から花粉症(アレルギー性疾患)がある38歳の女性ですから、喘息の初発は十分あると考えられます。
何より製パン工房に行った時に咳が出て、職場から離れると咳が出ないというのは、いかにも何らかの物質への曝露によるアレルギーと考えるのが自然です。ここで国試過去問に毒されていると、「(入院して)曝露から免れると改善する」という病歴からは過敏性肺炎が想起されると思いますが、過敏性肺炎にしては発熱というキーワードがなく、選択肢の検査を見渡してみても、過敏性肺炎で行われるような検査がひとつもありませんね。
今回の選択肢を見てみると、見事なほど気管支喘息(または咳喘息)を念頭に置いた検査等が選択肢に並んでいます。問題文を読まずに選択肢だけ見て仲間外れを探す、としても正解は導き出されるのではないでしょうか。
喘息という病態は、気管支が刺激に対して過敏になっていて狭窄する、それが可逆性があり、日内変動をする。もうこれでb、d、eは気管支喘息のための検査であると分かりますし、cIgE抗体が気管支喘息やアトピー性皮膚炎の時に有用な検査であることはご存知でしょう。
一方、a肺拡散能検査は「肺胞に障害があるとき」に肺胞における酸素の拡散能を見る検査(拡散能が低下しているかどうかを見る検査)であり、喘息のような気管支の障害が生じる疾患では有用ではありません。
実臨床の現場では、職場でのストレスによる心因性咳嗽という可能性もあるかもしれませんが、この問題では選択肢を眺めることで正解にたどり着くと思います。
今回この問題は、このような「暴露から免れた時に改善するアレルギー性疾患としての」気管支喘息をQBやイヤーノートに掲載するという意味で、意義深い問題になったと考えます。
posted by 長尾大志 at 16:42
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| 医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説
2022年02月11日
第116回医師国家試験問題解説3 パン工場に出勤したときに出る咳
116D35
38歳の女性.咳嗽を主訴に来院した.3週間前から乾性咳嗽が出現するようになり改善しない.夜間には落ち着いているが日中仕事中に咳が出る.これまで喘息を指摘されたことはない.18歳から花粉症を認めている.1年前から製パン工房でパートとして平日週5日働いている.週末,家にいるときには日中も症状がないが,月曜日に職場に行くと咳が出る.喫煙歴はない.ペットは飼育していない.体温35.2℃.呼吸数16/分.SpO2 96%(room air).呼吸音に異常を認めない.血液所見:赤血球360万,Hb 11.4g/dL,白血球5,700(分葉核好中球56%,好酸球12%,好塩基球0%,リンパ球32%),血小板32万.CRP 0.2mg/dL.胸部X線写真に異常を認めない.
診断に有用な検査として誤っているのはどれか.
a 肺拡散能検査
b 気道過敏性試験
c 特異的IgE抗体
d 気道可逆性試験
e ピークフロー日内変動
なんか特徴的な病歴ですねー。病歴はホンマに大事。
何が特徴的って、職場へ行くと咳が出るんですよね。で、週末家にいる時には日中も症状がない。これ以上特徴的な病歴はあるでしょうか?いや、ない。
で、おそらく国試対策をやっている皆さんは「職場に行ったら症状が出る=過敏性肺炎」な〜んて思われてるかもしれませんが、今回はその裏をかくかのような、見事なよくできた問題だと思いました。作成はあの先生かな〜。
38歳の女性.咳嗽を主訴に来院した.3週間前から乾性咳嗽が出現するようになり改善しない.夜間には落ち着いているが日中仕事中に咳が出る.これまで喘息を指摘されたことはない.18歳から花粉症を認めている.1年前から製パン工房でパートとして平日週5日働いている.週末,家にいるときには日中も症状がないが,月曜日に職場に行くと咳が出る.喫煙歴はない.ペットは飼育していない.体温35.2℃.呼吸数16/分.SpO2 96%(room air).呼吸音に異常を認めない.血液所見:赤血球360万,Hb 11.4g/dL,白血球5,700(分葉核好中球56%,好酸球12%,好塩基球0%,リンパ球32%),血小板32万.CRP 0.2mg/dL.胸部X線写真に異常を認めない.
診断に有用な検査として誤っているのはどれか.
a 肺拡散能検査
b 気道過敏性試験
c 特異的IgE抗体
d 気道可逆性試験
e ピークフロー日内変動
なんか特徴的な病歴ですねー。病歴はホンマに大事。
何が特徴的って、職場へ行くと咳が出るんですよね。で、週末家にいる時には日中も症状がない。これ以上特徴的な病歴はあるでしょうか?いや、ない。
で、おそらく国試対策をやっている皆さんは「職場に行ったら症状が出る=過敏性肺炎」な〜んて思われてるかもしれませんが、今回はその裏をかくかのような、見事なよくできた問題だと思いました。作成はあの先生かな〜。
posted by 長尾大志 at 15:12
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| 医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説
2022年02月10日
第116回医師国家試験問題解説2 滲出性胸水
いろいろ間に挟まってスミマセン。一昨日の続きです。
滲出性胸水は、炎症など何らかの病変が胸膜に存在し、そのためにその部位の血管透過性が亢進したり、破綻が生じたりして水が出てくるもの、ということで、
a 肺梗塞
b 肝硬変
c 急性膵炎
d 結核性胸膜炎
e 全身性エリテマトーデス
のうち、炎症などの病変ではないものはどれか、という問題に早変わり。これはb肝硬変によって、低アルブミン血症⇒血管内膠質浸透圧の低下によるしみだし、ということになりますね。
滲出性胸水は、炎症など何らかの病変が胸膜に存在し、そのためにその部位の血管透過性が亢進したり、破綻が生じたりして水が出てくるもの、ということで、
a 肺梗塞
b 肝硬変
c 急性膵炎
d 結核性胸膜炎
e 全身性エリテマトーデス
のうち、炎症などの病変ではないものはどれか、という問題に早変わり。これはb肝硬変によって、低アルブミン血症⇒血管内膠質浸透圧の低下によるしみだし、ということになりますね。
posted by 長尾大志 at 15:47
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