2022年07月12日

間違いだらけの風邪診療: その薬、本当に効果がありますか? 永田 理希 (著) COI有 

間違いだらけの風邪診療: その薬、本当に効果がありますか? 永田 理希 (著)、随分前に献本いただいておりました(COI有)が、しっかり読み込むのにまとまった時間を必要としたため、感想の掲載が遅くなってしまいました。申し訳ありませんでした。

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永田先生といえば、以前から医療従事者向けの感染症勉強会『感染症倶楽部』を主催され、正しい感染症の知識を若手医師やメディカルスタッフに教育されるという活動をずっと続けておられます。私も医師の勉強会で知り合って以来、仲良くさせて頂いております。

以前から永田先生の言説は全くぶれておらず、「とってもコモンな感染症である風邪や風邪に似た上気道病変に対して、丁寧な病歴聴取や診察、さらに必要最小限の検査によって正しく診断をし、必要最小限の投薬(特に抗菌薬)を用いて適切な診療をしましょう」というものであり、大いに賛同するところであります。

この至極まっとうな診療が、現在日本のプライマリケアの現場で行われていない、という現実が多々見られることに強い危機感を抱いておられ、そこも個人的に大いに同意するものであります。この本の帯には、写真でご覧いただけるように現在の感染症診療の日本のリーダーというべき先生方が名を連ねておられますが、これらの先生方も同じを考えだと思われます。

前著『風邪を診るすべての医療従事者のための Phaseで見極める! 小児と成人の風邪の診かた&治しかた』でも一貫して同様の内容を書かれていましたが、それをより一般の方々に向けて書かれ(て新書化され)た本がこちらの本だと理解しています。お値段も医学書ではなく、一般向けのお値段になっています。

心あるドクターがこの本を読めば、ここに書かれていることは至極まっとうであることはおわかりでしょう。永田先生も書いておられますが、残念ながらアップデートが必要と思われるドクターにはこういう情報が届かず、旧態依然とした知識で「デメリットが多く、メリットが少ない」診療を続けておられると。

であるならば、そのようなドクターが自ら勉強されるのを座して待つのではなく、多くの患者さん・一般の方にこういう知識をお届けすることによって、患者さんがこういう医療をプライマリケアの現場で求めていただければ、患者さんからの「外圧?」によって、日本の医療現場が随分アップデートされたものになることを期待されるわけです。

しかしながら、現実的にいくつかのハードルがあることも確かでしょう。一つにはやはり、この書籍の内容を医学的知識や統計医学の知識の全くない一般の方が読まれてきっちりと理解していただけるのか?というところです。例えば2章では「風邪の見極め検査のリアル」と題して、感度・特異度という用語が出てくるのですが、これは正直ドクターでもこのような教育を受けていない世代の方にとってはいささかハードルが高いように思われます。2章にこの内容があることで、特に一般の方がこの先へ読み進める気力が削がれてしまうことを少し危惧します。

また第4章「風邪薬のリアル」以降の章では、しばしばこういった処方をするような医師はヤブであるという記載があったりします。永田先生の心の声、のみならず私たち少なからずの医師の心の声が出てしまっていて、ここも大いに共感するところではありますが、仮にこういった文言を一般の方が読まれた時に、その方のかかりつけ医であったり、たまたまかかったドクターであったりとの間に無用な摩擦を生んだりしないだろうかと少し心配になりました。

一方でこのぐらいの知識を患者さんが持ってかかりつけ医に訴えないことには、なかなかその手のプラクティスが改まることもないのであろうか、とも思い、色々な意味での難しさを改めて実感した次第です。

そこで私が大いにお勧めしたいのは、やはり医学生及び医療関係の学校に通う学生さんであります。彼らがじっくり腰を据えてこの書籍を読むことで、臨床推論のあり方からエビデンスに基づく診療(EBM)、そして抗菌薬の適切な使用法やその他の薬剤の「効果」の評価、さらにはコロナ禍にあってのマスクや消毒薬に関する正確な知識まで正しく学ぶことができるわけで、その辺のどんな教科書よりもコストパフォーマンスよく学ぶことができると考えます。多くの学校でこの書籍を推薦図書にしていただくよう念願するものであります。私ももちろん推薦して回ります。

全くの余談ですが、裏表紙の「著者近影」、NBAのスター、ステフィン・カリーに似ておられるような気がするのは私だけでしょうか?

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posted by 長尾大志 at 16:50 | Comment(2) | 胸部X線道場