2022年08月22日

肺非結核性抗酸菌症・肺MAC症のお勉強2

昨日のお話の続きを少し。国立病院機構東名古屋病院の中川拓先生による非結核性抗酸菌症(MAC症)の治療のお話です。

MAC症、大きく分けてNB型(nodular bronchiectatic disease:結節・気管支拡張型)とFC型(fibrocavitary disease:線維空洞型)がありますが、NB型はさらに空洞(cavity)のないもの(nonavitary nodular bronchiectatic disease)と空洞のあるもの(cavitary nodular bronchiectatic disease)に分けられ、空洞のあるものは臨床的にもFC型に近いと考えます。2020年のATSガイドラインではNB型の非空洞型は週3回、空洞型は毎日、難治例ではアミカシン(注射/吸入)を使うということになっています。それを元に中川先生が、結核(2022.97;21)で病型別の治療を提言されていますが、本邦のガイドライン?診療の手引き?では今のところそこまで踏み込まれていません。

以前から言われていることではありますが、肺MAC症をはじめとする肺NTM症の治療の難しいところは、軽症の場合画像的に自然軽快もありうるため、無作為二重盲検試験などが立てにくく、カッチリとした治療戦略が確立していない。そして空洞化したり難治性になってきたりすると今度は治療効果がはっきりと得られない例が増えてくる、というところになるかと思います。

もちろんある程度の指針はガイドラインで定められていて、診断確定後すぐに治療開始すべきものとして、
・FC型
・NB型のうち
  血痰・喀血がある症例
  塗抹排菌量が多い/気管支拡張が高度
  病変の範囲が一側の1/3を超える
が挙げられています。
逆にNB型でも上記に該当しない、特に75歳以上の高齢者では経過観察として、病変や症状の悪化があれば化学療法を考慮することとされています。
さてその治療ですが、NB型で非空洞型であれば間欠投与を推奨されているのが、2020ATSガイドラインの特徴といえます。その根拠は間欠投与と連日投与では認容性に差があること、そしてマクロライドの耐性化に差がなかったというところによります。本邦のガイドライン?診療の手引き?も今後その方向に向かっていくかもしれません。

CAM15〜20mg/kg(最大800mg)/日 分1〜2
RFP 10mg/kg(最大600mg)/日 分1
EB15mg/kg(最大750mg)/日 分1
(初期2か月間は20mg/kg/日、最大1,000mg)

トップページへ

posted by 長尾大志 at 18:34 | Comment(0) | 学会・研究会見聞録