(Bからの続き)
な:教育への苦手意識を和らげるためにも、教員は教え方を学ぶ必要があるとは思います。大学教員は教育学を学ばずに教壇に立つわけですからね。それこそ各診療科の実働部隊の人たちに授業の作り方教室みたいなのやってもいいんですよ。
と:先生方であってもパワポや動画作りが苦手とか、そもそも自分が担当するレクチャーに自信がないとか、そういうハードルもやっぱりあるんですかね。
な:尋ねてみないとわかりませんけど、多少はあるんじゃないでしょうか。だから僕みたいなのが逐一「いいですね!

」とコメントしてみたりとかどうでしょう。僕も褒められて育ったから。 学生さんもそうなんだけど、教員のきめ細かい教育も絶対必要なんですよ。
と:長尾先生に褒められたら自信持てるかもですね^^
な:そうだといいです(笑)
教育をハードル高く感じる要因には、やっぱり自信がないっていうのもそうだし、やり方をよく知らないっていうのもあるかもしれない。だからまずは教員のマインドを変える必要があって、カルチャーを変える必要があります。でもみんな忙しいから、そんな教育のことばっかり勉強してる暇なんかないですよ。教育にチャレンジしやすい環境を育てようと本当に思うならば、大学の仕組みとしてFD(Faculty Development の略:教育内容・方法等をはじめとする研究や研修を大学全体として組織的に行うこと)の時間をつくって、まずやり方を知ってもらうだけでも違うし、ハンズオンで「一緒にちょっと作ってみましょう」とかやってもいいわけですよ。
それと、活用されるフィードバックの仕組みを作ることが大事ですね。授業評価をただ集めてそのまま送りつけるだけだと、もらった側もどうしていいか分からないし、ただイヤな気分になるだけなら逆効果です。活かされないアンケートならみんな書かなくなるし、そもそも良い評価も悪い評価も全部ゴチャ混ぜで来るんですよ。
と:むしろネガティブな意見こそきますよね。
な:そうなんですよ。だいたいポジティブなコメントはわざわざ書かないんですよね。みんなそう思ってるし、言わなくても分かるやろってなりますもんね。いちいち言うのも面倒くさいし。でも腹立ったことは言わねば気がすまない(笑)
と:確かに言いたくなります( 笑)
な:僕も実は授業評価を受けるときに、ちょっと操作というか、工夫としてやってたのは、「もし僕の授業がほかの授業よりも面白いと思って、もうちょっと増やしてほしいと思うんやったらアンケートにそう書いて」って言いました(笑)。オモロい授業をしている自信はあったし、こう言ったら書いてくれるんじゃないかと。
と:なるほど。
な:そしたらほんとにめっちゃ書いてくれて有難かったです(笑)やっぱりフィードバックをするにも何かインセンティブが必要で、要するに「皆さんの意見で変わりますよ」という期待がないとですよね。
と:でも自分が評価される立場だったら、ネガティブな意見ばかり気にしちゃいそうです(^o^;)
な:あーそうねぇ。それは全教員が同じくで、そういう自信を持てない部分があると思うんですよ。だからやっぱり、自分がやっている教育に関してポジティブな部分の手応えを感じてもらうのが大事じゃないかと思います。やってもやっても上手くいかない、と不安なままでやるよりも、「こうすれば上手くいくんだ」とまずは知ってもらう。そうしたら、「ちょっとやってみようかな」と少し前向きに思ってもらえるかなと思っていて。なので、とりあえず学生さんから意見を全部ガッサーと集めてね、その中でまずはポジティブなやつをバンバン教員へフィードバックしていくと。 ネガティブな指摘は一旦保留してね。まずは成功体験で土台をつくって、徐々にネガティブな指摘のある部分にも目を向ける余力を蓄えるんです。あとは評判がいい事例をみんなで共有して、それがちょっとでも頭の片隅に残って「今度の授業でこうしてみようかな」とか思ってもらえたら、それだけでも全然違うと思うんですよね。そうやってやっぱり教員側の意識改革をしていきたいです。教え方のコツはほんとに少しの工夫なんですよ。僕が最初に教え始めた時に学んだ教えるコツの一つは例え話を使うことで、もう一つは細分化 といって大事なことを非常に細かく教える。 例えば呼吸器だったら、一番最初の肺の構造と仕組みにすっごい時間かけるんです。せやから途中で時間がなくなるんですけど、それでいいんです(笑)。あとは学生さんが自分で勉強する。例え話と細分化、まずはその二つだけです。
と:なるほど〜。でも一番のコツはなんだか違う気がします。レクチャーしてくれる先生自身が楽しそうなのが一番大事だと思います。
な:あー確かに、それは間違いないです。自分の知っているこの面白さを伝えたいマインドが一番のコツかもしれないですね。やっぱりね、商売人は自分の扱っている商品に絶対の自信を持たないといけない。「呼吸器のこんな話、絶対オモロいに決まってるんやから自信を持ってお勧めします!」みたいなね。 (ジャパネット長尾風?)
(Dに続く)
posted by 長尾大志 at 19:28
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