今週から、島根大学医学部の総合診療・地域医療医学部実習でお世話になっている、地域の病院への訪問を開始しました。もちろん表敬訪問/ご挨拶という意味合いも大きいのですが、地域医療教育学講座としましては、実際にご指導いただいている地域の現場を拝見し、臨床実習で学ぶことができる事柄を実感しておくことは極めて重要と考えるものであります。6月13日火曜日には出雲市民病院にお邪魔いたしましたので、少し振り返っておきたいと思います。

当方朝会議があったため、少し遅れてのスタートになりました。既に午前の実習は始まっていて、まず透析室に伺い、そこで家庭医療科の高橋先生が学生さんに直接説明しておられる現場を拝見しました。
透析患者さんの中には、心疾患を合併した患者さんが何人もおられて、その方々の聴診をして病態を考え、心雑音が何の雑音かを考え、 心エコーの結果を参照して聴診との整合性を確認し病態を考えるという作業を、着実に手順を踏んでやっておられました。その流れで心不全の診かたをレクチャーされましたが、その説明の途中で質問を挟まれ、それに答えられればOKですし、答えられなくてももちろんそれを咎められるということはないわけですが、自分にその知識がないということを認識して、それを(しっかり取ってある)休み時間に学習するというところにつなげていくように誘導されていました。これは1対1の対応ができているからこその、大変学びが深くなるきめ細やかな指導法であると感じました。

その後病棟に移動し、病棟で胸腔穿刺の手技を見学。その都度その都度説明をいただきながら、 丁寧な手技を見せていただきました。基本ここまでは スケジュール通り、時間通りにきっちり次の場所に移動になります。この日まだ2日目で学生さんもオリエンテーションがついていない状態でしたので、必ず事務の方が移動についていただき、次の場所に先導していただきました。このあたりも学生さんの立場に立った、きめ細かい配慮を感じました。
次はリハ回診に帯同します。回診は医師と言語聴覚士さん、栄養士さん、医師クラークの方とで回られます。リハビリテーション科の松原先生からはまず、知識のない状態でついてきて、医師はじめ皆さんが何をしているか、どのようなことを診察されているか、どのようなことを尋ねているかを見て、そこでわからないこと、疑問を抽出をしてください、それを後で説明しますという風に説明がありました。
その日に入院された患者さんの一通りのスクリーニング、すなわち運動器のスクリーニング診察やMMT、意識状態チェック、長谷川式、嚥下の評価・水飲みテストなどなど、をされている様子を見せていただきましたが、患者さんの疾患も状態も様々であり、その皆さんに対して同じスクリーニング診察や検査をしている、その理由について考えるように振り返りの時間に言われていました。またリハビリと家庭医療の親和性に関してもお話がありました。スクリーニングの意義は退院に向けてどのようなことに介入していったらいいのかを判断していく、考えていくためにやるということで、学生さんからは現場を見ることでゴール設定に気づくことができたという感想がありましたし、総合診療・地域医療の文脈においても非常にやりがいがありそうだなという風に受け取られていました。
大学のリハ実習では、コロナ禍でもあったためか、リハの回診を見ることができなかったそうで、大変参考になったという話でした。今後 4週間のうちに何度も回診に参加するチャンスがあるということですので、学生さんの視点がだんだんと変わっていく、成長していくことが実感できるのではないかと言われていました。
また、担当患者さんのリハビリを実際にやっている現場を見ることで学びは非常に多いだろうというお話もありましたし、嚥下に関してもやはり患者さんの食事風景を直接見るということをおすすめされていて、今後4週間のうちに見ていきたいと言われていました。
以上で盛りだくさんだった午前中の実習は終わりですが。昼休みには検食をいただきました。これまでにも出雲市民病院で実習をした学生さんから、こちらの検食がおいしい!という話は伺っていたのですが、おそらく管理栄養士さんが工夫を凝らされていて、限られた予算の中でしっかり栄養バランスも整った、美味しい献立を考えられているのだろうと思います。1ヶ月分のメニュー表も頂きましたが、バラエティに富んだメニューで感心致しました。学生さんにしてみれば、昼食を毎日提供いただけるのは大変助かっているということでしたし、それが美味しければなおさら実習の質も上がる!?でしょう。

これまで実習総括の発表を見ていると、出雲市民病院での実習はこんなものではなく、もっともっとたくさんの学びがあるようなのですが、諸事情にてこのたびの見学はここまでで一旦終了させていただきました。できればまた見学させていただく機会を持てればありがたいいと考えておりますが、拝見した範囲でも学生さんに対する配慮が行き届いた、地域ならではの強みを生かした学びの多い実習であるであるという印象を持ちました。
ともするとこの立地の良さ(大学にほど近い)から、学生さんには移動が楽、という消極的な選び方をされている?とも見受けることがある出雲市民病院ですが、地域の中で、濃密かつ丁寧な教育をしていただけますから、是非総合診療・地域医療・家庭医療に興味・意欲のある学生さんに選択してほしいな〜と念願しております。
お世話になりました高橋先生、松原先生、小松院長先生、医局秘書の三浦様はじめ関係の皆様に厚く御礼申し上げます。今後とも学生・研修医教育にご協力を賜りますようお願い申し上げます。
https://izumo-hewcoop.jp/pages/154/detail=1/b_id=156/r_id=276#block156-276
posted by 長尾大志 at 12:04
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島根大学医学部・臨床実習