2024年03月31日

故人の追悼集

大変立派な追悼集を頂き、貪り読んでおりました。

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故人の偉大さ、大きさが多くの著名な先生方によって語られており、改めていろいろと実感するところでありました。

私は教授としておられた最後の数年でお世話になりましたが、多くのお仕事をなさっておられる中で、そのほんの少しが回ってきてもヒイヒイ言ってこなしていたものです。改めて、こなされていたお仕事を顧みるに、その膨大さには圧倒されます。

私は追悼文を寄せる機会を頂けませんでしたが、もし書かせていただけたとしたら、東洋亭のカレー、ネクタイ、カンファレンスでのサルコイドーシス発言、外国人研究者の方のアテンド、スキー(スノボ)騒動、なんかを書かせていただいたかもしれません。

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posted by 長尾大志 at 17:09 | Comment(0) | 日記

2024年03月30日

故人を偲ぶ会に参加

今日は、昨年亡くなられた、昔大変お世話になった方の「偲ぶ会」でした。

古き佳き時代の、「教授らしい教授」であられた方、呼吸器内科医としての自分が多大なる影響を頂いた方でした。

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そもそもこの先生の講義が、他の教員の先生方と全く異次元に面白かったから、呼吸器に興味を持ったんですね。呼吸器内科の道を選んでからも、先生のお考え、言動には大いに影響を受けたのです。

今日は多くの先生方が偲びにこられていて、数年ぶり、十数年ぶり、数十年ぶりにご挨拶できた方多数でした。故人の人徳ですね。たぶん私たち世代が最後の「薫陶を受けた世代」になるんだろうなあ、と同世代の先生方としみじみ。

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私自身は不肖の門弟?違う道に行ったため最近はあまりお目にかかる機会がありませんでしたが、数年前に同門会でお目にかかった時に、医事新報に掲載された拙文をお読みいただいていて(それにもビックリ)、ずいぶん喜んでいただいていたのが思い出されます。ご冥福をお祈り申し上げます。

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posted by 長尾大志 at 19:14 | Comment(0) | 日記

2024年03月29日

成人肺炎診療ガイドライン2024O市中肺炎の原因微生物

病原性を持つ菌で、肺の環境を好み、かつ、エアロゾル・微小な飛沫として空中に浮かぶことができる(つまり肺に入る経路を持つ)菌、それが市中肺炎の原因微生物になりうるわけです。

元気な人、若い人が、市中=家庭、保育園、幼稚園、学校、会社、人混みなどで吸い込むような菌は、やはりそういう場に出入りできるくらいの状態の「軽症の病気の人」、あるいは「健康だけれども保菌している人」が喀出した咳・痰・くしゃみなどで発生するしぶきに含まれている菌、ということになります。

ということは、軽い上気道炎、咽頭炎、副鼻腔炎、気管支炎、慢性気道感染の原因微生物、あるいは鼻咽頭に常在しそうな、次のような菌(微生物)が挙げられます。

•肺炎球菌
•H. influenzae(インフルエンザ菌)
•マイコプラズマ
•ウイルス(インフルエンザ、SARS-CoV-2など)

他に、クラミドフィラ・シッタシ(オウム病の原因微生物)は鳥、レジオネラは水環境(24時間風呂、温泉など)を経て感染することが多いです。これらも、いわゆる「市中での生活」をしていないと感染機会はなさそうですね。

市中肺炎の原因微生物はこれらの菌であることが多いため、エンピリック(経験的)治療は主にこれらの菌をターゲットとして行われます。

肺炎球菌やH. influenzae(インフルエンザ菌)にはペニシリンなどのβラクタム系抗菌薬が有効ですが、マイコプラズマにはβラクタムが効かない。ということで、特に上位3菌種の鑑別が必要になるわけです。

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posted by 長尾大志 at 12:52 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2024年03月28日

成人肺炎診療ガイドライン2024N市中肺炎の治療の場・集中治療は必要?qSOFA

重症以上は入院の適応で、超重症となるとICUまたはこれに準ずる病室に入室、とされていますが、初診時A-DROPでさほどでなくても後に重症化する、つまり当初から集中治療を要する敗血症症例のスクリーニングが問題とされていました。

そこで『成人肺炎診療ガイドライン2017』から、A-DROPに加えて、敗血症の有無を判断するために用いられるqSOFA(quick Sequential Organ Failure Assessment)スコアを併用して重症度を評価することになりました。2024でも引き続き採用されていますが、集中治療業界(敗血症国際ガイドライン2021)ではSIRS基準に比べて特異度は高いものの感度がそれほど高くないことがわかったことで、qSOFAスコアを単独で用いないように呼び掛けられており注意が必要です。

qSOFAスコア
•呼吸数≧22/分
•意識レベルの変容
•収縮期血圧≦100mmHg
qSOFAが2点以上であれば「敗血症の疑い」となり、臓器障害の評価を行ってSOFAスコアをつけます。

A-DROPは5項目、qSOFAは3項目で評価しますが、A-DROPだと血圧が90mmHg以下で1点なのに、qSOFAだと収縮期血圧100mmHg以下で1点、と微妙に違うところが覚えにくいですね。異なるロジックで作られたシステムなので仕方がありません。丸暗記しなくても、いつでも参照できるようになっていればOKです。

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posted by 長尾大志 at 09:20 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2024年03月27日

medicina 第61巻4号 内科医のための臨床問題集

medicina 第61巻4号 内科医のための臨床問題集 医学書院にて、「肺炎」問題を担当いたしました!まあ、1問だけですが……。豊富に問題がありますので、是非一度お手に取ってみてください!!

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それからもう1件告知です。

昨年も大好評だったということで、今年も「民間医局コネクト」さんで胸部X線写真のセミナーをさせて頂きます!題して「胸部✕線〜陰影の評価を究める〜」。

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↑こちらは昨年分のご案内。今年は日時が異なります!4月10日水曜日です!!

もちろん異常所見を見つけることが大切ですが、ただ「白い」ってだけでなくて、その白さがどのような病変から来ているのかまで考えることができるようになって頂きたい、ということで、浸潤影(コンソリデーション)、無気肺、腫瘤影、胸水あたりの用語と病変について説明いたします。奮ってご参加ください〜〜

4月10日水曜日 20時〜21時 
「民間医局コネクト」胸部X線写真のセミナー「胸部✕線〜陰影の評価を究める〜」

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posted by 長尾大志 at 08:12 | Comment(0) | 活動報告

2024年03月26日

成人肺炎診療ガイドライン2024N市中肺炎の治療の場・外来か?入院か?A-DROP

市中肺炎と診断したら、まず治療の場と治療薬を決定するために「重症度」を評価する必要があります。重症度分類は、救急室で肺炎患者さんを診る可能性のあるすべての初期研修医が習熟してほしいところです。

「治療の場」というのは、外来でいけるのか(予後が悪くなさそう)、それとも入院で治療する(予後が悪そう)必要があるのか、の判断です。その目安として、予後予測因子の何項目に当てはまるのかスコア付けをしよう、というのが以前の市中肺炎ガイドライン(2005年)から日本で用いられているA-DROPです。

重症と考えられる症例では、治療も待ったなし。したがって、初期のエンピリック治療においては広域抗菌薬を使用せざるを得ません。⇐「使用すべき」ではないですよ、念のため。また、広域抗菌薬から治療を始めても、培養結果などからde-escalationを考慮すべきであることは言うまでもありません

市中肺炎の重症度判定(A-DROP)
A:Age(年齢) 男性≧70歳、女性≧75歳で1点
D:Dehydration(脱水) BUN≧21または診察上脱水あれば1点
R:Respiration(呼吸) SpO2≦90%で1点
O:Orientation(意識障害) あれば1点
P:Pressure(血圧) 収縮期血圧≦90 mmHgで1点

これらの5項目は、いずれも市中肺炎の予後予測因子です。合計得点が何点かで入院適応が決まります。
0点:軽症 外来治療可
1〜2点:中等症 外来、または入院治療(主治医の裁量)
3点以上:重症 入院治療
4点以上 ICUへ
*ただし、ショックがあれば1項目だけであっても超重症に含めます。

A-DROPは、英国胸部学会が推奨するCURB-65とほぼ同じものです。2005年当時の実地臨床では、CURB-65の「呼吸数」という項目を非専門医にやっていただくには無理がある、として、どこにでもあるSpO2モニターによる酸素飽和度計測値を項目に入れた、という経緯があります。日本の臨床医は呼吸数を見ない、とガイドラインに明記されるって、かなり恥ずかしいことじゃないですかね。逆に、ガイドラインで「呼吸数を見よ!」って強調して、啓蒙しようという考えはなかったんでしょうか……。

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posted by 長尾大志 at 15:57 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2024年03月25日

成人肺炎診療ガイドライン2024M市中肺炎、医療・介護関連肺炎、院内肺炎の定義

問診と身体診察所見から肺炎が疑われたら、血液検査、胸部X線検査を行い、それらの所見から総合的に肺炎と診断します。肺炎と診断したら、治療の場を決定し原因微生物を推定するために、患者さんがいた「場」によってカテゴリー分類をしましょう。

市中肺炎(CAP)
ガイドラインでは、市中肺炎とは「市中で生活している人に発症する肺炎である」と書いてあります。「市中」という言葉は、普通の街中という意味です。
一方、院内肺炎(HAP)、医療・介護関連肺炎(NHCAP)を除いたものがCAPですから、NAPやNHCAPの定義とすり合わせると、医療機関にかかっていない、医療や介護の対象となっていない、ほぼ健常な人に起こる肺炎だと考えてよいでしょう。

医療・介護関連肺炎(NHCAP)
下記の4項目のうち、1つでも該当する「HAP以外の」肺炎、とされています。
1) 長期療養型病床群*もしくは介護施設に入所している
2) 90日以内に病院を退院した
3) 介護**を必要とする高齢者、身体障害者
4) 通院にて継続的に血管内治療(透析、抗菌薬、化学療法、免疫抑制薬等による治療)を受けている
*身のまわりのことしかできず、日中の50%以上をベッドで過ごす
**PS3:限られた自分の身の回りのことしかできない。日中の50%をベッドか椅子で過ごす、以上を目安とする。

院内肺炎(HAP)
院内肺炎は、入院後48時間以上経過してから新しく発症した肺炎です。入院時すでに感染していたものは除かれます。また、気管内挿管・人工呼吸器管理開始後48時間以降に新たに発症した肺炎を人工呼吸器関連肺炎(ventilator associated pneumonia:VAP)と呼びます。また、HAPのうち呼吸状態が悪化して人工呼吸器管理が必要になる肺炎をventilated HAP(V-HAP)、人工呼吸器管理は必要としない肺炎をnon-ventilated HAP(NV-HAP)といいます。V-HAPはNV-HAP、VAPと比較しても明らかに死亡率が高く、予後不良であると示されています。

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posted by 長尾大志 at 11:53 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2024年03月24日

成人肺炎診療ガイドライン2024L誤嚥性肺炎の原因菌と抗菌薬

抗菌薬については、繰り返す誤嚥性肺炎例で緑膿菌やMRSAが「以前」痰から検出されたというような場合でも、抗緑膿菌活性のある抗菌薬(J Infect Chemother. 2022: 29: 55-60)や抗MRSA薬(BMC Infect Dis. 2016: 16: 155.)を使用しても予後には変わりがなく、定着していることが多いのではないか、ということがきちんと記載されています。「以前○○菌が出ていたから広域で」というプレゼンをいやというほど聞かされてうんざりしている身としては、いいぞもっとやれ、って感じですね。

また、誤嚥性肺炎といえば嫌気性菌、嫌気性菌といえばスルバクタム・アンピシリン、ということがなんやらの一つ覚えみたいになっていますが、嫌気性菌カバーも実は有用性が示されていない、ということが明記されています(J Clin Med. 2023: 12: 1992.)。実は口腔内、下気道由来の嫌気性菌でPCG耐性があるのはPrevotellaのみで、他のFusobacteriumやPeptostreptococcusなどはPCG感受性があり、さりながら「網羅的細菌叢解析」では市中肺炎のうちPrevotellaが関与していたのは10%に満たなかった、という報告があります(J Infect Chemother. 2022: 28: 1402-9)。また、嫌気性菌カバーが拡張された抗菌薬の方がC. difficile感染症のリスクが増すという報告があります(Chest. 2024: https://doi.org/10.1016/j.chest.2024.02.025)。

AMR(antimicrobial resistance:薬剤耐性)が問題となっている昨今、スルバクタムが本当に必要かどうか、よ〜く考える必要がありますね。若い先生方には是非本ガイドラインと元文献をお読みいただきたいと思います。

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posted by 長尾大志 at 15:41 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2024年03月23日

成人肺炎診療ガイドライン2024K誤嚥性肺炎

『成人肺炎診療ガイドライン2024』では次に「誤嚥性肺炎」が独立して章立てされています。先に述べた通り、高齢化社会を反映して「市中肺炎」「医療・介護関連肺炎」「院内肺炎」どのカテゴリーにおいても、誤嚥性肺炎は起こりうるものであり、いわゆる発症の場≒原因微生物によるカテゴリー分類、とは違う切り口で、誤嚥という現象とその原因をどう取り扱うかについて取り上げているものです。

誤嚥性肺炎は「誤嚥のリスクがある宿主に生じる肺炎」と定義されます。誤嚥のリスクとしては、嚥下機能低下(嚥下障害、咳嗽反射障害、意識障害)と胃食道機能不全に大別されますが、誤嚥のリスクがあっても誤嚥したものを十分喀出できれば肺炎には至りません。ところが咳をして気道内のものを飛ばす「喀出」には、ある程度以上の呼気流速が必要、腹筋の力も必要です。高齢になりフレイル、サルコペニアからの全身筋力低下・衰弱がくると、誤嚥した口腔内容物の喀出不全となり肺炎をきたすわけです。

そうすると、「治療」戦略としては、単に細菌を叩く、ということだけではなく、全身状態、ADL、筋力、リハビリ、栄養etc……と多岐にわたる「全人的」治療が必要になるわけですが……ガイドラインでは「予後が悪い」「老衰」「終末期」「ケア」といったワードが多く、治療については抗菌薬のことについてが主で、それ以外についてはあまり触れられていないのが残念です。

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posted by 長尾大志 at 19:47 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2024年03月22日

成人肺炎診療ガイドライン2024Jウイルス性肺炎

『成人肺炎診療ガイドライン2024』発刊前にSARS-CoV-2による肺炎が蔓延したことから、ウイルス性肺炎、ということで独立した章を前の方に設けられています。

それまでは純ウイルス性肺炎は少なく、ウイルス感染に細菌感染を合併した肺炎が多かったのですが、2020年〜2022年はSARS-CoV-2による純ウイルス性肺炎の方が細菌性肺炎よりも高率であったということで、SARS-CoV-2のインパクトが強くなりました。

ウイルス性肺炎を細菌性肺炎と鑑別するメリットとしては、当然ながら両者では治療薬が異なる、ということとSARS-CoV-2においてはとりわけ厳密な院内感染対策が必要、というところです。ただ鑑別といっても一筋縄では参りません。

細菌性肺炎の原因は主に喀痰などから原因微生物を分離することで判断されますが、ウイルス性肺炎において、ウイルスの分離同定は手間暇がかかり臨床現場では実用的ではありません。通常ウイルス性肺炎の診断には抗原を検出する迅速診断キットが広く用いられます。特にSARS-CoV-2とインフルエンザウイルスは頻度も高くインパクトも大きいため、同時診断キットも頻用されています。

また、ウイルス感染症に特徴的な症状や検査所見も参考になります。SARS-CoV-2蔓延初期に有名になった「味覚・嗅覚障害」は、通常細菌性肺炎にはみられません。また、白血球数<10,000/μL、CRP<2mg/dL、プロカルシトニン<0.1μ/L、異形リンパ球出現、などがウイルス性肺炎に特徴的とされています(Lancet. 2011; 377: 1264-75.)。また、胸部CTにおいてウイルス性肺炎は両側すりガラス影を呈するのが典型的で、細菌性肺炎であれば浸潤影/コンソリデーションを呈することが多いという特徴、これらの所見を組み合わせて「ウイルス性肺炎ぽい」「細菌性肺炎ぽい」という、ある程度の診断が出来そうです。

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posted by 長尾大志 at 00:39 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2024年03月19日

成人肺炎診療ガイドライン2024I肺炎の原因微生物を探せ!B原因微生物に迫るための検査

そんなわけで、できる限り原因微生物に迫りたい。そのための検査として、以下のようなものが挙げられます。

@喀痰の塗抹検査(グラム染色)、および培養・同定
A血液培養(敗血症・菌血症の評価のため)
B尿中抗原(肺炎球菌、レジオネラ)
C喀痰や上咽頭ぬぐい液・鼻腔吸引液の抗原(SARS-CoV-2、インフルエンザウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、マイコプラズマ等)
DPCRやLAMP法による遺伝子検査(マイコプラズマ、レジオネラ等)
E血清抗体検査

グラム染色については、まだ普及途上といった感じですが、迅速性と妥当性からはもっと普及すべき検査であるといえます。

グラム染色は直ちに結果が出ますし尿中抗原や喀痰などの抗原も迅速に結果が得られますが、喀痰や血液培養は結果が出るのに数日、LAMP法はもう少しかかります。抗体検査は2週間以上かかります。

初診時にすぐに結果が得られるグラム染色と、抗原検査でわかる肺炎球菌、レジオネラ、マイコプラズマあたりは、その時点で原因微生物の目星をつけることができるのです。

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posted by 長尾大志 at 08:23 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2024年03月18日

成人肺炎診療ガイドライン2024H肺炎の原因微生物を探せ!Aエンピリック(empiric)治療とは

思えば医師国家試験、看護師国家試験から早1か月半経過し、医師国家試験は合格発表もありましたね。合格された皆さん、本当におめでとうございます。いよいよ医師としての人生スタートですね!島根大学としても多くの学生さんの努力が実ったこと、うれしく思います。残念ながら合格が叶わなかった方について、大学として何ができるかを検証していく必要があると思います。

それでは国家試験問題解説等々で小休止していました肺炎ガイドライン解説につきまして、再開して参りますね。前回は2月2日がGでしたので、今回はその続きから。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜続き〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


実際の臨床の現場においては、肺炎の原因微生物の目星がつかないことも多く、それが判明する前に抗菌薬を投与開始、いわゆる「エンピリック(empiric)治療」せざるを得ないことが多いものです。

empiricというのは、「経験的な」という意味です。こういうシチュエーションだったらこういう菌が経験的に多いから、この抗菌薬を使いましょう、ということを決めておいて、シチュエーション別に治療するものです。本来は、初期治療において原因微生物が定まるまでのとりあえずの治療、という意味合いであったはずが、結局菌種が確定せずにそのまま治療継続されることが多いようです。まあ、それでも「その症例については」大概うまくいくのですが…。

empiricには「ヤブ」とか「山師」という意味もあり、しばしば「原因微生物の絞り込みを行わずにテキトーな治療をする」という揶揄の対象になります。それに対し現実問題、痰の検査ができないものは仕方がない、うまくいくんだからそれでいいだろう、という声も少なくありません。

それでも、原因微生物探しはできるだけ努力すべきです。なぜか。

エンピリック治療では、(治療失敗を避けるために)どうしても広域抗菌薬を使うことになります。じゅうたん爆撃では原因微生物は死に絶え、患者さんは良くなるでしょう。しかし、その後必ず体内で菌交代が起こり、その人の体内の菌がAMR化してくるわけです。塵も積もれば山となる。そのうちに施設がAMR化、その地域がAMR化、やがて日本が、世界がAMR化…。今まで何度も繰り返されてきた抗菌薬悲劇の歴史です。人類全体の将来を考えるならば、爆撃機はできる限り温存しておきたい。じゅうたん爆撃期間が短いほど、耐性菌が選択される可能性は低くなるわけですから、原因微生物に対してできる限りのピンポイント攻撃をしたいところです。

ですから仮に初期治療が有効であっても、隙あらばより狭域の抗菌薬に替える(de-escalation)べきです。そのためにもちろん、治療開始前に原因微生物を探しに行く努力もそうですが、治療開始後でも抗菌薬の選択しなおしができるよう、できる限りの検体を採取しておくことが望ましいものです。

また、初期治療は必ず成功するとも限りません。その場合の治療変更は、原因微生物という根拠がなくては難渋することになります。

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posted by 長尾大志 at 12:19 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2024年03月17日

出雲プリン選手権3/16まとめ

昨日3月16日、出雲ケーキ選手権に続いて、私と島根大学医学部のスイーツを愛する学生さんが出雲ベースに集って出雲のプリンを愛でる会、すなわち出雲プリン選手権を開きました。その模様を取り急ぎ参照できるメモを見ながらまとめてみたいと思います。

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当日は1人数個ずつの推しプリンを持参していただいたわけですが、まずは標準化?、ということで、プッチンプリンから試食開始。その後各店のプリンを少しずつ食べて感想を語り合う、ということで進めました。

ワイワイ意見を述べ語り合いながら進めていったもののメモを参照しつつ、各々のプリンの特徴みたいなものが浮き上がってきたため、それをここに共有させていただきます。とはいえ、前回のケーキとは異なり、それほど大差ともならなかったような気がしますし、前回同様「優劣がつくものではない」ということで、あえて優劣はつけない形で進めさせていただきます。

また必ずしもパティシエの方が意図したところと当方の感想とは違っているかもしれませんが、あくまでちょっとプリンがが好きな素人たちが自分たちの感性で感じ取ったことですので、そこはご容赦いただければ幸いです。もちろん誰一人としてパティスリーとCOI関係にあるものはおりません。出雲でプリンが食べたいけれどもどこにしようかな、という方の、何らかの参考になれば幸いです。

なお、お店の表記はHP等を参考にさせて頂いておりますが、大文字、小文字が混在したりしてわかりにくいところは勝手ながら代表的なロゴなどを参考にしました。参考価格は昨日現在のものです。

(順番は偶々食べた順)

・プッチンプリン119円
普通に懐かしくおいしかった
ゼラチン感が目立った、パティスリーのものを食べた後だとゼリーのように感じた

・ホックの特製焼きプリン(HOK)220円
手作り感、家で作った感があって、割と生地はしっかりしている
しっかりしていて卵感がきちんとある
表面がちょっと固めの感じで、おいしい系、卵焼き感
カラメルはそんなに癖がなく、サラサラ系

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・パティスリー ルノワール (Patisserie Renoir)250円
シュークリームの中身感
トロトロでふわふわで流れる感じ
カラメルは比較的主張しないけれどもカラメルではあるんです

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・カクレ菓子
生地の卵感は少なめだけどルノアールよりは固め
上層が生クリームとのハーモニー、下層はカラメルとのハーモニーがあって2回楽しめる
ある程度固いんだけど、すごくなめらかで、その固さ成分もおいしい
卵っぽくないんだけどなんで固いんだろう?

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・サイゼリヤのイタリアンプリン250円
固さはカクレ菓子と似ている
カラメルがかなり甘さが強くて、その甘さが支配していてとってもおいしい

・リンツ(LiNZ)281円
しっかりしていて、掬いやすい
口に入れるとほどよくなめらかでとろける、すくった感じと印象が変わる
甘すぎないバニラビーンズ

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番外編 異種格闘技編
・いとおかし(店に入ったらプリンがなく、やむを得ず購入したプリンタルト)
全体的に優しい味で、ちょっと羽2重感がある

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・カクレ菓子 ブリュレロール?正式名称不明
ブリュレ部分がシャリシャリしていておいしい
ロール部分も美味しい

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決められん、といいつつ、最後には「これがよかったね〜」みたいなのはあったのですが、あえてこちらでは公表しないでおきます。あくまで好みと順番の問題がありそうですので。


さあ、そして、第3回の開催も決定しております!日程は6月1日!テーマは和菓子!!和菓子といっても広いので、具体的な登録菓子が決まりましたらまた告知いたしますが、どうぞ日程をあけておいていただけますようお願い申し上げます。

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posted by 長尾大志 at 13:30 | Comment(0) | 日記

2024年03月16日

第113回看護師国家試験問題解説・113A96 COPD(肺気腫)在宅酸素療法では火気に注意!!

1.電気毛布やカイロ・ヘアドライヤーなど発熱する物品を酸素チューブに近づけると、発火し火事の原因となりうるので使用を避けます。

2.入浴時は労作負荷、温度変化等から息切れ・呼吸困難が増悪しやすいため酸素チューブを外すべきではありません。

3.ガス調理器の炎と酸素チューブが近づくことで思わぬ大きな炎が生じ、火事の原因になるため炎を使わない生活に改めたほうがいいでしょう。

4.急性増悪を繰り返すほど重症化している慢性閉塞性肺疾患では、CO2貯留からCO2ナルコーシスをきたす危険性があります。不用意な高流量酸素投与は控え、患者の自己判断で酸素流量を上げることは避けるよう指導します。

正解:3.ガス調理器を電磁調理器に変更してください

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2024年03月14日

第113回看護師国家試験問題解説・113A96 COPD(肺気腫)在宅酸素療法で気を付けるべきこと

5年後、Aさんは急性増悪による入退院を繰り返していた。今回の入院では呼吸機能の低下が見られたため、退院後に在宅酸素療法〈HOT〉を導入することになった。Aさんは「家での生活で気をつけることは何ですか」と看護師に質問した。
Aさんへの指導内容で適切なのはどれか。
1.寒い時は電気毛布を使ってください
2.入浴時は酸素チューブを外してください
3.ガス調理器を電磁調理器に変更してください
4.呼吸が苦しい時は楽になるまで酸素流量を上げてください

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2024年03月13日

第113回看護師国家試験問題解説・113A95 COPD(肺気腫)の呼吸機能に対する負荷が小さい動作は?

1.食べる直前に調理をすると労作によって息切れが生じた状態で食事することになり、すぐに腹満が生じて十分量食べられなかったり、嚥下に問題が生じてむせたりします。調理後休憩してから食事するほうがよいでしょう。

2.部屋全体に掃除機をかけるのは相当の労作負荷になるため、避けるほうがいいでしょう。

3.頭より高い位置に洗濯物を干す、すなわち上腕を挙上した状態を維持することは、胸郭運動の妨げになり、呼吸困難を引き起こします。よくないですね。

4.買い物した荷物を手持ちで運ぶよりも、カートなどで運んだほうが労作を軽減することになりますので推奨されます。

正解 4 買い物した荷物をカートで運ぶ

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2024年03月11日

第113回看護師国家試験問題解説・113A95 COPD(肺気腫)の呼吸機能に対する負荷

113A95
Aさんは発熱、咳嗽、粘稠痰、呼吸困難を認めたため受診し、肺炎を伴う慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉の急性増悪と診断されて入院した。入院後、薬物療法によって病状は改善し退院が決定した。看護師がAさんに退院後の生活について尋ねると、今回の入院をきっかけにAさんは退職し、家事に専念すると答えた。
Aさんの呼吸機能に対する負荷が最も小さい動作はどれか。
1.食べる直前に調理する
2.部屋全体に掃除機をかける
3.頭より高い位置に洗濯物を干す
4.買い物した荷物をカートで運ぶ

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2024年03月10日

祝賀の式

今日は神戸のステキな会場で、ステキなお2人の祝賀の式がありました。

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本当におめでとうございます!!

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posted by 長尾大志 at 23:15 | Comment(0) | 日記

2024年03月09日

市立芦屋病院 病診連携 医療安全講習会

昨日は市立芦屋病院さんからお招きいただいて、病診連携 医療安全講習会で、医療ガスの安全使用に絡んだ酸素療法の基礎的なお話を、院内メディカルスタッフの皆さん、そして医師会の先生方にお話させていただきました。

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ハイブリッド開催でしたので、現地は主に院内スタッフの皆さん、そしてオンラインは医師会の先生方中心だったようです。それにしても、芦屋の高級住宅街に足を踏み入れるなんて、たぶん高校以来……40年ぶりでしょうか。このような機会を頂き僥倖でございます。テンションアゲアゲでございます。

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しかも病院長の南正人先生(ご高名な呼吸器外科医)、副病院長の荒木先生はじめ、中学高校の先輩が何人もおられ、久しぶりに耳にするワードも懐かしくてすっかり浮かれてしまいました。

さらに、開始前にご挨拶いただいた臨床工学技士の方が、拙著のメディカルスタッフ用3部作をコンプいただいていて(こんな経験は初めて!)、気合が入りまくってしまい、ついつい前半の導入部分でしゃべりすぎてしまいました……。

我に返ったときには終了10分前。後半の酸素デバイス具体例が飛ばし飛ばしになってしまって申し訳なかったのですが、なんとかご参加いただいた140名余の皆様にはご満足いただけたようで安堵いたしました。

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南先生、荒木先生、北口様、そして共催の帝人ファーマ様、帝人ヘルスケア様、本当にありがとうございました!今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!!

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posted by 長尾大志 at 11:06 | Comment(0) | 活動報告

2024年03月07日

113A94-96 COPD(肺気腫)の呼吸機能

1 COPD(肺気腫)においては閉塞性換気障害が生じ、1秒率は低下します。

2 COPD(肺気腫)では肺胞が破壊されて呼吸に関与しないイラン空気が溜まり、息をすべて吐いた状態で肺内に残っている空気量=残気量は増加します。

3 COPD(肺気腫)は肺胞が破壊されるため肺胞内に安静換気で出入りする空気量=1回換気量は減少します。

4 COPD(肺気腫)では肺胞が破壊されて酸素の取り込み効率が悪化し、動脈血酸素分圧は低下するします。

正解:2 残気量

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