2024年10月30日

札幌医科大学附属病院研修医の先生方、学生さんに胸部X線のレクチャー

昨日は札幌医科大学総合診療科の辻先生にお招きいただき、研修医の先生+学生さんに胸部X線のレクチャーをさせていただきました。

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辻先生は、私が滋賀医大に居たころに医学教育講座…的なところにおられ、ものすごく苦労されているのを横目に拝見してはいたのですが、いろいろあって札幌医大の総合診療科の教授になられたんですね。その頃から私もいろいろお世話になっていまして、久しぶりにいろいろお話しできる!と楽しみに参りました。

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Zoomも併用して合計40名くらい?ご参加いただいたとのことで、少しでも多くの方のお役に立てるといいなあと思います。

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終了後(前も)、呼吸器内科教授の千葉先生、そして白鳥先生、神野先生、大野先生?も交えてお食事、お話が出来て大変嬉しかったです。辻先生、皆様、本当にありがとうございました!

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posted by 長尾大志 at 21:36 | Comment(0) | 活動報告

2024年10月29日

成人肺炎診療ガイドライン2024〈75〉ペニシリン系抗菌薬の歴史

ペニシリンはご存じの通り、最初に発見された最も歴史の古い抗菌薬です。最初のそれがペニシリンG(PCG)。これができた頃は、第二次世界大戦があり、多くの戦傷者を救ったといわれています。PCGはグラム陽性球菌、なかでも連鎖球菌などによく効きますので、外傷からの感染症にも効果があったのでしょう。
で、当初ペニシリンはガンガン使われたわけですが、そのうちに問題が出てきます。要するに効かないケースが出てきたのです。もともとグラム陰性桿菌には効きませんし、ペニシリンを分解する酵素ペニシリナーゼを産生する菌にもあまり効きません。表皮にたくさんいる黄色ブドウ球菌もペニシリナーゼを産生する性質を持つようになり、耐性化してきたのです。
普及しだしてからわずか数年以内に、「抗菌薬をたくさん使って耐性獲得される」という、抗菌薬の宿命ともいえる事態を招いていたわけです。そこで人類は、ペニシリンの「改良」に着手します。

構造を変更してペニシリナーゼに分解されにくくする
これの代表がメチシリン。何となく聞き覚えがありますね?そう、メチシリンは、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の名前の由来になった薬です。
そもそも黄色ブドウ球菌用として作られたメチシリンですが、メチシリンを使い出してほどなく、メチシリンに耐性を持つように菌の標的部位構造が変化しました。これがMRSAなんですが、たまたまその構造変化の部位が特徴的なために、ほとんどの抗菌薬が効かない菌になってしまったのです。たまたまとはいえ、メチシリンはMRSAを生み出した汚名を着せられ、また副作用の問題もあり、わが国では表舞台から姿を消しています。

構造を変更して、グラム陰性桿菌にも効くようにする
いわゆる広域ペニシリンという範疇に入るペニシリンです。この中にも、緑膿菌に効くやつと効かないやつ、大きく分けて2種類あります。ペニシリナーゼ(βラクタマーゼ)で分解されるので、ペニシリナーゼを産生する菌にはやはり効き目がありません。

ペニシリナーゼ(βラクタマーゼ)阻害薬を混ぜる
上記の広域ペニシリンにペニシリナーゼ(βラクタマーゼ)阻害薬を混ぜたものです。そのためにペニシリナーゼ産生菌に対するスペクトラムが広がりました。
元の広域ペニシリンに、上記のごとく緑膿菌に効くやつと効かないやつがあるため、こちらも同様に、緑膿菌に効くやつと効かないやつがあります。

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posted by 長尾大志 at 11:30 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2024年10月28日

「肺がん診療のリアル」書籍出版記念コラボライブ第4弾(第181回肺がんYouTube相談会)動画

先日開催された、市立長浜病院呼吸器内科の、呼吸器ドクターNこと野口哲男先生による「肺がん診療のリアル」書籍出版記念コラボライブ第4弾(第181回肺がんYouTube相談会)、『がん〜4000年の歴史』という一般書を
読み解く会の動画が公開されていますのでご紹介。

https://www.youtube.com/watch?v=iATFOOoethw
こちら、前置きが長いのですが、34:40〜から本編です……

「がん」の歴史から原因、治療のところを解説した内容となります。特に医学生さんや医学系学生さんの、「がん」に対する理解を深めて頂けるんじゃないかなあ、と思いますので、どうぞご覧ください〜〜

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posted by 長尾大志 at 18:20 | Comment(0) | 動画置き場

2024年10月27日

いざ和歌山、田辺へ

今回は和歌山からの〜田辺旅です。

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くろしおに乗って〜サンドイッチ食べて〜〜

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現地到着!120名ご参加の対面講演は久しぶりでしたが、GoogleForm使いながら、クイズ形式でまあまあうまくいったかな?という感じでした。

特記すべきは、いつも和歌山講演にお越しいただいて(梅を頂いて)いる、島根大学4期生、大先輩のT先生に今年もお目にかかれたこと(今年も梅をありがとうございました!)、椎名病院長の学祭バンド話、武勇伝で盛り上がりました!是非島根大学50周年の折にはお越しいただければと存じます。

そして20数年前の、京大胸部研時代の教え子、というのもはばかられる、立派な先生であるS先生にも、実に久しぶりにお目にかかれました。当時から「こんな優秀な先生が呼吸器内科に来てくれたらなあ」と思っていたのですが、当時から消化器や総診にご興味があったようで、一旦別の道に進まれたのですが……いろいろお話しできて、またご一緒できるチャンスがありそうで、ワクワクしています。教育やっててよかった、という瞬間でした!

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posted by 長尾大志 at 12:43 | Comment(0) | 日記

2024年10月25日

市立長浜病院呼吸器内科<呼吸器ドクターN>野口先生とのコラボライブ

昨日はこちらのセミナーでした。都立駒込病院の四方田先生は20年ぶり懐かしくいろいろとお話しできました。

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それで今日はこちらですね。移動の後になりますので、ちょっとバタバタしますがなんとか整えて発信できるようにしたいと思います。

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posted by 長尾大志 at 11:53 | Comment(0) | 日記

2024年10月23日

告知あれこれ

毎日バタバタしていると、ふと気が付くとあれやこれやが迫ってきていて、ああ、告知してなかったな……ってなりますね。ということで告知を固めてお送りします!

10月24日(木)19時〜 Web
Lung Disease & Respiratory seminar in Komagome
「人体画像の不思議展」

がん・感染症センター都立駒込病院の四方田先生、こちらは私が滋賀医大に赴任した直後の教え子、いわば長尾チルドレン?第1世代の方で、その方にお声がけいただき座長をしていただくというのは、感無量ですね。
お話タイトルは某有名展覧会をもじっておりますが、オモロー画像を大真面目に論じる会となっております。

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10月25日(金)21時〜
市立長浜病院呼吸器内科<呼吸器ドクターN>コラボライブ

市立長浜病院呼吸器内科の、呼吸器ドクターNこと野口哲男先生による「肺がん診療のリアル」書籍出版記念コラボライブです。『がん〜4000年の歴史』という一般書をベースに、一般の方に癌の治療がどのように変遷してきたのか、多くの先人達の試行錯誤、研究を経て現在の「標準治療」が作られているのだ、ということをお話ししようと思います。

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10月26日(土)14時〜 @県民交流プラザ和歌山ビッグ愛 大ホール
10月27日(日)14時〜 @県立情報交流センターBig.U 研修室4
肺がん(胸部エックス線)検診従事者研修会

今年もやります、出張『肺の孔』。全問新作でお届けいたします!現地のみとなります。

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10月29日(火)17時30分〜 @札幌医科大学附属病院
研修医・学生向けセミナー『救急外来で困らない胸部画像読影道場』

滋賀医大でお世話になった辻先生にお招きいただきました!頑張ります!!

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11月6日(水)18時50分〜 @ダイワロイネット和歌山 & Web
和歌山呼吸器 病診連携の会
「胸部X線読影道場『肺の孔』〜急性咳嗽の診療編」

なんと2週続けて(偶々)和歌山入りしますが、こちらは和歌山県立医大主催の会になりまして、関西医大の宮下先生の前座を務めさせていただきます。ハイブリッドですのでお気軽にご参加ください〜。

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posted by 長尾大志 at 15:42 | Comment(0) | 活動報告

2024年10月22日

成人肺炎診療ガイドライン2024〈75〉抗菌薬の種類と特徴・序論

初学者にとって抗菌薬の名前や分類、スペクトラムを覚えていくのは結構大変です。ここではcommon diseaseである肺炎を例にとって、一系統ずつ紹介して参ります。

●ペニシリン系の分類は、おおざっぱに言うと、緑膿菌に効くか効かないか、βラクタマーゼ阻害薬が配合されているかいないかで4系統ある。
●セフェム系は第1世代から第4世代まで、4つの世代がある。ヒトと細菌の戦いの歴史とともに世代を理解したい。
●マクロライド系は「非定型」な感染症に使う。
●重症感染症ではカルバペネム系を出し惜しみすべきではない。
●キノロン系が必要な場面はそうそうない(レジオネラ肺炎ぐらい)上に結核に中途半端に効いてしまって診断の遅れにつながるので、肺炎に対してはできるだけ出し惜しみすべきである。


グラム陽性菌とグラム陰性菌
抗菌薬の攻撃対象を考えるのに、市中肺炎の原因微生物を大きくグラム陽性球菌とグラム陰性桿菌に分けてみましょう。肺炎球菌とミレリグループ、黄色ブドウ球菌、口腔内の嫌気性菌はグラム陽性球菌。モラクセラはグラム陰性球菌。インフルエンザ菌、クレブシエラ、主な腸内細菌、緑膿菌はグラム陰性桿菌ですね。

ごくごく大雑把にいうと、グラム陽性球菌は陽キャで、目立っていて、派手な症状(発熱や悪寒戦慄など)を引き起こす一方、グラム陰性桿菌は普段地味で目立たず、症状も地味、という印象になります。陽性球菌の方が狭域抗菌薬で効果があることが多いので、抗菌薬を投与するとまず陽性球菌がバタバタやられて、その後生き残った陰性桿菌が蔓延ってくる……みたいなイメージでしょうか。

このように大きくグラム陽性球菌群とグラム陰性菌群に分ける以外に、βラクタム系抗菌薬を分解するβラクタマーゼ産生菌(グラム陽性球菌でも陰性桿菌でもあります)は別扱いです。また、市中肺炎の原因菌として頻度が高いのと、少々やっかいな耐性菌のBLNARが増えている、ということでインフルエンザ菌も別扱いとします。

緑膿菌はもちろん特別扱い。MRSAも然りですね。

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posted by 長尾大志 at 16:57 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2024年10月21日

成人肺炎診療ガイドライン2024〈74〉MIC (最小発育阻止濃度)とは

現在の感染症を考える上で、耐性の問題を避けて通るわけにはいきません。抗菌薬を使うと、一定の割合で、それに対する耐性菌が生き残ります。したがって、現在使われている抗菌薬には、何らかの形で耐性菌が存在する、と考えておく必要があります。耐性獲得のメカニズムは、ある抗菌薬を使い続けると、感受性のある菌はバタバタ死んでいくものの、耐性を獲得した菌は生き残り、やがて耐性菌ばかりになる、という機序です。

耐性の問題を考える上で、知っておくべき用語として「MIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)」つまり、「細菌の発育を阻止できる最小の濃度」というものがあります。培地に菌を植えると、生えてくるんですが、その培地に、その菌に対して有効な抗菌薬を充分量染みこませておくと、菌は生えません。

そこで、ある菌に対して、いろいろな濃度の抗菌薬を染みこませた培地を作ります。どのくらいの濃度で菌が生えるかを見ることで、菌の発育を阻止する最小の濃度 =MICを知るわけです。

たとえば、抗菌薬の濃度が1μg/mLでは生え、2μg/mLでは生えない、という場合、最小発育阻止濃度すなわちMICは2μg/mLである、ということになります。

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posted by 長尾大志 at 16:41 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2024年10月20日

今日の診療に活かせる 喘息・COPDポイント解説 (jmed mook) 日本医事新報社byキュート先生

田中希宇人先生…というより、キュート先生と申し上げたほうが通りがいいかもしれませんが、各種SNS等で呼吸器の情報を発信しておられる、日本鋼管病院呼吸器内科診療部長の田中希宇人先生が、日本医事新報社さんのjmedシリーズを担当されるということで、ほんの少しだけお手伝いさせていただきました〜〜。

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今日の診療に活かせる 喘息・COPDポイント解説 (jmed mook) 

あの倉原先生とご同僚の田中悠也先生、それからあの中島啓先生、そして不肖私の寄稿が少しございますが、ほとんどキュート先生が書かれていて、やはり共著の書籍より単著の書籍の方が、統一感があっていいよね〜って思って拝読させていただきました。現時点で喘息・COPDに関する一通りのことを学ぶのにはうってつけの書籍です!是非ご一読ください!!

私の担当は、いつもご質問を頂くこちらの悩ましいテーマについてでした。結構難航しました……笑。
<喘息/COPD鑑別が難しい症例の問診・身体所見の実臨床でのコツ(身体所見に重きを置いて)>
<喘息・COPD合併病態の治療の実際(安定期の治療について)>


昨日の「病院長バンド(仮)」の動画をご提供いただきました!こっそりとインスタにあげておきますので、ご興味ありましたらどうぞ……

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posted by 長尾大志 at 12:49 | Comment(0) | 活動報告

2024年10月19日

お知らせ?

今日は移動からの〜島根大学医学部の学際「くえびこ祭」出演があります。

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島根大学の学生さんはこちらをご覧になっていないとは思いますが……念のため告知しておきますね。17時30分〜デス

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posted by 長尾大志 at 13:01 | Comment(0) | 日記

2024年10月18日

滋賀医科大学で講義からの〜総合診療・地域医療実習4週間の総括

本日午前中は滋賀医科大学で呼吸器の基礎を講義。参加者もそう多くはなかったのと、commentscreenがうまく作動しなかったところですが、ややウケ?×数回で、自分としては上出来かなと信じておきます。感想もチラホラ頂きました〜

・テンポが良くてすごくわかりやすい授業でした!
・質問を匿名チャットで送れるのがよかったです
・楽しく授業を聞くことができました!ありがとうございました。
・わかりやすかったです
・講義と問題の両方があって、授業の復習ができて面白かった。
・ブロンコ体操のおかげで肺の区域を理解出来ました。

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そして午後からは総合診療・地域医療実習4週間の総括。例によって多くの学びを得て解像度を増した学生さん方の優れたプレゼンを聴かせていただきました。地域の先生方には本当にいつも充実した学びを提供いただき感謝しております!

今回のアワード選考も大変優れたプレゼンが多く難渋しましたが、諸条件も加味して飯南病院と隠岐病院の学生さんに授与とさせていただきました!皆さん、お疲れさまでした!!

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posted by 長尾大志 at 18:00 | Comment(0) | 日記

2024年10月17日

成人肺炎診療ガイドライン2024〈73〉人工呼吸器関連肺炎A

VAPは挿管患者全体の5〜40%に発生するとされていて、次のような発症機序が考えられています。

•胃の内容物が逆流
•口腔内や気管チューブに病原微生物が定着(コロニゼーション)
•誤嚥したものが気管チューブのカフの外側を通って気管内に入る
•咳反射や線毛上皮機能の低下

VAPの診断はしばしば困難です。そもそも人工呼吸をする要因となった原疾患や肺病変、あるいは無気肺や胸水など、人工呼吸中に併発しやすい病変との鑑別が困難だからです。

挿管下であり、下気道の直接吸引や気管支洗浄などによる生物学的アプローチは比較的容易ですから、これは欠かせません。血液培養や胸水など、アプローチできるところからの培養も積極的に行います。

VAPも院内肺炎の1つですから、検出菌としては緑膿菌が最も多いとする研究が多いです。MRSAが検出されることも多いですが、例によって定着との鑑別が重要になります。抗菌薬選択の原則自体は、普通の?院内肺炎と同様です。

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posted by 長尾大志 at 10:05 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2024年10月16日

成人肺炎診療ガイドライン2024〈72〉人工呼吸器関連肺炎

人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)とは、気管挿管下人工呼吸を開始して48時間以降に新たに発生する院内肺炎を指します。人工呼吸をしているということですから、入院中(院内肺炎)であることは当たり前ですね。

リスク因子として、次のようなことが挙げられます。
•長期間の人工呼吸管理
•再挿管
•発症前の抗菌薬投与
•原疾患(熱傷、外傷、中枢神経疾患、呼吸器疾患、心疾患)
•顕性/不顕性誤嚥
•筋弛緩薬の使用
•低い気管チューブカフ内圧
•移送
•仰臥位
•制酸薬

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posted by 長尾大志 at 18:49 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2024年10月15日

日経メディカル 長尾大志の「わかりやすイイ 胸部X線写真読影 アドバンス」第13回公開されました〜

日経メディカルさんで連載中の「長尾大志の『わかりやすイイ 胸部X線写真読影 アドバンス』」、第13回が公開されました!

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/tnagaoadvance/202410/586045.html

今回も前回からの流れで執筆いたしました。動画リンクも記事内にございますので、よろしければご覧いただければと思います。

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posted by 長尾大志 at 11:58 | Comment(1) | 活動報告

2024年10月14日

市立長浜病院呼吸器内科の、呼吸器ドクターNこと野口哲男先生による「肺がん診療のリアル」

市立長浜病院呼吸器内科の、呼吸器ドクターNこと野口哲男先生による「肺がん診療のリアル」という書籍がこのたび上梓されたとのことで、献本頂きましたのでご紹介させていただきます。

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野口先生は私が滋賀医大に赴任した頃から大変お世話になっていた先生で、もうずっと呼吸器不毛の地である滋賀の最果ての地である長浜にある市立長浜病院で、数少ない呼吸器内科医として多くの呼吸器疾患の患者さんの診療に携わられていた方です。

最近ではirAEの「逆引きマニュアル」で、呼吸器内科の業界で一躍全国区で有名になられました。また、肺がんの患者さんの間でも、「呼吸器ドクターNのYouTubeチャンネル」、YouTuberとして多くの解説動画や、患者さんとの対話を通じて肺がんの知識を多くの患者さんにお伝えする、という活動を続けておられて、本当に頭が下がる思いでいつも拝見しておりました。

そんな野口先生がいよいよ満を持して、肺がんに関する「現時点での決定版」ともいうべき書籍を上梓されました。早速拝読いたしましたが、肺がん患者さんが受診するきっかけ(健診発見、症状受診)に始まって、検査や治療といったところまで、一つ一つの事柄を平易かつ丁寧に解説されていて、初学者でも一通りの診療ができるよう配慮されています。書籍の中で書かれていますが、肺がんを「きちんと」診療することができれば、呼吸器内科医としては1人前であるというお考えのもと、これは私も大いに賛同するところでありますが、つまり患者さんの受診動機や検査・治療という、肺がんに限らず呼吸器疾患の患者さんの1連の流れに関しての丁寧な解説書であるともいえます。そして書籍内からYoutubeチャンネルに飛べるQRコードも示されている親切設計であります。

例えば腫瘍マーカー高値という検診からの紹介に対して、どのように考えどのように対応するかということもそうですし、胸部CTを撮影する場面や造影剤が必要になる場面等についても根拠に基づいたわかりやすい解説があり、現在存在する極めて複雑怪奇?な化学療法の治療薬についても、遺伝子変異や免疫チェックポイント阻害薬など、余すところなく解説していただいています。

拙著である「やさしイイ呼吸器教室」では、あえて肺がんの項目は大原則的なところをだけを取り上げて、細かい治療薬等については触れておりませんが、その理由は目まぐるしく治療法の推奨が変更され、新製品がどんどん出てくる現状で、書籍に落とし込むのは、タイミングの問題もあってなかなか難しいからなのですが、そこを勇気を持ってしっかりと、今現在の最適な治療に関して述べていただいていて、大変助かるところであります。ですので、「やさしイイ呼吸器教室」を読まれて肺がんの項目が物足りないぞ、と思われた方にはぜひこちらの書籍をお読みいただけると良いのではないかと思います。

前書きに書かれているように、本書籍の主な対象は呼吸器を専門とする後期研修医の先生方なのかな、と感じますが、肺がんの最近の治療についていけない、という非専門医の先生方や、肺がん診療の概観を知りたいという初期研修医学生さんにも、大変わかりやすく書かれて参考になると思います。

また現在治療を受けておられる肺がん患者さんやそのご家族様におかれましても、書籍全編にわたって患者さんに対する優しさ、丁寧さが伝わってくるような丁寧な筆致であり、大変読みやすく書かれているため、多少難しいかもしれませんが主治医の先生からの説明の時に手元に置かれておくといいのではないかと思います。特に患者様やご家族様におかれては、巷にネットやいろいろな広告などで「がん」に関する根拠のない治療、高額な治療を目にすることがあると思いますし、それにすがりたくなる気持ちも大変よくわかるのですが、大変残念なことにそれらの治療は高額な料金を要求する詐欺まがいのものであることがほとんどです。

現在保険で認められている標準治療こそが、これまで多くの患者さんの治療経験から得られたデータ、長期間にわたって多くの薬剤を試して得られたデータなどの蓄積によって組み立てられています。この書籍で現状における「正しい治療のやり方」をぜひ学んでいただき、正しく健やかにお過ごしくださるよう切にお願い申し上げる次第です。

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posted by 長尾大志 at 13:51 | Comment(0) | 日記

2024年10月13日

ランチミーティングからの〜聖地巡礼

今日は、滋賀医大呼吸器内科黎明期を支えて下さった2人の女医さんとの定例ミーティングでした!お2人とも現在は呼吸器界隈から少し距離を置いておられますが、時々お会いしてお互いの近況報告をさせていただいております。

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会場はいつもの、インターコンチネンタルホテル大阪、NOKA Roast & Grill(ノカ ロースト&グリル)さんです。いつもながらロケーションがいい、ながら、行く道の人が多い!かき分けかき分け、20階に到着!

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前菜、サラダは取り放題〜

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メインは本日のお魚、タイでした〜

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デザートも取り放題で、大満足!

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さて、折角大阪に出たので!聖地巡礼だ!!と、NMB48の30thシングル「がんばらぬわい」購入の旅に、難波界隈へ。そうすると、偶々ですが、NMB48シアターのロビー開放をしていると!いうことで、そちらにも足を延ばしてみました〜。

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それからNMB48ショップにも立ち寄り、

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いろいろお買い物?からの〜

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ジョーシン日本橋店でTYPE-Cを。

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タワーレコードなんばパークス店にて、TYPE-Aを。

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最後のTSUTAYA EBISUBASHIさんでは、さすが自称聖地!だけあって、気合の入った陳列、それに来店されているファンの数も多かったです〜。こちらでTYPE-Bを購入いたしました!ありがとうございました!!

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posted by 長尾大志 at 20:28 | Comment(0) | 日記

2024年10月11日

本日の健康科学概論講義、堀口逸子先生によります「ゲームで学ぶ食の安全」

島根大学医学部では1年生の前期に医学科、看護学科共通の、人間性涵養のための講義シリーズ「行動科学」「医療倫理・プロフェッショナリズム」がありますが、後期に入りますと、環境保健医学(公衆衛生学)の名越教授が統括をされます「健康科学概論」というコースとなり、公衆衛生や地域・社会といった観点を養う講義を展開していただいております。

今後は行動科学や医療倫理・プロフェッショナリズム同様、人間性教育として医学科は6年、看護学科は4年通して螺旋状に、すなわち毎学年やっていく、縦軸の講義シリーズとして整理整頓される予定です。統一感のあるコースを構築するため、今年は「医療倫理・プロフェッショナリズム」や「健康科学概論」の講義を出来る限り拝聴して、今後の組み立ての参考にさせていただくことにしています。

本日は歯科医師で、これまで慶応義塾大学や東京理科大学、順天堂大学など多くの大学で食の安全に関する講義してこられた堀口逸子先生による、「ゲームで学ぶ食の安全」という講義をいただきました。

まず導入としてじゃがいもを例に取り、我々が食べているもの、食物だと認識しているものの中にも、例えばじゃがいもの芽のようにある程度以上の量を摂取すると有害になる、グリコアルカロイドという物質が含まれているという話から始まりました。

グリコアルカロイドは冷蔵庫に入れると増えるので、じゃがいもは冷蔵庫に入れて保存しないように、ということの根拠になっているわけです。その後GAP(Good Agricultural Practice)やHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)という制度について教えていただき、食品のリスク管理、リスク評価といったことの具体的な方法も教えていただきました。

薬剤でもそうですが、食品でも安全性を評価するという事は、これまでに多くの実験・研究が行われた結果をもって設定されているものになります。例えば、食品添加物は嫌だ、自然のものがいい、みたいな風潮がありますけれども、食品添加物は含まれていても、人体に害を及ぼさない量がきちんと設定され、管理されているものですので、これがいわゆる「自然な食品」、どんなものがどれぐらい含まれているかよくわからないものよりも、むしろ安全であるということがあったりもするわけです。

他にも肉、生肉、ユッケ、牛肉表面に付着している菌による食中毒や、鶏肉のカンピロバクターなどのお話も、どうやったら「安全」に食べられるかという観点から解説をいただきました。

それから健康食品、いわゆる医薬品〜特定保健用食品(トクホ)〜栄養機能食品〜機能性表示食品〜その他の健康食品、の違いについて、きっちりとした定義に基づいて分類されているということも教えていただきました。果たしてサプリメントを飲むことが健康に良いのかどうか?ということを、きちんと我々は考えて摂取する必要があるということでした。また最近問題になった紅麹サプリを例にとって、どのような成分が問題になって、どのようなことがわかったか(もう既に成分も特定され、何が問題であったかがはっきりされているわけですが)を教えていただきました。

それから魚介類、特にマグロに含まれるメチル水銀のお話。これも量の問題が大いにあるわけですが、こういったことも教えていただき、基本的に食事が健康に及ぼす影響に関してのエビデンスは極めて脆弱であるという事も教えていただきました。また最後に、食品に放射線照射をするという事に関して、日本では原爆や原発事故のことがあって、放射線は忌避されていますが、放射線照射は諸外国では多く使われていて、虫の害や雑菌の害が減っているということも教えていただきました。身近な食に関して、なかなか知ることができないことを教えて頂けたと思います。堀口先生、本当にありがとうございました。

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posted by 長尾大志 at 13:00 | Comment(0) | 日記

2024年10月10日

『病気がみえる 呼吸器』付録・特典コンテンツ担当します!

まだ先の話ですが……今後改訂される予定の『病気がみえる 呼吸器』、付録の特典コンテンツを担当させていただくことになりました!

昨日メディックメディアの方が来られていろいろ打ち合わせをいたしましたが……おそらく?胸部X線写真読影に関するものになるだろうと思います。どうぞご期待ください〜〜。

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posted by 長尾大志 at 18:18 | Comment(0) | 活動報告

2024年10月09日

成人肺炎診療ガイドライン2024〈71〉院内肺炎/医療・介護関連肺炎エンピリック治療の治療期間

医療・介護関連肺炎においては治療期間を検討したエビデンスがありません(日本独自の概念であるため、むべなるかな)。院内肺炎においては、抗菌薬の投与期間が7〜8日以内の短期間治療群と、10〜15日の長期間治療群を比較したRCTのメタアナリシスによると、生命予後、初期治療効果、入院期間に関しては有意差がなかったということです。一点、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌でのみ、再燃の頻度が短期抗菌薬治療群で有意に高い結果となりました。

ですので、基本的には院内肺炎や医療・介護関連肺炎であっても、市中肺炎とそれほど治療期間は変わらず、抗菌薬の投与期間としては1週間以内の比較的短期間が弱く推奨されています。AMR問題もありますので、出来れば短めの投与でいきたいところです。

ただし、黄色ブドウ球菌、クレブシエラ属、嫌気性菌などによって膿瘍性病変が形成されている場合は、抗菌薬の移行が悪いため、2週間以上の長期投与が必要だと考えられています。

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posted by 長尾大志 at 08:22 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2024年10月08日

成人肺炎診療ガイドライン2024〈70〉院内肺炎/医療・介護関連肺炎エンピリック治療の臨床評価法

院内肺炎/医療・介護関連肺炎における治療効果の判定・評価法としては、特別なものは示されておらず、市中肺炎の場合と同様に評価しているのが実際のところかと思われます。ガイドラインに明記されているのは、「抗菌薬の有効性は48〜72時間後に臨床症状、血液データ、画像所見などから総合的に判定する」、ということですが、まあ画一化するのは難しいということでしょうか。

もちろん、経過中に良質な喀痰が採れた場合には、判断材料がさらに増えます。たとえば、喀痰のグラム染色で当初認められていた白血球や菌が治療経過で見られなくなったら、治療の効果ありと考えていいでしょう。最初だけでなく、経過で痰を見ることも大事ですね。

また、喀痰培養には数日かかりますので、大体効果判定の時期に結果が得られます。その結果を治療にフィードバックしていくわけです。

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posted by 長尾大志 at 19:13 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説