この場合やはり効果に優れる連日投与になります。昨日の連日レジメンに加え、
SM15mg/kg以下(1000mgまで)週2,3回筋注
あるいは
AMK15mg/kg連日または15〜25mg/kg週3回点滴、TDMで調節
(50歳以上の場合 8〜10 mg/kg週 2〜3 回、最大500 mgまで、TDMで調節)
必要に応じて外科治療の併用を検討する。となっています。
AMKの用量は日本の添付文書上1回100〜200mgを1日2回、1日の最高投与量は500mgまでとされていますが、これではお話にならないくらい少ないため、ガイドラインの用量が使えるように社会保険診療報酬支払基金の審査事例において留意事項として記載され、上記の量を使用することができるようになっています。ただ、もちろん副作用の懸念があるため「TDMで調節」の文言があるわけです。
2025年03月31日
肺非結核性抗酸菌症の治療C肺MAC症・空洞のあるNB型、およびFC型
posted by 長尾大志 at 12:34
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2025年03月29日
肺非結核性抗酸菌症の治療B肺MAC症・空洞のないNB型
2020ATSガイドライン・2023日本の見解ともに空洞のないNB型は週3回投与としています。用量は日本のものを記しますが、ほぼATSガイドラインと同じです。
週3回投与
CAM1000mg分2またはAZM500mg/日
EB20〜25mg/kg(最大1000mg)/日
RFP 600mg/日
ちなみにEB20〜25mg/kg(最大1000mg)ですが、普通に体重50sで計算しても軽く1000mgを超えてしまいます。添付文書上日本では1000mg/日とせざるを得ませんが、用量設定に関する日本人のデータはなく、今後臨床試験が待たれるところであります。
2023日本の見解では連日投与法も挙げられています。連日の場合、累積投与量が多くなると特にEBの副作用が増加することが知られており、1回の投与量は少なめになります。
連日投与
CAM800mg分2またはAZM250mg/日
EB10〜15mg/kg(最大750mg)/日
RFP 10mg/kg(最大600mg)/日
元々以前は連日投与が一般的でしたが、間欠的治療レジメンで副作用(による薬剤修正)がかなり少なかった(認容性に差がある)こと、そしてマクロライドの耐性化に差がなかったとのことで、海外では一足先に間欠的投与が進んでいます。この辺日本人でのデータが少なく、日本人において果たして連日がいいのか間欠がいいのか、はたまた至適投与量はどうなのか、今後の調査研究が待たれるところです。
週3回投与
CAM1000mg分2またはAZM500mg/日
EB20〜25mg/kg(最大1000mg)/日
RFP 600mg/日
ちなみにEB20〜25mg/kg(最大1000mg)ですが、普通に体重50sで計算しても軽く1000mgを超えてしまいます。添付文書上日本では1000mg/日とせざるを得ませんが、用量設定に関する日本人のデータはなく、今後臨床試験が待たれるところであります。
2023日本の見解では連日投与法も挙げられています。連日の場合、累積投与量が多くなると特にEBの副作用が増加することが知られており、1回の投与量は少なめになります。
連日投与
CAM800mg分2またはAZM250mg/日
EB10〜15mg/kg(最大750mg)/日
RFP 10mg/kg(最大600mg)/日
元々以前は連日投与が一般的でしたが、間欠的治療レジメンで副作用(による薬剤修正)がかなり少なかった(認容性に差がある)こと、そしてマクロライドの耐性化に差がなかったとのことで、海外では一足先に間欠的投与が進んでいます。この辺日本人でのデータが少なく、日本人において果たして連日がいいのか間欠がいいのか、はたまた至適投与量はどうなのか、今後の調査研究が待たれるところです。
posted by 長尾大志 at 18:57
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2025年03月28日
肺非結核性抗酸菌症の治療A肺MAC症
MAC症は、大きく分けてNB型(nodular bronchiectatic disease:結節・気管支拡張型)とFC型(fibrocavitary disease:線維空洞型)がありますが、NB型はさらに空洞(cavity)のないもの(nonavitary nodular bronchiectatic disease)と空洞のあるもの(cavitary nodular bronchiectatic disease)に分けられ、空洞のあるものは臨床的にもFC型に近いと考えられます。
一般的に空洞があるものは菌量が多く、既存構造が破壊されているため、化学療法もより強力に行う必要があるわけです。一方で空洞のないNB型では自然に菌が排除されて軽快するケースも見かけますが、別の菌による再燃が起こりやすい、つまり菌排除能自体のバグがありそうです。
非専門医の先生方の参考までに、代表的な菌種に対する、標準的とされている治療をこれから挙げて参ります。
一般的に空洞があるものは菌量が多く、既存構造が破壊されているため、化学療法もより強力に行う必要があるわけです。一方で空洞のないNB型では自然に菌が排除されて軽快するケースも見かけますが、別の菌による再燃が起こりやすい、つまり菌排除能自体のバグがありそうです。
非専門医の先生方の参考までに、代表的な菌種に対する、標準的とされている治療をこれから挙げて参ります。
posted by 長尾大志 at 11:38
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2025年03月26日
肺非結核性抗酸菌症の治療@
肺非結核性抗酸菌症の治療について、海外のガイドラインでは本邦では保険適応がない薬剤が推奨されていたり、(体格差もあるのか)用量がかなり異なっていたりと、そのまま適応するのが難しかったという経緯がありました。
その後学会からの要望により注射用アミカシン(AMK)、アジスロマイシン(AZM)、イミペネム(IPM)、クロファジミン(CFZ)が非結核性抗酸菌に保険審査上使用可能となりました。また、アミカシンリボゾーム吸入用懸濁液(amikacin liposome inhalation suspension : ALIS)が難治性肺MAC症に使えるようになり、世界基準の治療と変わらない治療を行えるようになりました。
現在世界的には2020年のATS/ERS/ESCMID/IDSAガイドラインが使われているのですが、その少し前の2017年に出たBTSガイドラインと併せ、日本での実情に合わせて「日本結核・非結核性抗酸菌症学会と日本呼吸器学会より成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解―2023年改定」が2023年に発出されました(Kekkaku 98(5):177-187.2023)。そちらの内容を少し見ていきましょう。
その後学会からの要望により注射用アミカシン(AMK)、アジスロマイシン(AZM)、イミペネム(IPM)、クロファジミン(CFZ)が非結核性抗酸菌に保険審査上使用可能となりました。また、アミカシンリボゾーム吸入用懸濁液(amikacin liposome inhalation suspension : ALIS)が難治性肺MAC症に使えるようになり、世界基準の治療と変わらない治療を行えるようになりました。
現在世界的には2020年のATS/ERS/ESCMID/IDSAガイドラインが使われているのですが、その少し前の2017年に出たBTSガイドラインと併せ、日本での実情に合わせて「日本結核・非結核性抗酸菌症学会と日本呼吸器学会より成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解―2023年改定」が2023年に発出されました(Kekkaku 98(5):177-187.2023)。そちらの内容を少し見ていきましょう。
posted by 長尾大志 at 18:01
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2025年03月25日
非結核性抗酸菌症(特にMAC症)の治療適応(目安)つづき
非結核性抗酸菌症の場合、治療の開始時期は、菌種や病勢、患者さんの状態に応じて個別に決めるべき事項となってきているのが実際です。微妙な問題を含んでいますので、専門家にコンサルトしましょう。
2020年ATSガイドラインでは、診断確定後すぐに治療開始すべきものとして、
・喀痰抗酸菌塗抹陽性例
・空洞を有する症例
が挙げられています。
また、「成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解―2023年改訂―」でも基本的には上記方針を支持していますが、結節気管支拡張型で塗抹陰性、排菌量が少ない、無症状の軽症例では、治療開始時期については注意深い観察を前提として、年齢含めた忍容性、基礎疾患、病変の範囲、画像所見の推移、菌種などを加味して個別に検討するということになっています。
ということで、ここはできれば呼吸器専門医などにご相談されて総合的に決められることをお勧めします。
2020年ATSガイドラインでは、診断確定後すぐに治療開始すべきものとして、
・喀痰抗酸菌塗抹陽性例
・空洞を有する症例
が挙げられています。
また、「成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解―2023年改訂―」でも基本的には上記方針を支持していますが、結節気管支拡張型で塗抹陰性、排菌量が少ない、無症状の軽症例では、治療開始時期については注意深い観察を前提として、年齢含めた忍容性、基礎疾患、病変の範囲、画像所見の推移、菌種などを加味して個別に検討するということになっています。
ということで、ここはできれば呼吸器専門医などにご相談されて総合的に決められることをお勧めします。
posted by 長尾大志 at 13:14
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2025年03月24日
非結核性抗酸菌症(特にMAC症)の治療適応(目安)
非結核性抗酸菌症に関しましても「レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室第4版」で当然書き直しておりますが、このあたりもどんどんガイドラインが書き換わってきており、結構大変であります。
特に以前から議論のあるところで、よくご質問を頂くのが、肺MAC症をはじめとする肺NTM症の治療をそもそも開始すべきかどうか?いつ開始するのか?というものですが、まあこれはケースバイケース、と言ってしまうと見も蓋もありませんが……。
どうしてこんなに議論が尽きないのか。それはもちろん、「決定的な治療がない」からに他なりません。この薬(の組み合わせ)を使えば、まあ大体よくなるし、副作用も許容範囲だよね……っていう薬があれば、それを積極的に使えばいいだけの話。そんな薬がないから苦労するわけです。
軽症なら軽症で、画像的に不変〜自然軽快もありうるため、無作為二重盲検試験などが立てにくく、薬剤の効果が立証できない。反面、空洞形成して、難治性になってきたりすると今度は治療効果がはっきりと得られない例が増えてくる。いったん排菌が陰性化しても、治療を止めれば再燃することもあります。
また、単剤での効果が期待できないだけに複数の薬剤を長期間併用することになり、ただでさえ少なくない副作用のリスクも増えることになるのです。実に悩ましい。
つまり、治療のリスクに対する保証がないわけです。ここが、結核との大きな違いです。結核は(耐性菌でなければ)治療すれば必ず効く。きちんと効果が保証されていて、かつ、他人にうつす危険がある。それゆえ、治療は絶対に行うべきものなのです。
特に以前から議論のあるところで、よくご質問を頂くのが、肺MAC症をはじめとする肺NTM症の治療をそもそも開始すべきかどうか?いつ開始するのか?というものですが、まあこれはケースバイケース、と言ってしまうと見も蓋もありませんが……。
どうしてこんなに議論が尽きないのか。それはもちろん、「決定的な治療がない」からに他なりません。この薬(の組み合わせ)を使えば、まあ大体よくなるし、副作用も許容範囲だよね……っていう薬があれば、それを積極的に使えばいいだけの話。そんな薬がないから苦労するわけです。
軽症なら軽症で、画像的に不変〜自然軽快もありうるため、無作為二重盲検試験などが立てにくく、薬剤の効果が立証できない。反面、空洞形成して、難治性になってきたりすると今度は治療効果がはっきりと得られない例が増えてくる。いったん排菌が陰性化しても、治療を止めれば再燃することもあります。
また、単剤での効果が期待できないだけに複数の薬剤を長期間併用することになり、ただでさえ少なくない副作用のリスクも増えることになるのです。実に悩ましい。
つまり、治療のリスクに対する保証がないわけです。ここが、結核との大きな違いです。結核は(耐性菌でなければ)治療すれば必ず効く。きちんと効果が保証されていて、かつ、他人にうつす危険がある。それゆえ、治療は絶対に行うべきものなのです。
posted by 長尾大志 at 18:35
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2025年03月23日
「『卓越したジェネラリスト診療』入門」感想つづき
昨日言い足りなかったことを少し。
この書籍を読んで感じたことは、当たり前ですが「卓越したジェネラリスト」への道は一朝一夕では到達できない、ということ。ここに示されていることが外来、訪問などの現場でスッと出来るようになることが必要なのです。
臨床の現場は複雑な問題にあふれていて、ある症例、事例の解決手順は目の前の事例に使えるとは限らず、手中に多くの「問題解決のための手札」を持っておく必要がある。現時点での「手札」を教えてくださっている書籍である、といえるでしょう。
ですからこの手札を持っておいて現場で問題解決にあたり、振り返って手札に磨きをかけていく、その際には出来れば多職種の話し合いや他の医師とのカンファレンスがあるべきでしょうし、藤沼先生のような素晴らしい指導医にご相談できるとなおよいでしょう。島根にも多くの素晴らしい総合診療医の先生方がおられて、現場で若手の先生方や研修医、学生さんの指導をしてくださっています。改めてこの環境がありがたいことだと実感した次第です。
この書籍を読んで感じたことは、当たり前ですが「卓越したジェネラリスト」への道は一朝一夕では到達できない、ということ。ここに示されていることが外来、訪問などの現場でスッと出来るようになることが必要なのです。
臨床の現場は複雑な問題にあふれていて、ある症例、事例の解決手順は目の前の事例に使えるとは限らず、手中に多くの「問題解決のための手札」を持っておく必要がある。現時点での「手札」を教えてくださっている書籍である、といえるでしょう。
ですからこの手札を持っておいて現場で問題解決にあたり、振り返って手札に磨きをかけていく、その際には出来れば多職種の話し合いや他の医師とのカンファレンスがあるべきでしょうし、藤沼先生のような素晴らしい指導医にご相談できるとなおよいでしょう。島根にも多くの素晴らしい総合診療医の先生方がおられて、現場で若手の先生方や研修医、学生さんの指導をしてくださっています。改めてこの環境がありがたいことだと実感した次第です。
posted by 長尾大志 at 11:53
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| 日記
2025年03月22日
「『卓越したジェネラリスト診療』入門」感想
ジェネラリストを名乗る??以上、こちらの書籍はは必ず読んでおかねばなるまい、ということで、購入して拝読いたしました。

最近ありがたいことに献本を頂くことが多く、読書感想文も献本COIのあるものが多かったですが、こちらの書籍はCOIありません。ということで素直な感想を。
こちらの書籍は既に多くの先達の皆様が感想を書かれていて、自分の感想としてもおおよそそれらのものと同じようなところになります。T章は臨床診断から外来診療、そして治療に至るスキルの紹介、U章はジェネラリスト診療というものをどのように行うのが「卓越した」ものとなるのか、という実践法、V章はそれを実践する上で必要になってくる、チームと教育に関する考え方を教えていただきました。
藤沼先生の現時点での「ベストアルバム」という触れ込みでしたから、パラダイムシフトを起こされるような、思いもつかない新理論があったりするのだろうか、なんて思ったりしていましたが、いい意味で予想を大きく裏切られることはなく、かつ各々の考え方に裏付けとなる研究・論文が紹介されていて、今の理解がさらに深まるような読書体験でした。各々の根拠論文をきちんと読めばきっともっと理解が深まるだろう……と思いつつ読めておりませんが。
感想の中には「第T章はふんふんという感じだったが、U章〜V章で大きく衝撃を受けた」という記載も見かけましたが、自分的にはT章で家族図、家族療法、禁煙指導、リアシュアランス、小外科処置など勉強になることが多く、U章〜V章はいつもやっていることにラベリングをしていただいたような感じだったのでした。それだけ平素触れている「島根の総合診療」が卓越していることの証左であろうと思われます。
最近ありがたいことに献本を頂くことが多く、読書感想文も献本COIのあるものが多かったですが、こちらの書籍はCOIありません。ということで素直な感想を。
こちらの書籍は既に多くの先達の皆様が感想を書かれていて、自分の感想としてもおおよそそれらのものと同じようなところになります。T章は臨床診断から外来診療、そして治療に至るスキルの紹介、U章はジェネラリスト診療というものをどのように行うのが「卓越した」ものとなるのか、という実践法、V章はそれを実践する上で必要になってくる、チームと教育に関する考え方を教えていただきました。
藤沼先生の現時点での「ベストアルバム」という触れ込みでしたから、パラダイムシフトを起こされるような、思いもつかない新理論があったりするのだろうか、なんて思ったりしていましたが、いい意味で予想を大きく裏切られることはなく、かつ各々の考え方に裏付けとなる研究・論文が紹介されていて、今の理解がさらに深まるような読書体験でした。各々の根拠論文をきちんと読めばきっともっと理解が深まるだろう……と思いつつ読めておりませんが。
感想の中には「第T章はふんふんという感じだったが、U章〜V章で大きく衝撃を受けた」という記載も見かけましたが、自分的にはT章で家族図、家族療法、禁煙指導、リアシュアランス、小外科処置など勉強になることが多く、U章〜V章はいつもやっていることにラベリングをしていただいたような感じだったのでした。それだけ平素触れている「島根の総合診療」が卓越していることの証左であろうと思われます。
posted by 長尾大志 at 14:17
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| 日記
2025年03月21日
気胸について、最新ガイドライン3・続発性自然気胸
これまでに述べた「無症状なら経過観察でもOK」「症状があっても針穿刺吸引でOK」というプラクティスは原発性自然気胸、すなわち若年男性に多い、基礎疾患や原因となる出来事のない気胸の場合です。
でも、特に高齢化が進んでいる地域医療の現場では、もはやそのような原発性自然気胸を診療する機会は少なく、COPDはじめとする肺疾患が基礎にあるような、続発性自然気胸を見る機会の方が多いわけです。
では続発性自然気胸の場合にはどうするのがよいか、といいますと、これは残念ながら、無症状の場合であっても保存的治療「経過観察」を推奨するだけの十分なエビデンスがない、ということになっています。また、有症状の場合に針穿刺吸引とドレナージを比較した質の高い論文もまだないようです。
これらの理由はおそらく続発性自然気胸の場合、エアリークが持続するケースが多いのではないか、と推察されますが、少なくとも初期治療に小口径 (8 Fr) の携帯型デバイスはトラブル(閉塞など?)が多く、これを使用しないことが推奨されています。
でも、特に高齢化が進んでいる地域医療の現場では、もはやそのような原発性自然気胸を診療する機会は少なく、COPDはじめとする肺疾患が基礎にあるような、続発性自然気胸を見る機会の方が多いわけです。
では続発性自然気胸の場合にはどうするのがよいか、といいますと、これは残念ながら、無症状の場合であっても保存的治療「経過観察」を推奨するだけの十分なエビデンスがない、ということになっています。また、有症状の場合に針穿刺吸引とドレナージを比較した質の高い論文もまだないようです。
これらの理由はおそらく続発性自然気胸の場合、エアリークが持続するケースが多いのではないか、と推察されますが、少なくとも初期治療に小口径 (8 Fr) の携帯型デバイスはトラブル(閉塞など?)が多く、これを使用しないことが推奨されています。
posted by 長尾大志 at 20:14
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| 気胸・胸水・ドレナージ
2025年03月20日
気胸について、最新ガイドライン2・胸腔ドレナージ vs 針穿刺吸引法
自覚症状がなく、画像的臨床的に安定している原発性自然気胸に対しては、経過観察でも8週後の状況が非劣勢である(≒経過観察でよい)、ということでしたが、症状のある気胸に対してはいかがでしょうか。
件のガイドラインでは、症状のある原発性自然気胸に対する初期治療として、胸腔ドレナージよりも針穿刺吸引法の方が強く推奨される、とされます。ただしこれは専門知識とフォローアップのシステムを備えたセンターに対する条件付き推奨ということであり。そのまますべての本邦の医療機関に適用できるものではないことに注意が必要です。
根拠となったRCTも6件と多く、メタ解析では針穿刺がドレナージよりもLOSが2日余り短く合併症も少ない、まあ針の単回穿刺と管を入れておくドレナージでは、入院期間であったり、いろんな合併症の発生割合であったりが異なるであろうことは自明ではあります。
またどの研究もサンプルサイズの点や盲検ではないことなど、研究の妥当性について問題を抱えており、そのため確実性は低いものの(明らかに差があるため)推奨は強い、という物言いになっています。
続発性自然気胸のサブグループを検討しても、入院期間は針穿刺群が明らかに短く、成功率は高かったとのことです。
まあこちらも、そりゃそうか、という結果ですね。症状のある気胸に対して、ドレナージがよいか針穿刺吸引がよいか、についてはこれまでも確たる方針は示されておらずフニャフニャした感じでした。ただ臨床上、入院で患者さんを診るのであれば、針穿刺吸引ではエアリークがあるかどうかわからないため、細かく診るには不適かなあ、と思っていたところです。
たぶん彼方の方々は、エアリークがあろうがなかろうが、とりあえず穿刺吸引しておいて、しばらく経って再膨張しておればよし、再発(再収縮)しておれば再度穿刺吸引、という感じでやられているようですね。外来メインで、何かあればその都度受診、その時きちんと専門医が対応できる、という文化が根付いておれば、こういうやり方もありということでしょう。
件のガイドラインでは、症状のある原発性自然気胸に対する初期治療として、胸腔ドレナージよりも針穿刺吸引法の方が強く推奨される、とされます。ただしこれは専門知識とフォローアップのシステムを備えたセンターに対する条件付き推奨ということであり。そのまますべての本邦の医療機関に適用できるものではないことに注意が必要です。
根拠となったRCTも6件と多く、メタ解析では針穿刺がドレナージよりもLOSが2日余り短く合併症も少ない、まあ針の単回穿刺と管を入れておくドレナージでは、入院期間であったり、いろんな合併症の発生割合であったりが異なるであろうことは自明ではあります。
またどの研究もサンプルサイズの点や盲検ではないことなど、研究の妥当性について問題を抱えており、そのため確実性は低いものの(明らかに差があるため)推奨は強い、という物言いになっています。
続発性自然気胸のサブグループを検討しても、入院期間は針穿刺群が明らかに短く、成功率は高かったとのことです。
まあこちらも、そりゃそうか、という結果ですね。症状のある気胸に対して、ドレナージがよいか針穿刺吸引がよいか、についてはこれまでも確たる方針は示されておらずフニャフニャした感じでした。ただ臨床上、入院で患者さんを診るのであれば、針穿刺吸引ではエアリークがあるかどうかわからないため、細かく診るには不適かなあ、と思っていたところです。
たぶん彼方の方々は、エアリークがあろうがなかろうが、とりあえず穿刺吸引しておいて、しばらく経って再膨張しておればよし、再発(再収縮)しておれば再度穿刺吸引、という感じでやられているようですね。外来メインで、何かあればその都度受診、その時きちんと専門医が対応できる、という文化が根付いておれば、こういうやり方もありということでしょう。
posted by 長尾大志 at 18:45
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| 気胸・胸水・ドレナージ
2025年03月19日
気胸について、最新ガイドライン
気胸については以前、これまでの日本でやられている方法をまとめてみましたが、昨今海外の新しいガイドラインが出ておりまして。
British Thoracic Society Guideline for pleural disease(Thorax 2023;78:1143–1156. doi:10.1136/thorax-2023-220304)
Joint ERS/EACTS/ESTS clinical practice guidelines on adults with spontaneous pneumothorax(European Respiratory Journal 2024 63(5): 2300797; DOI: https://doi.org/10.1183/13993003.00797-2023)
最近のガイドラインでは患者の安定性、症状、気胸の大きさに基づいた個別ケアが重視されています。以下は主要な推奨事項の要約ですが、所謂古典的な?方法に対して、結構侵襲の少ない方法を推奨される傾向にあるようです。
1. 原発性自然気胸(PSP)
・経過観察
気胸の大きさに関係なく、症状が最小限で、臨床的および放射線学的に安定している患者に推奨されます。患者を退院前に観察し、日常的な活動を行うことができるかどうかを判断する必要があります。ただまあ、エビデンスの確実性は非常に低く、条件付き推奨ということになっています。
その根拠となるRCT論文なんですが、主要評価項目は「8週間目で気胸がなくなっている」ことで、ドレナージ群に対して経過観察群で非劣勢であり、入院期間や合併症、12 か月時点での気胸の再発は経過観察群で少なかったということです。……いろいろ微妙ですね。そりゃドレナージしなけりゃ、入院期間は短くていいでしょうし、合併症も少ない。おそらく発症後しばらく肺を縮めておく方が、孔もキッチリふさがるでしょう。そもそも「8週間目で気胸がなくなっている」ことを主要評価項目にしているということは、「8週間目で気胸がなくなっていれば」治った、という感覚で、途中経過は問わない、ということですよね。ここを是とするかどうか。
RCT以外の非ランダム化研究も矛盾した結果があったりでしたが、合併症は経過観察群の方が少ない傾向にあったそうです。ということで、症状がない原発性自然気胸にはドレナージをしない、という選択肢が浮上して参ります。おそらくそのうち日本のガイドラインも新しくなるのかもしれませんが、しばらくは混乱しそうですね……。
British Thoracic Society Guideline for pleural disease(Thorax 2023;78:1143–1156. doi:10.1136/thorax-2023-220304)
Joint ERS/EACTS/ESTS clinical practice guidelines on adults with spontaneous pneumothorax(European Respiratory Journal 2024 63(5): 2300797; DOI: https://doi.org/10.1183/13993003.00797-2023)
最近のガイドラインでは患者の安定性、症状、気胸の大きさに基づいた個別ケアが重視されています。以下は主要な推奨事項の要約ですが、所謂古典的な?方法に対して、結構侵襲の少ない方法を推奨される傾向にあるようです。
1. 原発性自然気胸(PSP)
・経過観察
気胸の大きさに関係なく、症状が最小限で、臨床的および放射線学的に安定している患者に推奨されます。患者を退院前に観察し、日常的な活動を行うことができるかどうかを判断する必要があります。ただまあ、エビデンスの確実性は非常に低く、条件付き推奨ということになっています。
その根拠となるRCT論文なんですが、主要評価項目は「8週間目で気胸がなくなっている」ことで、ドレナージ群に対して経過観察群で非劣勢であり、入院期間や合併症、12 か月時点での気胸の再発は経過観察群で少なかったということです。……いろいろ微妙ですね。そりゃドレナージしなけりゃ、入院期間は短くていいでしょうし、合併症も少ない。おそらく発症後しばらく肺を縮めておく方が、孔もキッチリふさがるでしょう。そもそも「8週間目で気胸がなくなっている」ことを主要評価項目にしているということは、「8週間目で気胸がなくなっていれば」治った、という感覚で、途中経過は問わない、ということですよね。ここを是とするかどうか。
RCT以外の非ランダム化研究も矛盾した結果があったりでしたが、合併症は経過観察群の方が少ない傾向にあったそうです。ということで、症状がない原発性自然気胸にはドレナージをしない、という選択肢が浮上して参ります。おそらくそのうち日本のガイドラインも新しくなるのかもしれませんが、しばらくは混乱しそうですね……。
posted by 長尾大志 at 18:34
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| 気胸・胸水・ドレナージ
2025年03月18日
島根大学医学部 地域医療教育学講座 総合診療・地域医療実習動画
島根大学医学部で4年生〜5年生にかけて、全員が4週間ずつ、地域の病院にお世話になって実習をさせて頂いている、「総合診療・地域医療実習」。そこでの学びを紹介していただいている動画をこれまでちょこちょこYoutubeにあげておりましたが、このたびきちんと独立したチャンネルに集約することになりました。
島根大学医学部 地域医療教育学講座 総合診療・地域医療実習動画
https://www.youtube.com/@%E5%B3%B6%E6%A0%B9%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E9%83%A8%E5%9C%B0-o3t
一般公開となるといろいろと難しいこともあり、とりあえず6本を挙げております。これから粛々とupして参りますので、どうぞご覧ください。
島根大学医学部 地域医療教育学講座 総合診療・地域医療実習動画
https://www.youtube.com/@%E5%B3%B6%E6%A0%B9%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E9%83%A8%E5%9C%B0-o3t
一般公開となるといろいろと難しいこともあり、とりあえず6本を挙げております。これから粛々とupして参りますので、どうぞご覧ください。
posted by 長尾大志 at 19:28
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| 動画置き場
2025年03月17日
2025年度 島根大学医学部 高度総合診療力修得コース 開講です!
このたびは、来週から募集が始まる、2025年度 島根大学医学部 高度総合診療力修得コースについてご紹介させてください。
島根大学医学部の総合診療医センターが中心になって、島根大学医学部において、総合診療マインドを持った医学生を育成するためのコースとして起案・実行した教育コースになります。
「総合医を目指すなら島大」医学生が総合診療について学べる環境、また専攻医や地域の医療者が総合診療について医学生に伝える環境を作ろうということで始められたこちらの「課外」コースですが、毎年人気で定員越えとなります。それもそのはず……
1.総合診療マインドを持つ医学生に、現場ばりばりの総合医が、大事なとこを伝えまくって、できる医学生にしちゃう。
2.診療所とか訪問診療に入り込んで、普通は教えないような、患者中心の医療の大事なとこを、激アツに教え込んじゃう。
3.6年間縦軸でサポートして、6年生卒業時には、総合診療の大事な部分とか、初期研修医を超えちゃう感じ。
4.エコーとか論文投稿とか、研修医になって困るところは、医学生のうちからできるようにしちゃう。
みたいな目標を掲げて、5つのコースが選べるのです。
A.総合診療専攻医体感コース By.島根の家庭医療医
B.臨床スキル育成コース By.島根の若手総合医
C.ハンズオンエコーコース By.島根の総合医・検査技師
D.臨床研究コース By.島大の指導医
E.胸部画像読影コース By.島大の指導医

(申し込みは来週スタートです!お間違えなく!!)
昨年度から不肖長尾もEコースを担当させていただいております。昨年度は部屋の収容人数の関係で定員オーバーになってしまったのですが、今年度はオンラインで定員枠を取っ払うことにしました!ということで、これまで「肺の孔」に参加したいけどハードルが高い……と思っていた方も気軽に参加いただけるようになります。Eコース以外のコースも魅力満載です!どうぞご参加検討ください!!
島根大学医学部の総合診療医センターが中心になって、島根大学医学部において、総合診療マインドを持った医学生を育成するためのコースとして起案・実行した教育コースになります。
「総合医を目指すなら島大」医学生が総合診療について学べる環境、また専攻医や地域の医療者が総合診療について医学生に伝える環境を作ろうということで始められたこちらの「課外」コースですが、毎年人気で定員越えとなります。それもそのはず……
1.総合診療マインドを持つ医学生に、現場ばりばりの総合医が、大事なとこを伝えまくって、できる医学生にしちゃう。
2.診療所とか訪問診療に入り込んで、普通は教えないような、患者中心の医療の大事なとこを、激アツに教え込んじゃう。
3.6年間縦軸でサポートして、6年生卒業時には、総合診療の大事な部分とか、初期研修医を超えちゃう感じ。
4.エコーとか論文投稿とか、研修医になって困るところは、医学生のうちからできるようにしちゃう。
みたいな目標を掲げて、5つのコースが選べるのです。
A.総合診療専攻医体感コース By.島根の家庭医療医
B.臨床スキル育成コース By.島根の若手総合医
C.ハンズオンエコーコース By.島根の総合医・検査技師
D.臨床研究コース By.島大の指導医
E.胸部画像読影コース By.島大の指導医

(申し込みは来週スタートです!お間違えなく!!)
昨年度から不肖長尾もEコースを担当させていただいております。昨年度は部屋の収容人数の関係で定員オーバーになってしまったのですが、今年度はオンラインで定員枠を取っ払うことにしました!ということで、これまで「肺の孔」に参加したいけどハードルが高い……と思っていた方も気軽に参加いただけるようになります。Eコース以外のコースも魅力満載です!どうぞご参加検討ください!!
posted by 長尾大志 at 11:57
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| 活動報告
2025年03月16日
第119回医師国家試験合格発表
さて先日、第119回医師国家試験合格発表がございました。
島根大学は新卒者において合格97名 不合格7名 合格率 93.3%、既卒者において合格4名 不合格4名 合格率 50.0%という結果でした。
単なる数字でよかった、悪かったではなく、各々の学生さんの努力・頑張りの結果の合格・不合格です。ともかくも合格された方はおめでとうございます。そして残念な結果に終わった方はまた次の機会に向けて立て直してまいりましょう。弊講座では総合医センターと協力して何某かのサポートを考えておりますので、よろしければご相談、ご一報いただければと思います。
なかなかご予算に制約のある地方国立大学ですので、お金をかけて予備校様のサポートを受ける……というようなことはできませんでしたが、いろいろと知恵を絞って、また予備校様のご厚意もあって、出来る範囲内でサポートをさせて頂きました。来年度の受験生の皆さんにも、少し解像度の高いサポートができるような気がいたします。頑張りましょう!!
島根大学は新卒者において合格97名 不合格7名 合格率 93.3%、既卒者において合格4名 不合格4名 合格率 50.0%という結果でした。
単なる数字でよかった、悪かったではなく、各々の学生さんの努力・頑張りの結果の合格・不合格です。ともかくも合格された方はおめでとうございます。そして残念な結果に終わった方はまた次の機会に向けて立て直してまいりましょう。弊講座では総合医センターと協力して何某かのサポートを考えておりますので、よろしければご相談、ご一報いただければと思います。
なかなかご予算に制約のある地方国立大学ですので、お金をかけて予備校様のサポートを受ける……というようなことはできませんでしたが、いろいろと知恵を絞って、また予備校様のご厚意もあって、出来る範囲内でサポートをさせて頂きました。来年度の受験生の皆さんにも、少し解像度の高いサポートができるような気がいたします。頑張りましょう!!
posted by 長尾大志 at 17:59
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| 医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説
2025年03月14日
令和6年度 島根大学医学部医学科謝恩会
昨日は午前中学位授与式、そして夕方以降は島根大学医学部医学科謝恩会が開催され、謝恩されてまいりました〜。

久しぶりの学生さん、実習中は皆さんマスク姿で、卒試のときはマスクを外しておられて、スッピンで目が〇んでいたりしたので、まったく誰が誰だかわからない現象は今年も健在でした笑。まあ私の記憶力減退も相当のものですが……。

たくさんの学生さんとお話しできて、例のマッチング相談をさせてもらった方の結果を確認できましたが、やはりかなりうまくいっている方が多く、第1志望マッチしなかった方も納得できる結果になった方が多かったので、自分としてはかなり相談に自信が持てました。今年はさらにブラッシュアップしていこうと思います!
それとさすがに来ておられた学生さんは「国試大丈夫です!」という人が多く(若干心配していた人も!笑)安心しましたが、もし来ておられなくて国試残念な結果になった方は、ウチと総診センターで何某かのご相談に乗ることができますので、躊躇されず是非ご相談にお越しください!
で、学生さんとたくさんツーショット撮ることができましたが、学生さんの携帯で写真を撮ってその後エア泥でもらい損ねた人が数名居られまして、是非メールなりDMなりでお送りいただけましたら喜びます!!
もらえた方のお写真をいくつか。ちなみに顔を隠すのに、以前は黒丸で塗ったりしていたのですが娘たちから「ありえん!ハートで隠して!!」とご指導を受けましたので、ハートで隠してみました!いかがでしょうか?

IMG_0094.HEIC
IMG_4328.HEIC
IMG_0332.HEIC
久しぶりの学生さん、実習中は皆さんマスク姿で、卒試のときはマスクを外しておられて、スッピンで目が〇んでいたりしたので、まったく誰が誰だかわからない現象は今年も健在でした笑。まあ私の記憶力減退も相当のものですが……。
たくさんの学生さんとお話しできて、例のマッチング相談をさせてもらった方の結果を確認できましたが、やはりかなりうまくいっている方が多く、第1志望マッチしなかった方も納得できる結果になった方が多かったので、自分としてはかなり相談に自信が持てました。今年はさらにブラッシュアップしていこうと思います!
それとさすがに来ておられた学生さんは「国試大丈夫です!」という人が多く(若干心配していた人も!笑)安心しましたが、もし来ておられなくて国試残念な結果になった方は、ウチと総診センターで何某かのご相談に乗ることができますので、躊躇されず是非ご相談にお越しください!
で、学生さんとたくさんツーショット撮ることができましたが、学生さんの携帯で写真を撮ってその後エア泥でもらい損ねた人が数名居られまして、是非メールなりDMなりでお送りいただけましたら喜びます!!
もらえた方のお写真をいくつか。ちなみに顔を隠すのに、以前は黒丸で塗ったりしていたのですが娘たちから「ありえん!ハートで隠して!!」とご指導を受けましたので、ハートで隠してみました!いかがでしょうか?

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IMG_4328.HEIC
IMG_0332.HEIC
posted by 長尾大志 at 12:10
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| 日記
2025年03月13日
令和6年度島根大学学位授与式
本日午前中は令和6年度島根大学学位授与式が執り行われました。

それに先立ちまして、国試後海外組の方からお土産等を頂きました!ありがとうございます!!

私は昨年から参加資格を得まして?参加させていただいておりますが、なんというか、華美ではないというか落ち着いているというかあっさりしているというかなんというか……でも保護者席は結構にぎわっていまして、よかったと思います。皆様ご卒業おめでとうございます!!明日は医師国家試験合格発表ですね!
それに先立ちまして、国試後海外組の方からお土産等を頂きました!ありがとうございます!!
私は昨年から参加資格を得まして?参加させていただいておりますが、なんというか、華美ではないというか落ち着いているというかあっさりしているというかなんというか……でも保護者席は結構にぎわっていまして、よかったと思います。皆様ご卒業おめでとうございます!!明日は医師国家試験合格発表ですね!
posted by 長尾大志 at 17:57
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| 日記
2025年03月12日
真菌症のちょっとしたこと8・抗真菌薬について
抗真菌薬はかつて(大昔は)フルコナゾールとアムホテリシンBだけ、みたいな状況でしたが近年では新しいものが使えるようになりまして、数も増えて参りました。使い分けは比較的ハッキリしているので、整理しておきましょう。
ミカファンギン(MCFG;ファンガード Ⓡ )
カスポファンギン(CPFG;カンサイダス Ⓡ )
昨今よく使われているように思いますが、その主な理由は、副作用が少なく、併用注意もない、つまり何も考えなくても安全に使えるからではないかと思います。特に専門外の先生にとっては、何も考えずに使えるというのはポイントが高いため、頻用される傾向にあります。ただ、効果という点においては、カンジダにはいいが、カンジダ以外にはお勧めできません。
ところでカスポファンギンのメーカー(MSD)は「関西ダス」だの「効いとるんだ(キイトルーダ
)」だの……。
フルコナゾール(F-FLCZ;プロジフ Ⓡ 、FLCZ;ジフルカン Ⓡ )
カンジダ、クリプトコッカスによく、髄液移行も良好です。予防投与を含め、よく使われていますが、アスペルギルスには無効です。
ボリコナゾール(VRCZ;ブイフェンド Ⓡ )
カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカスに効きますが、接合菌には効きません。アムホテリシンBより副作用が少なく、効果もアムホテリシンBと同等以上とされ、アスペルギルス症に対する第一選択になっています。
ボサコナゾール(PSCZ;ノクサフィル Ⓡ )
アスペルギルスに加えて接合菌にも効く、新しい広域抗真菌薬ですが、いずれの菌に対しても第一選択薬を上回るものではなく、副作用で使えないときや無効時の代替薬としての役割、それに深在性真菌症の予防目的での役割が中心となっています。
イサブコナゾール(ISCZ;クレセンバ Ⓡ )
2024年12月現在の最新抗真菌薬で、最強というか最広域スペクトラムを持ちます。接合菌もそうですしCandida aurisという耐性菌にも効果があります。すなわち抗真菌薬のカルバペネム系的立ち位置になるでしょうか。副作用も比較的少なく、使いやすい、ということは裏を返せば、「大切に使うべき薬剤」ということになります。狙いを絞ってピンポイント攻撃的に使っていただきたいところです。
イトラコナゾール(ITCZ;イトリゾール Ⓡ )
カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカスに効きます。当初カプセル剤しかなく、血中濃度が上がらず全然効かなかったことから、印象があまりよくなかったのですが、注射剤、内用液の登場で使いやすくはなっています。しかし、どの菌に対しても第一選択薬があり、こちらは併用注意が多かったりして、相変わらず考えて使う必要がある状況です。そのためあまり使われることはなくなっています。
アムホテリシンB(L-AMB;アムビゾーム Ⓡ 、AMPH;ファンギゾン Ⓡ )
接合菌までカバーするスペクトラムの広さと、殺菌力の強さ、それと引き替えの毒性の強さから、使用するには習熟が必要な薬剤でしたが、リポソーム製剤のL-AMBが出現してからはかなり使いやすくなったと思います。
副作用ではInfusion reaction(投与関連反応)と電解質異常(低カリウム血症、低マグネシウム血症、低カルシウム血症)、腎障害が有名です。腎障害は不可逆性ですから注意が必要です。
フルシトシン(5-FC;アンコチル Ⓡ )
古来からある薬ですが、単独使用では耐性となりやすく使用する場面は限られていて、クリプトコッカス髄膜炎のときにアムホテリシンBと併用する、というくらいです。
ミカファンギン(MCFG;ファンガード Ⓡ )
カスポファンギン(CPFG;カンサイダス Ⓡ )
昨今よく使われているように思いますが、その主な理由は、副作用が少なく、併用注意もない、つまり何も考えなくても安全に使えるからではないかと思います。特に専門外の先生にとっては、何も考えずに使えるというのはポイントが高いため、頻用される傾向にあります。ただ、効果という点においては、カンジダにはいいが、カンジダ以外にはお勧めできません。
ところでカスポファンギンのメーカー(MSD)は「関西ダス」だの「効いとるんだ(キイトルーダ

フルコナゾール(F-FLCZ;プロジフ Ⓡ 、FLCZ;ジフルカン Ⓡ )
カンジダ、クリプトコッカスによく、髄液移行も良好です。予防投与を含め、よく使われていますが、アスペルギルスには無効です。
ボリコナゾール(VRCZ;ブイフェンド Ⓡ )
カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカスに効きますが、接合菌には効きません。アムホテリシンBより副作用が少なく、効果もアムホテリシンBと同等以上とされ、アスペルギルス症に対する第一選択になっています。
ボサコナゾール(PSCZ;ノクサフィル Ⓡ )
アスペルギルスに加えて接合菌にも効く、新しい広域抗真菌薬ですが、いずれの菌に対しても第一選択薬を上回るものではなく、副作用で使えないときや無効時の代替薬としての役割、それに深在性真菌症の予防目的での役割が中心となっています。
イサブコナゾール(ISCZ;クレセンバ Ⓡ )
2024年12月現在の最新抗真菌薬で、最強というか最広域スペクトラムを持ちます。接合菌もそうですしCandida aurisという耐性菌にも効果があります。すなわち抗真菌薬のカルバペネム系的立ち位置になるでしょうか。副作用も比較的少なく、使いやすい、ということは裏を返せば、「大切に使うべき薬剤」ということになります。狙いを絞ってピンポイント攻撃的に使っていただきたいところです。
イトラコナゾール(ITCZ;イトリゾール Ⓡ )
カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカスに効きます。当初カプセル剤しかなく、血中濃度が上がらず全然効かなかったことから、印象があまりよくなかったのですが、注射剤、内用液の登場で使いやすくはなっています。しかし、どの菌に対しても第一選択薬があり、こちらは併用注意が多かったりして、相変わらず考えて使う必要がある状況です。そのためあまり使われることはなくなっています。
アムホテリシンB(L-AMB;アムビゾーム Ⓡ 、AMPH;ファンギゾン Ⓡ )
接合菌までカバーするスペクトラムの広さと、殺菌力の強さ、それと引き替えの毒性の強さから、使用するには習熟が必要な薬剤でしたが、リポソーム製剤のL-AMBが出現してからはかなり使いやすくなったと思います。
副作用ではInfusion reaction(投与関連反応)と電解質異常(低カリウム血症、低マグネシウム血症、低カルシウム血症)、腎障害が有名です。腎障害は不可逆性ですから注意が必要です。
フルシトシン(5-FC;アンコチル Ⓡ )
古来からある薬ですが、単独使用では耐性となりやすく使用する場面は限られていて、クリプトコッカス髄膜炎のときにアムホテリシンBと併用する、というくらいです。
posted by 長尾大志 at 18:23
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| 真菌症のちょっとしたこと
2025年03月11日
真菌症のちょっとしたこと7・アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)
アレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis:ABPM)は、以前アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosis:ABPA)と呼ばれていましたが、アスペルギルス以外の真菌によっても同様の病変が見られることがわかり、現在ではABPMという呼び名が一般的です。
そんなABPMは、感染症とアレルギー疾患の両方の性格を持っています。そのため、教科書でも載せるところに困っていたり、変なところに載っていたりします。そのせいか、なじみが薄く、よくご存じない人が多いように思います。
ABPMの病態としては、気管支の中に粘液栓の形で住み着いているアスペルギルスのかたまりに対してアレルギー反応が起こっている、こう考えるとわかりやすいですね。
診断基準についてはこれまで紆余曲折、といいますか、なかなか決定版といえるものがなかった感がありますが、2019年に日本から提唱された診断基準(論文掲載は2021年)が、特に日本におけるABPMの診断には妥当なものではないかと考えます(J Allergy Clin Immunol. 2021 Apr;147(4):1261-1268.)。
ABPMの臨床診断基準(6項目以上で診断確定、5項目で疑い)
1)喘息の既往または喘息様症状あり
2)末梢血好酸球数(ピーク時)≧500/μL
3)血清総IgE値(ピーク時)≧417IU/mL
4)糸状菌に対する即時型皮膚反応あるいは特異的IgE陽性
5)糸状菌に対する沈降抗体あるいは特異的IgG陽性
6)喀痰・気管支洗浄液で糸状菌培養陽性
7)粘液栓内の糸状菌染色陽性
8)CTで中枢性気管支拡張
9)粘液栓喀出の既往あるいはCT・気管支鏡で中枢気管支内粘液栓あり
10)CTで粘液栓の濃度上昇(high attenuation mucus:HAM)
症状は、喘息様の発作があり、末梢血好酸球も増えます。ですので、治療はアレルギー反応を抑えるためのステロイド投与、となるわけです。それで症状が治まり、粘液栓が分解されてアスペルギルスが出ていってくれれば一件落着ですが、体内にアレルゲンがあったわけですから、一時的に軽快してもまた増悪、というパターンも見られます。アスペルギルスがしつこく居座る場合は、抗真菌薬の投与を行うこともあります。
そんなABPMは、感染症とアレルギー疾患の両方の性格を持っています。そのため、教科書でも載せるところに困っていたり、変なところに載っていたりします。そのせいか、なじみが薄く、よくご存じない人が多いように思います。
ABPMの病態としては、気管支の中に粘液栓の形で住み着いているアスペルギルスのかたまりに対してアレルギー反応が起こっている、こう考えるとわかりやすいですね。
診断基準についてはこれまで紆余曲折、といいますか、なかなか決定版といえるものがなかった感がありますが、2019年に日本から提唱された診断基準(論文掲載は2021年)が、特に日本におけるABPMの診断には妥当なものではないかと考えます(J Allergy Clin Immunol. 2021 Apr;147(4):1261-1268.)。
ABPMの臨床診断基準(6項目以上で診断確定、5項目で疑い)
1)喘息の既往または喘息様症状あり
2)末梢血好酸球数(ピーク時)≧500/μL
3)血清総IgE値(ピーク時)≧417IU/mL
4)糸状菌に対する即時型皮膚反応あるいは特異的IgE陽性
5)糸状菌に対する沈降抗体あるいは特異的IgG陽性
6)喀痰・気管支洗浄液で糸状菌培養陽性
7)粘液栓内の糸状菌染色陽性
8)CTで中枢性気管支拡張
9)粘液栓喀出の既往あるいはCT・気管支鏡で中枢気管支内粘液栓あり
10)CTで粘液栓の濃度上昇(high attenuation mucus:HAM)
症状は、喘息様の発作があり、末梢血好酸球も増えます。ですので、治療はアレルギー反応を抑えるためのステロイド投与、となるわけです。それで症状が治まり、粘液栓が分解されてアスペルギルスが出ていってくれれば一件落着ですが、体内にアレルゲンがあったわけですから、一時的に軽快してもまた増悪、というパターンも見られます。アスペルギルスがしつこく居座る場合は、抗真菌薬の投与を行うこともあります。
posted by 長尾大志 at 16:40
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| 真菌症のちょっとしたこと
2025年03月10日
病気がみえるvol.4 呼吸器第4版の監修/島根県臨床工学技士会呼吸療法セミナー
医学生の聖書?ともいわれている「病気がみえるvol.4 呼吸器第4版」発刊となりました!
不肖長尾も関わらせていただいております。思えば初めての監修では「症候」の項10ページのみの担当でしたが、今回は「呼吸生理」「酸塩基平衡」「症候」「動脈血液ガス分析」「肺拡散能検査」の32ページ、それに特典コンテンツの「胸部X線写真読影クイズ」をお任せいただきました!あまりクレジットは目立ちませんが笑!!

そして昨日は島根県臨床工学技士会さんの第6回呼吸療法セミナーにて、呼吸生理からの〜酸素療法のお話、それにメディカルスタッフの方向けに胸部単純X線写真読影法のお話をさせて頂きました!
他には松江赤十字病院の認定看護師さんによるフィジカルのお話、フクダライフテックさん、日本光電さんによる実地のお話があり、個人的に結構勉強になりました!
このたびお声がけいただきました島根県臨床工学技士会の日野様、岡田様、ならびにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました!!
不肖長尾も関わらせていただいております。思えば初めての監修では「症候」の項10ページのみの担当でしたが、今回は「呼吸生理」「酸塩基平衡」「症候」「動脈血液ガス分析」「肺拡散能検査」の32ページ、それに特典コンテンツの「胸部X線写真読影クイズ」をお任せいただきました!あまりクレジットは目立ちませんが笑!!

そして昨日は島根県臨床工学技士会さんの第6回呼吸療法セミナーにて、呼吸生理からの〜酸素療法のお話、それにメディカルスタッフの方向けに胸部単純X線写真読影法のお話をさせて頂きました!
他には松江赤十字病院の認定看護師さんによるフィジカルのお話、フクダライフテックさん、日本光電さんによる実地のお話があり、個人的に結構勉強になりました!
このたびお声がけいただきました島根県臨床工学技士会の日野様、岡田様、ならびにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました!!
posted by 長尾大志 at 11:34
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| 活動報告
2025年03月09日
真菌症のちょっとしたこと6・アスペルギローシス
アスペルギローシスは深在性のアスペルギルス症で、正式には侵襲性アスペルギルス症と呼ばれます。全身的に好中球がいなくなるような、免疫力が低下した状態で、肺や他の臓器の中に直接菌糸が入り込んできます。
「免疫力が低下した状態」というのは、とにかく好中球減少なのですが、それ以外には次のような場合が挙げられます。
•ステロイド大量長期投与
•免疫抑制薬投与
•既存の肺病変
•低栄養
•糖尿病
•ADL低下
好中球減少以外の状況では、T細胞の働きが弱っている場面で起こりがちです。冒される臓器は、まず進入する肺から、血行性に全身に及びます。
好中球減少患者さんの病変部では血栓や梗塞を作り、それによる出血や浮腫を反映したhalo signがみられ、特異的所見といわれています。また、好中球数の回復とともに、好中球が壊死組織を処理して病変部に空洞ができ、air-crescent sign(前項のアスペルギローマとは機序がちょっと異なります)がみられます。
侵襲性アスペルギルス症は免疫能が落ちた方に起こるため、気管支鏡など、検査が困難であることも多く、生前診断がつきにくい疾患であります(剖検で診断されることが多いわけです)。
幸いボリコナゾールやL-AMBなど、強力な治療薬が使えるようになっていますから、疑わしい症例には逡巡することなく治療を始めるべきです。
アスペルギローマと侵襲性アスペルギルス症の間のような、「慢性壊死性肺アスペルギルス症」という病態もあります。これは侵襲性アスペルギルス症ほどではない、軽度の免疫低下がある患者さんに起こるものです。アスペルギローマとは異なり、肺実質に浸潤していきますが、進行は比較的ゆっくりです。
「免疫力が低下した状態」というのは、とにかく好中球減少なのですが、それ以外には次のような場合が挙げられます。
•ステロイド大量長期投与
•免疫抑制薬投与
•既存の肺病変
•低栄養
•糖尿病
•ADL低下
好中球減少以外の状況では、T細胞の働きが弱っている場面で起こりがちです。冒される臓器は、まず進入する肺から、血行性に全身に及びます。
好中球減少患者さんの病変部では血栓や梗塞を作り、それによる出血や浮腫を反映したhalo signがみられ、特異的所見といわれています。また、好中球数の回復とともに、好中球が壊死組織を処理して病変部に空洞ができ、air-crescent sign(前項のアスペルギローマとは機序がちょっと異なります)がみられます。
侵襲性アスペルギルス症は免疫能が落ちた方に起こるため、気管支鏡など、検査が困難であることも多く、生前診断がつきにくい疾患であります(剖検で診断されることが多いわけです)。
幸いボリコナゾールやL-AMBなど、強力な治療薬が使えるようになっていますから、疑わしい症例には逡巡することなく治療を始めるべきです。
アスペルギローマと侵襲性アスペルギルス症の間のような、「慢性壊死性肺アスペルギルス症」という病態もあります。これは侵襲性アスペルギルス症ほどではない、軽度の免疫低下がある患者さんに起こるものです。アスペルギローマとは異なり、肺実質に浸潤していきますが、進行は比較的ゆっくりです。
posted by 長尾大志 at 16:11
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| 真菌症のちょっとしたこと