アスペルギルスは真菌ですから、空中に胞子が浮いています。それを吸い込んで体内に入る。アスペルギルスは好中球に弱いので、通常の免疫力がある人、つまり好中球がちゃんと働いている人で感染が成立し発病することはありませんが、何らかの理由で好中球が働いていないと菌が増殖してきます。
結核や嚢胞性肺疾患などでできた空洞は空っぽなので、好中球もいません。そのため、その場にはアスペルギルスが生育することができるのです。生育した菌体はキノコのようなかたまり(菌球fungus ball)を作り、空洞いっぱいになるまで発育します。そうやってできたアスペルギルスのかたまりをアスペルギローマといいます。〜omaとは、「かたまり」を意味します。
空洞の外は血流があり、好中球がウロウロしていますから、アスペルギローマが空洞の外にはみ出して発育することは通常はありません(全身の免疫力が低下しているような状態ではあり得ますが)。
キノコ成分が空洞を埋めてくると、残存している空気部分が三日月状になり、 air-crescent sign と呼ばれる状態になります。クレッセント(crescent)は三日月の意味で、クロワッサンの語源でもあります。
まず結節・腫瘤ありきで、内容物が壊死して流れ出してできる、普通の空洞とはでき方が違いますので、機序と合わせて覚えておくと忘れにくいと思います。
アスペルギローマは無症状のことも多いのですが、血痰や喀血を来すこともあり、その場合は治療を要します。治療は切除が原則ですが、患者さんの状態によって、抗真菌薬を使うこともあります。出血のコントロールが難しくて手術も困難な場合、塞栓術で止血を図ることもあります。