2025年03月09日

真菌症のちょっとしたこと6・アスペルギローシス

アスペルギローシスは深在性のアスペルギルス症で、正式には侵襲性アスペルギルス症と呼ばれます。全身的に好中球がいなくなるような、免疫力が低下した状態で、肺や他の臓器の中に直接菌糸が入り込んできます。

「免疫力が低下した状態」というのは、とにかく好中球減少なのですが、それ以外には次のような場合が挙げられます。

•ステロイド大量長期投与
•免疫抑制薬投与
•既存の肺病変
•低栄養
•糖尿病
•ADL低下

好中球減少以外の状況では、T細胞の働きが弱っている場面で起こりがちです。冒される臓器は、まず進入する肺から、血行性に全身に及びます。

好中球減少患者さんの病変部では血栓や梗塞を作り、それによる出血や浮腫を反映したhalo signがみられ、特異的所見といわれています。また、好中球数の回復とともに、好中球が壊死組織を処理して病変部に空洞ができ、air-crescent sign(前項のアスペルギローマとは機序がちょっと異なります)がみられます。

侵襲性アスペルギルス症は免疫能が落ちた方に起こるため、気管支鏡など、検査が困難であることも多く、生前診断がつきにくい疾患であります(剖検で診断されることが多いわけです)。

幸いボリコナゾールやL-AMBなど、強力な治療薬が使えるようになっていますから、疑わしい症例には逡巡することなく治療を始めるべきです。

アスペルギローマと侵襲性アスペルギルス症の間のような、「慢性壊死性肺アスペルギルス症」という病態もあります。これは侵襲性アスペルギルス症ほどではない、軽度の免疫低下がある患者さんに起こるものです。アスペルギローマとは異なり、肺実質に浸潤していきますが、進行は比較的ゆっくりです。

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posted by 長尾大志 at 16:11 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと