アレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis:ABPM)は、以前アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosis:ABPA)と呼ばれていましたが、アスペルギルス以外の真菌によっても同様の病変が見られることがわかり、現在ではABPMという呼び名が一般的です。
そんなABPMは、感染症とアレルギー疾患の両方の性格を持っています。そのため、教科書でも載せるところに困っていたり、変なところに載っていたりします。そのせいか、なじみが薄く、よくご存じない人が多いように思います。
ABPMの病態としては、気管支の中に粘液栓の形で住み着いているアスペルギルスのかたまりに対してアレルギー反応が起こっている、こう考えるとわかりやすいですね。
診断基準についてはこれまで紆余曲折、といいますか、なかなか決定版といえるものがなかった感がありますが、2019年に日本から提唱された診断基準(論文掲載は2021年)が、特に日本におけるABPMの診断には妥当なものではないかと考えます(J Allergy Clin Immunol. 2021 Apr;147(4):1261-1268.)。
ABPMの臨床診断基準(6項目以上で診断確定、5項目で疑い)
1)喘息の既往または喘息様症状あり
2)末梢血好酸球数(ピーク時)≧500/μL
3)血清総IgE値(ピーク時)≧417IU/mL
4)糸状菌に対する即時型皮膚反応あるいは特異的IgE陽性
5)糸状菌に対する沈降抗体あるいは特異的IgG陽性
6)喀痰・気管支洗浄液で糸状菌培養陽性
7)粘液栓内の糸状菌染色陽性
8)CTで中枢性気管支拡張
9)粘液栓喀出の既往あるいはCT・気管支鏡で中枢気管支内粘液栓あり
10)CTで粘液栓の濃度上昇(high attenuation mucus:HAM)
症状は、喘息様の発作があり、末梢血好酸球も増えます。ですので、治療はアレルギー反応を抑えるためのステロイド投与、となるわけです。それで症状が治まり、粘液栓が分解されてアスペルギルスが出ていってくれれば一件落着ですが、体内にアレルゲンがあったわけですから、一時的に軽快してもまた増悪、というパターンも見られます。アスペルギルスがしつこく居座る場合は、抗真菌薬の投与を行うこともあります。