2025年03月19日

気胸について、最新ガイドライン

気胸については以前、これまでの日本でやられている方法をまとめてみましたが、昨今海外の新しいガイドラインが出ておりまして。

British Thoracic Society Guideline for pleural disease(Thorax 2023;78:1143–1156. doi:10.1136/thorax-2023-220304)
Joint ERS/EACTS/ESTS clinical practice guidelines on adults with spontaneous pneumothorax(European Respiratory Journal 2024 63(5): 2300797; DOI: https://doi.org/10.1183/13993003.00797-2023

最近のガイドラインでは患者の安定性、症状、気胸の大きさに基づいた個別ケアが重視されています。以下は主要な推奨事項の要約ですが、所謂古典的な?方法に対して、結構侵襲の少ない方法を推奨される傾向にあるようです。

1. 原発性自然気胸(PSP)
・経過観察
気胸の大きさに関係なく、症状が最小限で、臨床的および放射線学的に安定している患者に推奨されます。患者を退院前に観察し、日常的な活動を行うことができるかどうかを判断する必要があります。ただまあ、エビデンスの確実性は非常に低く、条件付き推奨ということになっています。

その根拠となるRCT論文なんですが、主要評価項目は「8週間目で気胸がなくなっている」ことで、ドレナージ群に対して経過観察群で非劣勢であり、入院期間や合併症、12 か月時点での気胸の再発は経過観察群で少なかったということです。……いろいろ微妙ですね。そりゃドレナージしなけりゃ、入院期間は短くていいでしょうし、合併症も少ない。おそらく発症後しばらく肺を縮めておく方が、孔もキッチリふさがるでしょう。そもそも「8週間目で気胸がなくなっている」ことを主要評価項目にしているということは、「8週間目で気胸がなくなっていれば」治った、という感覚で、途中経過は問わない、ということですよね。ここを是とするかどうか。

RCT以外の非ランダム化研究も矛盾した結果があったりでしたが、合併症は経過観察群の方が少ない傾向にあったそうです。ということで、症状がない原発性自然気胸にはドレナージをしない、という選択肢が浮上して参ります。おそらくそのうち日本のガイドラインも新しくなるのかもしれませんが、しばらくは混乱しそうですね……。

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posted by 長尾大志 at 18:34 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ