2025年03月24日

非結核性抗酸菌症(特にMAC症)の治療適応(目安)

非結核性抗酸菌症に関しましても「レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室第4版」で当然書き直しておりますが、このあたりもどんどんガイドラインが書き換わってきており、結構大変であります。

特に以前から議論のあるところで、よくご質問を頂くのが、肺MAC症をはじめとする肺NTM症の治療をそもそも開始すべきかどうか?いつ開始するのか?というものですが、まあこれはケースバイケース、と言ってしまうと見も蓋もありませんが……。

どうしてこんなに議論が尽きないのか。それはもちろん、「決定的な治療がない」からに他なりません。この薬(の組み合わせ)を使えば、まあ大体よくなるし、副作用も許容範囲だよね……っていう薬があれば、それを積極的に使えばいいだけの話。そんな薬がないから苦労するわけです。

軽症なら軽症で、画像的に不変〜自然軽快もありうるため、無作為二重盲検試験などが立てにくく、薬剤の効果が立証できない。反面、空洞形成して、難治性になってきたりすると今度は治療効果がはっきりと得られない例が増えてくる。いったん排菌が陰性化しても、治療を止めれば再燃することもあります。

また、単剤での効果が期待できないだけに複数の薬剤を長期間併用することになり、ただでさえ少なくない副作用のリスクも増えることになるのです。実に悩ましい。
つまり、治療のリスクに対する保証がないわけです。ここが、結核との大きな違いです。結核は(耐性菌でなければ)治療すれば必ず効く。きちんと効果が保証されていて、かつ、他人にうつす危険がある。それゆえ、治療は絶対に行うべきものなのです。

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