呼吸器学会の近畿地方会では、大阪医科大学リウマチ膠原病内科の槇野茂樹先生によります血管炎のお話も拝聴しました。
最近名称が変わったり、診断基準が入り乱れていたりで、改めて知識の整理ができて良かったです。それとやはり、たくさんの症例を診ておられる先生のお話は聞いていて気持ちいい。特に槇野先生は「これは、こういうものである」ということをクリアーに言い切ってくださいますので、大変理解がしやすいのです。
というわけで、講演内容の覚え書きを、備忘のためまとめておきます。
(ここから講演内容)
そもそもWegenerが、戦時中にナチに関わった、ということから、病名からWegenerを外そう、ということから血管炎の病名、改名の機運が盛り上がった。当初「人名は全て外す」となっていたが、日本で開催されたアジア太平洋血管炎・ANCA国際会議(AP-VAS)で、「日本人の名前は残して!」という話になり、なんやかんやで結局高安病と川崎病は残った。
てことでCHCC2012(2012 Revised International Chapel Hill Consensus Conference Nomenclature of Systemic Vasculitides)で定義し直された主な血管炎の名前と分類。
★大血管
巨細胞性動脈炎(Giant Cell Arteriris:GCA)←元側頭動脈炎
高安病(Takayasu's arteritis:TA)
★中血管
結節性多発動脈炎(Polyarteritis nodosa:PAN)
川崎病(Kawasaki disease:KD)
★小血管
●ANCA関連小血管炎
・顕微鏡的多発血管炎(Microscopic polyangiitis:MPA)
・多発血管炎性肉芽腫症(Granulomatosis with polyangiitis:GPA)←元Wegener肉芽腫症
・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA←元Churg-Strauss症候群
●免疫複合体性小血管炎
・クリオグロブリン血症性血管炎
・IgA血管炎←元Henoch-Schonlein紫斑病
・低補体血症性蕁麻疹様血管炎(抗C1q血管炎)
・抗GBM病←元Goodpasture症候群
・血管炎は最初、詳細不明の炎症+関節痛で発症する。初期症状として特徴的なのは多発性単神経炎。そしてANCA陽性。これらのみの段階で発見されると、予後は良い。しかし実際問題、特異性の高い臓器症状が出てから診断されると、予後は不良である。
・日本の厚労省が定めている「診断基準」は、米国リウマチ協会など海外の診断基準とは異なるが、診断のコツ、解説が細かく書かれており、親切である。米国リウマチ協会は雑だが、論文を出すときにはこちらを適用せざるを得ない。
・血管炎は人種差が大変大きいので、海外の論文を見るときには注意が必要である。
・欧米ではGPAが多い。30〜40歳代に好発。北欧、北に行くほどGPAが多く、スペインはMPAが多い。
・欧州において、GPAは好発年がある(周期性あり)。
・GPAの再発予防にST合剤が用いられることからも、感染が何らかの形で関与していることが推測される。
・MPAは冬発症が多い。
・日本ではMPAが多く、60〜70歳代に好発。
・日本人のGPAではMPO-ANCA陽性例が多いが、欧米ではほとんどない。PR3-ANCAと両方陽性、という例もある。
・日本人のMPAのみ間質性肺炎が多い。海外では見ない。
・MPAの間質性肺炎は治療が入るとあまり悪化しない。
・MPA本体の病勢と間質性肺炎の活動性は必ずしも連動しない。
・日本人のTAは大動脈弓が病変になることが多い。
・インド人のTAでは腹腔動脈付近が病変になることが多い。
・欧米人のGCAは北に行くほど多い。
・TAの特異性のある症状がまだない段階では、PETがとてつもなく役立つ。
・TAで生命予後に関わるのはAR。
・GCAでは間歇性下顎痛が特徴。PETがここでも有用。高齢者のTAはGCAとの異同が問題となる。
・網状皮斑は中小血管の閉塞でできた側副血行路を見ている。
・EGPAのうちMPO-ANCA陽性例は半数。
・EGPAをよく検索すると心病変、消化器病変は多く、これらは生命予後に関わる。
・IVIGはEGPAの心病変、神経病変に効く。
・GPAはEGPA、MPAに比べて再発が多く、再発を繰り返して身体が痛んでいき、命に関わってくるという印象。
・GPAにはリツキシマブが強い。
・MPAはGPA、EGPAに比べて、押さえ込めば再発が少ない。
・リツキシマブはMPAにおいて、GPAほど絶対的に効かない。
2014年07月02日
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