毎回、M先生による丹念な細菌検査のお話、県下の有力病院におけるP.aeruginosaの感受性調査があり、大いに参考になるところと、だいたい毎年感染のスペシャリスト中のスペシャリストの先生によるとっても面白いお話を聴くことが出来るので、万難を排して聴きに行っています。ちなみに昨年はこんなお話でした。昨年もじゃんけん大会の翌日だったんですね。( ̄▽ ̄;) あれからもう1年か…。
メ○ペンの後発品が出てしまったそうで、D日本S友さんの行われているこの研究会、先行きが心配されるところです。メーカーさんにはとかく逆風の多い昨今ですが、何とか頑張って頂きたいものです。
さて、それでは今年の特別講演、川崎医科大学総合内科学1の准教授でいらっしゃる、宮下修行先生による『肺炎クラミジアは肺炎を引き起こすか?〜マイコプラズマ肺炎との比較』見聞録です。
私はずいぶん前に宮下先生のお話を聴かせて頂いたことがあって、そのときに「クラミジアの診断はしなくても大丈夫そうだ」という結論だけをtake homeしました。そのときのメモなどもなくなり、当時ブログも書いていなかったので、今回のお話を楽しみにしていたのです…。
公演中に何度も、「学会ではこんな話は出来ない。この規模の研究会だからぶっちゃけられる」「ガイドライン作成委員会ではもっと本音を語るけど、できあがったガイドラインは…」「こんなことは公の場で言っちゃダメ」など言っておられましたので、宮下先生のお言葉をそのまま掲載することは止め、講演を元に作り替えられた私の理解を備忘的に書いていきたいと思います。
なお、宮下先生の講演内ではクラミドフィラでなく「クラミジア」で統一されていましたので、ここでも踏襲して記載します。
(理解サマリーここから)
- そもそも肺炎のうち、原因がクラミジアであることはまれで、割合はせいぜい1〜2%でしかない。他の非定型肺炎はマイコプラズマが10〜20%と多く、レジオネラは3〜6%程度と見込まれている。
- 1980年代に「クラミジア肺炎が結構あるぞ」「重症化する」と言われていたのは、診断基準がIgGを使ったものであったためで、診断自体が誤りであった。あまりないし、重症化もしない。
- C.pneumoniae、C.trachomatisは自分の身を守るために、目立たぬようにしており、強い炎症を起こさない。それに対してC.psittaciは本来鳥に感染する菌であり、人への感染はirregularであるがゆえに、鳥インフルエンザのごとく、強い反応を起こす→激しい症状が出る。
- クラミジアの集団感染例で最も多いのは感冒様症状、次に気管支炎であり、肺炎はきわめて少なく細菌との混合感染がほとんどである。肺炎であっても健診発見とか、無症状のものが多い。
- クラミジアはβラクタム系抗菌薬の存在で慢性持続型感染を起こし、薬剤感受性が低下する。したがって、市中肺炎で非定型を疑う場合、βラクタム系抗菌薬は使わない方がよい。
- クラミジアをキッチリ診断するには抗体価の経過を追うしかない。現段階ではエルナスプレートIgG、IgA、IgMがよい。IgMは4週目以降がピークになるので、シングル血清で診断するには4〜6週目に採血をしないと意味がない。同様に、PTIgGも4週目以降に採ったものでなくては意味がない。
- 肺炎クラミジアは症状が軽く、抗菌薬で治療されないことから、かえって集団感染が拡がりやすい。
- クラミジアのCT画像はS9のみ、など区域性のコンソリデーションが多い。
(サマリーここまで)
まだまだ続きますが、今日のところは時間切れです。