(理解サマリーここから)
- マイコプラズマは、菌体先端のTipが気管支粘膜上皮細胞の線毛にくっつき、滑走することで感染する。したがって、線毛が脱落してきている喫煙者や呼吸器基礎疾患のある人、高齢者には少なく、若くて気道のきれいなヒトに多い。
- 若くて喫煙せず呼吸器基礎疾患のないマイコプラズマ症例がしばしば劇症化しARDSとなる。IL-18 が増えることが観察されている。
- マイコプラズマは病原菌そのものが組織を傷害するのではなく、生体の免疫反応によって症状が起こっている。それ故、PC肺炎同様、特に重症例の治療にはステロイドを使う方がよい。しかし適切な抗菌薬を必ず併用する。さもなければ、菌を播種する結果になってしまうから。
- 重症マイコプラズマの治療にステロイドが効く、というランダマイズドコントロール試験を行うのは難しく(そもそも早期の診断が難しい)、現段階ではエビデンスに乏しいが、効くかも、という感じはある。LDHが高い症例にて効果が期待できるようである。
- マイコプラズマは気道に持続感染を起こし、気道過敏性亢進を来す。喘息の増悪に関与することはわかっているが、発症に関与するというエビデンスはまだない。
- マイコプラズマの診断に用いられるリボテストは、1✕10^4の菌がいないと陽性にならず、感度が低い。プライムチェックは偽陽性が多すぎる。
- マイコプラズマ、クラミジアの感染で気道の過分泌が起こる。臨床的に、乾性咳嗽が多いとされているが、果たして…。
- 成人マイコプラズマ肺炎にマクロライドを投与して重症化、死亡例は見られなかったことから、耐性の問題はあるとはいえ、1st choiceはマクロライドでよい。症状だけで言えば自然軽快もあるのではないか。マクロライド無効ならばMINO、キノロンになるが、キノロンはできる限り温存する。マクロライドは分泌物を減らす効果も期待できるのでなおよい。
- レジオネラ肺炎における尿中抗原の感度はきわめて低く、多くの症例が診断されていない。ただその多くは軽症例であり、重症例になると尿中抗原の意義は増す。現段階で現実的には尿中抗原でしか診断できないので、臨床症状から疑うことも重要である。
- レジオネラ肺炎のCT画像は非区域性に拡がるすりガラス影の中に、明瞭かつ直線的に(小葉間隔壁で)境されたコンソリデーションが見られる。
- 頑固な咳症例で、非定型病原体感染が咳喘息との鑑別困難なことがあるが、NOとβの反応性で多くは鑑別可能である。
- クラミジア感染にフルチカゾンを使用すると菌がどんどん増えた。咳喘息との鑑別が重要と考えられる。慢性咳嗽でICS無効、あるいは悪化する症例の一定の割合で、クラミジア感染が含まれているのだろう。
- かつて使われていたヒタザイムIgMは偽陽性率が10-30%もある○○。同様に山口株、東浜株も○○。
- NHCAPでも、誤嚥を繰り返している症例には抗菌薬を使っても意味はない、とみんな思っているが、ガイドラインにはそうは書けない。
(ここまで)
いやあ、本当に面白いお話でした。積年の謎が氷解する瞬間がいくつもあり、時間の経つのが早かったです。こんな講演が出来るようになりたい…。