前医到着時に抗菌薬を使用されていて、当院で(抗菌薬投与後)7時間後に採取した喀痰では有意な菌を認めませんでした。基礎疾患がない若年?者、激しい症状、X線上大葉性パターン、菌がすぐにいなくなった、などから原因菌には肺炎球菌を想定しました。
診断は特に問題ないと思います。では次に呼吸管理を考えましょう。
50歳代で喘息以外に呼吸器疾患の既往がなく、CO2蓄積もないことから、呼吸管理の要諦は酸素にあると想定されます。
実際、O2 15L/min吸入下での血ガス所見は
pH 7.30
pO2 69 mmHg
pCO2 35 mmHg
HCO3 20.6 mmol/L
で、CO2蓄積はありません。ちゃんと解釈してみると…
まずはpHを確認します。
- pH<7.350:アシデミア
- 7.350〜pH〜7.450:正常範囲
- pH>7.450:アルカレミア
pH=7.30のアシデミアです。
続いてはPaCO2とHCO3-を確認。pH<7.350のアシデミアですから、その原因が肺なのか腎臓なのかを知る必要があります。HCO3-とCO2を確認します。
すると、HCO3- <22⇒代謝性アシドーシスで、PaCO2<<35→代謝性アシドーシスを呼吸性に代償していると考えられます。また、低酸素で呼吸数が多いゆえにCO2が飛んでいる面もあると解釈されます。
代謝性アシドーシスですから、AG(アニオンギャップ)を計算しましょう。
AG=Na+ −(Cl- +HCO3- )でした。
(正常値は12±2mmol/L)
AG=139−(105+20.6)=13.4
正常範囲とはいえますが多めであり、敗血症の病初期である点を考慮しても妥当かと考えます。
ちなみにAGが増加する代謝性アシドーシス
- 敗血症
- 乳酸アシドーシス
- 糖尿病性ケトアシドーシス
- 飢餓状態
- 尿毒症
- 中毒
やさしイイ血ガス・呼吸管理