2015年10月09日

症例検討クイズ1・急性呼吸不全・血ガスの解釈

というわけで、1週間ほど前より倦怠感があり、1日前から38℃の発熱あり、SpO2の低下があると。右胸部でcrackleを聴取し、胸部X線写真上どうやら浸潤影を認めるので、肺炎の診断は妥当でしょう。血圧低下、意識混濁認め、ショック状態となった、ということですから重症肺炎、敗血症性ショックですね。


前医到着時に抗菌薬を使用されていて、当院で(抗菌薬投与後)7時間後に採取した喀痰では有意な菌を認めませんでした。基礎疾患がない若年?者、激しい症状、X線上大葉性パターン、菌がすぐにいなくなった、などから原因菌には肺炎球菌を想定しました。



診断は特に問題ないと思います。では次に呼吸管理を考えましょう。


50歳代で喘息以外に呼吸器疾患の既往がなく、CO2蓄積もないことから、呼吸管理の要諦は酸素にあると想定されます。


実際、O2 15L/min吸入下での血ガス所見は


pH 7.30
pO2 69 mmHg
pCO2 35 mmHg
HCO3 20.6 mmol/L


で、CO2蓄積はありません。ちゃんと解釈してみると…


まずはpHを確認します。


  • pH<7.350:アシデミア

  • 7.350〜pH〜7.450:正常範囲

  • pH>7.450:アルカレミア



pH=7.30のアシデミアです。


続いてはPaCO2とHCO3-を確認。pH<7.350のアシデミアですから、その原因が肺なのか腎臓なのかを知る必要があります。HCO3-とCO2を確認します。


すると、HCO3- <22⇒代謝性アシドーシスで、PaCO2<<35→代謝性アシドーシスを呼吸性に代償していると考えられます。また、低酸素で呼吸数が多いゆえにCO2が飛んでいる面もあると解釈されます。


代謝性アシドーシスですから、AG(アニオンギャップ)を計算しましょう。

AG=Na+ −(Cl- +HCO3- )でした。
(正常値は12±2mmol/L)


AG=139−(105+20.6)=13.4
正常範囲とはいえますが多めであり、敗血症の病初期である点を考慮しても妥当かと考えます。


ちなみにAGが増加する代謝性アシドーシス

  • 敗血症

  • 乳酸アシドーシス

  • 糖尿病性ケトアシドーシス

  • 飢餓状態

  • 尿毒症

  • 中毒



やさしイイ血ガス・呼吸管理

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posted by 長尾大志 at 15:39 | Comment(0) | やさしイイ血ガス・呼吸管理
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