・半夏厚朴湯 続き
半夏厚朴湯のもう一つの使い道は、誤嚥です。誤嚥といっても、誤嚥性肺炎を繰り返す、みたいな、マジモンの誤嚥ではなくて、食事時にむせる、といった程度の誤嚥です。
「ずっと咳が出て困る」慢性咳嗽で、「どういうときに出ますか?」「お食事のときにはむせたりしませんか?」と尋ねて、「そうですね」「食事時によくむせます」といわれたときには使用を考えたいところです。割と喜んで頂けます。
昨日は喉のつかえる感覚に対して効果的だと書きましたが、実際に嚥下がうまくいかず、ものがつかえる、という現象に対しても有効だ、ということなのかもしれません。嚥下〜食道通過、というところを何となく?改善させる効果、と考えて頂くとわかりやすいと思います。
ただ、ある限度を越えたマジモンの誤嚥に対しては、あまり効果は期待出来ないようです。誤嚥性肺炎に対して、予防効果を期待して投与されたりもしていますが、肺炎を予防する、というデータは得られていません。
・柴朴湯
(半夏厚朴湯+小柴胡湯)÷2 が柴朴湯です。
半夏厚朴湯の咳、息苦しさを抑える効果と、小柴胡湯の抗炎症効果を併せ持つものです。気道炎症に対応する、ということで気管支喘息に適応、みたいな扱いになっています。
決して吸入ステロイドなどに取って代わるものではなく、作用機序の異なる、補助薬的な位置づけがよろしいかと。個人的には、喘息で精神的に抑うつ傾向があるものの、抗うつ薬までは…?というニュアンスの方で、吸入ステロイドなどのコントローラーを使ってもなんだか不安定、情動発作に伴って喘息発作も出てしまう、そんな感じのときに手応えがあります。
昔ある先生が、「柴胡はpsycho(サイコ)の問題に効くンや」とおっしゃっていて、なるほどな〜と感心した記憶があります。語呂合わせは本当に記憶に残るものです。
ある病院に勤めていたときに、そこは漢方に理解がなくて、10種類くらいしか処方出来なかったのですが、「半夏厚朴湯」は処方出来なくて、「柴朴湯」だけが処方出来たのです。
で、やむを得ず、誤嚥によるむせの患者さんとか、咽喉・食道部の異物感、つかえ感に「柴朴湯」を使わざるを得ませんでした。結果、精神的問題を抱えているケースではそれなりによかったのですが、そうでない場合、やはり効果は落ちる印象でした。このあたりが使い分け出来るようになると、漢方が面白くなると思います。
呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践
2016年09月01日
呼吸器専門でないドクターのための呼吸器漢方基礎知識5・半夏厚朴湯・柴朴湯
posted by 長尾大志 at 17:03
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