2016年09月02日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器漢方基礎知識6・葛根湯・麻黄湯

・葛根湯

かぜ症候群、急性上気道炎のときによく使われていると思いますが、決して葛根湯=PL顆粒、ではありませんから注意が必要です。ご存じの方も多いかと思いますが、葛根湯は「肩こり」に使いますね。


で、私がそうなのですが、スゴく肩が凝ると、かぜ気味になるのですね。血行が悪くなって免疫が低下するのでしょうか。その、風邪の引き始めのとき、というのは発熱や悪寒があっても発汗が余り起こらない時期があって、そのときに葛根湯を使います。そうすると少し体温が上がって発汗する。


こういう、葛根湯が効果を現す時期は、かぜの引き始めのごく初期だけで、葛根湯を飲んで発汗するとちょっと楽になる、これで葛根湯の役目は終わりなのです。ですから、「葛根湯1週間分」とかいわれると違和感がありますね。


もちろん、肩こりに対して長期間投与、というのは、ある意味本来の使い方ですからいいと思いますが、「かぜに葛根湯」は、ごく初期だけのことで、その後は症状に応じた処方が必要になってきます。


これにも麻黄が入っているので、ある程度体力のある成人、胃腸がしっかりしている人に向いています。「なんか漢方だから安全だろう」と、高齢者のかぜとかに使うとうまくいかないかもしれません。



・麻黄湯

こちらは「インフルエンザに麻黄湯」で有名になりました。でも実は、葛根湯によく似た成分なのです。葛根湯に入っている「葛根」には頸のコリを抑える作用があるので、そちらを目標に使いますが、麻黄湯の役目は、葛根湯でもあった「体温を今よりも少し上げて発汗させる」ところにあります。


インフルエンザで高熱が出るのは、免疫力を高めるため、といわれています。それを後押しする感じでしょうか。加えて、麻黄(≒エフェドリン)にある気管支拡張効果が、咳や呼吸困難に効きます。麻黄には充血緩和効果(血管を収縮させる)もあり、鼻症状にも効くようです。


また、関節リウマチにも効能があることからわかるように、関節痛のあるインフルエンザに効果がある、というわけです。


ただ、葛根湯と同じく、ある程度体力のある成人、胃腸がしっかりしている人に向いていますし、汗をかいて解熱し出したら、その役目は終わり、と考えるのがいいでしょう。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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この記事へのコメント
漢方の話しは時々聞きますが、長尾先生が説明してくださる効能が一番わかりやすいと思い、毎日勉強させていただいています。
続く間楽しみにしております。
Posted by 高木 かすみ at 2016年09月04日 11:01
コメントありがとうございます。漢方のお話はどうしても証の話が入ってくるとこんがらがってくるので、なるべく証抜き、病歴だけで特徴をつかめるように工夫しました。もう連載も終わりですが…。
Posted by 長尾 大志 at 2016年09月04日 17:02
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