2016年12月01日

第88回日本呼吸器学会近畿地方会にて座長1

すっかり間質性肺炎のお話も長くなってしまいました。もうお腹いっぱいですね!まだもう少し残っていたりもしますが、一旦キリのいいところで話題を変えたいと思います。


そういえば、来週末には第88回日本呼吸器学会近畿地方会がありますね。今回も座長を仰せつかっておりますが、当初は「稀少肺疾患・その他4」という、まあ本当にアレなところだったところ、どうにも時間の都合がつかず、ウチの山口先生と交替して頂いたおかげで、「アレルギー性肺疾患1」という、ステキなところをさせて頂くこととなった次第です。



で、今回の「アレルギー性肺疾患1」なんですが、アレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis:ABPM)祭りとでも言うべき、ABPMまみれのセッションとなりました。ちなみに「アレルギー性肺疾患2」は好酸球祭りの模様。


  • 重症喘息として加療されていたアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の1例

  • 環境調整などが有効であった肺アスペルギルス症の1例

  • Schizophyllum communeによるアレルギー性気管支肺真菌症と考えられた一例

  • Schizophyllum communeによるアレルギー性気管支肺真菌症を発症した一例



…祭りですね。もう質疑応答も「総合討論」形式にしたいぐらい。


ABPAやABPMを論じるときに、いつも問題になるのはその診断、というかそもそもの病態だと思うのですが、いろいろ調べれば調べるほど、わかったようなわからんような気分になるのがこの疾患です。


倉原優先生の『「寄り道」呼吸器診療』にABPAの診断基準(Greenberger-Pattersonの診断基準)の変遷と病態に関する考察がなされていますので、ご興味があれば一読頂きたいのですが、この病態は、そもそもアスペルギルスを抗原とする過敏反応、Th2免疫応答がだんだん増加してくることで、やがて気道の破壊〜気管支拡張が起こってくるのでは、という考え方のようです。


UpToDateには、International Society for Human and Animal Mycology (ISHAM) のABPAワーキンググループによる診断基準が載っていて、Greenberger-Pattersonの診断基準とも異なるのですが、考え方は似ています。大事なのはAspergillusに感作されていることを証明する、というところになります…。


ということで、検討をして参りましょう。


● 重症喘息として加療されていたアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の1例

25年前に喘息と診断、5年前から当院通院開始。ICS/LABA吸入、LTRA内服にて治療を受けていたが、2年前より喘息発作の頻度が増してきた。ICS/LABA増量、LAMA追加を行ったが改善無く、胸部X線写真を撮影したところ異常影を認め、胸部CTを撮影してABPAが疑われた。PSL 0.5mg/kg/日で改善した。



*喘息の患者さんって、あまり胸部X線写真に異常がないもんですから、撮らないことも多いのかも、と考えさせられた一例でした。胸部X線写真を撮っておられた間隔がいかほどであったのかは気になるところです。



● 環境調整などが有効であった肺アスペルギルス症の1例

咳と呼吸困難、発熱のある患者。好酸球増多とIgE高値、CTでmuciod impactionあり、喀痰からアスペルギルス検出、アスペルギルスに対する特異的IgEと沈降抗体が陽性、からABPAに近い病態と考えられた。


治療はFP/FM吸入とITCZ投与で症状は軽快した。自宅の掃除とエアコンの新調を行い、有効であった。



*喘息症状がなかったということと皮膚テスト即時型反応がない点から、診断確定には至らないようですが、全身ステロイドを使わずに軽快した、という経過のようです。definiteでないから吸入ステロイドが不要なのか?元々自宅やエアコンにはアスペルギルスが棲んでいたのか?疑問は尽きませんね。

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posted by 長尾大志 at 18:23 | Comment(4) | 学会・研究会見聞録
この記事へのコメント
「本当にアレなところ」とはどういう意味ですか?あまりよい意味ではなさそうですが。
Posted by 佐渡 at 2016年12月04日 11:31
「端っこ」ぐらいの意味に思って頂ければと思います。
Posted by 長尾 大志 at 2016年12月04日 21:07
びまん性肺疾患やアレルギーが「ステキなところ」で、稀少肺疾患が「アレなところ(端っこ)」、と無意識に発言なさっているのは、座長をやられている身でいかがな発言かと思います。
幻滅しました。
Posted by 佐渡 at 2016年12月05日 16:42
軽率な発言をお詫び致します。以前の記事からお読み頂いている方であれば、「ステキ」と「アレ」のニュアンスがおわかり頂けるか、と甘えがありました。私の本意は稀少肺疾患を軽んじている、とかそういうところでは決して無く、自分が例えばアレルギーの専門家、とか道を究めた人、として座長をさせて頂いているのではない、という意味合いなのです。学会という場では、何かの専門家である先生方が座長なり、役なりをされていることが多いものですから。
Posted by 長尾 大志 at 2016年12月06日 18:18
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