圧す病変、引っ張る病変がなくても気管や縦隔が偏って見えることがあります。例えばそもそも正面から撮られていない(ポータブル写真などに多い)、側彎がある、亀背・円背があるなど、いろいろな理由で気管の位置がずれて見えるのです。
ですから、気管の偏位にも意味のあるものとないものがあることになります。何らかの病変が気管の近傍に存在して、かつ気管が動いている場合には、その動きには意味がある。でも、気管近くに何も病変らしきものがなければ、その動きはあまり意味を持たない。
そこで、気管の偏位を認めたら、まずは撮影条件(ポータブルかどうか)、正面性を確認します。正面から撮られていなければ、気管の位置はあまり気にしなくていいでしょう。
そして気管の偏位を起こしうる原因となる陰影、ないし病歴を探しましょう。具体的には、気管の近くに何らかの陰影があるかどうか。それから、容量の変化を反映して、横隔膜が挙上、あるいは低下しているかどうか。あとは胸部(肺・心臓・食道など)の手術歴があるかどうか。
原因となる陰影、病歴がない「気管の偏位」には、診断的価値はあまりありませんので、時間が限られているカンファレンスなどでは、あえて所見として挙げないこともあります。
2017年03月23日
この記事へのコメント
コメントを書く