・胸水
立位で胸部X線写真を撮ると、胸水は下に溜まります。胸水があると、胸膜と肺の間(=胸膜直下)に水が入り込んでくるので、胸膜直下の付近が丸く持ち上がることが多いです(→○ページ)。
また、粘りけの多い胸水であれば、胸膜に沿って厚みのある濃度上昇域として見えることもありますし、葉間胸膜にも水が入り込みます(→94ページ)。右の上中葉間裂に入り込むと毛髪線がハッキリ見え(→66ページ)、上下葉間裂に入り込むと、何となく下肺野の濃度が上昇しているように見えたりもします。
・腫瘤
腫瘤の性質としては外側にモコモコと増殖していきます(→99ページ)から、ある程度の大きさのものになると、辺縁が外向きに凸に見えることが多いです。球っぽいこともあれば、モコモコ感が見られることもありますね。
胸水も腫瘤も、容量が増える病変ですから、ある程度以上多く(大きく)なってくると縦隔を圧してきます。従って気管や縦隔は健側に圧されます(→97ページ)。また、胸水は肺外の病変ですし、腫瘤は通常内容物が密であり、病変内を走る気管支は押しつぶされますから、いずれもエアブロンコグラム(→117,118ページ)は通常生じません。
内容が疎な高分化腺癌などの場合、限局したすりガラス影の中にエアブロンコグラムが見えることもあります。
・無気肺
無気肺は容量減少を伴いますので、辺縁は内向きに凸になります(→101ページ)。また、通常は葉〜区域単位で見られることが多く、その頂点は葉、区域の入口部(つまり比較的中枢)ですから、中枢を頂点とした扇形(でちょっと辺縁が内向きに凸)のイメージで捉えておくと分かりやすいと思います。
無気肺エリアの容量は減少しますから、気管や縦隔は患側に偏位し、患側の横隔膜は挙上します(→113ページ)。病変部の気管支内に空気は存在しなくなるため、エアブロンコグラムは生じません。
・浸潤影
浸潤影は容積があまり変わりませんので、構造物(縦隔や横隔膜)の動きが少ないことと、べたっと白い中にエアブロンコグラム(→117ページ)が見られる点などが特徴です。
辺縁は不明瞭なことも少なくありませんが、辺縁が見えるものでは比較的まっすぐで、モコモコ感とか縮んでいる感じは受けないことが多いです。