胸水の被包化が起こると、胸水は横隔膜直上ではなく宙に浮いたような場所で貯留し、胸膜が部分的にぷくっとふくれたように見えます。
肺尖部で胸水の量が多いと、以前紹介したような「胸膜に沿って厚みのある濃度上昇」になります。
葉間胸水でもしばしば同じような現象が起こります。側面から見ると、胸水があるところが部分的に肥厚してレンズといいますか、やはりぷくっとふくれて見えることが多いです。extrapleural signを呈する胸膜の腫瘤影と、見分けが難しいこともあります。
上中葉間裂に溜まった胸水を正面から見ると、同じようにぷくっとしたニュアンスと、肥厚した毛髪線が見られますが、上下葉間に斜めに溜まった胸水を正面から見る形になると、図の左側のように、ぷくっという感じが見えず、ただ丸い感じに見えたりします。
この「丸い感じ」が、腫瘤影に似ている、ということで、しばしば鑑別が問題になることもあります。心不全の時に見られる葉間胸水は、治療によって速やかに消退しますから、vanishing tumor(消失する腫瘍)みたいな呼ばれ方をされたりもしますね。
やさしいイイ呼吸器教室を読ませていただいています。とても分かりやすい文章で重宝しているのですが被包化の説明で分からないことがあり質問させていただきます。
本によっては被包化を胸膜が肥厚し臓側胸膜と壁側胸膜が癒着し、その中に胸水がたまること、と説明しフィブリンが沈着し隔壁形成されることを多房化と読んでいます。尊書では先の説明でいう多房化を含めて被包化と読んでいる印象を受け被包化の定義がわからず困っています。
是非ご回答頂ければ幸いです。