2017年05月02日

これもすりガラス陰影

浸潤影は、本来空気が入っている肺胞内に水濃度の物質が溜まった状態のときに見られます。


スライド78.JPG


その部分をX線が通過すると、空気があるときよりもたくさんのX線が吸収されて、その場所は白く見えるようになります。


スライド79.JPG


で、例えば、あるエリアの肺胞のうち4割に水濃度の物質が溜まっていたとしましょう。


スライド80.JPG


すると水濃度の箇所でX線はぐっと吸収され、空気の箇所ではあまり吸収されない。結果、そのエリアの陰影は「4割方白い」ということになるはずです。


スライド81.JPG


一方、間質性肺炎があるエリアでは、びまん性に(あまねく広く)肺胞壁の浮腫・肥厚があり、そのエリア内の空気の割合が相対的に減っています。この図でしたら、4割方肺胞壁(水濃度)で6割方空気、という感じでしょう。


スライド82.JPG


そのエリアでは、あまねく広くX線が4割分吸収され、結果「4割方白い」ということになるはず。


スライド83.JPG


ということで、肺胞の状態がどうであっても、胸部X線写真では同じように「すりガラス影」的な濃度としてみられることがおわかり頂けるでしょう。ですから、胸部X線写真で「浸潤影」「すりガラス影」と、白いところの「白さ」を突き詰める所見をつけても詮ないことで、あまり情報としては意味がない。そういうわけで、昨今ではそのような言い方はせず、ただ白っぽい部分を「高吸収域」とか「濃度上昇域」とか総称することが多いと思います。


胸部X線写真では、白い部分そのものの性質よりも、それ以外の所見の方がモノをいうのです。例えばそのエリアが縮んでいるとか、エアブロンコグラムを伴うとか、網状影が併存しているとか。それによってある程度病変の性質を推測するのです。


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posted by 長尾大志 at 15:44 | Comment(0) | 胸部X線写真で、ここまでわかる
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