通常乳房は左右ほぼ同じ高さに、同じような大きさで位置します。「実際は左右差があるものですよ。」という声があろうことは承知しておりますが、あくまで画像上の問題です。乳癌の術後などになると画像上でもわかるほど左右差が出ますけれども…。
胸部X線写真では両側下肺野、やや外側よりに存在する高吸収域として認識されます。位置に関しては個人差が大きく、軟部組織の質量が大きいほど、また高齢になるほど、下部に位置することはおわかり頂けるかと思います。
昨日の症例ではこのくらいの軟部組織厚です。他部位の倍近くの厚みがあるわけです。
・乳房下縁の線、特に肺野から軟部影にまではみ出す
・下になるほど白くなるが、下縁の線を境に肺野濃度が戻る
下の図では黄色い線が、乳房下部の接線による空気との境界線です。しばしば(個人差はあるものの)この線は肺外の軟部影にまで及び、「肺内の陰性ではない」ことを示唆します。
下縁の線が横隔膜よりも上にある場合、肺内の陰影との鑑別は容易です。線を境に濃度が急に高くなり、上に行くにしたがって濃度が低下していきます。
両側下肺野の濃度が上昇している、といえばIPFなど間質性肺疾患を想起しますが、その手の疾患では、両側下肺野、横隔膜直上の陰影が最も強いことが多いものです。一方、乳房による濃度上昇は、線の下は元の濃度に戻りますので鑑別は容易です。
でも、乳房下部が横隔膜よりも下だったら、どう判断するか。たとえばこちら。
下肺野の濃度が上昇しているように見えるけど…どうでしょう?
この症例では、横隔膜が少しぼやけている⇒シルエットサイン陽性、と考えられますので、下肺野の横隔膜付近に陰影があると判断しました。
それ以外には…
・側臥位で撮影すると乳房の位置がズレて白くなる部位が変わる
CT撮ったらわかるでしょ!
それはそうですが、すぐ撮れない状況もあるわけで、そういう場合は側臥位で撮ると乳房の位置=濃度の高い箇所が移動しますので、それとわかります。
あと、画像ではありませんが、間質性肺疾患の存在を疑う場合には、聴診上fine cracklesの存在を確認します。それがなければその可能性は低い、と考えてもいいでしょう。