2017年05月24日

症例検討会BRONCHO8−6

だいぶ引っ張って参りましたが、いよいよ胸部X線写真を見て頂きましょう。そもそも呼吸器系の症例検討では、まずX線、みたいな風潮がありますが、本来はこのくらい、病歴と診察でしっかり議論しておくべきではないかと思っていて、日頃のカンファレンスではこんな感じで進めるよう意識しています。若い人に伝わってるかな…。


胸部X線写真では、右に陰影がありそうですよね。実際に見てみましょう。


スライド2.JPG


Q:所見を述べてください。

右上肺野に無気肺
右上葉にコンソリデーション
両側びまん性にすりガラス影
右上肺野に空洞病変
右胸水



あ、読影の基本は皆さん、もうご存じだという前提で進めますね。基本についてはブログの過去記事『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』を参照してください。



何気なく問題を出しましたけど、これだけで所見、わかりますか??


既往にさりげなく書いてあった、「8年前に肺癌に対して化学放射線療法を行い、終診となっていた。」たぶんこれ、画像診断をする上では重要な所見じゃないでしょうか。化学放射線後って、結構縦隔が動いたりしますし…ということで、以前の胸部X線写真を確認しますと…。


スライド3.JPG


こちらは5年前のものです。もうちょっと最近のものはないのか。探して見ると、偶々他科で腹部大動脈瘤を指摘され、フォローされていたCTのスカウト画像が手に入りました。


スライド4.JPG


この写真を見ると、右上肺野の濃厚な陰影はこのときはありませんが、気管の偏位や右横隔膜の上昇は認められ、8年前の化学放射線療法による放射線肺炎〜線維化によって、右上肺がゆっくり収縮してきているようです。


今回はそこにコンソリデーションが乗って、濃厚な陰影になったものと考えられます。したがって右上肺野は無気肺ではなく×、コンソリデーション○、しかも毛髪線とおぼしき線でハッキリ境界されていますから、この陰影は上葉の陰影だとわかります○。右肋横角も以前から鈍ですので、胸水あり、という所見にはならない×でしょう。


CTもなんだかんだで撮っています。当初は以前の写真が参照出来なかった模様で…(汗)。答え合わせのつもりで見てみましょう。


スライド5.JPG


上葉にある嚢胞、または空洞は、今回のepisode以前からあったようですね。重喫煙者ですから嚢胞があったのでしょうか。


スライド6.JPG


このスライスでは、3ヶ月前の放射線肺炎像がよく見えます。ぴしっとまっすぐ境されていますね。で、今回は正常だったところにコンソリデーションが出ています。エアブロンコグラムも見られます。


ということで、元々あった放射線肺炎後の変化に、右上葉のコンソリデーションが乗った、そういう所見と考えました。


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posted by 長尾大志 at 19:57 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO
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