胸部X線写真では、右に陰影がありそうですよね。実際に見てみましょう。
Q:所見を述べてください。
右上肺野に無気肺
右上葉にコンソリデーション
両側びまん性にすりガラス影
右上肺野に空洞病変
右胸水
あ、読影の基本は皆さん、もうご存じだという前提で進めますね。基本についてはブログの過去記事や『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』を参照してください。
何気なく問題を出しましたけど、これだけで所見、わかりますか??
既往にさりげなく書いてあった、「8年前に肺癌に対して化学放射線療法を行い、終診となっていた。」たぶんこれ、画像診断をする上では重要な所見じゃないでしょうか。化学放射線後って、結構縦隔が動いたりしますし…ということで、以前の胸部X線写真を確認しますと…。
こちらは5年前のものです。もうちょっと最近のものはないのか。探して見ると、偶々他科で腹部大動脈瘤を指摘され、フォローされていたCTのスカウト画像が手に入りました。
この写真を見ると、右上肺野の濃厚な陰影はこのときはありませんが、気管の偏位や右横隔膜の上昇は認められ、8年前の化学放射線療法による放射線肺炎〜線維化によって、右上肺がゆっくり収縮してきているようです。
今回はそこにコンソリデーションが乗って、濃厚な陰影になったものと考えられます。したがって右上肺野は無気肺ではなく×、コンソリデーション○、しかも毛髪線とおぼしき線でハッキリ境界されていますから、この陰影は上葉の陰影だとわかります○。右肋横角も以前から鈍ですので、胸水あり、という所見にはならない×でしょう。
CTもなんだかんだで撮っています。当初は以前の写真が参照出来なかった模様で…(汗)。答え合わせのつもりで見てみましょう。
上葉にある嚢胞、または空洞は、今回のepisode以前からあったようですね。重喫煙者ですから嚢胞があったのでしょうか。
このスライスでは、3ヶ月前の放射線肺炎像がよく見えます。ぴしっとまっすぐ境されていますね。で、今回は正常だったところにコンソリデーションが出ています。エアブロンコグラムも見られます。
ということで、元々あった放射線肺炎後の変化に、右上葉のコンソリデーションが乗った、そういう所見と考えました。
症例検討会BRONCHO