■ 症例検討会BRONCHO19−4は9月20日に掲載出来ておりませんでしたので、9月25日に掲載しております。あしからずご了承下さい。以下の19−5は、19−4の後にお読み下さい。
胸部X線写真では陰影の悪化、左下肺野に加えて中肺野にも陰影が出現しています。
ということでもうおわかりでしょう。これだけ抗菌薬を使用していて、比較的ゆっくりとした経過で(←ここがポイント)悪化してくる。
いかにも抗酸菌感染症、という感じではないでしょうか。
細菌感染症と抗酸菌感染症では、時間経過がずいぶん違います。それは、分裂速度がずいぶん違うから。例えば大腸菌は20分に1回分裂します。1時間で8倍、2時間で64倍、4時間で4,096倍、8時間では16,777,216倍。24時間では…計算が大変です。もちろんこれは理想的な環境下で、体内とは異なりますが…。
それに対して、結核菌始め抗酸菌は一般的に分裂速度が遅いものです。非結核性抗酸菌の中には迅速発育菌というものもありますが、MACを含めて多くは遅いもの。結核菌で1回の分裂に15時間ほどかかるといわれています。こちらも理想的環境下ですが。
つまり環境が同じと仮定して、分裂に必要な時間が45倍も違うのです。細菌性肺炎だと症状が出始めて、病院に来なくてはならないほど(極期)になるのに1〜3日ぐらいのところ、結核だと45〜135日ほどかかる、あくまでおおざっぱな、感覚的な計算ですが、それぐらいの時間経過を考えて頂ければいいのではないかと思います。
比較的若い患者さんに気道症状があり、1ヶ月程度の経過で陰影が増えてくるようなケースではやはり抗酸菌感染症、特に結核を考えるべきでしょう。もっとまれな感染症もありますが、とにもかくにも、公衆衛生的観点からも、結核の診断はマストです。喀痰抗酸菌検査(塗抹、培養、PCR)を大至急行いましょう。
そして結核を疑ったら接触歴、既往歴をもう一度根掘り葉掘り聞きましょう。特に感染リスクの高い同居家族、それに近い接触をしていた人の結核罹患は必須です。
そしてご本人の問題として、免疫低下を来すような状態ではないか、HIV感染はもちろん他の基礎疾患も一通り調べる必要があるでしょう。
本症例では、喀痰塗抹検査にてG10号の抗酸菌を検出し、TB-PCR陽性であったことから、専門施設に入院加療としました。
家族歴は、本人からの聴取では特記事項なしとのことでしたが、後日家人(母親)に聴取したところ、幼少時に同居していた親族が結核であったとのことでした。ただ本人はそれを知らされていなかったそうです。まあ、こんなことがなければ、本人にとって余計な歴史でしかないわけですから、言われなかったのもやむなしでしょうか。
本人にHIVはじめ免疫低下を来す疾病はありませんでしたが、多忙で1年ほど前から慢性的に睡眠不足であったとのことでした。睡眠不足も怖いですね〜。
症例検討会BRONCHO
19-4が投稿されていないようなのですが、アップしていただけないでしょうか。
なお、CTは撮影されておりません。受診時のwheezesは当時は感染で喘息コントロールが不安定となったことによる喘息症状と解釈されていましたが、菌量の多さからはご指摘の通り、気管支結核の可能性もあると思われます。