2017年10月04日

症例検討会BRONCHO20−8

「不測の事態」。ステロイド投与による副作用ですね。わかってたら、「不測」とは言わないか…。


基本的に、ある疾患に対して、きちんと決まった治療をしているときに起こってくる「不測の事態」、それは治療(薬)による副作用であることが多く、まずはそこを疑うべきです。


ある疾患に対して、きちんと決まった治療をしているとき、元々の疾患が悪化してくる、ということはあまりないはずですよね。いつもそんなことが起きるのだったら、それは「きちんと決まった治療」にはならないでしょう。


また、ある疾患にかかっていながら、さらに別の疾患にかかる、というのも、疾患の罹患率を考えると比較的まれ、ということになります。そういうことから、いくつかの症候を呈しているときに、まずは単一の疾患でそれらが起こっている、と考える考え方を「オッカムの剃刀」といいますが、そんなわけで、ある疾患に対して、きちんと決まった治療をしているときに文脈と関係ないことが起こることは少なかろう、と考えるのが筋だ、というわけですね。


そして治療薬には少なからず副作用がある、これもまた確かであります。有名どころでは抗がん剤や分子標的薬、生物学的製剤など、副作用が起こること前提、みたいな薬もありますが、ステロイドや抗菌薬もまた、副作用のことを考えるべき薬剤ですね。


PSLを1mg/kg/day で開始したときに気をつけるべき副作用は…

  • ステロイド精神病(不眠、躁、うつなど)

  • 耐糖能異常

  • 易感染性

  • 消化性潰瘍

  • 凝固能亢進

  • 血圧上昇・浮腫



あたりです。これらは予想されるものですから、あらかじめST合剤やPPIなどを使い、観察もするわけですが、本症例では…



PSL投与10日目に、胸部Xpにて気胸腔拡大を認めました。そこで8Frアスピレーションキットを第7肋間から挿入し700ml脱気+170ml淡血性胸水吸引。気胸腔は隔壁があり、開通していない部分の脱気は困難でした。胸水の培養は一般細菌、抗酸菌共に陰性、細胞診では血液細胞のみ認め、白血球はリンパ球主体でした。


ステロイドによって組織が脆弱になる、ということもしばしば経験されます。皮膚が傷つきやすくなったりぺらぺらになったりしますし、本症例のように創傷部位(肺に空いた孔)の治癒が遅延したりもします。


幸い治療反応性がよかったため、PSLを早めに減量することにし、投与2週間で0.8mg/kg/dayに減量しました。



Q:ちなみに、今後ステロイドを長期間使用することが予想されますが、その際に注意すべき副作用はどのようなものがあるでしょうか?


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posted by 長尾大志 at 18:25 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO
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