そもそも肺炎になる、というか、感染症になる、ということは、ある菌(通常は1種類)が、制御できないほど増えて、臓器にダメージを与える、というイメージです。誤嚥性肺炎で口腔内の常在菌(普段から仲良くしている仲間たち)がそれぞれ仲良くいっしょに増えてくる、という場合を除いて、排他的に1種類の菌がドカンと増えるのが感染症です。
ですから、最初に使う抗菌薬がそいつに「効けば」、もうその感染症は制圧したも同然、というのが基本的戦略の元になる考えです。すなわち、早期に「効果あり」と判定すれば、そのまま抗菌薬を使っていけば肺炎は治るでしょう、と考えるわけです。
抗菌薬の早期の効果判定としてガイドラインで紹介されているのは、新規抗菌薬の臨床試験における評価法ですが、臨床的にも客観的な効果判定法として使用できます。評価のタイミングは薬剤投与開始から3日後で、判定の項目は
- 体温(発熱)
- 咳嗽
- 喀痰の量
この3項目中2項目以上が改善していれば、改善または改善傾向ありとします。
その一方で、みんなが大好きな、炎症所見(白血球数やCRP)及び胸部X線の陰影については評価をしません。これは大事です。白血球数やCRPは治療開始時に低値であることもあり、胸部X線の陰影は、特に高齢者ではなかなか改善が見られないことも多いものですから、この指標で評価をすると誤った評価になる可能性があるわけです。
なお治療終了時(End of Treatment)、治癒判定時(Test of Cure)に臨床効果を判定するための症状としては、
- 咳嗽
- 喀痰の量
- 呼吸困難
- 胸痛
- 喀痰の性状
- 胸部のラ音
の6項目が挙げられていますが、実際には呼吸数を含めたこれらの症状は、早い時期から改善してくることが多いものです。これらはすべて「患者さんのところに行く」ことで得られる情報ですから、積極的に患者さんのところに行くようにしましょう。
肺炎ガイドライン解説