2018年07月25日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説17・院内肺炎/医療・介護関連肺炎1・要するに市中肺炎以外は同じことになった

これまで日本呼吸器学会は、肺炎診療ガイドラインを三つのカテゴリー(市中肺炎CAP、院内肺炎HAP、医療・介護関連肺炎NHCAP)に分けてガイドラインを作成してきました。

ところがその後、わが国特有の問題が明らかになってきたために、この分け方はいかがなものか、という意見が出てきたわけです。一つは海外のガイドラインと比較したときに、一致しないところ、齟齬が出てきたのです。

それは、一つは医療制度の違いによって、対象とする患者さんの属性が異なるということ、もう一つは終末期医療において、個人の意思をどういう風に扱うかという、文化的な側面を含む問題になります。

まず院内肺炎でいうところの「病院」の定義自体が、彼我ではかなり違うのです。日本の場合は急性期のみならず、亜急性期と慢性期、及びリハビリというのも病院に入院して行います。一方で欧米では、病院というのは急性期の入院診療を行う施設であって、それ以外の医療行為や介護は病院でなくて療養施設でなされます。

ですから日本の院内肺炎、というものには欧米であれば院内肺炎から医療ケア関連肺炎といわれるものも含まれます。そして日本の医療・介護関連肺炎は米国でいうと医療ケア関連肺炎と市中肺炎も含まれますので、各々のカテゴリーに含まれる患者さんの属性が日本と欧米で異なっているということになります。そうなると、例えば論文を書くときにこちらのカテゴリーとあちらのカテゴリーの定義がずれてしまって都合が悪いわけです。

結局せっかく米国の医療ケア関連肺炎にすり寄せたつもりで 作った医療・介護関連肺炎なんですが、あまり役に立たなかった、そういうことで分ける意味がないよね、と院内肺炎に統合されたような次第です。

もう一つの問題は、終末期の肺炎をどう取り扱うか、というものです。アメリカでは、個人の意思に従った医療が事前指示書によって行われています。強力な治療を望まない場合には、個人の意思に従って緩和的なケアが行われる場合が多い。その場合、肺炎ガイドラインの対象外になるわけです。

ところがわが国では、個人の意思の確認や表出が行われるということは稀で、診療の方針は多くの場合医師が決定することになります。そうすると終末期の肺炎だと状態が悪いことが多く、カテゴリーとしては重症の肺炎ということになってしまって、強力な治療を行う結果となってしまいます。

これらの問題があることから、色々議論があり、以下の方針が決まりました。

1.疾患の末期や老衰などの、不可逆的な死の過程にある終末期の患者が含まれる院内肺炎と医療介護関連肺炎を、一つの診療群として市中肺炎と分けて診療のプロセスを示す。

2.院内肺炎および医療介護関連肺炎の患者では、最初に疾患末期あるいは老衰などの不可逆的な死の過程にある終末期の患者を鑑別する。

この2番目が、今回の肺炎診療ガイドラインの一つの目玉?となっています。終末期を終末期として取扱い、強力な診療をしないという選択肢を設けたわけです。

肺炎ガイドライン解説

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posted by 長尾大志 at 21:49 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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