で、いざ抗菌薬を選択するわけですが、大きい方針として2つの方向性があります。
@escalation治療
escalationはそもそも「(段階的)拡大」、という意味です。抗菌薬治療においては、まず狭域抗菌薬から開始して、段階的に広域なものに替えていくようなやり方をいいます。
肺炎で、敗血症がなくて重症度も低い場合には、原因菌はグラム陽性球菌中心に、せいぜいH.influenzaeあたりを想定して、まず狭域の薬剤を使用します。そこで全身状態の改善があればよし、改善が見られない場合に、必要に応じて広域の薬剤への変更を考慮するという治療をescalation治療といいます。
Ade-escalation治療
de-escalationはescalationの逆、すなわち「(段階的)縮小」というような意味です。最初に広域抗菌薬から開始して段階的に狭域にするものをいいます。
肺炎で、敗血症があるとか重症度が高いという場合、または耐性菌のリスクが高い場合には、グラム陰性桿菌、緑膿菌あたりまでカバーする広域の薬剤で初期治療を開始して、全身状態の改善を確認した上で培養が判明した後に、可能であればより狭域の薬剤への変更を考慮する治療をde-escalation治療といいます。
重症であれば、初期治療の効果がなければそのまま命に関わる恐れがあります。そして耐性菌であれば、最初から広域でないと効かない可能性が高い。そういう状況ではde-escalation治療が選択されます。
市中肺炎に比べると耐性菌のリスクが高い院内肺炎/医療・介護関連肺炎ですが、耐性菌のリスク因子としては、
- 過去90日以内に経静脈的抗菌薬の使用歴
- 過去90日以内に2日以上の入院歴
- 免疫抑制状態
- 活動性の低下:PS≧3、歩行不能、バーセル指数<50、経管栄養または中心静脈栄養法、など
→これらのうち2項目以上で耐性菌の高リスク群である、とします。
ちなみにバーセル指数とは、介護の世界で使われるADL評価法で、食事、移動、整容…など10項目について、日常生活の中でできる度合いを評価するもので100点満点です。採点方法は結構細かいので、ご興味のある方はご自分で検索頂ければ幸いです。
肺炎ガイドライン解説