2018年08月27日

肺腫瘍疑い症例の、診断の進め方

ということで、今日日肺癌の治療には、小細胞肺癌か非小細胞肺癌かに加えて、非小細胞肺癌の中でも扁平上皮癌か非扁平上皮癌かという組織型による治療法の選択、さらにそれに加えて遺伝子変異・遺伝子転座の有無、さらにさらに PDL 1陽性腫瘍細胞の割合も確認しておく必要があります。

これらの検討を行うためには、各々そこそこの量、大きさの検体が必要であり、生検でしっかりと組織を採っておかなければなりません。ですから、肺腫瘍を疑う症例では、喀痰細胞診、などというわずかの細胞しか得られない検査ではなく、必ず生検をするのが原則となっております。

生検のために行われる検査としては、以下のようなものがあります。

・気管支鏡検査
・CTガイド下肺生検
・胸腔鏡
・縦隔鏡

まず気管支鏡検査。ポピュラーな検査ではありますが、合併症として生検による出血そして気胸などがあります。それと気道分泌物を減らす目的で抗コリン薬を使用するために緑内障や前立腺肥大を悪化させるおそれがあります。あとは局所麻酔薬(主にリドカイン)に対するアレルギーや中毒も想定しておく必要があります。

気管支を通じて生検をするため、うまく結節に入っていく気管支を通らないと診断がつかない可能性もあります。特に胸膜直下の結節や腫瘤の診断には、CT ガイド下肺生検の方が適している場合があります。

CT ガイド下肺生検は胸壁に針を刺し、胸膜を貫きますので 合併症として気胸や出血などが起こります。

胸水が溜まっている場合、胸腔鏡(局所麻酔)で胸腔内を観察して生検するということも行いますし、肺の切除も胸腔鏡(全身麻酔)で行います。

縦隔リンパ節の腫大がある場合は縦隔鏡を使って生検を行いますがこちらも全身麻酔が必要になることが多いため、ややハードルの高い検査になります。


生検で肺癌と確定したら、画像診断で病期診断(Staging)を行います。ここで使うのは、胸(腹)部造影CT、頭部MRI、FDG-PETなどです。

悪性腫瘍かどうか、診断ができていない段階で、診断のために全身のFDG-PETを行う、ということも見かけますが、FDG-PETは2018年8月現在ではあくまで悪性腫瘍の確定病名がある症例でしか保険適用がありません。

そもそもFDG-PETはあくまでもブドウ糖の取り込みが多い場所=細胞分裂の盛んな組織や炎症の部位が光って見えるもので、もちろん癌組織でも光りますが、癌の診断に使えるわけではないのです(よく使われてますけど…)。

全身が見れるので遠隔転移の検索には適していますが、確定診断にはまず生検を行い、次に造影CD、脳MRI、そしてFDG-PETを行う、こういう順番でステージング(病期分類)を行っていきます。

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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