2019年03月15日

第4回腫瘍センター講演会見聞録1

続きましてご紹介すべきは、2月下旬に行われた某アレルギーフォーラムなのですが、これについてはもう思い出したくもありませんので、これ以上は書きません。今後某社さんの関わる研究会には参加することはないだろうと思います。

気を取り直して、3月6日に本学リップルテラスで開催された第4回腫瘍センター講演会(キャンサーボード共催)におきまして、関西医科大学附属病院呼吸器腫瘍内科教授倉田宝保先生によります『がん治療の歴史を変えた免疫チェックポイント阻害剤』というご講演について振り返りたいと思います。

免疫チェックポイント阻害剤(ICI)のお話はよく聞くことがありますが、いわゆるガイドラインをなぞった、決まりきった話ではなくて、実際載っていないことをどうしておられるか、そういった話が大変興味深かったです。

今では外科手術とICIはガイドライン上相容れないことになっておりますが、まずICI使用後に手術や生検をして、癌細胞が消失しているということも経験されるので、今後はICI先行で、それから手術をして、手術標本で局所の癌細胞が消失していればそれで終了、みたいな治療が標準化されるのではないか、という夢のあるお話もありました。

分子標的薬剤は、本当に癌の治療において革命的な効果、予後の延長をもたらしましたが、残念ながらずっと使っていると必ず耐性化が起こり、なかなかそれだけで治癒に至るのは困難であると分かってきました。消えているように見えても、治療をやめると再発することも知られるようになってきました。

ということで治癒とか、本当の意味での長期生存を可能にするのはICIではないかと期待されています。PD-1阻害剤投与後に化学療法をした研究では、PD-1阻害剤投与後の化学療法は効果が高いことが明らかになっています。

ICIのバイオマーカーとしてPD-L1の発現、遺伝子変異の数=TMB(Tumor mutation burden)、そして腫瘍周囲のリンパ球浸潤の状況が豊富なほど良い、というようなことがいわれています。

PD-L1は5年生存率と関係がないということが明らかになっています。それ以外の研究でもPD-L1だけで治療効果の予測が必ずしもできないとわかっています。原因の一つとして挙げられていたのは、生検サンプル内でのPD-L1の染色そのものが不均一である、時間の経過で発現が変化する、などなど、染色自体が大変不安定なものであることです。

ドライバー変異陽性例にはICIは効きにくいことが明らかになっています。ドライバー変異が陽性ということは、代表的な変異1つとかで癌化している=TMBが少ないということになりますから、それは納得ができます。

腫瘍周囲にリンパ球がたくさん浸潤してきているものをhot tumorといい、来ていないものをcold tumorといいます。一例として膵癌は、癌細胞周囲にリンパ球がほとんどおらず、免疫チェックポイント阻害剤も効かないという例を挙げられました。

抗癌剤や放射線は、リンパ球を活性化しcoldなものをhotにする効果がある、といわれていますので、ICIも単独ではなく抗癌剤や放射線との組み合わせが期待されているところです。

それからICIはいつまで続けるのか、という疑問があります。治験では2年間投与し、PDにならなかった症例や奏効した症例は2年で投与をやめた後も効き続けて長期生存が見られているということが明らかになっています。実際どの程度続けるか?ということは、まだ定まった方針までは出ていません。

それから偽増大の問題があります。これはICI投与後腫瘍が画像上大きくなっていても、実際には腫瘍周囲にリンパ球が集まっているのを見ているもので、実は効いていた、というものです。この概念がいわれ始めた当初は結構インパクトがあったものですからもっと多いのかなと思っておりましたが、言われていたほどはないと。頻度的には5%程度ということです。

効果判定という意味では結構厄介な偽増大、画像では全くわからず、腫瘍マーカーもあてにならないことがあると、そこでどうするか。倉田先生は、通常2ヵ月後に効果判定するところを3ヶ月後に画像検査で効果判定をするようにされているそうです。なぜなら、3ヶ月後に偽増大をきたしている可能性はおそらくほとんどないと考えておられているからです。

お話が盛りだくさんでしたので、もう少し続けます。

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posted by 長尾大志 at 17:29 | Comment(0) | 学会・研究会見聞録
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