2019年04月08日

第59回日本呼吸器学会学術講演会ポスター発表「内視鏡1」セッション予習2

■ クライオバイオプシーの安全性有用性に関する多施設共同前向き研究

背景

クライオバイオプシー(TBLC)はびまん性肺疾患や肺がんの診断に有用であるが本邦における安全性、有用性は未だ明らかではないため、多施設共同にて前向きにTBLCの安全性、有用性を検討した。

方法

対象症例はTBLCが必要な全ての呼吸器疾患とした。主要評価項目は重度又は重篤な有害事象(出血、気胸、肺炎、呼吸不全、間質性肺炎急性増悪)発生割合とし、期待値を10%、閾値を20%、有意水準を両側5%、検出力を80%とした場合の必要症例数を110例とした。

結果

症例は17例、年齢72歳であり、全例で安静時の呼吸不全は認められず、止血用バルーンは全例で施行した。検査時間は34分、生検回数は3回、TBLC検体サイズは17.5平方mmであった。重度または重篤な出血は認められず、気胸は一例のみであり他の有害事象は認められていない。

結論

これまでの結果では許容範囲内の安全性プロファイルであり、症例集積が終了した時点で最終解析を行う。

所感

良好な結果で、最終解析が楽しみですね。



■ 当院における免疫不全患者に対する気管支鏡検査の有用性の検討

【背景・目的】

免疫不全患者に新たに出現した陰影に対する気管支鏡検査(BF)の確定診断への寄与度や検査の合併症は報告により様々であり、その適応基準は施設ごとに異なる。

【対象・方法】

免疫不全患者へのBF(肺がん診断目的を除外した69例)を後ろ向きに解析した。活動性の悪性腫瘍、自己免疫疾患、ステロイド5 mg/日以上、維持透析中、免疫抑制剤投与中の患者を免疫不全患者とした。

【結果】

背景疾患の内訳は悪性腫瘍23例、自己免疫疾患42例、その他4例であった。BALを49例、生検を19例、擦過洗浄のみを10例に施行した。50例は感染の除外を含め最終診断に寄与した。最終的に感染と臨床診断された24例のうち14例は起因菌を同定できなかった。検査後合併症は5例に認め重篤な呼吸不全1例、発熱3例、血痰1例であった。全例で速やかに回復した。

【結論】

免疫不全患者においてもBFは安全に施行でき診断への寄与は大きいが、起因菌の検出率は高くない。


所感

免疫不全患者においてBFどうしようかな…と躊躇われることも少なくありません。この報告は後押しをしてくれるでしょうが、確かに起因菌検出にはなかなか至りませんね。



■ 睡眠時無呼吸症候群と気管支鏡中の酸素飽和度低下に関する前向き観察研究

【背景・目的】

気管支鏡検査中の静脈麻酔が広まる一方、酸素投与を必要とする危険因子は明らかでない。
睡眠時無呼吸症候群を危険因子と仮定し、前向き観察研究を行った。

【方法】

気管支鏡中の最大酸素投与量を記録した。また同日にアプノモニターを行った。アプノモニターの解析者は酸素投与量に対して盲検され呼吸障害指数(RDI)を求めた。RDI値5回/時間以上の患者をSAS群とし、酸素投与量とSAS群の単回帰解析を行った。交絡因子として性別、年齢、鎮静薬使用量、マランパチー分類を含め多重回帰解析した。

【結果】

解析対象者は70人で女性は33人、SAS群は29人だった。単回帰分析でSAS群は有意に酸素投与量が増加した。多重回帰分析でもSAS群で有意に酸素投与量が増えた。その他女性で有意に酸素が多く投与された。

【結論】

気管支鏡中の酸素飽和度低下の危険因子として、SASと女性が挙げられた。


所感

この研究を始めるにあたっての背景をもう少し知りたいですね。SASが危険因子であるとして、それがわかったことで酸素投与量が多くなると予想され、それで…。

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posted by 長尾大志 at 17:41 | Comment(0) | 呼吸器研修ノート
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