ちょっとここで、しばし抗菌薬について改めて考えてみます。すでに多くの方はご存知と思いますが、少し前から抗菌薬の効果を考える上でPK/PD(Pharmacokinetics薬物動態学、 Pharmacodynamics、薬力学)の理論というものが出てきています。例えばペニシリンやセフェムなどβラクタム系やカルバペネム系などでは時間依存性、つまりMICを超える血中濃度で菌に接触している時間が1日のうちどの程度の割合になるか(time above MIC|T>MIC)が長い方が、効果が高いといわれています。一方でキノロン系やアミノグリコシド系のように濃度依存性、すなわち1回投与の量を多くして最大の血中濃度(Cmax)が高い方が効果が高い、というものもあります。
そこで前者では、MIC を超える濃度を担保しつつ、各回の投与後速やかに血中濃度が低下することから、投与回数をできるだけ多くするために分割投与が推奨され、後者では1日一回でできるだけ多い量を投与する、といった戦略がスタンダードと考えられるようになってきました。
しかしながらここからが重要なんですが、日本においては医療保険制度というものがあり、保険適用をとるにあたって最初に承認された用法用量というものが存在します。多くの抗菌薬において、それはずいぶん以前(当然PK/PD理論が分かるよりずっとずっと以前)に設定されたものであり、正直かなり適当に?決められている感もあるわけです。
しかしながらここは日本ですから、一度決まってしまったことはなかなか変えられない。といって決まりを守らずに、定められた用法用量から逸脱して薬を使用すると保険金の返還など、何らかのペナルティが降る可能性が高いということになります。
2021年10月21日
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