島根大学地域医療教育学講座の長尾大志です。変なタイトルの駄文、後編です。さすがに前編からお読みいただかないと、なんのことやらちんぷんかんぷん、ただ長尾がアイドルオタクであるということしかわからないと思いますので、前編ヨロシクお願いします。
さて、皆さんが思い浮かべるアイドルの皆さん、どなたでしたか?その後のキャリアもわかっている人がいいですね。私が授業?で挙げるのは以下のような方々です(敬称略)。若干?偏りがある点はご容赦ください……。
高橋みなみ
まゆゆ(渡辺麻友)
指原莉乃
柴田阿弥
平手友梨奈
白石麻衣
満島ひかり(Folder5)
仲間由紀恵(東京パフォーマンスドール)
深田恭子(HIPS)
橋本環奈
嵐
上に挙げた皆さんの具体的なキャリアについて公の場で論説することは炎上リスクを多分に孕んでおりますので、そういうことは致しません(清く正しく静かに生きておりますもので)。でも、皆さんのキャリアを辿って頂けると、なんとなく私の申したいことがお判りいただけるのではないかと思うのです。
もちろんこれらの方々の陰には圧倒的に多くの「そうなれなかった方々」がおられることにも注意が必要です(特に芸能の世界は「努力は必ず報われる」とはいかない、運に左右される面も多々あることは間違いありません)が、今回はキャリア形成のサンプル、ということで話を進めます。あ、嵐さんについては(今はグループとして活動されていませんが)総合診療医だなあ、と考えております。研修医の期間に様々なことに挑戦され、そのまま専門にとらわれずに?活動を続けておられる、という意味で。これだけはここで述べておきます。
私が医師になった30ウン年前はキャリアプランニングなんて考えは一般的ではなく、私もご多分に漏れずキャリアについて深く考えることはありませんでした。研修先や異動、留学も、教授に指示されてその通り従って参りました。決して、
長尾=やさしイイ呼吸器の人?
になろうと思ってプランニングしたわけではありません。
長尾=胸部X線写真の人??
になりたかったわけでもありません。
前編でも述べた通り、元々「お医者さん」になりたくて、臨床がやりたくて医師になった身ですから、キャリアの前半はひたすら臨床を頑張って、臨床能力を高めることに注力していたのです。それが、患者さんのため、将来の医療をよりよいものにするために頑張っていたら、様々な出会いと、「経験と居場所によって解像度が上がった」結果、「こっちに行こう」という考えが生まれて今の感じになりました。
大事なことなのでもう一度。
「経験と居場所によって解像度が上がった」んです。
おそらくアイドルの皆さんも、少なからずの医師の皆さんも、こんな過程を経てキャリアを選び取っていかれているはず。若いころにはなかった知識、考え方、成長で気づいたこと、そのすべてが血となり肉となってキャリアに生かされるのです。若いころには考えていなかった道が見えてくることもあるのです。解像度が低いうちは、忙しい日々の中で「なんでこんなことしなくちゃいけないんだ」「テキトーでいいだろ」みたいになりがちなんですが、まだ多くのことが見えていないうちに与えられた仕事をしっかりと、丁寧にこなしていくことで「見えてくる」ものがあるんじゃないかな〜と思うところです。
初期研修病院についてもいろいろご相談を受けますが、大事なことは病院そのものよりも、そこでどう働くか、だと思っています。決して「ハイパー至上」「ハイポ撲滅」と思っているわけではありませんのでご留意ください。人それぞれ向き不向きがあります。健康に影響が出るような環境はよくないです。ハイパーにやっていける人はそういう施設、ハイポがいい人はそういう施設で、ご自分なりにしっかりされるといいですね。
「ハイパー」「ハイポ」では当然経験「数」は異なりますから、成長曲線はハイパーの方が当初角度が急なんですが、所詮それは初期数年での話。長い医師人生では、その後の角度の方が圧倒的に重要です。つまり、いわゆる専門を選んでからですね。
私は初期のころは不器用だったし物分かりが悪かったので、かなり同期と比べるといろいろと劣っていたと思います。その真っただ中の時期にはやっぱり仕事が面白くなくて、休みが待ち遠しくて、どうにかして早く家に帰ろう……なんて思っていたのですが、一通り学んで出来るようになってくると、周りに頼りにされるようになってきて、やりがいが出てきて、色々なことに興味がわいてきて、頑張れるようになりました。そして教育に全集中するようになると、日中は学生さん、研修医の先生方と戯れ、夜はスライドづくりに寝食を忘れ、土日を返上してブログ更新・原稿執筆……みたいな、公私混同!?趣味と仕事の境界線がなくなってしまいましたが、ものすごく充実感を味わうことができたのです。
さてそろそろ、結論めいたことを書かねばなりません。(既に書いているのですが)将来向かう道が決まっている人は、アイドル(研修医)のうちに将来役に立つであろうことを逆算してやるもよし。決まっていない人は、与えられた仕事をしっかりと、ただし無理はしないように。アイドルの世界とは違って「努力はほぼ必ず報われ」ますよ、ってことでしょうか。
人には、楽しい嬉しい美味しいなどと感じるポジティブ感情。反面、辛いつまんない不味いなどと感じるネガティブ感情があると思います。
難しいことかもしれませんが、ポジティブ感情の閾値を下げ、ネガティブ感情の閾値を上げるような心持ちが大切だと、個人的には感じます。
そして、その人なりに頑張った分(もちろん失敗も含め)だけ、自分が豊かになり、ひいては患者さんに幾許か還元できることがあるのでは、と思っています。
長尾先生、数々のグッとくるフレーズ、ありがとうございました。これからも色々ご教授いただけると幸いです。